翌日、泥のような眠りから覚めた後、少し倦怠感を覚える。眠気覚ましに顔を洗おうと洗面台に立つと、目をシパシパさせた美少女が1人。相変わらず顔面偏差値高いな。顔端整だし、もしかしてハーバード狙えるのでは、なんて考える。
かつては夢にまで見た、同居系のじゃロリ狐っ娘のロールプレイ、今なら出来るのではと思い立ち、自身の双眸を見つめる。
「わ……わし……のじゃ……うぇへ……」
少し気分が舞い上がって、気味の悪い表情と声を漏らすが、もはやそれすらも絵になる。流石に口が砂糖で溶けるような甘ったるい台詞は恥ずかしくて言えないが、自身が思い描く同居系のじゃロリ狐っ娘の一人称や語尾、雰囲気等々になりきれて非常に気分が良くなった。
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それはさておき、昨日からこの身に起きている不可思議な現象は一体何なのか。
幸いにも、先週末から大型連休に突入しており、当面の間外出を強いられない事に安堵する。突如として、自身に降りかかった摩訶不思議な出来事に困惑しつつも、現在の状態について情報を集める事が兎にも角にも急務であった。
少しでも実験動物にされる可能性がある以上、不要な外出を避けるに限る。一先ずネットサーフィンがてら、この不思議な現象についてサーチをかけることにする。キーワードは何だろう、無難に'獣人化'とかで良いのだろうか。
しかし、流れてくるのは百科事典の説明やネット小説のURLばかり。どの内容も共通して現実には起こりえない現象として取り上げているだけだった。テレビを見ても映るのは人・人・人ばかりで、まるで自分が社会から孤立したような感覚を覚える。まだ断定するには早いが、やはり自身のみに起きた現象であると考えた方が無難ではありそうだ。そうなると、やはり気になるのは他人の反応。ただの変な人と捉えられる分にはまだ良いものの、下手をすると今後の人生は被検体まっしぐらである。何か妙案は無いものか、と思考を巡らせること1分半。中々にリスクが低く、かつ1体1で対話をする手段を思いつく。早速スマホを手に取り、作業を進めて行った。
トゥルルン、トゥルルンと住まいのインターホンが鳴る。心構えは出来ていたはずなのだが、反射的に両耳がぴーんと姿勢を正す。急いで受話器を取り上げ、来訪者を確認する。
「どうもー、ABピザですー」
先程注文したピザが無事届いたようで、すぐさまアパートのオートロックを解除する。先程の妙案とはまさに、自身が異物であるのかどうかデリバリーの人に確認してもらおうというものである。お店からの使者が顧客に対してあまり強い態度で出るのは難しいという、顧客側の立場を利用させてもらう試みであるのだが、少し心苦しい……。しかし他に良さそうな手段もパッと思いつかないので、申し訳ないという気持ちを片隅に置きつつ、ドアをおそるおそる開ける。
「あ、○○様ですね。ご注文の照り焼きピザの方、お届けに参りました」
「あ、はい……。ありがとうございます……」
普段面と向かって人と話す機会が少ないせいで、コミュ力クソ雑魚みたいな応対をしてしまったが、取り敢えず第1関門は突破である。現金での支払いを選択したので、後は精算して印象を聞くだけ……と思っていたのも束の間。財布から出てきたのはしわくちゃになった野口であった。更に申し訳ない気持ちになりつつも無事支払いを終え、後は聞くだけ、聞くだけなのに今になって'あれ、これどんな風に聞けばいいんだろう??? 'とか事前にデモンストレーションを行わなかった弊害が突如として舞い降りる。そして血迷った挙句、「わ、わし……どうじゃ……?」等と以前までの自分なら決して口にする事は無いであろう典型的なのじゃロリ狐っ娘を彷彿とさせるロールプレイングを行うに至った。もしかしたら、かつてより同居系のじゃロリ狐っ娘になりたかった願望でもあったのだろうか。混乱に陥った挙句、縋りついたのは同居系のじゃロリ狐っ娘とは、我ながら見上げたものである。
まぁ、そんな訳の分からない言葉足らずな声掛けをしたところで……ほら、やっぱりデリバリーのお兄さん困惑気味の表情浮かべながら首を傾げてるじゃん。収まりの付かなくなった時、何故か思考が急にクリアになって、まるで時間が引き伸ばされたかのように次々に考えが脳裏を過っていく感覚に苛まれる。えー……やっぱりもっとデモンストレーションしとくべきだったかも、とかそもこんなクソ雑魚みたいなコミュ力でよく生きてきたな、みたいな。
延々と思考が鳴り止まぬ中、静寂を切り裂いたのはデリバリーのお兄さんからだった。
「どう……と言われましても、至って普通としか……」
「……ふへ?」
「えぇ、普通ですが。それが何か?」
「み、耳とか生えとるが……」
「普通の人ならまぁ……」
「しっぽも生えとるし……ほら、ここの尾てい骨の辺り……」
「まぁ……個性的ですが……」
「顔立ちもハーバード目指せるくらい整っとるじゃろ……?」
「は、はぁ……」
どうもこのお兄さんによれば少し変わってはいるものの、突拍子もないくらいに人と異なっている認識では無いらしい。なるほど、これは嬉しい誤算だった。耳とかしっぽも誤差の範囲内で収まってそうだし、これなら裏路地の影に身を潜めながら外出する必要は無い気がする。うーん、やはり妙案じゃったか。天才か??? (天下無双)
「て、てことはじゃが……わしはマッドサイエンティストの被検体にならなくてもいいんじゃな……?」
「何だこの人……(ま、まぁそうなんじゃないですか?)」
「え……?」
「あ……ン゛ン……」
何はともあれ、そうであるならば話は早い。念の為市役所に行ったり、大学の学生支援チームに行って書類や証明写真等に不備がないかどうか確認するだけである。両方とも自宅からかなり距離があるので、体を慣らす意味でも大型連休明けに向かおうと思う。
「では、失礼します」
「あ、すみません。長い時間……」
「いえ、それでは」
デリバリーのお兄さんは足早に立ち去って行った。先程の続きだが、出先で手続きをするにあたって本人確認書類等が必要になるのだが、それは昨日この狐っ娘の姿形をした写真に置き換わっていたのでおそらく問題は無いはず。と、するならば、さしあたっての問題は服がないことくらいか………………服がない!!!!!!
現在クローゼットに閉まってある服は全て一般成人男性の体型を基準に制作されたもので、推定身長140cmくらい? の狐っ娘の体型にジャストフィットする服などひとつもない。プラスアルファ、何故かこの身体は五感が鋭敏になっており、ダボダボの服なんか着た日にはくすぐったくてたまらない。実際、先のデリバリーの件もダボダボのパーカーを着て応対していたので、もしかするとお兄さんから変な子を見るような目で見られていたかもしれない。これらを鑑み、やはり先ずは服を買うことを念頭に置いた方が良いかもしれない。なるほど、当面の目標が決まったようで、浮ついていた気分も少し落ち着いてきた。流石にこの格好で外出すると警察とかのお世話になりそうなので、一先ず某ショッピングサイトで適当な服を見繕うことにした。あ、そうか、インナーも身長しないといけないのか。尻尾がちゃんと出そうなやつを選ばなければ……
△△
「で、ジャストフィットしたのはこの巫女コスだけ……か」
ネットだと服のサイズとかようわからん!!! (憤怒) このご尊顔に似合うような服を、とあれこれ選んだは良いものの、サイズが大きかったり大きすぎたりで、結局身の丈にあった服は'せっかくなら巫女服に扮した狐っ娘見たいよね'と一時のテンションで郵送されたこの巫女服であった。見たい欲が強すぎてこのタイプでサイズが大きい巫女服があと2着、カラバリでサイズが大きい巫女服が1着クローゼットの中に収納されることになりました。将来に期待。
「ゑ……まじでこの格好で行くんか……?」
衣装鏡には、それはそれは可愛らしい同居系巫女服のじゃロリ狐っ娘の姿が写っており、巫女服に(熟考の末)ハサミで無理やり開けた尻尾穴からは金色の稲のような色合いをした立派なお尻尾が、少しへにょっと折れているふさふさのお耳からは元気無さげな様子が見て取れます。
同居系巫女服のじゃロリ狐になりたい願望は持ち合わせても、あくまで常識人としての理性と倫理観を持ち合わせている自身にとって、自宅で楽しむならまだしも、外に出て周りに見せつけ変な目で見られることは何よりも避けたかった。しかし、逆に考えるとこの可愛らしさを社会にお裾分け出来るのであれば、それはある意味社会貢献に繋がるのではないかとも思った。(おめ目グルグル)
「しかし、大型連休が終わるのはもう今日で最後じゃし……今更服を注文したところで、か……」
選択肢はもはやないようなもので、この服を着て外出するのはもはや避けられようのない事であった。今期の大学の授業は既に3回ほど休んでいて後はなし。今から服を頼んでも明日の講義に出れなくては意味が無いし……そう考えるとやることは決まったようなものである。
「よし、行くぞ……よしいくぞう……ふふ……行きとうないが……」
グリフィンドールに+10点。
4話が少しアウトかもしれなかったのでR18タグ設定したのですが、併せてR18のお話、ここの小説で書いてもよろしいでしょうか?
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大丈夫
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別のタイトルでやって欲しい