ほろ酔い期――Tipsy period
I faced love in a situation where I couldn't escape.
The pulse is fast. My body can't stop burning.
I can't think. I can't stop it.
It seems to be drowning in the sea of love as it is.
「大盛況だね、シグレ」
ジュースを作っている後ろから愛しい人の嗄声がする。振り向けば浴衣姿の先生の血液よりも赤い瞳がレッドウインターの雪のように白い癖毛越しから私の手元を覗き込んでいた。
旧校舎から少し離れた村の銭湯。そこで私はフルーツ牛乳バーを開かせてもらっていた。給料ナシの代わりに好き放題させてもらっていて、噂を聞きつけて先生も駆けつけてくれた。お陰で盛況だ。結構嬉しい。お客さんにあった飲み物を出せるバーテンダーに憧れていたから。
「先生も銭湯、入ってきたの?」
「私もシグレのフルーツ牛乳、飲みたくなってきたからね。それならお風呂にも入って湯上がりに楽しみたいと思ってさ」
先生の言う通り彼の浴衣から覗く白い素肌からはわずかに湯気が漂っていた。……先生の素肌なんて初めて見たな。レッドウィンターはいつでも寒いから厚着で素肌を見るなんて機会はないから。ちょっと目が離せなかった。相変わらず血の気がないのにどうしてこんなに艶やかなんだろう?私が心底惚れているからそう思うのか、それとも先生がそういう魔性のオーラを放っているのか。
あぁ、一度でいいからその胸元に飛び込んでみたいな。きっとちょっとひんやりしてて、それで硬いんだろうな。そのまま抱き止められて耳元で、細毛が震えるほどの距離で愛の言葉を囁いてほしい。細長くて逞しい両腕でがっちり押さえ込まれて、蛇のような赤い瞳に釘付けになりたい。それで深いキスをされて、大人の味を教え込まれたい……。
「じゃあバーテンダー、私に相応しい一杯をもらえるかな?」
「……うん、ぴったりのモノを期待してて」
先生は私の葛藤を知って知らずか、対面に座って細長い人差し指を立てて私にフルーツ牛乳をオーダーした。私は軽く頭を振って気持ちを切り替える。見惚れている暇はない、空想に浸ってる暇もない。先生にはとっておきの一杯を作らなきゃ。
特別に用意していた果物と牛乳を出す。先生が覗きに来るとモモトークで連絡してきた時に大急ぎで調達した、彼だけのための材料を細かく刻んで、溶かして、牛乳と混ぜ合わせる。複雑な感情と未だに燻る恋慕も込めて、グラスに特製の真っ白で果肉の漂うフルーツ牛乳を注ぎ込む。
「はい、お待たせ。先生にだけの特別な一杯だよ。飲んでみて」
「ありがとう。一見するとただの牛乳だなぁ」
先生が私から差し出されたフルーツ牛乳を見つめながら不思議そうに呟く。確かにみんなフルーツ牛乳って言ったらもっと色鮮やかなモノを想像するよね。でも味は折り紙つきだ。これは本当に特別な、先生にしか飲ませてあげない一杯だから気合い入れて研究したし、例えノドカにも作ってあげない。私の愛しい彼に捧げる一杯なんだ。
先生がグラスに手をつけた。ごくり、ごくりという嚥下音が賑やかなバー、もとい休憩室の喧騒の中でもはっきりと聞こえてくる。私のじっとりとした諦めかけの恋慕の詰まった一杯を堪能する先生をジッと見つめながら、彼の評価を待っていた。
「……美味しい。美味しいよ、シグレ!まるでミルクセーキみたいだ……爽やかで、スイカみたいな風味が鼻から抜けていく感じが気持ちいいよ!」
「……ふふ、気に入ってくれて嬉しいよ」
あまり見る機会のない、子供のようにはしゃぐ先生が見れてとても嬉しい。そしてこれほどに込められたぐちゃぐちゃの私の恋心には一切気づいていないんだろうなぁっていう悟りと背徳感にも襲われる。味も、思いも伝えられる一杯にしたんだけども、いつも微妙な心の機敏には鋭いのに肝心なところで鈍感な先生は今日もこの特製フルーツ牛乳の意図には気づかないだろう。
先生に喜んでもらえて嬉しいのに、私のアプローチが届かないってことに酷く落胆している。
「シグレ、一体なんのフルーツを使っているんだ?」
「んー、当ててみて?先生が私のことよくみてるならすぐわかるはずだよ?」
「うーん、見当もつかないなぁ……」
だから使った果物のことは教えてやんない。私の心を裂く鈍感野郎には。
それから私は先生の相手をした後も銭湯のお客さんにフルーツ牛乳を振る舞っていた。先生は離れて私の手際を眺めていてくれた。心強かった。彼がそばにいてくれたら私は負けない、そんな自信を先生の真紅の瞳は与えてくれる。
そうやって気合いを入れていたら、だいぶ遅くなってしまった。先生がシャーレへの終電を逃すぐらいには。まぁ一泊すればいいよねと思っていたらすでに満席。どうも本気出しすぎちゃったみたいで、みんな私のフルーツ牛乳目当てに宿泊したとか。嬉しい限りだけど、先生はどうしよう。外で一人眠ってもらうわけにはいかないしなぁ。
そうだ、私が泊まっている従業員用の宿舎があるじゃん。そこで一緒に一日過ごせばいい。
その旨を先生に伝えたら珍しく承諾してくれた。普段なら生徒と同じ部屋で寝るなんて大問題だとか言いそうだったのに。流石にレッドウィンターの寒さに怯えるより身の安全を選んだんだね。前に一人で雪山歩き回って遭難していた先生から進歩しててちょっと安心した。
あ、でも一人で泊まる想定だから布団一人分しかないなぁ。どうしよう。……でもよく考えればこれはチャンスかも。宿舎の中とはいえ寒い室内、布団は一人分。私が先に布団に入り込んで同衾を誘う……なかなか悪くない誘惑かもしれない。先生が泊まるところは他にないし、かと言って布団なしで寝れば寒さに震えることになる。正直先生は私と寝るぐらいなら風邪をひくことを選びそうだけど……でも少しでも先生とお近づきになれるチャンスがあるなら挑んでおきたい。真面目で正しい人を貫く先生が私の揶揄いや誘惑で慌てふためく姿は見てて面白いし。
……本当は、誘惑に乗っかってきて欲しいんだけどね。
「お邪魔します」
「ようこそ、先生。どう?狭いけど居心地の良さそうな部屋でしょ?」
こうして私は先生を部屋に案内した。バーを始める前に昼寝した時の布団がまだ敷きっぱなしになっていて、これから先生を誘惑……もとい、揶揄うにはちょうどいいシチュエーションだ。
「お布団を敷いておいたから、そこで寝ればいいよ」
敷布団を指さして先生に見せつける。
「あの……シグレさん?なんだか布団が一枚しかないような……」
目敏い先生はすぐ違和感に気づいて目を少し見開いた。これは困惑している時の癖だ。よく私のちょっかいやいたずら、誘惑に直面した時に見かける、先生の可愛らしい癖。これが見れただけでも十分いたずら心が満たされるんだけど、私の中の恋心がこのチャンスを逃すなと言わんばかりにガチャガチャと騒いでいるので、素直にそれに従って先生との同衾作戦を続行する。
「ん?そりゃそうだよ。元々一人用の部屋だから。でも、頑張れば二人入れると思うし……」
「だから、遠慮しなくてもいいよ?」
私はするりと先生の横を通り抜けて、布団の中に潜り込む。左肘を枕について、右腕で掛け布団を持ち上げて、それで少し浴衣を着崩して……身体の大きい先生にはちょっと狭いスペースを開けて、微笑みかける。
「はい、先生。お布団の外は寒いでしょ?意地張らないでこっちにおいでよ。お布団もふかふかだし、温まってるよ?」
どんどん先生の瞳がまんまるになっていく。ふふ、すごく戸惑ってるね。お布団の外は寒いのに冷や汗までかいちゃって……可愛いなぁ。真面目だから、正しい人だから、こういう意地悪されちゃうとちょっと動揺しちゃうんだよね。
「こっちならすぐ寝られると思う。もし、お布団だけじゃ足りないなら……私が湯たんぽの代わりになるよ」
戸惑い困惑する先生を見ているとなんというかいつも心の隠している部分の感情が糸で絞られたようにキュンとなって、なんだかお腹の奥がむず痒くなってしまって堪らない。
「……元々あった湯たんぽ、どうしたんだ?」
先生がやっと口を開いた。なんだか妙にその声色が困惑とは無縁そうな落ち着いたものだったのは違和感があったけど、その指摘は想定済みだよ?
「えっとね……中身、飲んじゃった。その、お布団の中がさ……モルスを温めるのにちょうどいい温度で……さっき仕事してる時に湯たんぽの中身を特製モルスに入れ替えたの」
口角を上げてモルス入りの湯たんぽを先生に投げ渡す。それじゃ温まれないよ、ということを悟らせるために。先生は手元の湯たんぽを眺めて顔を下ろしていて、表情はわからない。けど多分途方もなく悩んでいると思う。よし、今日はだいぶ追いこめているんじゃない?
「でも……しょうがないよね? こうなっちゃった以上、体を温める方法は他にないし……」
あぁ、お腹の疼きがキュンキュンして止まらない。心臓の鼓動も煩いな。ここまで露骨に誘惑したのも初めてだから私自身も異様に興奮してる。もしかしたら先生に不可抗力で近づけるチャンスに熱い吐息が止まらない。でもここで満足しちゃダメ。トドメの文句を言わないとね。
「今日はさ、先生が私の湯たんぽの代わりになってよ。お互いぎゅーってして、一緒に朝まであったかく過ごそうよ?」
……あは、考えていた以上にアプローチしちゃったかな?まぁここまでしても先生のことだからうまく逃げ切る気がするけ――
「分かった」
――ど……? え? 今なんて?
「一緒の布団に入らせて貰うよ。シグレ」
先生が顔を上げた。今までの困惑は消え去っていて、私の知らない感情を宿した表情の先生がゆっくりと私の元に迫ってくる。え、なに、そのひょうじょう……? 見たこと、ない……そんな、あくまみたいな、悪い顔……。
「よいしょっと」
呆気に取られている私の胸元に先生が本当に潜り込んでくる。微かに香る石鹸の匂いと隠しきれない男の匂いと、嗅いだ事のない甘い匂い。私のはだけた素肌に触れる先生の乾燥した胸倉。布団の中の温度がぽかぽかした暖かさからじっとりとした湿度を保った熱に切り替わっていく。突然襲いかかってきた、ずっと近くで感じたかった、ずっと心の中で想像していた先生が密着してきて、五感から攻め立てて来て、喉から声にならない悲鳴が漏れた。
今までずっと「正しい大人」であろうとしていた先生が、私の誘惑に乗っかってきた。しかも、すごく近くに、肌が触れ合うほど。どうして?今までずっと私の誘惑を跳ね除けてきた先生が、なんで?今になって、諦めかけていた頃になって、なぜ?
「狭いね? シグレ」
まるきり立場が逆転した衝撃と今までずっと体験したかった感触に逃げ腰になっている私を捕まえるかのように、布団から逃さないと言わんばかりに先生の両腕が私を囲って、そして力強く抱きしめた。胸が潰れる。身体が密着する。硬く、温かく、大きな身体。空想上でずっと望んでいた感覚。困惑よりも先に身体が予想外の出来事にのたうち回っている。信じられないぐらいに心臓が暴れ回っている。お腹の奥がじゅくじゅくと溶けている。ずっと求めていたことが突発的に、連鎖的に起きていく状況に脳が追いつかずにただひたすらに熱異常を訴えている。
「シグレ」
耳元で囁かれる。吐息が、近い。私の細毛をビリビリと震わすほどに。うそ。さっき願っていた願望が、空想が、全部叶っていく。頭が幸福で埋め尽くされて、まるでお酒を飲んだように冷静な判断ができなくなっていく。
「ずっと、ずっと待ってたよ。君が逃げられない瞬間を」
抱きしめられたままごろりと先生が身体を回転させる。私は自然と先生の下に追い込まれてしまう。私を見下ろす先生はとてつもなく嬉しそうだ。こんなに口角の上がっている先生を見たことがない。こんなに悪そうな笑みを浮かべた先生を見たことがない。――こんなにカッコいい先生を見たことがない。細いのに頑丈な腕。少し潤んだ赤い瞳。寒い部屋の中なのにぽたりと垂れてくる汗。はだけた浴衣から覗く赤みのかかった白い胸倉。何もかも全てがカッコ良かった。
そんな、混じり気のない白い髪が私の顔にかかるぐらいの距離まで未知の先生の顔がゆっくり近づいてきて――
「んむっ!?」
私の唇を奪った。
「んっ……んぐっ!? んふっ……じゅる……むじゅる……ぐじゅっ……」
カサついた柔らかい感触。優しくない、噛み付くようなキス。何度も角度を変えて私を堪能しようとしてくる。次第にぬるりとした熱い塊が私の口を割り入ってきて、ねっとりと私の口内を舐め回す。それは私の舌にも巻きついてきて、固結びしようとしてるかのように絡んでくる。私は何もできずに翻弄されるままだった。ただ舌から脳と下腹部に伝導してくる乱暴な肉感的快感を享受し、か弱くもがくしかなかった。その暴れていた両手も先生の両手に押さえつけられて、縫い付けられて、まるで恋人のように握りしめられてしまう。反射的に握り返すしかなかった。
「ふ……ん、んんっ、んうっ、ふぐっ、ふーっ……ふーっ……じゅるっ……」
呼吸できない。鼻は開放されているのに空気を吸えないし吐けない。酸素が足りなくてクラクラする。でもそれすら脳が気持ちいいって言い張って、本格的にお腹の奥がぐしゃぐしゃになってどろりと蜜を流し始めてしまう。下着をつけてないから浴衣が湿っていくほどに。それに気づかれたのか、私の手を握っていた片方の手がするりと私の下腹部に向かって行って、人差し指と中指で鋭く押し潰してくる。
「ふぎゅ……!?」
その瞬間に視界がぱちん、と弾けた。目の前の先生の赤い瞳を映す視界にノイズが走ったように揺らいで、押しつぶされた部分から電流のように甘く痺れるキモチイイが身体中を駆け巡る。
あぁ、私、イったんだ……先生の、ゆび、で……。
ようやく先生が私の唇を解放した。ゆっくりと引き上げられる舌には透明な唾液の橋が私の舌とかかっていて、絶頂で考えがまとまらない頭でもそれがプツンと千切れる瞬間は途方もなく官能的で美しくすら感じた。
「シグレ」
先生が息も絶え絶えの私を抱き潰しながらまた耳元で囁く。
「さっきはアケビのフルーツ牛乳をありがとう。美味しかったよ――世界で一番ね」
……あ、は。
先生、気づいて、いたんだね。特製フルーツオレの、材料……。じゃあ……私の思いも…… 感づいていたんだね……。ずっと……ずっと、前から。
「「唯一の恋」……いい言葉だよ。俺とシグレにぴったりの言葉だ」
ついに先生の大きな掌が私の胸元に触れる。浴衣をゆっくりと下ろして行って、私の素肌を晒していく。上気した肌が外気に触れて寒気が走る。それすらも気持ちいい。
「一目惚れだった。初めて会ってから、君をどうやって手に入れればいいのかだけ考えていた」
露になった胸を揉まれる。柔皮に指が食い込む。くすぐったい。痛い。気持ちいい。ぐちゃぐちゃな細い糸のような感情が撚りあわさって「大好き」にすり替わってしまう。私も掌を先生の胸に強く当てて撫で回していた。硬い筋肉と、力強い心臓の鼓動が伝わる。その感触でさらに「大好き」が「愛してる」に変わっていく。
「でも君はずっと揺らいでいたよね。ノドカと俺で。だから普通に君の誘惑に乗るのでは逃げてしまうんじゃないかと思ってて手を出さなかった」
私の葛藤を何もかも見透かされていたことに愕然とする。確かにこれまでアプローチに先生が乗ってきたら私は理由をつけて逃げていただろう。だからずっと、ずっと先生は我慢してたんだ。私のこと大好きなのに、私が逃げられなくなるまで、ずっと。
「だから今日という日をずっと待ち望んでいた。俺もシグレも逃げられない瞬間を。シグレが一線を越える瞬間を。誰にも邪魔されない、シグレと完全に二人きりの瞬間を」
浴衣の帯が解かれた。浴衣を全て脱がされた。残ったのは自分と同じぐらいの愛をぶつけられて伸びた裸の女だけ。股から愛液をトロトロと垂らし、迫ってくる男の身体をなぞりながらこれから起きる行為に胸を躍らせている女だけだ。
「シグレ――ずっと好きだった。ずっと伝えたかった。俺のものにしたかった。愛してもいいか、君のことを?」
先生が私に覆い被さって裸の私を抱きしめる。どんな答えが返ってきても逃さないと言わんばかりに。
先生がこんなに悪い一面を持っていたなんて。私が先生に執着するのと同じくらい、先生も私に執着していたなんて。
相思相愛だったなんて。
ずっとぐらぐらと揺れていた天秤が、ガクンと片方に崩れ落ちた。先生の気持ちの方に。恋慕の方に。性欲の方に。
ごめんね、ノドカ。
私、もうあなたのこと考えられないや。
だってさ。
私たち、両思いだから。私、選ばれたから。私だけが、選ばれたから。
こんな愛して愛されているなら。
――受け入れる以外無いじゃん。
――愛される以外に無いじゃん。
――幸せになるしか無いじゃん。
「せん、せいっ……わたしも、せんせいのこと……すき……わたしもひとめぼれ……ずっとこうなりたかった……グスッ、だいすき……あいしてる……」
腕も、足も、先生の身体に巻きつける。服従するケモノのように、身も心も曝け出して先生を受け止める。
「せんせい」
欲望を口から吐き出そうとして一瞬口篭った。言葉にしたらもう、後戻りできないから。でも不気味なほどに悪くてカッコいい先生の顔を見て、多分先生もその気なんだと思って、躊躇いを捨てて口に出した。
「だいて。せっくすしよう。こーびしよう……?」
先生は答えなかった。
だけど糸みたいに細長い三日月のような素敵な笑みを浮かべながらまた私の唇を奪って、深く深く口付けした。
流れ込んでくる熱い唾液はしあわせの味がした。
「シグレ……よく見ていて。今から入れるからね……」
「うんっ……来て……」
夜深くなってもレッドウィンターにはしんしんと雪が降り積もっている。だけど私たちの行燈風の間接照明だけの薄暗く淫靡な性の臭いの立ち込めるこの部屋はじんわりとした熱を帯びて一切寒くない。溜め込んだ愛情と性欲をお互いに解き放った男女二人が裸でいま、一つになろうとしている。緑色のコンドームに包まれた先生の大きくて立派なおちんちんは私のぐちゃぐちゃになった性器をずりずりとなぞりながらその肉壺をこじ開けようとしている。
「あ、はっ……き……た……っ、せんせ、いっ……のっ」
つぷ、と先端が私のなかに入ってくる。まだ私の指ぐらいしか受け入れた事のない膣は濡れそぼっているとはいえまだ狭くて、まだ懸命に異物を押し除けようとしている。でも、先生が腰を持ち上げて全体重をかけてくると、あっさりと押し負けてしまう。
「あ゛……ぎっ……いっ、はっ……せん、せ……っ」
肉を押し分けられて裂いて開かれる痛みに思わず腕を回している先生の首筋に力がこもってしまう。爪が食い込むけど先生は動じない。遠慮なく、力強く私の純潔を突き進んでいく。
そして、最後の壁に触れた。
「シグレ……覚悟はいいか?」
「ふっ……ぐ……っ、うんっ……やぶって……せんせい……ハジメテ……あげる、よ……♡」
「分かった……愛してるよ、シグレ……」
先生は私の額にキスを落として、私の細い腰を掴むと、一度おちんちんを引き抜いてから、そこから一気に貫いた。
ぷちん。
「かはっ……♡♡♡」
僅かな鋭い痛み。それを塗りつぶす衝撃、快感。気持ちいいところに、的確に、先生のおちんちんがどちゅんと突き上げてきて、ほとんど声にならないような嬌声が肺から飛び出した。ぐらつく視界の端に私と先生の繋がった部分が映る。僅かに赤い液体が溢れていて、あぁ、私は純潔を捧げたのだと実感して、歓喜と生理的な涙がとめどなく溢れる。
「せんせい……っ」
私から先生にキスする。舌を割り入れて、絡めて。さっき先生に教えてもらった大人のキスを歓喜の感情表現として全力で振る舞う。先生も強く応えてくれて、上も下も肉感的な繋がりを堪能してしまう。瞳を閉じることを忘れて色っぽい先生の顔に魅入る。先生もいつも以上に瞼を開いて私の顔に魅入っている。可愛い顔できているのかな、私。でもこんなに見てくれるならそう思ってくれているってことだよね。
「うごくよ……シグレ」
先生が腰を引く。ずりずりとおちんちんが膣壁を擦りながら抜けて行って、そしてまた奥をどちゅん、どちゅんと貫いてくれる。奥を突かれるたびに今まで心にこびり付いていた下らない葛藤がボロボロと溶けて行って、ただ幸せと快感に支配されていく。先生で一杯になっていく。
「あ゛っ、はっ、ふうっ、あっ、すきっ、すきぃ、せんせ、だいすきっ……」
言葉にできない。ただ繰り返し短い愛の言葉を繰り返し興奮のままに叫ぶ。甘くて高い嬌声、なかなか出せないな。どうも濁ったケダモノみたいな唸り声みたいになっちゃう。宿舎の壁、薄くて声が隣に聞こえちゃうかもしれないのに抑えられない。口を手で覆っても抑えきれない。こんな声でも先生は喜んでくれてるかな。気持ちよくなれているのかな。
「お゛っ……ふ、ぐっ、あ゛あっ、せんせいっ、せんせいっ、せんせいっ……!」
先生の細くて硬い指が私の局部をなぞり始めた。水色の陰毛を指で梳かれて、接合部を親指で押しつぶされ、クリトリスを摘まれる。びりびりと電流が脳に走って嬌声が酷く大きくなってしまう。クリクリと可愛がられて流れてくる行き場のない快楽に歯を食いしばって、上半身をのけぞって、頭の下の枕を強くくしゃくしゃと握りしめる。苦しい。キモチ良すぎて、苦しい。死んじゃいそう。擦りむいた傷に消毒薬を塗って刺激が止まらないみたいだ。
でも、途方もなく、しあわせ。
「あ゛ぁ、い、いっ、あいしてるっ……だいすきっ……せんっ、せい、だいすき、もっと、もっとぉ……!」
「俺も……っ、だいすきだ……っ、シグレ……っ! 愛している……愛している……!!!」
涙でぼやけた先生の顔は今までで見たことないぐらいにカッコよかった。瞳孔が開いた真紅の瞳。寒いのに額をつたう汗。糸のように細い三日月のような口角。欲望を孕んだいつもよりも低いハスキーボイス。ずっと見たこともない目の前の女にぶつける性欲に満ちたケダモノの顔。私以外見たことのない顔。私だけが独占する顔。私の嬌声を聞いて酷く興奮して、ドロドロの欲望を込めたドスの効いた愛の言葉を吐いて、律動に合わせて上下するおっぱいを鷲掴みにして、叩きつけるように腰を振る先生が怖くなるくらいに愛おしかった。
「い、ぎっ……あ゛、イ、くっ……♡ か、はっ……う、ぎゅっ……♡♡♡ ひ、あ、はっ……♡♡♡」
またパチンと意識が弾けた。泡みたいに感覚が溶ける。幸福が止まらなくて視界が白く霞む。絶頂した。先生のおちんちんがさっきから私のキモチ良いところばかり突くから、登りつめた意識が戻って来れない。でも勃起しきった乳首を指で、爪先で摘まれるとまた違う刺激の快楽が襲って来て意識を失うことができない。ひどい。だいすき。オカシクなる。キモチいい。
「し、ぐれ……っ」
先生の腰の動きが激しくなる。私を貫くおちんちんが熱く膨らむ。来る。くる。クル。先生も気持ちよくなるんだ。私の身体で、私という女で……♡
「せん、せ……♡ いっしょ、に……っ」
身体を無理矢理起こして先生の身体に抱きつく。肩に噛みついて、背中を掻きむしって、全力で密着する。お互いに上り詰めるために。どこまでも、イッショに……♡
「シグレ……ッッッッッッ」
「ひ、っ……♡♡♡ っ、あ゛……っ♡♡♡」
どぴゅっ、どぴゅっ、どくん、どくん、どくん。
熱い塊が私の中で膨らむ。コンドーム越しに先生の欲望を感じる。先生の絶頂が嬉しくて私も嬉しくて絶頂して、脱力して顔を先生の胸元に埋めてしまう。先生は私の顎を掬って力任せに唇を奪って来た。まるで私を丸呑みして、全身組まなく味わおうとするかのように力強く抱きしめながら。
「れ……ろ、じゅるっ、はむ……っ……ぷはっ、あ、あは、っ、はっ、せん、せ……しあわ、せ……」
「あぁ……さいこー、だな……っ」
先生がゆっくりとおちんちんを引き抜く。先生の精子でパンパンのコンドームは私の愛液と血に塗れてテカテカと光っていて淫靡な輝きを纏っていた。
ああ、もっと、堪能したいな。先生の、ぜんぶ。
私は先生のおちんちんに手を伸ばしてコンドームを引き剥がした。そしてその中身を舌の上に溢す。ねっとりとした感触と生臭い苦さ。突然の私の行動に目を丸くする先生を他所に決して美味しくないそれを舌に絡めながら口の中に流し込んで、くちゃ、くちゃと咀嚼する。先生が私のために出してくれた欲望を五感で感じるために。先生は私の行動を呆気に取られて見ていた。少し震えている。興奮してくれているのかな。私の好奇心に。
「ん、ぐっ……ぷはぁ……」
無理矢理精子を飲み込む。ごくん、と喉を鳴らし、口の中を先生に見せつける。ちゃんと全部飲み込んだよ、というアピール。先生をもう一回興奮させるためにだ。……ふふ、効果覿面。硬さを失ってたおちんちんがむくむくと起き上がってきた。でもまだまたスるには足りないよね。
「んっ……は、むっ……じゅる、ぐちゅ、れ……むっ……じゅる、じゅる……」
開いた口を中途半端に勃起した先生のおちんちんに当てがって、そのまま咥えた。精液と男の臭いが鼻腔を撫でていく。味はなんだかしょっぱい。美味しくないけど、ずっと舐めていたくなる。両手でおちんちんを支えて、歯を立てないように啜って、喉奥まで押し込んではちゅるちゅると引き出す、その繰り返し。上目違いで先生の顔を伺いながら抽送を繰り返す。先生は歯を食いしばって快楽に堪えている。可愛い。思わず舌を裏筋に沿わせて絡めてしまう。
「しぐれ……っ、それっ、やばっ……いっ……」
さっきまで優位を保っていた先生が、私を虐めていた先生が一転して私の攻めに苦しんでいる。ちょっと心地いい。興奮して片手で自分の性器をぐちゃぐちゃといじってしまう。散々先生のおおきなおちんちんで開拓されたはずの私の膣は乱暴な私の自慰にも反応してまただばだばと愛液を垂れ流してしまう。
「ぷ、ふうっ……あ、はっ……せんせ、またおっきくなったね……?」
おちんちんがまた勃起して、なんならさっきよりも大きくなったのを感じてちゅぽんと口から引き抜く。なんで最後までしないんだ、という先生の困惑した視線に対して私は予備のコンドームを取り出し、口に咥えながら片足を開く。
「もういっかい……しよ? 出すなら、ナカで……ね?」
指で熟しきった性器を開いて見せつけると、先生の纏う気配が変わった。あ、これは発情した熊とおんなじ感じだ。もう結構理性を失っていたのに、もう一枚本性を暴いてしまったみたいだ。
「シグレ……ッッッッッッ!!! この……エロオコジョが……っ!!!」
「あ゛っ♡ せんせいっ……♡」
コンドームをつけた先生に組み伏せられ、そのままおちんちんを捩じ込まれる。さっきよりも乱暴な挿入にもう気持ちは爆発寸前だ。
さいこう。もとめられて、シアワセ。
エイエンに続いて欲しい……この瞬間が。
こうして私たちは朝日が昇るまで溶けるように、貪るように交わり続けた……。