「今日の授業はここまで。期末テストに向けてお前らも勉強頑張れよ。特に松田ぁ!! お前また赤点取ったらご家族に来てもらうからなっ!!」
「ひぃっ!! すんません! 何卒家族を呼ぶのだけはご勘弁をっ!!」
最後に社会科の授業を経てこの日の学校は終わった。
「さて、帰るかね。みんなこれからカラオケでも行こうぜ」
「そうタイね。久しぶりに僕の演歌でも聞かせてやるタイ」
ヒデと次藤くんはお互いに席を立ち早速カラオケに行くようだった。
俺も鞄を持ち、下校する事を梓ちゃんにメールで知らせる。
「ちょ、チョット待ってくれよ。俺の勉強に付き合ってくれって! 今度赤点取ったら俺は破滅するっ!」
サザンがヒデの腕に縋り付き涙目で訴えかけた。こうならないように普段から勉強すればいいのに。
「嫌だ。俺は今日は遊ぶって決めてるんだよ。ここのところ勉強勉強でやっと試験が終わったってのにまた勉強するのか? 俺は今日息抜きしたいんだ!」
ヒデは鬱陶しそうにしながら断固として勉強をしないと宣言した。
次藤くんも二人のそばで腕組をしながらウンウンと頷く。
彼も普段は勉強を全くやらない質だが今回はどうやら本気でやったらしく赤点は免れたようだ。
「まさか次藤くんも赤点回避したのかっ?! いつもエロいことばかり考えてて勉強そっちのけの男が?!」
サザンは驚愕の表情で次藤くんを見た。余程信じられなかったのだろう、実際俺も今回の彼の成績を見て自分の目を疑った。
彼の成績はいつも下から数えたほうが良いくらい酷かったのに。
「ふんっ。悔しかったら僕みたいに勉強を始めるタイ。勉強ができないと彼女が出来た時馬鹿にされるぞ?」
「ぐっ、確かに……」
サザンは悔しそうに唇を一文字に結んだ。仕方ないだろう、今回は勉強しなかった彼が悪かっただけ。
これを機に少しは勉強してくれると俺らも助かるのだが……。
と、その時。
♪~~~。
ポケットの中の俺のスマホが着信を知らせた。え~と何々?。
「梓ちゃんか」
俺のその一言にそこに居た3人組がビクッと反応する。
着信は彼女からだった。いつもの可愛らしい猫のスタンプを使って今日これから暇ですか?と聞いてきた。
あっちもどうやら学校が終わったらしい。
「彼女からメール?」
ヒデが俺の所に来ながら聞いてきた。
「そう。今学校終わったからこっちに来るって」
「そうタイ?! じゃあこれから彼女を入れて4人でカラオケ行くタイ?」
次藤くんがやや興奮しながら聞いてくる。大きな熊のような体をそわそわと落ち着きなくさせながらこちらに近づいて来た。
まあ、やっぱ一緒に遊びたがるよね。
「うーん。一緒に遊べるかは彼女次第だけど……」
俺は妙な不安を覚え、言葉を濁す。なんだろう、最近多いなこういう気持ちの揺れ。
「大丈夫タイ。俺らちゃんと大人しくしてるタイ。ただ彼女とちょっとだけ一緒に遊びたいだけタイ」
是非にと次藤くんが懇願してくる。
「ちょっと、俺、俺も行くって! 何みんなでカラオケ行く流れになってるんだよ!? 俺を除け者にするなぁっ!」
「ち、五月蝿いタイね。お前は次に赤点取らないように勉強するタイ」
ガヤガヤと言い争う二人。俺とヒデはそれを遠巻きに見ていた。
まあ、いつもの事だしな。こう見えてこの二人が俺たち4人組の中で一番相性が良かったりする。
「はは、まあ取り敢えず彼女を待とうか。大もいいよな?」
「うん」
俺は二人の喧嘩を眺めながら梓ちゃんを暫く待つのだった。
~梓side~
「ふうやっと終わった! 長かったなぁ、大体なんでこんな面倒くさいことしないといけないんだろう?」
私はついさっきまで教師に頼まれて学校のプリントを職員室に運んでいた。
なんでもクラス委員が今日は体調が悪くて休んでいたとかで居なかったらしい。
はぁ~、本当に面倒。そもそもギャルの私にこんな仕事任せるなっーつーの。
「さーてとこれでやっと帰れる。早く先輩のところに行かなくちゃ。帰りにどこに寄って遊ぼうかなぁ」
私はこれからの楽しい時間のことを考えながら玄関でローファーを履き、校舎を出ていく。
「もう夕方かぁ。早く夏休みにならないかな~。そうすれば先輩ともっと遊べるのに」
日が落ち、もうすぐ夕焼けに差し掛かろうとする商店街の街並みを私はルンルン気分で通って行く。
「おやおや、お嬢さん、これからどちらに行かれるんだい?」
いい気持ちで歩いていたら突然横から声をかけられた。自慢じゃないけど私は可愛い。すごく可愛いし胸だって大きい。だから普段からナンパにはよく会うんだけど……。
「お婆ちゃん、誰?」
今日あったのは若いチャラ男じゃなくて腰の曲がった小さなお婆ちゃんだった。
よく見ると小さい椅子に座り、小さなテーブルとその上に綺麗な水晶を乗せていて小さな店らしきものを構えていた。
「もしかして、占い? ごめんね。私ちょっと急いでるからまたね」
私はそう言って走り出そうとするが……。
「ちょっとお待ち。そう急がなくてもいいだろう? ちょっと見ていってやるからここにお座り」
ちょいちょいと手で座れの合図を送るお婆ちゃん。
うーん、急いでるんだけどなぁ。
有無を言わさない態度のお婆ちゃんに私はたじろいでしまった。
「大丈夫だよ心配しなさんな。初見さんはタダだ」
「タダ!?」
タダかぁ。タダなら良いか。
「本当にタダなのお婆ちゃん?。後でやっぱ金取りますとかは無しだよ?」
私は渋々言いながら用意された椅子に座った。
「はぁ~。金金って……最近の若い子は金に五月蝿いねぇ。そんなんじゃ将来台無しだよ? もっと広い目で物事を見なくちゃ」
お婆ちゃんはため息交じりで説教を始めた。あー、こりゃ長くなるパターンだ。
じれったく感じた私は口を挟んだ。
「もう、そんなことよりさっさと占い始めてよ。私さっきも言った通り時間が無いんだよ」
「っとそうじゃった。どうも歳を取ると説教臭くなってしまって……。さてと、それじゃあ始めるかいのう」
お婆ちゃんはそう言うと両手を水晶の上に掲げて何やら念仏のようなささやき声を出し始めた。
最初は蚊の鳴くようなか細い声だった呪文が段々と大きくなっていき、静かに動かしていた両手も次第に大きい弧を描く様な動きをするようになっていった。
私は初めての占いというのもあって見入ってしまった。テレビで見るよりも迫力がある。
でも所詮はインチキなんだよねぇ。そう思うとどうしても好きになれないんだよな~。友達はみんな占いが好きらしいけど何が良いんだろう?。
「むむむっ! 見えてきた、見えてきたぞ! お主の未来が見える!」
私がそんな感想を抱いているとお婆ちゃんが大きな声でそう宣言した。目をカッと見開き皺くちゃな手を勢いよくバッと上に掲げるお婆ちゃん
。
「見える、見えるぞーい。お主……付き合ってる男が居るな?」
「な? なんでそれを!?」
絶対インチキだと思ってたけれど、まさか本当に当ててくるなんて。いや、待て待て。ただの当てずっぽうの可能性もあるかも。
「その男の名前は長谷 大。見た目普通の大人しい青年じゃな」
「!?」
マジ?……。この人、本物?。
「そ、そうです! 何で? お婆ちゃんに彼氏の話なんて一切してないのにっ」
「ふっふっふ。わしをその辺のペテン師と同じと思ってたじゃろ? わしは正真正銘、本物の占い師じゃよ」
お婆ちゃんは得意気に胸を張って私に言う。確かに、この人は本物かもしれない。名前まで当てられる占い師なんて私知らないし
「お、お願いします、教えて下さい。私達二人の未来がいい方向に向かうにはどうすれば?!」
「ふーむ。しかしのう? お主らは現在上手くやっておるじゃろ?。これ以上何を求めるんじゃ?」
お婆ちゃんは首を傾げながらそう尋ねる。
「確かに。私達は今はラブラブで学校も違うのに毎日登下校をするくらい愛し合ってます。この前なんて先輩の家で3回もHしました」
「おお、おお。お盛んなこって。若いねぇ」
お婆ちゃんは私のノロケ話にも嫌な顔せずニコニコと聞いてくれた。この人聞き上手だな。
「でも……なんだか最近先輩の様子が変なんです。私と一緒に居るといつもドキドキしてくれるんだけど。うーん、なんていうか心ここにあらずの瞬間があるというか」
今日の登校の時もそうだ。朝の時間で人が多い時にイチャイチャし過ぎたかもしれないけどそれにしたってソワソワしすぎだった。
「ふーむ。仕様がない、もうちょっと見てやるかね。言っておくけど本当なら追加料金頂くんだからね?」
「ありがとう! お婆ちゃん」
私は素直にお礼を言った。
こんな機会もう無いかもしれない。なんとしても今日、先輩との明るい未来を手にしなくては。
お婆ちゃんは咳払いを一つするともう一度水晶に手をかざした。
「うーむむむむ……」
先程と同じ様に両手をぐるぐると回し唸りだすお婆ちゃん。
それから数十秒ほどたった後さっきと同じ様にパッと目を見開く。
「見えた、見えたぞい!」
「どう? どんな感じ?」
私は流行る気持ちを抑えながらお婆ちゃんに聞いた。すると……。
「なるほど、こりゃあ……。ほぉほぉ。ふーむ、難儀なものだね」
お婆ちゃんはまた目を閉じると未来視をしてるのか独り言を言い始めた。ブツブツと天を仰ぎながら何やら言葉を吟味しているようだ。
「ちょっとお婆ちゃん! 何が見えたの? 私達の未来は!?」
とうとう私は気持ちを抑えられずテーブルに乗り出し大声で尋ねてしまう。
通行人が何事かと足を止め私達を見るが私は今それどころじゃない。
「ふぅ……。落ち着きなさいお嬢さん。ちゃんと説明するから」
私は焦る気持ちを抑え、お婆ちゃんの話を聞くのだった。