※この作品はR-18です。

下級生の性教育係なTS娘ちゃんが受精するまでの1日   作:ゆきかお

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女の子の体で覚える性欲でおかしくなるTS娘は見てて幸せになれるので初投稿です。


昼休み(オナニー)

 

 日盛りの昼時が来た。

 陽が天頂に至り、午後の日陰を作ろうとゆっくりと傾こうとする濫觴で。

 1日の、折り返しの時間帯だ。

 

 方々に散らばっていた生徒たちが、校舎に一斉に集まって、にわかに騒がしくなっていく。

 授業から解放される、誰にとっても楽しみな時間。

 大人数で食卓を囲む給食という名の、歓談の時の幕が上がろうとしていた。

 

「…………はぁ」

 

 ただそれは、本棟から完全に隔絶され。

 給食時には使用しない別棟には、所以のない話だ。

 日陰に隠された、ひそやかなその場所は、今も尚、時流に置いて行かれたように。

 静謐が保たれていて、閑静だった。

 そして、ミトが使用する教室も同じように。

 

 寝倒れたまま4時間目の後始末を終えた、ミトは重い体を強引に起き上がらせると。

 膝から下を左右に開いて、尻をマットレスに付けて、座り込む。

 そして近くに寄せたランドセルの中から引き出した、袋に包まれた弁当箱を太ももに置いて。

 彼女は、弁当箱をじっと、眺める。

 

(……腹、へってんのかな、オレ)

 

 ミトは、今自分が空腹かどうかが、分からなかった。

 食欲を、空腹を訴える中枢が、麻痺しているように感じられて。

 偏に実感がないとしか、言えなかった。

 そうなっている原因は、明白だ。

 

(でも、な……)

 

 しかし、食事をとらなければ、これからの5、6時間目は体力が持たない。

 それにもし、実習の中で途端に空腹を覚えてしまえば、それに集中などできないだろう。

 そして、母親が作ってくれた弁当を食べないなんて、彼女にとってあり得ないことだ。

 母が悲しむ顔を、ミトは見たくない。

 

「……いただきます」

 

 誰に言うでもなく、隠しきれない疲労を乗せて呟いて。

 ミトは袋を解いて開いた、弁当箱の中身を一瞥する。

 食べる量が減ったミトに合わせて、量を少なく小柄にした分。

 から揚げ、ハンバーグ、ウィンナーなどの主菜の品目を増やした母謹製の弁当。

 彼女は、色味豊かなおかず達へ、取り出した箸を伸ばし、口へと運ぶ。

 

「ん……」

 

 口に入れたおかずを、もぐもぐと、軽く噛んで。

 仕切りを隔てて詰められた、小鞠のようなおにぎりの1つを箸でちぎり、おかずと共に味わう。

 いい具合の回数咀嚼できたら、飲み込み、また箸でおかずを拾い上げる。

 それを繰り返す、単純な反復作業。

 

(…………美味い、のに)

 

 腰が痛い。体が熱い。悶々とする。

 散発的で単発的な思考が脳裏の海に漂って、ぷかぷかと浮かんだまま沈むことがなく。

 ぐちゃぐちゃに散らかった思考は、一向に片付く気配を見せない。

 そんな状態であるから、全てが上の空。

 折角の母親の弁当の味も、どこまでも上滑ってしまう。

 

 そうやってミトが、黙々と機械のように食べ進めている内に、不意にかつん、と。

 すっかり空になった弁当箱の底に、箸が触れた。

 

「あっ、…………ごちそうさま、でした」

 

 その無為な音で、ようやくミトは弁当を完食したことに気づく。

 誰とも話すことのない給食時は、あまりに侘しい。

 食事への感謝を虚空に唱えて、袋に戻した弁当箱と箸をランドセルに戻すと。

 ミトは水筒の麦茶で喉を潤し、口内の余韻を洗い流して、息を次ぐ。

 淡々と食事を終えた彼女に待ち受けるのは、ひっそりとした空白の時間だ。

 

「…………」

 

 しんと、一瞬の食事の賑わいが消え去り、教室に気怠さと静けさが立ち込める。

 ミトは時計を見た。食事を開始した時より、まだ10分程しか時計の針は進んでいない。

 配膳や片付けの時間がなく、昼食後の掃除も放課後に行う為に。

 性教育係の女子の昼休みの時間というのは、大いに余りある。

 

 歯磨きや、これからの授業の予習及び再確認などの、細々とした必要な作業はあれど。

 どれも緊急性を要するわけでもなく。

 そもそも、精力的に活動しようとする余裕が、彼女にはなかった。

 

「はぁ、……ぅ……」

 

 ミトは、己の頬に手を当てた。

 覚えるのは、水はけで薄く伸ばしたような、汗の湿り気。

 頬も、手も、湯上りのように火照って、色づいている。

 

(ずっと、こうだ……)

 

 ミトはもう、目を逸らし続けることが、もう出来なくなっていて。

 彼女は真正面から、心ならず向き合う。

 うんざりとするぐらいに、分かっていること。

 2時間目の終わりから芽生え、今では根差している、それのこと。

 

(……興奮、してるんだ、オレ…………)

 

 自分の手で、少年たちの初心な性を思うがままにして。

 己を求めてくれるように、甘えさせて、快楽を与える。

 ひどく疚しく、淫らな行為に、どうしようもない劣情を、覚えてしまったから。

 興奮が、いつまで経っても、冷めやらない。

 内で点っている淫欲の火が、ずっと掻き消えることなく、あり続ける。

 

(なんで、今日になって……)

 

 つい数か月ほど前まで、男だった奴に相手させられるという、彼らへの申し訳なさは多分にあったけれど。

 彼らが、女になった自分の体で気持ちよくなり、いっぱいに喜んで。

 感謝を送ってくれることで、確かに自分は役に立てたのだと思える、純粋な嬉しさと。

 面倒ではあるが、性教育係の義務をこなした時の達成感は、ミトの内に確かにあった。

 

 だが、彼らが乱れる様に興奮を覚えるなんてことは、有り得なかった。

 性への興味が、元来薄いのもある。

 しかしそれ以上に、自分が今まで男だったからだ。

 この世に男として生を受け、日々を過ごす中で形成されていった、当然で、確かなアイデンティティが、揺らがなかったからである。

 

 しかし今は、そうではなくなっている。

 女性となってからのでもなく、男だった頃のでもない。

 知らない自分が、今ここにいる。

 

(…………どう、して、なんだろ)

 

 女体化症の発症者は、無意識の内に思考や感性が女性のそれに近づくことがままある、と。

 女になってから間もない頃に行われたカウンセリング時に、ミトは教えられた。

 それはおかしなことではなく、変に気にしないように、とも。

 けれど、ここまでに急激で、唐突な変化は、おかしい。

 

 現状に対する解決の糸口になることを願うという、現実逃避の理由を付けて。

 突然の変化の要因を辿ろうとすれば。

 それらしい物は、すぐに見つかった。

 ずっと頭の片隅にあった、目覚めて直ぐに突き付けられた、特別な体調。

 

(……排卵日、だから……?)

 

 生理前、即ち排卵日前後に、ムラムラすることがある。

 女子だけの授業でやったか、人づてに聞いたか。

 とにかくうろ覚えの浅い情報が、ミトの朦朧とした脳裏に過り。

 彼女は、自身の現状と、排卵日を結びつける。

 

 そうすれば、男の頃のままの頭が望んでいなくても。

 コンドームなんていう必要で、邪魔なものをなくして。

 赤ちゃんがデキることを、したがっているから。

 完全に女性となった肉体に、頭が引っ張られているのだと、整然とした回答が出て。

 この発情も、理解が出来る。

 けれど、それはあまりに突然に過ぎているから────。

 

「────う、ぁ……っ」

 

 必死に理性的であろうとして、ミトは堂々巡りになろうとも、思慮を巡らせていたが。

 堪えようのない欲求に、掻き消されて、どうにもならなくなった。

 じりじりとした蕩けた火の熱に当てられて、下腹部が、むずむずと疼いて。

 鋭い腰痛と共に、それとはもっと別の、甘い痒みが、ミトの体の神経を侵していた。

 そしてその得体のしれない腰痛も、いやに痛みが鋭くなっている気がして。

 いよいよ、ミトは平常であろうとすることに、限界を感じていた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 誰もいない虚無の時間が、ミトを苛む。無為に座っていることすら、今は辛い。

 色気を伴った押し殺した声が、淫猥な熱に満ちた吐息と共に、空気を掠めていく。

 反射的に、ミトは自分を抱きすくめた。

 どうにも寂しくて、たまらない。

 

 昼休みに入らない限り、誰も訪れることはないと分かっているから。

 何かをしていないと、もう耐えられない所まで、劣情が脳を虐げているから。

 このまま座して待っているのは、おかしくなってしまいそうだった。 

 

(…………ぁ)

 

 込み上げた色情に塗りつぶされ。

 桃色に染め上げられたミトの脳裏にあったのは。

 現状の打開、または解決方法。

 

 ミトは、この状態の鎮め方を、知っていた。

 溜まりに溜まった性衝動を、発散する方法を、彼女は知っていた。

 

 それは、机上で学んだっきりの、行為。

 女の子の体の、使い方。

 自分にとって縁のない、意味のないと、思い込んでいた。

 快感を求めることで、切なさを誤魔化す、憂いへの慰め。

 

(…………)

 

 手で自分の体を抱いたまま、ミトはただ呆けていた。

 考えが纏まったかと思えば途端に解ける、蕩けた自分の内の世界で。

 ここではないどこかを、見つめては、何を思うでもなく、呆然とする。

 

 そうやってしばし、無我に揺蕩っていた彼女は。

 ふと、ある懸念を抱き、灰色に曇っていた目に、色を取り戻した。

 

(…………カメラ)

 

 ミトは背後の黒板の粉受に設置した、小型カメラを虚ろな眼差しで見つめた。

 その小さく無機質な瞳は赤裸々に、画角の中央にいる少女の来し方行く末を、映し続けている。

 これから、行うことも、全て。

 

 ミトは、ふらふらと立ち上がると、マットレスを撮影し続けているカメラに映らないように。

 部屋の隅というレンズの死角へ、夢遊病の遊行に似た、危うい歩みで向かう。

 

「ぁ、ん…………」

 

 隅にたどり着き、億劫な歩行が終わった。

 たどり着いた隅の壁を背に、内股な足の膝を折って、ずり落ちるようにミトは座り込む。

 クーラーの冷気を浴びた、ひんやりと冷たい壁という拠り所に、体を落ち着けさせて。

 深く息を吐いて、吸う。

 うっそりとした陰の空気を、肺いっぱいに染み込ませる。

 

「っ、あ……っ……」

 

 言葉にならない、未熟な声を零すミト。

 瞼が垂れ下がり、潤みつつあることで、輪郭がぼやけた曖昧な視界。

 その中に映る、力なく放り投げられた、己のしなやかな手。

 それに触れられたら、どれほど気持ちがいいのだろう。

 

 ぎゅうと、ミトはそれに力を入れて。

 自分を慰める為に、動かそうとして────。

 

(────や、まってっ…………まってよ。

 …………する、の……?)

 

 いつの間にかに、迎え入れようとした己を顧みて。

 殆ど無意識の内に、全てを進ませようとしていたことに。

 誰でもない、自分自身にミトは当惑した。

 

(…………でも、でもさ)

 

 しかし、今になって制止したところで、もうどうしようもないことを。

 ミト自身が、よく分かっている。今の自分にはこれしか、ない、と。

 だから、これから彼女がするのは。

 正当性で自分を塗り固める、意味のない言い訳づくり。

 

 ────初めてだから、少し、怖い。

 皆がご飯食べてる中で、こんなこと、してもいいのかな。

 でも、今は誰もいなくて。受け入れてくれるかどうかなんて、不安がることなんてなくて。

 恥じらう必要もなくて。

 それに、身体に振り回されるのが嫌なら、早く受け入れた方が楽。

 このままの状態だと、5、6時間目がどうなってしまうのか分からない。

 集中できなくて、皆に心配されて、あまつさえ嫌われでもしたら、やだ。絶対にやだ。

 それなら、ここで、さっさとすっきりした方がいいでしょ。

 男だった頃も、女な今も。

 そういうことに乗り気じゃなかったのは、気持ちよくなったことがなかったからで。

 けど今だったら、多分、皆が夢中になる理由が分かる気がする。

 ハミが言ってたのも、こういうことなのかな。

 だから、だから────。

 

(……したい。…………しなきゃ)

 

 嵐の渦中にあるような、滅茶苦茶で脈絡なく思考が繋がる頭の中で。

 どれだけの建設的な建前と、訳を並べても。

 ミトを確かに進ませたのは。

 今日という短い日の中で芽生えつつあった、性への、好奇心だった。

 

「…………っ」

 

 ミトは、体操着の上着を内のシャツごと捲って。

 顔を俯かせ、自身の肉体を見下ろした。

 青い血管が通った、女性らしい自身の部分が、即座に視界に入った。

 女体というのは、成長と発育の度合いが、男の頃よりもすぐに分かる。

 

 彼女の虹彩に焼き付く、雄を誘う為に、ここまでになった。

 媚態に満ちた、自分(わたし)の体。

 

(…………うるさい、うるさい……っ)

 

 制止しているのか、鼓舞しているのか。

 座り込んでから、身体が揺れるぐらいに力強くやかましく鳴る、心臓の鼓動。

 どんどん、と鼓膜を打ち付けてくるそれは、己の有様を示しつけてくるかのようで。

 自分の内から聞こえてくる物に栓は出来ず、彼女はただただ晒され続ける。

 

「…………ふぅ、ふぅ……っ」

 

 五指を開いた両手を、自身の胸部へと持っていこうとするミト。

 胸に触れてきたことはいくらでもあり。

 3時間目には谷間に陰茎を挟んで扱くという、卑猥な使い方をした。

 

 なのに、今乳房に向かおうとするその動きは、緊張に震えていて、覚束ない。

 それは、ミトの生来のものである、性への忌避感が焼き付いた理性が。

 1度始めてしまえば、これからの全てが変わってしまう、と。

 この期に及んで、警鐘を鳴らしているからだ。

 

 未知が既知に変わり、今日に至るまで選択にも上がらなかった行為が。

 この選択を持って、ふとしたどこかで現れるようになる。

 寂しくなった時や、退屈になった時。

 誰かを想って、切なくなった時に。

 

「っ、く…………」

 

 脳の理性はそう叫んでも、体の本能はいじらしくミトに呼びかけている。

 まだ大人ではなく、されど子供ではなくなりつつある、自分の体。

 さみしい、さみしいとミトに訴えては、刹那的な刺激を、求めている。

 人肌が恋しいと、飢えている、と。

 

 理性と本能。それらは、天秤にかけるまでもなく。

 今のこの状況において、選ぶものはもう1つしか、なくて。

 

 ミトは、鍵盤に指を乗せるような、たおやかな手つきで。

 そっと脇から、指と乳房を、触れ合わせた。

 

「……ぁ……っ」

 

 日常の動作の延長として、無造作に触れるでもなく。

 前戯の道具として、扱うのではない。

 ただ、気持ちよくなりたい。

 そういう意図を持った、繊細なタッチに、びくびくと、彼女の体が震え、怯える。

 

 ミトは女体の快感の度合いを知らない。どうすればより高まるのかを、深く知らない。

 だから彼女は、ノアに触れられた時を想起する。

 あの時の、何かが高まっていく感覚を、再現しようとして。

 彼の手つきを思い出して、触れていく。

 

「……はっ……ぅ、ん……」

 

 細心の力で揉む、羽でくすぐるような、フェザータッチ。

 愛撫と呼ぶにはあまりに可愛らしく、恥じらいが多分に現れた児戯。

 だがそれでも、感度が高まったミトの肉体は悦びを覚え。

 満ちていく悦楽を、震えとして表現する。

 

(…………うわ、かってに、うごくっ……)

 

 もじもじと、何もしていないのに変に腰がくねって。

 内ももが、意識せずとも勝手に擦りあって、無為に体から汗が吹く。

 額に浮かんだ汗に捕らわれて、じとりと張り付いて煩わしい前髪を、手の甲で払った。

 片方の手の温もりが胸から離れていってしまったミトは、急激に切なくなって。

 また直に、空いた片手を魅惑的な乳房に引き寄せた。

 すっかりと、胸部の体温に馴染んでいく片手の感触に、情欲が込み上げる。

 

(…………した、から……)

 

 横乳を鳴らすように触れていた両手を、今度は下乳に持っていって。

 ブラジャーが支えている胸の重みを、両手で持ち上げ、肩代わりする。

 手の平に覚える、確かな重量。

 肩が凝るだけの、煩わしいとだけ思っていた、その脂肪の重さすら。

 今はひどく、いやらしく思えた。

 

「ふ、ぅ……っ……」

 

 少しの力を込めれば、ブラ越しに肌のハリという反発を返しながらも。

 細指が容易く、発育の良いたわわに沈み込んだ。

 しっとりと汗ばむそれを、小さく、優しく揉んでみれば、蠱惑的に弾む感触を返し。

 いくらでも素直に、曲げた指に従って形を変え、鈍い快感をミトに送る。

 彼女は己の手の内で、淫猥なおもちゃを童の如く弄ぶことに、夢中になっていく。

 

「んっ、んぅ………」

 

 按摩に、ゆったりと乳房が上下する。無軌道にまさぐる手に、激しい心音が伝う。

 その手つきは徐々に上ずって、胸を手で覆い被せていく形になっていき。

 自ずと、手の平が、乳房の中心へと向かう。

 手のひらで中心の、ブラジャーの裏地に押し込められている、明らかに固くなっていると分かるそれを、掠めるように撫でた。

 

「ひっ……ぁ……!」

 

 生まれた、じわりと波打つ、初めての艶めかしい快感。

 それは、ほんの一瞬足元にまで寄って、足首を浚ったかと思えば、立ち所に引いて行った。

 薄い余韻を残す、全身に広がっていた気持ちよさに、体が惹かれ、心が焦がれて。

 ミトはその穏やかな波濤を、追いかける。

 

「んっ、ぅ……ふぁ」

 

 すりすり、と手が円を描いて、乳肉を撫でまわせば。

 浅い谷間が掻き寄せられて、双胸がぶつかり弾んで、また離れていく。

 手の内で押し広げられている中心部分がより固くなる。

 蒸れて溜まっていた谷間の汗の粒が潰れて、自分の体臭が強まったのをミトは感じた。

 

(きもち、いい……)

 

 波に身を浚われ続けるのが、たまらなく心地がいいから。

 知ろうともしなかった、自身の性感帯を探して、ミトはぞくぞくと身を震わせ、官能に耽溺する。

 無知だった彼女の脳が、女としての快楽の手綱の一端を掴みつつあった。

 性的興奮が、募っていく。積み重なって、溜まる一方だ。

 

「んん……ふぅぅ………っ」

 

 ふと、いけないことをしている、と。

 そんな、誰にでもない、普遍的な常識に対して、後ろめたさを抱いた罪悪感と。

 それに裏打ちされた、薄暗い背徳感が、ミトのうなじを撫でた。

 彼女はそれを勿論、承知の上で行っている。

 けれど、それに対して開き直れるほど、ミトは強くなくて。

 

 彼女は、潤みつつある瞳に、瞼という暗幕を被せ。

 自分の痴態から、目を瞑って背けた。

 

(こんな、とこ、見せらんないっ……)

 

 表情筋が弛緩しつつあるみっともない顔と、だらしなく快感に打ちのめされている体。

 姿見に移さなくとも分かるそれが、今の自分。

 皆に、自分を慕ってくれる皆に、こんな自身の姿を晒したくないと、ミトは頻りに思う。

 どう見られるか、分からないから。

 けれど、そう、思うほどに。

 

 晒してしまったらどうなるのか、と。

 侵入思考が、不意を突いて彼女の脳内に去来する。

 

(は、……いやっ、なに、かんがえて……っ)

 

 反射的に遠ざけようとして、考えないようにすればするほど。

 その誘惑は断ち切れないものになっていって。

 頭の中が、そればかりになる。

 

「んっ、ぁ……っ!」

 

 いつものような、年長者としての振る舞いなんて、忘れて。

 目の前に吊り下げられた、甘い甘いニンジンが欲しくて。

 盛りのついた雌犬のように、己の体に媚びる、ひどい有り様の、自分。

 

 ────もし、見せたら。

 こんな、見せたくもない、姿を。

 見せてしまったのなら────。

 

(…………どうなっちゃうん、だろ)

 

 その許可を皮切りに、ついさっきまで、昼までに覚えていた。

 男の子の部分の感触が、触感が、まざまざと、生々しく蘇って。

 無意識の内に封じていた、己にとって都合のいい想像と、妄想の断片が連続して、過る。

 

(っ、あ……だめ……だめっ……)

 

 ────自身の痴態を見て、情欲に駆られ、陰茎を膨らませた皆に、迫られて。

 何もできなくて、組み伏せられる、男の子らしい力。

 必死に、一途に、性欲をぶつける皆の、愛らしく、かっこいい表情。

 漏れてしまうのを堪えられず、快感に歪んで、求めてくれる声。

 

 そうして、昇りつめた絶頂の末に。

 いっぱいに注がれ、彼らの子種に、満たされる、自分の胎。

 ただ、彼らに目一杯に愛される。

 自分の、幸せそうな、様相────。

 

「────…………っ」

 

 脳を焼く恍惚に、ぞくぞくと身震いをするミト。

 ちかちかと、暗闇に閉ざされた彼女の視界の上で、何かが微かに瞬いた。

 浅く軽い、脳イキを覚えたミトは、自分を触る手つきに。

 自身の強い願望と情念を、籠め出して。

 マスターベーションに、一層熱中していく。

 

(…………した、いっ…………され、たい……っ)

 

 あまりに端的なそれは、言葉にできなくて。したくなくて。

 もっと、もっと、と浅ましく媚びるミトは、自身の胸をまさぐり続けていた右手を。

 へそより下の、丹田に当てた。

 

「っう、うぅ……っ」

 

 甲高く囀っていた声音を一段低くして、獣じみて呻くミト。

 今日まで胡乱げに感じていた、その存在を。

 今となってははっきりと、彼女は感じ取れていた。

 

 男の頃には、存在しなかった器官。

 受け入れた雄の種を、宿す場所。

 胎児の安寧たる、揺り篭。

 子宮の存在を。

 

「ふっ、く……ううぅ……」

 

 切なく疼くそこを抑えても、その疼きは深まるばかりで、何の解消も出来ない。

 背にした壁から、ずり落ちそうになりながら。

 徐々に快楽だけを求める、だらしなく崩れた姿勢にミトはなっていた。

 彼女はより深い自己愛撫に、耽り出そうとして。

 下腹部に押し当てていた手を滑らせて、太ももの間に忍ばせた。

 

「はぁーっ、はぁぁ…………」

 

 強く高まる、緊張と興奮に、息が上がってきた。

 だらしなく開かれた足の、付け根に挟まれているのは、ミトの大事な場所。

 手のひらで包むように、忍ばせた手で触れると、ブルマ越しにでも、そこは生暖かかった。

 

 蛇が伝うかのように、自身の手をブルマの内側に艶めかしく這入りこませる。

 触れようとすることへの躊躇はもう、なかった。

 侵入した指が、自ずと内のショーツの布地の上に、被さる。

 すると、ぐじゅりと、粘っこく、水気のある感触がした。

 

(……ぁ……)

 

 一瞬、漏らしてしまっているのでないかと、勘違いしてしまいそうなぐらいに。

 ミトの体温に馴染んで、ほかほかと熱が籠っていたそこは、生ぬるく湿っていた。

 その原因は、内のショーツに秘されている、女の子の穴から染み出てしまった、多大な興奮の証なのが、明白で。

 ブルマの厚ぼったい布地にまで、それは染み込もうとしている。

 

(……こんなに……)

 

 自身の身体に起きた初めての現象を俯瞰するミト。

 平静の彼女がそれを見たのなら、大きな狼狽があっただろう。

 しかし、快楽で高ぶった神経と脳が、どこか他人事のように現実を受け取らせていた。

 

「……っ」

 

 じっとりとした湿度に満ちて。

 ずっと刺激を与えられず、じくじくともどかしい股の中心。

 ショーツの生地に張り付いて浮かぶ、ぴったりと閉じられている、1本の筋。

 ミトは、おずおずと、その筋を指の腹でやんわり、引っ掻いた。

 

「────あっ……ぅ、んん…………っ!」

 

 内からの水気で恥部に張り付いていたことで、布地越しの、愛撫が直接的に伝わって。

 びくんと、ミトの体が大きく震える。四肢と背筋が一気に緊張し、硬直する。

 胸を揉んだ時の、じんわりと甘ったるい不定形の波がやってくる、気持ちよさとは違う。

 電撃のように痺れる、はっきりと定まった快感が、脳に到達する。

 

「っ、っう…………」

 

 ただ、胸から生じる鈍い快楽に慣れ親しんでいたミトには、あまりに強烈で。

 彼女にはまだ、それを許容できず、身を固くしていた。

 折り切った瞼の裏で、ミトは目を白黒とさせる。

 

(もっと、ゆっくり……っ)

 

 豊かな胸部を、やらしく揉みしだきながら。

 幼気で無垢を表す、一本筋の周りをくすぐるように、指を這わせて。

 じっくりと、秘部から生じる快美な刺激に、頭を馴らしていく。

 

「あっ……や……ん、んぅ……!」

 

 もぞもぞと、ブルマを内から隆起させている右手が、猥褻に蠢く。

 触れる時間が長くなる度に、ショーツの湿り気が増して、布地が敏感な肌と擦れ合う。

 ミトの幼い声音を淫情に染めた、青い嬌声が。

 冷房の風が淑やかに凪ぐ音に混じりこんでいった。

 

「……うぁ……あ、んっ…………!」

 

 ────不意に、きぃんと、遠くの空から響く。

 高く高く飛んだ、空気の波を立てて泳ぐ飛行機の回遊音が、ミトの耳に届く。

 

 その音は、外の、普段通りに回っている世界を。

 帰依すべき表の日常が、すぐ隣にあることを思い知らせる。

 ありふれた日々への郷愁に溢れた快音。

 

「……ん……そこっ、やぁ……っ!」

 

 だが、そうやって教示された、隣接している明るく開けた世界に、目もくれようとせず。

 閉じこもった自分だけの世界で、退廃的に自分を慰めるミト。

 必死に絶頂を求めようとして、甘い声を漏らし、いじらしく快感を享受する。

 その姿は、彼女が元男だったということを、一切に感じさせない。

 

 仕草も、声も、纏う空気も。

 少年のそれとは、程遠い。

 性の目覚めの最中にいる、初心らしい思春期の、女の子だった。

 

「……っはぁ、はあ…………もっとっ……」

 

 くるくると、指を回して、幾分か経った頃。

 秘部への刺激に慣れてきたと、所感を反芻するミト。

 ごくりと、彼女の喉が鳴る。

 1度は引き戻した指をまた、最初に進めたように。

 その動きを再現しようとした、その矢先。

 

────キンコンカンコン。

 頭上のスピーカーから、鐘の音を模した電子音が、けたたましく鳴った。

 

「っ!……あ……ぁ、ぅ……」

 

 まるで先ほどまでの行為を咎められたように錯覚した、ミトの心臓が大きく跳ね上がり。

 冷や水を浴びせられたかのように、淫熱にのぼせていた脳が冷静にさせられた。

 盛んだった手の躍動が、自ずと止まり、しんと静まり返る。

 強引に、幸せな夢から醒めさせられた。

 そんな、喪失感を覚えるミト。

 

 無機質に鳴ったその鐘の音が示す所は、食事を終えてからの丸々30分を費やしても。

 自慰行為の、終着点。

 または、到達点に行きつくまでには、全然に時間が足りなかったということ。

 ミトが取った、じわりじわりと高めて、達しようとする緩慢な方法では、必然だった。

 

「ふ、ぅ…………ぁ……」

 

 体はいつまでも、ミトの自己愛を欲している。

 特に子宮が、痛いぐらいに、きゅうきゅうと痙攣していた。

 ミトの手がこれからの5、6時間目に生じる義務と責任。

 そしてそれ以上に大きな、自慰の誘惑の間で彷徨う。

 ゆらゆら。隙間風に晒された、蠟燭の灯火のように、か細く不安げに揺れて。

 

「……っ、あぁっ!」

 

 開いていた手をぎゅうと硬く結んで。

 ミトは己の太ももに、握り拳を叩き込んだ。

 応急処置にもならない、その場凌ぎの乱暴な取り繕い。

 だが、ずんと響く痛みが、彼女の正気を引き戻した。

 

「……こんな、ことしたって、意味ない。

 ないっ、ないんだから…………」

 

 まだ欲しがっている自分に言い聞かせようと。

 泣き出してしまいそうな声で、酸っぱい葡萄に倣ったように。

 彼女は虚空に、後悔と未練を吐き捨てた。

 

「…………動かなきゃ」

 

 ここからは自分だけの時間じゃない、と。

 淫蕩な夢現の中に浸っていた己を、堅固な義務感と使命感で引きずり上げるミト。

 大きく息を吐いて、体内の熱をどうにか吐き出そうとした。

 気休めにもならないのは、散々に分かっていて。

 

「歯磨き、しないと……。

 …………トイレ、も」

 

 よろよろと、立ち上がったミトは、ダンボールから、簡易的な歯ブラシセットを引っ張り出す。

 そうして、発情した雌の、艶めいたフェロモンを、撒き散らしながら、

 鋭敏となった感覚に反して、どこまでも鈍化した意識が置いて行かれたことによる、現実味が希薄した白昼夢のような心地の中。

 それだけははっきりとしている、湿ったショーツが粘つく不快さを覚えながら。

 覚束ない足取りで、外の廊下にある水道まで、向かい出そうとする。

 

「はーっ、はぁ……っ」

 

 ひどく長く感じられる、道程の最中。

 外聞を取り繕うとする余裕がないぐらいに、追い詰められているミトは。

 ずきずきとした、腰の痛みがなくなっていることに、気づいていなかった。

 

 午前の内の彼女を悩ませ続けていた、腰痛の正体。

 それは、卵胞が卵子を排出させる為に生じる、排卵痛。

 その痛みが無くなったということは、彼女の胎内にはもう。

 未熟で、新鮮で、初めての卵子が、産み落とされていた。

 

 本人の、理性的であらんとする意思に関係することなく。

 精子を受け入れる準備を、赤ちゃんを作る準備を、ミトの身体は、整えていて。

 生殖の期待に焦がれて、ただ密やかに。

 若くて、優秀な番の種を、待ちわびていた。

 




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