~大side~
梓ちゃんからのメール後、30分程が経った。
今日は何故か梓ちゃんが少しばかり遅れてる。いつもだったら5分もしないうちに飛んでくるのに。
「遅いな。道に迷ったのかな?」
心配になった俺はふとそんな言葉を口に出した。
「そんな慌てる時間じゃないだろ? まだ30分しか経ってないじゃないか。新幹線じゃ有るまいし、そんな早く来れるはずないだろ?」
「いやぁ……それが彼女の場合特殊というか。普通の人間の物差しで測れないんだよね~」
俺たちがそんな話をしていたその時、一陣の風が吹いた。
俺達三人は何が起こったのか理解できず、周りをキョロキョロと見回すと
一人の女の子がそこに居た。
「いや~遅れてすいません。チョッと道がこんでいたんで建物の屋上とか走っていたらけっこう遅れちゃいました。てへっ」
そこに居たのは俺の彼女の梓ちゃんその人だった。
よほど急いでいたのか彼女は全身を汗でびっしょりとぬらしその大きな胸にも汗がたきの様に流れていた。
豊満な胸が汗に濡れた制眠を押し上げただでさえ人目を引くダイナマイトボディがより強調されてしまっている。
俺達はいきなり現れた災害級の美女を前にしばしぼうぜんとしていた。
「あれ~? 先パイ。どうしたんすか?」
彼女は不思議そうにしながら俺の近くまで寄って来るとネコの様な大きな目をくりくりさせながら俺の顔をのぞきこむ。
見る角度の関係上梓ちゃんの胸がパッチリ見えてしまっている。
「っと、梓ちゃん危ないじゃないかこんなダッシュで来て! 人身事故を起こしたらどうするんだ!」
俺は赤面した顔をごまかす様にややオーバーリアクションで注意した。
「もうそんな怒らないで下さいよ。せっかくあずが一生懸命飛ばして来たっていうのに~」
梓ちゃんは俺に注意されたのが不服だったのかほっぺをふくらませて拗ねてしまった。
「って言うかそんなに急いで来なくても良かったのに。ケガとかしたらどうするんだよ」
そうだ。いくら元江及死魔幹部とはいえ車なんかに轢かれたら大変だ。強いと言っても所詮は女の子。高速で走る鉄の塊には勝てないのだから。
「ひっどーい先パイあずとそんなに会いたくなかったの? あずはこんなにも先パイを思っているって言うのに」
俺に突き離されたと思ったのか梓ちゃんは雨にぬれた猫の様にしょげ返ってしまった。
「ちっ違うよ梓ちゃん! 俺は万が一君がケガでもするんじゃないかと心配で。ほらもうこの時間は車もたくさん走ってるし」
分かっている。これは梓ちゃんがいつも使っている常套句だ。彼女は俺に責められるとこうやって可愛そうアピールをしてくる。正直卑怯だ。
でも可愛いから許しちゃうんだよなぁ。
「おい大。そんな所で乳繰り合ってないで俺たちにも紹介してくれよ」
遠巻きに見ていたヒデがそんな事を言いながら俺たちの所に来た。
「分かった分かった。梓ちゃん、こいつらが俺といつも一緒につるんでる人達でヒデ、サザン、次藤くんって言う」
俺は彼女の背を軽く押しながら紹介する。
「始めまして。乾梓って言います。大先輩の彼女っす、よろしくお願いしまーす」
梓ちゃんは元気に挨拶するとお辞儀をした。
「うお……。あ、ああよろしく、俺はヒデ。大と名前が似てるけど俺のほうが成績は優秀なんだぜ」
ヒデは自分のほうが頭が良いアピールをしつつ目線を泳がせていた。何かに気づいて驚いたようだが何だろう?。
「どうしたんだヒデ? 何か焦ってるみたいだけど」
「い、いや何でもない。おいお前らもこっち来て挨拶しろ」
ヒデは何かを誤魔化すようにしながら向こうに居た二人を呼んだ。
「うぉおお。その娘が大の彼女か! よろしく、俺はサザン。こう見えて昔は結構ワルだったんだぜ」
お決まりのセリフを言いつつ手を差し出すサザン。おいおい、それじゃあ少しでも美少女と触れ合いたいと言うスケベ心が丸出しだよ。
梓ちゃんはその辺身持ちが硬いから握手なんてしない。この時俺はそう思っていたんだけど……。
「乾梓っす。よろしくお願いしまーす」
梓ちゃんは嫌な顔せず初対面の男の手を握りだした。
「うひょぅ! こ、これが女の子の手か。柔らかくてしっとり汗ばんでて……」
なんて感想を漏らしてるサザン。差し出した右手をぷるぷるさせながら感動の涙まで流している。どれだけ女性に飢えてるんだよ。
「ただの握手だけでそんなに嬉しいんですか? ならもっとニギニギしてあげますね!」
梓ちゃんはそう言うと握っていた手をキュッキュッと締めていく。突然の行動にサザンも俺もビックリしてしまう。
「にぎにぎ、にぎにぎ~」
「ちょっ、これっ、凄っ!! はぁはぁ……」
梓ちゃんは面白がってサザンの手をひたすら握りだしサザンは右手を伸ばした状態で顔を真っ赤にしながらプルプルと震えている。
「……」
当の本人たちが握手で遊んでいる中、俺は一人蚊帳の外だった。
しかし、何だろう? また妙な興奮を覚えてしまっている。いつも街の男達に彼女が嫌らしい目で見られていた時のアレだ。
「おいおい、そろそろ僕にも紹介してくれタイ。お前ばかりずるいぞサザン」
遠くで見ていた次藤くんが焦らされたのかノシノシと大きな体を揺らしてやって来た。
「ほら、さっさと退くタイ」
ぐいっと大きな体で呆けているサザンを押しのけ梓ちゃんの前に現れた次藤くん。小さな梓ちゃんと比較すると親子ほどの体格差だ。
「こんにちは。僕の名は次藤 比良戸。みんなからは次藤と呼ばれてるタイ。」
梓ちゃんに合わせて体を前のめりにして右手を差し出す次藤くん。
「よろしくっす。いや~大きいっすね~」
そう言いながら梓ちゃんは次藤くんの手を握った。白魚のような真っ白で小さい手の梓ちゃんと比較すると次藤くんのはまるで熊のような巨大さだ。
「そ、そんな事無いタイ。君の方こそ……すごく、大きいタイ。……ゴクッ」
次藤くんは前のめりの姿勢のまま一点を凝視していた。その視線の先を追うと……。
「? どうしました?」
梓ちゃんは不思議そうな顔で俺の顔を見ていた。もしかして気付いていないのか?。
梓ちゃんはついさっき向こうの学校から走って来た。この暑さだ、当然下着が透けるくらい汗だくになってしまっている。ブラジャーもスケスケで色や形まで丸わかりになっているだろう。
その様子を次藤くんがじっくりと舐めるように見ているのだ。彼は自分の顔が暑さとは別の原因で赤ら顔になっている事にも気付いていないようで、鼻息荒く夢中になってしまっていた。
「ふぅ、ふぅ。ごくっ……す、凄いタイ……」
俺はまた例の変な動機を感じながらも何故かそれを咎めようとはしなかった。
「? 変な先輩」
梓ちゃんは知ってか知らずか次藤くんに胸を凝視されながらも握手を続けるのだった。