性癖をシェア出来れば幸いです。
「事実は小説よりも奇なり」という慣用句があるが、そういった事象は得てして創作の中に限るものだと考えていた。
非日常を夢想すれど、現実で享受するのはその対極にあるような平々凡々の毎日。
そんな日々に少しのスパイスを。
狐になりたいな、なんて祈りながら眠りについた。
△△
朝、目が覚めると耳と尻尾が生えてること、あると思います。
鏡に映る自分を見てみると、天に向かってピンと立つ立派な耳、熟した稲穂みたいな綺麗な黄金色の尻尾。
そこには昨夜までの一般男性の姿はなく、何処へ出しても愛されるような可愛らしい狐娘があるだけだった。
お目目はくりっとして、それでいて顔立ちが整っていて、二次創作なら間違いなく薄い本が描かれるだろう、そんな容姿をしていた。
突然の出来事に理解が追いつかず、きっと夢を見ているのだろうと考え、自分の身体をまさぐってみることにした。
かつて生えていた人の耳は見る影もなくなり、いまやこのふわっふわのお耳が自らの聴覚を司る器官のようである。
気になったので、耳に手をおそるおそる触れてみることにした。
「……? ……?? ……!」
どうやら耳は感度が高いようで、現に少し指で撫でてあげれば、それに呼応するようにピルピルと揺れ動く。
あまり意識していなかったが、耳はある程度自在に動かせるようで、耳の根元辺りの筋肉を意識してみると色んな表情を見せてくれる。
お、これが俗に言うイカ耳か、なんて思っていると、耳と連動して自然と尻尾が揺れ動いていたことに気がつく。
耳はいざ知らず、以前までは実際に尻尾が自分に生えるとは考えもしなかった。
背骨に沿って、背中の辺りを下へなぞっていくと、おそらく尾てい骨の辺りからこのもふもふツヤツヤ尻尾が延びている事を理解する。
幼い頃、実家でお迎えした猫様の尻尾を暇さえあれば観察していたが、あの細長い尻尾に骨が通っているのは不思議だな、なんて思っていた。いざ自分に生えてみると、なかなかどうして、芯が一本あるとこんなにも安定感があるんだな、なんて感心した。
この魔性の尻尾はジャンボサイズで、抱き枕にできる程度には質量と長さがあった。
大切なものを愛おしむように、もちっとした小さい手の腹でゆっくり撫でていく。質感はシルクのようで、サラッとしているのにしっとりと艶があって、枕には事欠かないな、と思った。
狐のチャームポイントである、尻尾の先端辺りで稲穂色と白色が対比するかのように割かたれているあのコントラスト、見事に再現されており、夢の中にも関わらず、非常に造詣が細かいことに満足感を覚える。
せっかくなので尻尾を抱き枕にしてみようと思い立ち、試行錯誤の末股下から尻尾を通し、少し丸まるようにしてその感触を味わうことにした。
先の所感と同様に、やはり肌触りが頭ひとつ抜けて気持ち良いな、と感じる。窓から零れる朝日を受けて、尻尾からはお日様の暖かい温もりと匂いを感じ取ることが出来る。すぅ、と尻尾に鼻先を当てて一嗅ぎ。鼻先を通る陽向の香りは何にも替えられない尊さがある。
ふと、訪れる睡魔に身を委ね、一眠りすることに決める。なかなか貴重な体験ができて楽しかったな、もうすぐ夢が終わる……。
△△
どのくらいの時間が立ったのだろう、微睡みながら体を起こす。
未だにお天道様は顔を出しているので、それほど時間は経っていないと思うのだが、なんて思考しつつ、少し汗をかいてしまっているようなので、水分補給をしようとベットから降り立とうと試みる。
立ち上がったところでふと違和感を感じ、後ろを振り返ってみるとユラユラと揺れ動く先程の尻尾の姿があるばかりであった。
「………………???」
また夢の中なのだろうか、疑問に思ったので頬をつねってみるが、痛みが帰ってくるので、もしかするとこれは現実なのではないか、と数瞬の間を置いて考えに到る。
それなりにネット小説を読んでいた経験が相まって、自分が本来の自分ではなくなった場合の将来を想像してしまう。
さもすれば、貴重な被検体として何処かの研究機関に収容されてしまうのではないか、嫌なイメージから冷や汗が流れる。
大慌てで財布を鞄からひっくり返し、免許証を確認すると、そこには先程鏡に映っていた狐っ娘が虚無顔で写真に写っていた。
ふぅ、と一先ず身の上の安全性は担保されたのではないか、と深呼吸をして心を落ち着かせる。
その後貴重品や通帳明細等を確認してみたが、容姿が変わる以前と何ら違いはなかった。であるならば、変わったのは自分の姿形だけであると
思い至り、改めて鏡を覗き込む。
もちもちの丸い頬っぺた、白く透き通った柔肌、少し困り気味のまろ眉、少し口を広げれば生態系の上位層に位置する生物の証左である八重歯が見受けられた。
控えめに言って自分の性癖にピンポイントで当てはまる狐っ娘であった。いや、そもそもこの狐っ娘は自分自身であるのだから、どちゃシコじゃね……? 、とすぐさま考え、少し遊んでみることにした。
目を広げると鏡の中の少女はシャンデリアのように数多のハイライトを宿し、眉を釣り上げ困った顔をしてみるとそれだけでご飯3杯は軽くいけるようなあざと可愛くて泣かせたくなるような見事なご尊顔が、そこにはあった。
え、なにこれ、えっっっっろ。自分のニーズを自分で供給出来るとか無敵か? 永久機関完成しちゃったわ。
あまりの驚愕の事実に思わず破顔すると、鏡の向こうの姫君もにへら、と笑い返してくる。
は??? ムラムラするんだが?????
4話が少しアウトかもしれなかったのでR18タグ設定したのですが、併せてR18のお話、ここの小説で書いてもよろしいでしょうか?
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大丈夫
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別のタイトルでやって欲しい