30分後……。
俺達4人は待ち合わせ場所で梓ちゃんを待っていた。しかし……。
可怪しい、何故来ない? もう集合時間はとっくに過ぎてるぞ?。
俺は自分の腕時計と何度もにらめっこを繰り返した、が、結果は同じ。約束の時間を大幅にオーバーしていた。
「なんか彼女遅くね? 人身事故とかあったっけ?」
とサザンが怪訝な表情で聞いてきた。
「確かに遅いね。ちょっと電話してみるよ」
俺はすぐさまケータイを取り出し彼女にかけてみた。しかしプルルルルッと数回電子音がなったが一向に出る気配がない。
ちょっと心配になってきたぞ、もし事故になんて会ってたら大変だ。
「俺ちょっとその辺見てくるよ、みんなはここで待ってて」
俺はケータイをポケットに突っ込むと駆け出そうとする。
だがそんな俺の肩を逞しい腕がガシッと掴んできた。
「ちょっと待つタイ。俺らも手伝うタイ、一人で探すより4人で探したほうが良いタイね」
見上げると次藤くんが笑いながら親指を立てていた。
「そうだぞ大。緊急事態なら尚更協力しなきゃ。急いでみんなで散らばって探すぞ」
「おうっ! 待ってろ梓ちゃんこの俺が今すぐ助け出してやるぜっ!!」
「みんなありがとう」
俺が礼を言うと三人は頷きそれぞれの方向に散開して駆け出していった。やっぱりこういう時は頼りになるよな、友達ってのは。
「っとこうしちゃいられない。俺も探しに行かなきゃ!」
俺はしみじみと友情の良さをひとしきり実感すると、足に力を込め駆け出していったのだった。
それから更に一五分後……とうとう梓ちゃんを見つけたとの連絡を受けた。「大、彼女を見つけたぞ!! だが少し不味いことになってる。急いで来てくれっ!」」
「何だよ不味いことって!」
「良いから早く来いってっ!! ああ、やばいこのままじゃ……」
「だから何だって……ってもしもしっ?! くそっ!!」
プツッと切れてしまったケータイを睨みながら俺は悪態をついた。一体何が起こったのか気になるが、今は取り敢えず急いで現場に駆けつけるしか無い!。
それから更に5分後……。
「大! こっちこっち!」
声のする方を見るとヒデが大通りの端でこちらを手招きしていた。
「ヒデ! それに次藤くん、サザンも来たのか」
「ああ、すぐ来てくれって連絡があったもんでな。ダッシュで駆けつけたんだが……」
サザンは頬をかきながら気まずそうにしている。
「どうも行きづらい状態みたいタイ」
次藤くんも二の足を踏んでる状態でモソモソとしていた。
「一体何だってんだよ……」
俺は逸る気持ちを抑えつつそ~っと路地裏を覗き込んだ。するとそこには……。
「だからぁ~君、今暇なんでしょ? 良いじゃんちょっとお茶するくらい」
「そうそう、ちょっとお話するだけだしさ。別に変なことしないって……」
俺達4人はとある路地裏にて彼女を発見した。
梓ちゃんはチャラそうな二人組の男達と一緒に、壁にもたれ掛かった状態で談笑していた。
「本当に~? 何もしないって約束できる?」
「しないしない! したこともない」
「そうそう。俺達見た通り健全な青年ですよ~」
男たちはだらし無く鼻を伸ばした顔で梓ちゃんの胸を凝視しながら適当なことを言っていた。
どうやらチャラ男の二人組が梓ちゃんをナンパしているようだ。軽薄そうな男たちが馴れ馴れしく梓ちゃんの肩に手を乗せ、ジロジロと彼女の肢体を舐めるように見ていた。
「え~でも~これからあず、先輩たちと遊ぶ約束あるんですよ~」
梓ちゃんは梓ちゃんで気楽そうに男たちと話していた。どうも嫌がってるようには見えないが……。
ったく何やってんだよ梓ちゃん、約束すっぽかしてこんな所で。
「お、おい大っ!」
ヒデがなにか言っていたようだがその時の俺は頭に血が上り、我慢ならなくなってしまっていた。そんな俺はむかっ腹を抑えつつドスドスと靴音を鳴らしながら彼らの前まで足を進める。
「梓ちゃん? もう集合時間とっくに過ぎてるけど何やってるの?」
極力怒りを抑えて少し注意する感じで俺は彼女に声をかけた。
「あ、先輩!! どうしてここに? まだ集合時間じゃ無いっすよね?」
するとびっくりした梓ちゃんが驚いたようにこちらを振り返った。
「集合時間なんてとっくに過ぎてるよ。もう、みんな心配してたんだぞ! ほらさっさと行くよ」
俺は不機嫌な気持ちを隠すこともせずその場を強引に立ち去ろうとした。ところが……。
「ちょっとちょっとお兄さん。な~に俺らのこと無視してんの? ていうか誰あんた?」
チャラ男その1が俺の前に通せんぼする形で立ち塞がってきた。そのチャラ男は背が高くちょうど俺を見下ろすようにして睨んでくる。
するともう一人の男も俺達の背後を取るように壁に手を付きながらヘラヘラと笑い出した。
「へへっ! もしかしてコイツが君の言ってた先輩? ふーん何か弱そうだね~」
「全くこんな奴の何処が良いんだか。こんなもやし野郎放っといて俺らと遊ぼうぜ~。こんな喧嘩も弱そうなガキなんてどうでもいいっしょ」
チャラ男達は吹けば飛ぶような見た目の俺を見下しながら笑い出した。ああ、コレはやばいことになりそうだ。……主にこのチャラ男たちが。
「ていうか~もうここでボコっちゃわねえ? 俺らの怖さ知ったらこの先輩さんも聞き分け良くなるっしょ」
「違えねぇ。こんなショボいガキンチョさっさとシメて遊び行くか」
笑いながら俺の襟元を掴もうと手を伸ばすチャラ男。しかし、突如としてその男は目の前から姿を消した。
「「えっ!?」」
思わずハモってしまう俺ともう一人のチャラ男の声、二人で消えた背の高いチャラ男をキョロキョロと探す。
「いでっ、痛ででででっぇ!!! てめぇっ! 何しやがんだっ!」
背の高いチャラ男は梓ちゃんに腕を取られた状態でうつ伏せにされていた。俺を掴もうとしていた手は頭上に上げられた状態で完全に関節がキマっている。
男は脂汗をかきながら必死に目だけを梓ちゃんに向けて呻いている。その目の色は先程までの余裕を無くし、完全に恐怖に染まってしまっていた。
「あのさ~、な~にあずの彼氏に手出してんの? 誰が許可したわけ? ねえねえねえねえ」
梓ちゃんは底冷えのする声で言うと膝で男の肩関節辺りをグリグリと痛ぶり出した。何時もの悪戯っ子の顔はすっかり鳴りを済まし、江乃死魔時代によく見たサディストフェイスを覗かせていた。
「それに先輩のことを散々罵ってくれちゃって。あず、本気で頭にきちゃった」
そう言うや否や梓ちゃんは背の高い男の肩に乗せていた膝に思いっきり力を込める。
「アガァァあああああああっ!!!!」
ボキリと嫌な音を立てて男の肩は梓ちゃんのほっそりした足によって粉砕される。まるで映画かゲームのような場面だがコレは現実である。
「お、おい! お前らこんな事してタダで済むとおもうのか?!」
背後からの声に振り向くともう一人のチャラ男がへっぴり腰になりながらこちらを指差していた。よく見ると彼の膝はガクガクと震えていて今にも漏らしそうになっている。
「それって、タタでは済まさないってことっすか? 報復は怖いっすね~。じゃあ今のうちに口も利け無いくらいに関節を壊しちゃいましょうか」
「ヒ、ヒィィィィイイイ!!」
まだ無事な方のチャラ男は梓ちゃんがこちらを向いた途端、金切り声を上げた後あっけなく気絶してしまった。
しかし知ってか知らずか、チャラ男が気絶してるのにもお構いなく梓ちゃんはにこにこ笑いつつ近づいていく。ま、まずい! 流石にそろそろ止めないとマジでチャラ男が死ぬ!。
「はいストーップ!! そこまで! 梓ちゃんいくら何でもやりすぎだよ。見なよ、この人達。怖すぎて泡吹いちゃってるよ」
俺が指差すとそこでようやく彼女も気づいたのか目をパチクリとさせた。
「あれ? もう終わりっすか? 根性ない奴らっすね~。関節の一つや二つ壊されても向かってくるくらい気概が無いもんスかね~」
俺が間に入ったことで梓ちゃんはさっきまでの険悪な気配が無くなり、俺もようやくホッとした。マジで止めなかったら死者が出そうだったからな。
俺自身も久しぶりにキレた彼女を見たせいで心臓がバクバクしてしまったよ。
「はぁ、全く心配して来てみればタダのナンパだったのか。てっきり事故にでも会ったのかと思ったよ……」
俺はすっかり疲れてしまい膝に手を付いた。なんか今日だけで寿命が一気に減った気がする。
「全く大げさだなぁ先輩は。それに、今回みたいな面倒なナンパなんて何度もありますよ? もっと強引に迫られたこともあったし」
「ご、強引にって……それって……」
俺はドキリとし、思わず彼女の顔を凝視してしまう。
「ん? 聞きたいっすか~? ふふっ。……先輩、今めっちゃ興奮してるっしょ」
俺は急に彼女に顔を近づけられ耳元でそんな言葉をかけられてしまい、魔法にかかったように動けなくなってしまう。
「大丈夫っすよ。そういう奴らは全員今日みたいに”躾”をしてやったら皆居なくなりましたから」
「躾って梓ちゃん……」
「おーいっ! 大丈夫か?!」
とその時今まで遠巻きに見ていた三人組がやって来た。ドタドタとつんのめる様に慌てた様子で走ってくる。
「あちゃー。見られちゃったか~、どう言い訳しよう」
梓ちゃんはそう言うと面倒臭そうに顔をしかめるのだった。