※この作品はR-18です。

下級生の性教育係なTS娘ちゃんが受精するまでの1日   作:ゆきかお

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お久しぶりなので初投稿です。
リアルの方でごたごたして余裕がなくなり、投稿が凄まじく遅れました。
真に申し訳ございません。


3時間目(パイズリ)

 

「ふぅ、はぁ……」

 

 サキを見送ったミトは、熱っぽい吐息を漏らして。

 誰に憚ることなく、背をマットレスに倒して、手と足を大の字に広げて、体を伸ばす。

 

 一旦の休憩が必要だった。

 息を落ちつけさせたくて。

 燻るようにのこった体の芯からの火照りが、どうにも悩ましくて。

 

「……っ、んーっ……はー……」

 

 終わったというのに、ひと段落が付いたというのに。

 体が微熱に侵されたように、やけに火照っていて、汗が額に浮かぶ。

 どくん、どくん。心臓が、いつもより早いペースで脈を打っている。

 鼓動に耳を澄ませずとも、確かにそれは感じられた。

 

 深く呼吸をして、無機質で寒色なジプトーンが張られた天井を仰ぎ見れば、ざわついていた心と体が、少しだけ静まっていく気がする。

 無心のまま何となしに、手元に残っている、サキの形に引き伸ばされた使用済みのコンドームを、ミトは目前に翳す。

 

(ほんとに、真っ白じゃ、ないんだ)

 

 その先端には、天井の標準的で模範的な絵の具のような白とは異なった、明らかに濁って、澱んでいる白が、溜まっている。

 自分の実物では終ぞ見られなかった物。

 精液で膨らんだ先端を左手の指の腹に乗せれば、そこはまだ生暖かい。

 たった数分前の、サキの射精を受け止めた感覚が自ずと甦った。

 

(……片づけよ)

 

 事が済んだ今では、通常それは無用の長物であるが、こと性教育に限ってはそうではない。

 担当する男子の精子検査の為に、係の女子には入手次第、提出の義務がある。

 落ち着いたミトは後片付けの為、コンドームの口を固く縛って、ティッシュにくるんで。

 少しだけ、名残惜しい気持ちになりながら、段ボールの中へと放り込んだ。

 

 そして、事後の始末はそれだけではない。

 べたべたと泡立ったローションがこびりついた、不快感がある右手と。

 どちらのかも分からない唾液が乾きつつある、口回りが残っている。

 

(さっさと、洗いに行かないと。

 ……いなかったら、心配する、だろうし)

 

 思い起こすのは、次にやってくる彼との約束のこと。

 あの子の不安に惑う顔は、見たくない。

 となればと、ミトはさっそく体を起こして立ち上がって、入口へと向かう。

 

 マシな左手で鍵を取り出すと、入口の扉の鍵穴に差し込んで、回して。

 室内を一瞥してから、ミトは手早く外へと出た。

 

(……暑くなってきてる)

 

 出るや否や、ミトは外の空気にうんざりとした感情を抱いた。

 いくら日陰にあって涼感があるといえど、冷気で統制され、完全に保たれ続ける教室の中と比べれば、どうしても暑気を覚える。

 それに、日が頂点へと輝こうとするものだから、高まる気温と湿度に合わせて、別棟にも熱気がうっすらと立ち込めつつあった。

 長居するものではないと、ミトはとんと人気のない廊下を早足で行く。

 行くは、本棟に向かう廊下の突き当たりにある、水道が備え付けられた場所だ。

 

 目的地までのほんの少しの道中、目的を同じにした誰かとすれ違うということもなく。

 廊下の隅、奥まったトイレの扉の手前に設置された、手洗い場へとミトはやって来た。

 

 いくつも設置されている、くすんだステンレス鋼の蛇口の栓を、ミトは上に持ち上げた。

 すると、過不足ない勢いで水道水が落ちていく。

 急いた面持ちでそれに両手を晒すと、ぬるい水が肌を舐めた。

 思わずミトは眉を顰めるが、流れていく内に段々と元の冷たさを取り戻していくそれに一安心して、眉の険をなくした。

 

 そうして、静まり返った廊下で、冷水が流れゆく音だけを捉えていたミトの耳に、別の音が混じる。

 手洗い場の近くには窓があり、そこからは日陰に溶け込んだ、等間隔に植えられた樹木が彩る、裏庭が見える。

 そして、その裏庭の木々に止まっているのか。

 いやに近くで、ミンミンゼミの輪唱が響いていた。

 

「うるさ……」

 

 みーんみーんと、その名の通り、澄み渡る青空を想起させる、夏の象徴たる風流なその斉唱は、それだけを実行する機械のように、無限に反復されている。

 

 こちらへと、夏を押しつけてくるようなそれは。

 外に広がる、陽炎揺らぐ野天をどこか遠くに追いやって、作り物のように思わせて。

 目の前に広がる光景の現実味を失わせて、覚束なくする。

 

 ふと、ミトの脳裏に過るのは、濁った白。

 子種を詰め込んだ、どろどろの体液。

 自分の手を汚したかもしれない、それのことに気を取られていく。

 

「…………」

 

 どれだけ洗っても、冷やしても。

 ずっとずっと、手の内の中で爆ぜて、満たした、その熱が消えない。

 脈打って放たれるあの感覚が、忘れられない。

 思い出せば思い出す程に、水の冷たさが、分からなくなっていって。

 

(ちくちく、する)

 

 そうやって残り続けて、ミトの思考を朧げにさせる精の焦熱と共にあるのが、腰の違和感。

 それは知覚したときよりも少し強くなっていて、今では針を柔く押し当てられるような痛みになって、ミトの気を惹く。

 しかも、その痛みは下腹部全体に広がっているように思えた。

 

(なんで、なんだろ……)

 

 1時間目よりも体を動かしていないというのに、悪化しているのは、明白だ。

 原因は謎のまま。追求しようにも、微熱が前頭葉に回っていて、鈍化していた。

 それでも、散発的でうまく纏まらない思考を、どうにかしようと、頭を回そうとして。

 けれど、空転を繰り返す。そんな上の空の、最中。

 

「…………おねえ、ちゃん?」

 

 ────突然、聞き馴染みのある声がして。

 その存在を感じ取って。

 ミトは、忘我の淵から己を引きずり上げた。

 

「……ノア?」

 

 本棟からの廊下に立っている彼は間違いなく、ミトが受け持つ担当の1人。

 今朝、会ったばかりの、3年生のノアだった。

 

「…………ごめん、探してた?」

「えっ、ううん。今、クラスの教室の方から、来たばっかり、だから」

 

 含みのないその返事に、ミトは内心でほっと胸を撫で下ろした。

 ノアは橙色の瞳を揺らし、ミトへと心配そうな眼差しを向けて、おずおずと口を開く。

 

「えと、その、……大丈夫?お姉ちゃん。

 さっきから、ずっと動いてなかった、けど……」

「えっ、あ……」

 

 こんな閑静な廊下では足音が間違いなく響いただろうに、それを一切認識することのなかった自分が、どれだけ呆けていたかを思い知らされるミト。

 現に、洗い始めたと思っていた右手には、もうすっかりと糸引く粘り気はなくなっていて。

 無為に排水溝に落ちていく蛇口からの流水が、ただただミトの皮膚をふやかしていた。

 

「体調、悪かったり……」

「……ううん。ちょっと、ぼーっとしてただけ。何でもないよ。

 それに、ノアが話しかけてくれたから、今は全然、大丈夫」

「………ほんとに?」

「ほんとだよ。……ちょっと待ってね」

 

 ノアに断りを入れたミトは水道水で口を濯ぐと共に、しゃっきりする為に顔を洗う。

 十二分に冷えたそれは火照りを冷まし、いやでも頭の中を明瞭にさせた。

 そうして顔を洗い終えて、開きっぱなしだった蛇口を止めると、ポケットに押し込んでいたタオルで、洗った部位の水気を吸わせ、拭き取る。

 そうして、ノアへと綺麗になった手を差しだす。

 赤らみが僅かに引いた頬を緩ませ、口角を上げて、ミトはにこりと笑った。

 

「ん、ノア。一緒に、行こっか?」

「っ、うんっ」

 

 小さくはにかんで、ノアは日焼けではない、遺伝の現れであるミルクコーヒーのような褐色の手を重ねた。ミトはその手をしかと握る。

 お互いの体温を交えながら、離れないように、離さないようにして。

 教室の中へと、共に連れ添って入室した。

 

「失礼、します……」

「どうぞ、ノア。……ん、座って座って」

 

 室内に満ち満ちた、熱気を癒すような冷気が2人を迎える中、彼女らは共に向かい合って中央のマットレスに座り込む。

 線の細い耽美な顔つきに、柔らかな印象を与える橙色の垂れ目にミトは視線を合わした。

 ノアも、ミトの瞳を見つめれば、不意に鐘の音が鳴り響く。

 今日3度目のチャイムの鐘の音が鳴りやむのを待って、ミトは朝に結んだ約束を果たすべく、切り出した。

 

「ノア、朝から来れるようになってたんだね」

「うん……今日から行こうってなって、それで」

「授業、どうだった?何したの?」

「国語と社会、だったよ」

 

 今日に至るまで散々尋ねてきたことを、今日もまたミトは繰り返す。

 その反復は、確かに必要な物であるが故に。

 

「まだちょっと、慣れないし、難しいところあるけど……お姉ちゃん達と勉強したから、平気。

 それに、クラスのみんなと話すの、すっごく楽しくて」

「……そっか。仲良くなれた子とか、いる?」

「えっとね、ボクの隣の席の男の子が────」

 

 些細だけれど、何の変哲もない淡々と流れゆく日常を彩る出来事。

 誰もが享受しているその当たり前を、ノアは、嬉々とした調子で語っていく。

 この国に来るまで、それが得られる環境にノアはいなかった故に、その語り口は精彩に富んでいて、弾むようだった。

 

 ノアはここより南方に存在する、かつての地球の総人口が80億人だった頃の慣習と生活様式が色濃く残った、貧しい国に生を受けたが。

 半年程前にこの国に捨てられた、孤児の1人だ。

 時折、南方の国の幼児の遺棄が、この国の国境線にて発生することがある。

 地球の総人口が10億を切って、繁殖と生育が死活問題になっても、人が人である限り、こういったことは根絶できないのが、現状だ。

 

 遺棄される理由として、2つある。

 南方の国から比較的近く、閉鎖的であるが豊かな国であることが1つ。

 そしてもう一つは、国の政策に反する主義や思想を持ち込ませないことを重視して、他国の成人した人間ならば入国はおろか追放されるのが関の山であるが。

 子供ならば、その幼さが故の主義思想の未発達さ、長期的な生殖能力を買われて、この国に拾われる確率が高いからだ。

 

 貧しいことを理由に子を育てるのは難しい自国より、恵まれた環境で幸せに生きて欲しい。

 または、子を抱えることが面倒になったが、死んでほしいわけではない。

 そういった、人としての情を捨てきれない輩が行う、口減らしの1つである。

 残念なことに、ノアの親は、後者であった。

 ネグレクトを受け続けて、心が摩耗していく中、ノアはそれでも両親のことを信じ続けていた。

 だがそんな淡い祈りは、儚くも散った。

 

 それから、幸いにもこの国に拾われ、養護施設に預けられたノアであったが、受け続けてきたネグレクトと、肉親に捨てられた精神的外傷、トラウマを抱えていた。

 誰かと関わって、裏切られることを恐れ、距離を取って。

 友人を作る機会を見つけることもなく、集団生活に馴染めないまま、1人浮いた存在になっていた。

 

 どうしようもない孤独感と疎外感。

 手を差し伸べてくれる人はいるのに、それを受け取れず、拒否してしまう自分への自己嫌悪。

 それらに日々苛まれて、ある日ぷつりと糸が切れたかのようにすべてがどうでもよくなって、勢いのまま施設を飛び出した。

 当てもなく彷徨っていた所で、偶然出会ったのが、ミトだった。

 この出会いの時、彼女のことを外見から判断しお姉ちゃんと呼んだのが、ミトの性転換事情を知った今でも、ミトに認められたことから、そう呼んで慕う一端となっている。

 

 出会って間もなく、心配の眼差しから逃げ出そうとするノアを必死に引き留め、居場所がないのならと、ミトは自分の家にノアを連れ帰って、1夜を共に過ごした。

 そうして、朝になって冷静になったことで、施設に心配と迷惑をかけたことを恥じ、戻らなければいけないことを伝えたノアを、見送ってからも。

 繋がった縁が切れないように、ミトは度々施設まで来ると彼を外に誘ったり、施設の中でゆとりをもった会話や、触れ合いをするようになる。

 

 小さく、慎重な積み重ね。

 それがノアの擦り切れていた精神を、快復の傾向へと進ませ。

 ミトと深く、親しくなっていた。

 

 彼女に心を開くようになってからは、放課後や休日にて、共に時間を共有することが今までよりも増えた。

 そうなると、自ずとよくつるんでいる彼女の担当の少年達とも触れ合う時間も増えて、仲良くなり、友人関係が築き上げられて。

 大事な友人、そして大切なお姉ちゃんを得たのが、現在のノアだった。

 

 基本的に施設暮らしの男子は、同じ施設で暮らす女子が性教育係の担当になる。

 だが、ミトとの交流を経て心を開きつつある様子を把握した学校が、彼女が担当になるよう取り計らったことで、今この時間が生まれていた。

 

「あっ、それで、それでねっ────」

 

 いつの間にか身を乗り出して、話すノア。

 話の腰を折らないような相槌を打って、柔和な笑みを浮かべ、聞き入るミト。

 仲睦まじく語らう、微笑ましい2人の様子は、血の繋がった姉弟のそれのようだった。

 親愛の温もりに満ちた、何でもない時間が過ぎて行く。

 

(初めて会った頃は、怯えられたもんだけど。

 ……うん)

 

 ミトと、彼女が受け持つ性教育係の担当の少年達との交流によって、ノアは明るさを取り戻しつつあった。

 まだ傷は癒えきっていないが故の危うさと、内向的な傾向はあれど、会ったばかりの、警戒と猜疑を滾らせて、周囲の全てに怖気ていた頃より、ずっといい状態だ。

 

 胸の内にじんわりと広がる、温かな感情と感慨にミトは浸る。

 彼と共に過ごしてきた時間は、計り知れないほど大事な物。

 抱えていた思いの丈が、無意識の内に彼女の口から零れ出る。

 

「……ほんとにさ、よかった」

「────えっ、なにが?」

「あっ」

 

 ノアの話を遮ってしまったことに、申し訳なさを覚えるミト。

 しかし拾われたのなら、何でもないと誤魔化すことはできないと、零れた独り言の真意を打ち明ける。

 感慨と親愛を乗せた、笑顔を見せて。

 

「その、ね。ノアが、すごい元気になって。こうやって学校に来れて、会えて。

 ……嬉しくて、しょうがないんだ」

「あ…………」

 

 過ごしてきた時間によって生まれた思い出の数々が、一瞬のうちに、彼の中で蘇って。

 感極まって、感情の飽和を抑えようとして、けれど止められずに。

 くしゃりと顔を、歪ませて、思わずノアはその面を伏せた。

 

「────ノア」

 

 差し出されたミトの右手の手のひらが、彼の頭を撫で付ける。

 すりすりと髪が擦られて、彼女の手の温もりを感じ取る度に、どうしようもないぐらいに満ち足りていく。

 ノアは目を細めて、その手に込められた愛情を一身に受けて。

 いつだって溢れて止まない感謝の念を、最愛のお姉ちゃんに伝えた。

 

「全部……全部ね、ミトお姉ちゃんの、おかげ」

「ん……」

 

 自身に向けられる、全幅の信頼と敬愛に、ミトは面映ゆそうに頬を掻いた。

 それは、純真な感情を直球にぶつけられることへの照れ。

 そして、自分は大したことはしていないのに、という気後れからだ。

 

「……オレ、なんもしてないよ。

 ここまで来れるようになったのは、全部ノアが頑張ったことだよ」

「…………」

「ノアは、強い子だから。

 オレがいなくても、すぐに元気になれてる。絶対、ね」

 

 ノアへの、本心からの激励。

 実際、ミトの体感にして、出会ってから今に至るまで、本当に瞬く間であった。

 親しい年下の友人達の、身体面と精神面においての、歩みの速さに何度も目を見張って。

 そして、望んではいないが、女体化という大きく変わる機会が与えられて尚。

 何も変わらない、踏み出せない。

 そうした己の、のろまさに、ミトは辟易とし続けてきた。

 自分が正しく変わっていく未来予想図だけは、どうにも想像が出来なかったが故の、当然の帰結。

 

(……このままオレ、置いていかれるんだろうな)

 

 時が経てば、第2次性徴という明確な変化で、意識も心も移り変わっていく。

 ここまで彼らと築き上げてきた関係を、信頼を、疑っているわけでも、信じていないわけでもない。

 だが、それはきっと、すぐにでも訪れうることで。

 あり得ないと信じ込んでいた別離が、ありふれたものになる。

 変わらず隣にいてくれる、なんて保証はない。 

 

(けど、それでいい。……そうじゃないと)

 

 いつか来る別れに思いを馳せれば生じる、胸の内の寂しさを、ミトは見て見ぬフリをする。

 未練なく、後腐れなく、純粋な祝福とともに見送る。

 それが、「お姉ちゃん」として出来る、精一杯のことだと、じくじくと痛む、傷を舐めて。

 ただ、願う。

 

「────…………お姉ちゃんは」

「ん?」

「……イヤじゃ、ない? ボクと過ごす、時間」

 

 唐突で、脈絡のない質問。ノアの頭を擦っていた手が止まる。

 どうしてそう突然に発したのか、ミトは分からない。

 しかし、不安はいつだって、不意に去来してくる。

 自身の体の変化を持って、それを理解している彼女は、そうなのではないかと考え、憂いを帯びたその問いかけに、すぐさま答えた。

 

「……イヤなわけないよ。一緒に居るのが、楽しくて、嬉しいんだから」

「…………」

「どうか、した?」

「……ごめんなさい。気に、しないで」

 

 謝罪を告げて、彼は俯く。しんと、沈黙が横たわる。

 ミトは、頭に置いていたままだった手を、彼の顔に添えて、正面へ向き直させる。

 途切れていてけれど、また交差する視線。ノアの瞳は揺れていた。

 ミトは、膝に置かれている彼の手に自分の手を重ねて、包みこむ。

 寂寥にかじかんだその手を、自身の想いを陽の光のような柔らかな熱として伝えて、癒せたのなら。

 それに、越したことはない。

 

「ノア。……オレはどこにも、どこにも行かないよ」

「…………」

 

 ノアは、控えめに頷いた。

 

 ────手を包み込んだまましばらくして、多少、彼が落ち着いたような、そうでもないような。

 そんな雰囲気を肌で感じたミトは、内心で、安堵の息を漏らす。

 そうしていると不意に、彼女の頭の中で覚えるデジャブ。

 それは、ノアの様子が、2時間目のサキのそれと似通っていることだった。

 

(サキもなんか、変な感じだったし、どしたんだろ。

 ……やっぱり、緊張、してんのかな)

 

 ただ、その心配を追求する暇はなさそうで。

 壁上の時計をちらりと見れば、それなりに分針が進んでいた。

 この時間でするべきことは、彼の為に確実に済まさなければならない。

 明確な時限に急かされつつも、最後に1つだけ、ミトは気にしていた問題を提起する。

 

「……ね、ノア。オレも聞くけどさ。

 この、性教育の時間、イヤじゃない?」

 

 よその国だとあんまりこういうことしないだろうし、と付け加えるミト。

 この国に住まう以上、実践を持った性教育は避けることが出来ない。

 その道理について、最初の性教育の時間に尋ねた時は、仕方ないことだと受け入れていたノアの心情を、ミトは再び慮る。

 先程の問答以降、どことなく、ぼんやりとしていたノアは、その彼女からの気遣いに、はっと気を取り戻したようにミトを見据えて、返答する。

 

「っうん、大丈夫。前より、慣れてきたから。

 ……それ、に……」

「それに?」

「えっ?……ぁ……」

 

 ノアはそう言い淀むと、先ほどまで見合わせあっていた顔を逸らして、押し黙ってしまう。

 けれど、その次の句を述べなくとも、気を許し、弛緩していた表情から一転して、真っ赤に熟れ上がった頬と顔色が、如実に応えていた。

 羞恥と、興奮と、好奇心とが混ざり合った、初心な反応。

 誰しもが覚え、そして成長するに連れ無くしていく、無垢な物だ。

 

「……そっか、うん。よかった」

 

 ミトは思わず、微笑ましい物を覚えると同時に、安堵した。

 

「ノア。またいっぱい、話聞かせてくれる?」

「……うん」

「ごめんね。時間来てるから、さ。

 ……それで、今日で、一段落着くわけだから」

 

 今までのように手を差し出すのではなく、身を委ねるようにして。

 手を広げて、ミトは伺った。

 

「…………女の子の体に慣れたかどうか、見せて?」

 

 それは触れ合う機会がなかったことで、女性に対して一切の免疫のなかったノアへの、最終試験。

 誘われなくとも、求められなくても、能動的に触れることが出来るのか。

 その一点に絞った実技でのテスト。

 

「…………っ」

 

 身体が強張るノア。

 緊張と照れと恥じらいが綯い交ぜになった面持ちをして。

 膝小僧に置かれていた握り拳に力が籠る。

 小さな沈黙の後に、再びノアは身を乗り出すと、膝立ちのままに互いの距離間を一気に詰めた。

 

「……お姉ちゃん」

 

 ぎこちなく、おっかなびっくりに、ノアはミトを抱き締める。

 背中に手を回してのハグ。力は殆ど入っていない。

 筋肉質というわけではない、少し不健康的な骨ばった体の感触をミトは覚える。

 

(ご飯、もっと食べて欲しいな……後で言おう)

 

 彼と彼女の身長差だと、ノアの頭がちょうどミトの鼻辺りに来る。

 彼の艶やかな青藍の髪からは、ほんのりと漂う皮脂と汗の臭いに、シャンプーが混ざりこんだ、純朴な男の子の匂いがした。

 

「っ、ん」

 

 徐にミトを見上げ、彼女の瞳の中で己を覗き込んで。

 ミトがノアの意図を把握した途端に、唇に軽い衝撃がやって来た。

 それは本当に一瞬触れ合うだけの、挨拶にもならない軽いキス。

 今の彼にとってはそれが精一杯であるが、最初期と比べれば大きな進歩である。

 ミトはノアの成長と順調な試験の成果に、思わず頬を緩めた。

 

「さいご、に……」

 

 ノアは、目を向けた先。

 それは、体操服の上からでも十二分に主張する、未だ発育途上のふくよかな膨らみ。

 ミトにはノアの頬の紅潮が、増したように見えた。

 覚える、既視感。

 

(好き、なんだろな)

 

 女になってからミトは、体にそういう視線が向けられると、よく分かるようになっていて。

 それによって、時折、ノアが己のおっぱいを見ていることを知っていた。

 自分のそれは大きい為に、魅力的な物に映るのだろう、と所感を抱いている。

 

(そんなにいいもんかな、これ……)

 

 しかし、それを抱えて過ごしている当人からすれば、日に日に肩の凝りが増していき、足元が見えにくくなり、無意味に男女と問わずの視線を集める。

 そういった不便を覚えるばかりで、特にメリットを感じたことがなかった。

 長く触れることで女性らしい快感を知ることも、今日に至るまでなく、脂肪の塊が胸についているだけ。

 それ以上でもそれ以下でもないと、ミトは断じていた。

 

「ふっ、はぁっ……」

 

 今までの彼の短い生涯の中での、最大の緊張状態。

 ノアは、深い呼吸をする。

 そうして、びくびくと、開いた両の手を器のようにして。

 ミトの双丘に、重ねた。

 

「んっ……」

 

 ほんのわずかに揉まれた感触を確かに感じたことで、これにて、試験はおしまい。

 成長と育まれた勇気を称えようと、口頭にて終わりを告げようとしていたミト。

 しかし、彼女は今、困惑の渦中にいた。

 

(あ、あれ……?)

 

 触れられた部分が甘痒くて、もどかしくて。

 ぞくぞくと、体の内側から込み上げてくる、波のように満ちる気持ちのいい痺れ。

 自身に生じている知らない出来事に内心混乱して、触れられて以降反応がないミト。

 そんな彼女の様子を、重ねるだけではまだ不合格、と受け取ったノアは。

 指にほんのわずかの力を込め、動かすことで、お姉ちゃんの体の感触を確かめていく。

 

「っ、は……っう……」

 

 脂肪が詰まった乳房に沈んでいく男の子の細く、無邪気な指。

 途端、口の端から零れ落ちる、吐息交じりの声。

 ミトは自分がそんな声を出したという事実を認めるのに、数瞬の間が必要だった。

 

「……お姉ちゃん。どきどき、してる……」

「ふ……ぁっ」

 

 そこを触っても、揉みしだいても、くすぐったいだけだったのに。

 今までのそれとは異なる、未知の感覚にミトは戸惑いを隠せない。

 触れられる度にやって来る、快感の波に、漏れ出そうになった悩ましい声をつぐもうとすれば、体に力が籠っていって、硬直していく。

 

(なんで、こんな声、出るんだ、ろ……)

 

 秘めた好奇心に誘われて、下乳から持ち上げるように、ふにふにと触れ合わせていくノア。

 聞き馴染みつつある普段の声より、一オクターブ高い、甲高い声が零れてしまうミト。

 いつの間にかに目を閉じていて、訪れる気持ちよさに集中しようとしていた。

 ただでさえうるさい心音が、視界を絶って鋭敏になった耳を打つ。 

 

(……このまま、触られちゃったら)

 

 知らない自分を見つけてしまいそうになることへの、怯え。

 もっと、と求めてしまう、自分の浅ましい姿が、脳裏に浮かんで。

 

(それは、…………だめ)

 

 ぽんぽんと、ノアの肩を叩いて。

 これ以上の行為を、ミトは制止する。

 はっと目が覚めたように、ノアは両手を引っ込めて、

 

「お、オッケー。いい、よ」

「ぁ……うん」

「……っよく、できたね。これなら、大丈夫」

「…………よかっ、た」

 

 これ以上この試験に時間をかけていたら、ノアを射精させる時間が無くなる。

 年長の性教育係として、担当を優先するべきという筋の通った理由という建前に。

 

 ────弱いところを見せたくない。

 ────あのまま昇り詰めるのが怖い。

 ────痴態を晒すのが恥ずかしい。

 

 そんな弱音と臆病を、隠した。

 

「じゃあ、ノア。その、さ」

 

 開いた視界、目下に映るノアの下腹部。

 傘を開いたように、大きく膨らんでいた。

 曖昧になった主導権を握り直す為、深く息を吸って吐いて、新鮮な酸素を取り込んで。

 ミトは意識を、切り替える。

 

「脱いで、くれる?」

 

 ぴくりと、ノアは肩を震わせた。

 これからするべきことを理解している以上、彼が狼狽えることはない。

 ただ、しばしの沈黙の末、口頭による返事ではなく。

 小さく、小さく頷いて。従う意思を見せた。

 

「……あ、あんまり、見ないで、ね……」

 

 緊張で震える手を制して、制服のズボンとパンツに指をかけると。

 少しずつ、膝までずり降ろして。

 興奮している自分の大事な部分を、お姉ちゃんの前に晒した。

 

「…………っ」

「ノア、恥ずかしがらなくて、いいんだよ」

「……うぅ」

 

 ミトの励ましを受けても、耳まで真っ赤にして、恥ずかしそうに腰を引いて、下腹部の隆起を縮こまらせようとするノア。

 けれど、それのたくましさは誤魔化せず、目の前のメスにアピールするように、脈打ってそそり立っていて。

 曰く、自分が優秀な雄であると、背伸びしてるかのように。

 

 同年代の男子の平均的なペニスのサイズから、大きく逸脱するほどではない。

 しかし、少なくとも、ミトが担当している4人の中で、一番サイズが抜きんでている。

 ミトが預かり知らぬうちに見せ合ったのか、本人としては、それを気にしているようだった。

 

「皮、剥ける?」

「……んっ、うん。できるように、した、から」

「偉い、ね」

 

 ノアは敏感な粘膜を保護するために、巾着の袋みたくすぼまっていた包皮をつまんで。

 くるまっていたそれを、剥き出しにさせた。

 

 太く腫れあがった、ミルクコーヒー色の肌の竿。

 淫水焼けどころか、まだ直接に触られたことのない、透き通るような桃色の先っぽ。

 根元で垂れ下がる、丸々とした陰嚢。

 

(ほんと、おっきいな……)

 

 かつての自分のそれを思い出しても、これほどではなかった。

 今となっては比べようがないが、敗北感を覚えたのか、羨望を覚えたのか。

 どうにも区別がつかない、曖昧で不思議な気分をミトは抱えていた。

 

「お、お姉ちゃん……」

「……あ、ごめんごめん。

 それじゃ……付ける感じ、見て、覚えてね。ノア」

「……う、んっ」

 

 耐え切れなくなったノアに促されて、封を切ったコンドームの口を先端に咥えさせようと近づくミト。

 初めての経験が故に、反射的に離れようとするノアの腰を、すぐさま抱いて。

 するすると、裸のままの肉棒に身に着けさせていく。

 

「ノア、痛くない?」

「……全然、平気」

 

 パチンと、音をさせて彼女が離れると。

 ノアのそれは、たちまち立派で、性的な装いに変わっていた。

 

「よかった。……それで、どうしよっか。1回、出さなきゃいけないから。

 手が、いい?」

「……え、と」

「他にしてほしいこと、ある?」

「っ…………」

 

 言葉を出すことすらも、恥じらいの極致にあると言わんばかりの口ごもり方をするノア。

 見かねたミトは、流石に自発的な要求はまだ難しいかと思い、助け舟を出そうとして。

 しかし、彼が発した次の句に、遮られた。

 

「────……お姉ちゃんの、……おっぱいが、いい……」

 

 明確に見せた積極性。けれど、このまま沈黙を保てば、引っ込めてしまうだろう気弱さ。

 消え入りそうな程に弱くか細い声とは裏腹に、ミトの乳房に強い目が向けられる。

 そんな、突き刺さる剥き出しの、性的な目線に。

 ミトは目を、丸くして────。

 

「…………いいよ。してあげる」

 

 ────どこか、嬉しくなっている自分を、自覚しながら。

 ミトはそのいじらしい要求を、受け入れた。

 

「ノア、寝転んで」

「……こ、う?」

「そうそう」

 

 膝立ちの状態から、背を倒してマットレスに体を沈めた。

 自ずと、コンドームに包まれた怒張が天井を指す。

 ミトはズボンから引っ張り出した体操服とシャツの裾を掴むと、するすると胸元まで持ち上げていく。

 程よく脂肪のついた腹が曝け出されて、いよいよ着衣が上半身にまで剥かれると。

 水色のジュニアブラに支えられた、女性たる象徴の、年齢に見合わない豊満な乳房が、姿を現した。

 

「…………っ」

 

 頭を持ち上げていたミトの様子を見ていたノアは、思わず目を逸らす。

 服越しに触れるのが精いっぱいの彼からすれば、余りに刺激が強すぎた。

 5、6時間目には、もっと過激なものを見ることになるのを、理解していてもだ。

 

(いける、よね……よし)

 

 ミトは両手にて、左右からぎゅうと胸を寄せる。

 そうすると、ノアのそれを挟んで収めるには、充分な谷間が出来ていた。

 そして、蒸れて熱の籠っているそこに、ローションを流し込む。

 冷たい粘液が肌を滴る感触は、慣れないものがある。

 ひやりとした寒気が、彼女の背筋を撫でた。

 

(ブラ、汚れるけど、これでいっか……んっ)

 

 十分な量を垂らし終えると、掻き混ぜるようにして両脇から胸を捏ねて、ローションを馴染ませる。

 ぐちゅぐちゅと、粘液の粒が潰れる音がして。

 これからの情事を想像させるそれに、ノアの陰茎は期待に何度も上向いて、ぴくぴくと脈動していた。

 

「……腰持ち上げて?……おっけ。

 ノア、その体勢辛くない?」

「……だいじょうぶ、だよっ」

 

 出来上がった蜜壺を抱えたミトは、仰向けのノアの臀部を自分の太ももに乗せて、下腹部を浮かせる。

 いよいよ、互いの準備が終わり。

 本題の時間が来た。

 

「…………入れる、ね?」

「はっ、は……う、うんっ……」

 

 ミトは自身の双胸の間にノアの亀頭を宛がうと、ゆっくり、降ろしていく。

 柔らかな肌の反発と、ブラで固定されていることによる挿入の抵抗と共に、ノアの男槍の形に谷間が押し広がっていって。

 毛の生えてない、つるつるとした根元まで、ずぷんと飲み込んだ。

 

「ひっ、んん……」

「冷たかった?ちょっと、我慢してね。

 すぐ、あったかく、なるから……」

「う……は、ぁ……っ」

 

 お姉ちゃんに包まれている。ノアが最初に覚えた感想はそれだった。

 手で触れた時よりももっと強く、ミトのその柔らかさと、両立する弾力を、手よりも敏感で大きなそこで、いっぱいに感じる。

 そして、突然の冷たさへの拒否反応も、ホカホカとしたミトの体温がすぐに無くしていって。

 満ちる多幸感。そしてそれ以上の、自慰よりも強い、溶けてしまいそうな気持ちよさに、ノアは言葉が出せなかった。

 

「いっぱい、声出していいからね。

 …………しょっ、と」

「あっ、…………っ!」

 

 ぐちゅり、とローションが潰れる音を皮切りに始まった、上下の往復での摩擦。

 根元まで沈んでいた、その豊かな質感と重量を感じられていたミトの巨乳が持ち上げられると、途端に腰が砕けそうな快感が、ノアを支配する。

 勝手に、がくがくと情けなく震えるノアの腰。

 それを宥めるかのように、陰茎が抜け切る寸前に、胸板に裏筋をぴったりと密着させると、ぱちゅんと、持ち上げていた下乳を腰に降ろして、ぶつけて、弾ませた。

 

「う、ぁっ……く、ふぅ……っふ……!」

 

 そうした数回の扱きを経て、ふとミトと目が合ったかと思えば、すぐに逸らして、腕で自分の目元を隠すノア。

 精通後の、初めてのお姉ちゃんとの前戯で、自分の恥部をここまで晒すことと、気持ちよくなって、恥ずかしい声を上げていることへの羞恥は、止まるところを知らない。

 けれど、それらを全てお姉ちゃんに許してもらっている安堵と、信頼に寄りかかる温かさが綯い交ぜになって、頭の中が滅茶苦茶にかき乱されていく。

 

(上手く、できてる、のかな……)

 

 ハミに勧められたのを切っ掛けに、パイズリの練習を多少はしていたが、存外に担当しているいつもの面々が要求してこなかったことで、実践は今日が初めてである。

 何でもないように了承したが、その実不安であったミト。

 しかし、そんな不安は杞憂だったと、ノアの様子から存分に感じ入って。

 奉仕に熱が、入る。 

 

────ぱちゅ、ぱちゅ、ぱちゅん。

 

 進んでは戻って、進んでは戻って。みっちりとブラの中に詰まった乳内を、肉棒が掻き分けて。

 淫猥な、肌がぶつかり合う水音を響かせる。

 ゆったりと、しかし確実な抽挿を繰り返し、丹念に、入念に。

 背伸びをしたがっているノアのそれに、甘い、甘い女体を覚えさせる。

 

 理性が勝っても、本能が勝ってしまうように。

 まだ知ってはいけない蜜の味に、溺れてしまうように。

 自分を見れば不意に、思い出してしまうように。

 

(…………火傷、しちゃいそう……)

 

 奉仕の最中、胸の中心で覚える男芯は、焼き付いてしまいそうなぐらい、熱くて、硬くて。

 それを弄ぶことに夢中になって、ミトの言葉数が減っていく。

 目の前で放たれる射精への期待に、焦がれて。

 どうしてそこまで熱中している自分がいることに、疑いをもつのすら忘れて。

 かつてはなかった女の象徴で、今はもうない男の象徴を扱いていく。

 

「っあ、んん……ん……っ!」

 

 口を堅く結んでも漏れ出る、声にならない声で鳴くノア。

 堪えようとして、逃げ出そうとしている両手の指の腹がマットレスを引っ掻く。

 どんどん乳圧が強くなっていくミトのパイズリ。

 コンドーム越しのカリに彼女の乳房が引っかかって、裏筋を撫でられて、また大きく鳴いた。

 

「っ、ふぁ……っぅ……!」

 

 堪えようとして、堪えようとして。

 でも悶えて、高くなっていくあどけない声。

 それをずっと耳にしている内に、きゅんと、疼いて、締め付けられて、切なくなって。

 去来する情動に駆られ、訳も分からぬまま、甘ったるい声でミトは尋ねる。

 

「気持ち、いい……?」

「ふぇ、は、……ん!ぅ、んっ!」

 

 喘ぎ交じりに、頷くノア。

 尋ねなくとも、その声と、目下にあるそれで分かっているのに、無意味なのに。

 直に聞きたい、言わせたい。

 そんな、本人も自覚していない昏い欲望の火が、ミトを焚きつけていて。

 オスを悦ばせていることに、満たされていく。

 もっと気持ちよくなって、と行為の激しさが増していく。

 

「────……ノア、ノアっ」

 

 ぎゅうぎゅうと、彼の分身を締め付けては、逃げ場を求めて持ち上がろうとするノアの腰に、双胸でのしかかって、快楽の逃げ場所を無くして。

 こねこねと、乳肉越しに揉み込んで、愛おしいノアの男の子の部分をたっぷり甘やかす。

 柔軟なミトの乳房が、雄の形を、よりはっきりと覚えていく。

 

「っあ、ふう……っ!あ、あっ……!」

 

 ノアの上ずった声。

 彼の陰茎の震えが、ひくつきが胸に伝播する。伝わってくる。

 射精は、もうすぐ。

 芽生えた予感にミトが、急いた様子で、乞う。

 

「いっぱい、出してっ。お姉ちゃんに、ノアのかっこいいところ、見せて……っ」

 

 ノアの肉棒が大きく、膨らんだ。

 ミトは咄嗟に乳房を強く閉じて、封じ込めようとして。

 滾りに滾った陰嚢の生殖本能が、昇り詰めたオーガズムが、谷間の内で爆発した。

 

「っや……、っ!あああっ────!」

 

────どぷっ♡どぷんっ♡びゅううう♡

 

「っ!は、はっ、ぁ…………」

 

 ぷるぷると固まった精液が尿道を押し広げて、鈴口から放たれて。

 乳内を穿ってしまうのではと錯覚する勢いで、精液だまりに注ぎ込まれていく。

 溜めていたことがよく分かる力強い放精を、ミトはたわわな乳房で感じ取って、精液を出す度に、跳ね上がっては痙攣するノアの腰を押さえつける。

 

────びゅうう♡びゅう♡

 

 満ち溢れていく、気持ちよくなった明確な印。

 止まらない、若く青臭く、精力に満ち満ちた、遺伝子の放流。

 手よりも近く、自分の胸元でそれは起きている。

 ひどく、ひどく間近で。

 

(すご、い……)

 

 根元から先端にかけて絞る様に愛撫を続けて。

 尿道に残らないように、残さないように、吐き出させていく。

 ノアのそれが跳ねることがなくなって、ミトが奉仕を止めた頃には。

 何十億もの精子の詰まった水風船は、上乳に乗っかる程に膨張していた。

 

「……ふっ、ふぅ……っがん、ばったね、ノア……」

「はぁー……はっ、ぁ……あ……」

 

 小さく呟いた労いの言葉。

 しかし、ノアは息を整えようとするのに必死で、聞こえていないようだった。

 発した当のミトも、返事を求めていなかった。

 自分も、そうだからだ。

 

「……ふ、ぅ……」

「……は、は…………んん……」

 

 荒れに荒れて、混じり合っていた二人の呼吸が落ち着いていく。

 けれど、情欲の坩堝の中に、浸かっていて。

 抜け出せなくて。

 

 互いに前戯の余韻から抜けきって、行動しようとするには、気付けのように鳴り響く、チャイムの鐘の音が必要だった。

 




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