前戯無しでそのまま自分の中にぶち込みやがった。
「ヒッ、い……イッ……」
「なっ、がッ……。たっ……」
女も激痛だろうが男ももれなく大ダメージだ。
彼女の股間から溢れる血も破瓜の血か、無理して膣内を傷付けた血なのかわからない。
問おうにもあまりの痛みに放心して聞けないし、青年もジンジンと腫れたような痛みに無言で悶絶してとてもじゃないが問いただせる状況ではなかった。
それからしばらくして理性を取り戻した海風は大粒の涙を流し始める。
「ゃあ……ッ、痛っ、い……。うぅ~……痛いですぅ~……」
「お前、何やってんだよ!!」
股間の痛みを堪え、身体を起こした青年は本気で彼女の肩に掴みかかる。
「ふぇ……? 何って、性交……」
「前戯も無しに入れる奴があるか!!」
「ぜん……? なんですか、それ?」
やっぱり……。呆れた青年はそのまま後ろに倒れる。
「で、でも伊勢さんは『勃たせて中に入れさせればこっちのもん』って……」
「やっぱりお前バカだろ。抽象的すぎる情報を鵜吞みにするな」
そんな情報を鵜呑みにするほど知識が乏しいことにツッコまざるを得ない。と言っても彼も春本程度の知識しか持ち合わせていないのだが。
青年は不安を隠せない。というかこの性交、上手く行く気がしない。このまま抜いて自慰にふける方がマシな気がする。
それでも彼女の、ほぼほぼ無謀ではあるが、努力を無駄にするのは気が引ける。
だったら自信は無いが攻守交代するしかない。
彼女の背中に手を回し、そのまま上下逆転させる。
「ひゃんっ!」
未だ痛みが引いていないようだ。
しかし処女だからか、想像以上にキツい。少し体を動かしただけなのに、反射で絞められた膣はかなり力強く、思わず身体が強張る。
それなのに包む感覚は柔らかくも感じ、理解不能な感覚にすぐ果ててしまいそうになる。未だ彼女が痛みを訴え動けないのは不幸中の幸いだった。
しかしこれからどうしよう。引くまで待つか。それとも抜いた方がいいのか。
悩む青年は脳内会議を開始する。春本だったらどうしていた? 処女ものは見ていない。脳内会議は終了した。
「背中か肩に手を回せ」
「え?」
「今から動くから。痛かったら思いっきり爪を立てろ」
悩みに悩んだ結果、青年は無理矢理動かすことにした。
どうせ自分もそんなに長続きしない。だったらさっさと終わらせるのが得策だろう。
まずは腰を引く。
「――――ッたぃ……!!」
悲鳴を上げる海風。温かい涙が青年の肩を濡らす。
しかし爪を立ててこない。それどころか身体を密着させて、まるで抱き着いているようだった。
横目で彼女を見る。すると視線が合い、コクンと頷き返してくれた。
「言い出したのは海風です。悲鳴を堪えることは出来ませんが、気にせず動いてください」
声を震わせながら決意を告白する彼女は最後にまたあの言葉を言う。
「貴方を信じます」
いまその言葉はやめてくれ。
果たしてそれはそのままの意味だったのか。それとも挑発だったのか、青年にはわからない。
しかし彼はその言葉を振り払うように動き出した。なんだかんだ言って全部彼女の手のひらの上で踊らされている気がする。少しだけ癪に障った。
それでも映像のようにはいかない。逆にどうやったらあんなズッコンバッコン動けるのだろうか。
ようやくギリギリまで腰を引けた青年は大きく息を吐く。そして再び彼女の最奥を目指して腰を寄せる。
その動きを何回かして、青年は少し理解した。キツイなりも入りはすんなり行く。何故なら膣は受け入れるように出来ているからだ。逆に出る時は男根を逃さないように必死に絡みついてくる。
腰が震える。もう限界だと。
その前に、青年は海風の乳房を鷲掴み、そして唇を重ねた。
「悪ッい……もぉ、射ッる!」
唇を引き離すと情けない顔をしながら海風に告げる。
出るとは何のことを言っているのだろうか。痛みでわけがわからなくなっている彼女は必死に関連する事柄を思い出そうとする。
だが彼女が思い出すより先に青年は男根を海風から引き抜き、外に何かを吐き出そうとする。
伊勢の言葉にはそこまで含まれていなかった。
しかし「何故抜くのだろう」という疑問と生殖行為の意味から基づき、海風は青年が何をしようとしてるのか悟った。
「ダッ――――んんッ!!」
男根が外に出た瞬間、海風の指が亀頭の裏を押し、また海風の中に押し返した。
再び入ってきたのを感じとると彼女はそのまま身体を沈め、出される熱に身体を震わせる。
「熱いのがぁ、中にぃ……」
一瞬かなり大きい痛みが海風の中に走ったが、精子のぬくもりですぐに緩和されたようだった。
まぁ彼女が痛みから解放されたのだったらそれはいいことだ。
しかし、しかしだ。青年は青ざめていた。
「……お前、本物の馬鹿か?」
「ふぇ?」
彼女の肩を掴み、青年は抗議する。
「なんでまた中に入れてんだよ! どうすんだよ、出しちまったぞ!? 子供出来たら、はぁ!?」
突然のこと過ぎて青年は冷静さを失っている。まさかこんなことになるなんて。こんなの、死んだほうがマシだ。
だが逆に海風は至って冷静だった。
「むぅ。海風だってそれぐらいは理解してます。でも仕方ないじゃないですか。無断で使っているお店を汚させるわけにもいきませんし」
彼女の言うことはもっともだった。
だがもうちょっと物事の比重を較べるクセを付けたほうがいい。
「……出来たらどうすんだよ」
「その時は責任を取ってもらうだけです♡」
彼女の見せる無邪気な笑みが急に怖くなる。
小さくなった男根を彼女から抜くと青年は海風の横に寝転がる。
「やっぱアンタは悪魔だ」
「ふふっ、そんなの今更。男は狼ですが、女は悪魔なんですよ?」
自身の手を枕に横を向く彼女は相変わらず笑っている。優位に立っていることが嬉しい、もしくは楽しいのだろう。
とんでもないことをしたというのに、コイツは……。少しだけイラっとした青年は言葉を返す。
「そうだな。たしかにチンコねじ切られそうになったしな」
「そ、そういう意味じゃないですー。もー」
「はっ。知識もないのに意地悪ぶるからしっぺ返し食らうんだよ」
恥ずかしいことをした。恥ずかしいことを言い合っている、なのに心に恥ずかしさは無く、むしろどこか清々しさを覚える。
青年は思わぬ責任を背負うことになったが、共に性交をしたことに後悔していない。どころか、いきなり飛躍しすぎではあるが、思わぬ縁が出来てしまったことに嬉々していた。
海風は何気なく天上を見る。横にちらりと窓も見える。そう言えば雨音が聞こえない。視線をそちらに移す。
「雨止んでますね」
「本当だな」
とはいえ空は変わらず曇り模様。早く帰らないとまた降ってきそうな雰囲気だ。
海風は彼を見つめる。彼女が帰るところ。今日からそこは彼が帰る場所でもある。
ただ勢いで言ってしまったところもあり、やっぱり一人で頑張ってみると言われるかもしれない。
それはそれでいいことだ。だが彼ともうちょっと一緒に居たい彼女からしてみると悲しい選択でもある。
「あの……」
だから尋ねる声も恐る恐るになってしまう。
「……なに」
「帰ります?」
青年は鼻で笑う。
彼女が何を考えているか青年にはわからなかったが、何か懸念していることは表情から読み取れた。
だから冗談を織り交ぜ彼女の鼻を軽く突く。
「ふぎゃ!」
「なんで疑問形なんだよ。俺の命を預かってるんだろ? もっと胸張ってくれ」
「~~ッ、ありがとうございます!」
表情を一気に明るくした海風は感情を抑えきれず、青年に飛びつく。未だ服を着ていないので素肌の感覚が青年の全身に襲い掛かる。
先ほどまで何食わぬ顔で触れていたのに、雰囲気からだろうか。急に恥ずかしくなり、青年の顔は赤く染まった。
それからしばらくして。海風が再び服を着終わるまで青年は外で待つことに。
別に着替えを見るぐらい今更な話なのだが、さっきの抱擁で我に返ってしまった青年にはとてもじゃないが居合わせる勇気は無かった。
しかしここはどこなのだろう。海風からそういう情報は一切出なかったため気になっていた。
極力地元から離れていればいいのだが。未だ暗い空を見つめながら青年はなんとなく願う。
「お待たせしました~」
パタパタと、気付けば青年の後ろに彼女は来ていた。
しかし、青年はずっと座ってたから気付かなかったが、頭一個分ぐらい身長差がある。
こんな彼女を抱いたのか……。
「…………」
「あの?」
「いや大丈夫。でもやっぱり空が怪しい。早々に発とう」
気付けば赤らんでいた表情を隠すように青年は前を向き、先に行こうとする。
海風も彼を追うように足を前に出そうとするが、思い出したかのようにストップをかけた。
「あ、ちょっと待っててください」
どうしたのか。そう思って彼女の方を向くと自販機の前にいた。
喉が渇いていたのだろうか。何か飲み物を購入するとまたこちらに駆けてくる。
「良かった。いくら海と言えど自販機は時期に合わせて更新されていました」
手に持っていたのは温かいミルクコーヒー。海で体を冷やしたままだった青年の体調を考慮したチョイスだった。
迷わず海風はそれを彼に手渡す。
「気休めですが、飲むなり身体に当てるなりしてください」
「ありがと」
まるで母親のようで、青年はクスリと笑うと礼を言いながらミルクコーヒーを受け取る。
さっそく封を開けて一口流し込む。
「あったかい……」
大袈裟な言い方かもしれないが生き返った感覚が全身に巡る。
もっとも――――。
「なぁ、差し支えなかったら手を繋いで行かないか?」
とつぜん何を言っているのだろうか。青年自身も自分を笑う。
それでもコーヒーの温もりを得たら、今度は何故か彼女の温もりが欲しくなった。
「手!? 手を、ですか……!?」
「嫌?」
差し伸べられた手を凝視して海風は頭をぐーるぐーる回す。
まだそんなことをする関係ではない。そう言おうとするも、すでにそれ以上のことをしていて断ることが出来ない。
突然、深呼吸を始める。スーハーと三セットほど。
「あの……?」
「いえ、握手ですよね? それぐらい大丈夫です! きっと、えぇ!」
と言いつつも海風は自分に「大丈夫」と繰り返し暗示するのをやめようとしない。
そうしてようやく手を握り返すと今度は彼女の身体が大きく跳ねた。見ると顔も真っ赤で足もガクガク震えている。
「お、おい。大丈夫か?」
「だだだ大丈夫です! ……実はそのぉ~……畏れ多いですが海風、スキンシップが苦手でして」
うん、さっきスキンシップを思いっきり乗り越えたことしたんだけどな。
彼も彼女と同じことを考え、心の中でツッコミを入れる。ということはさっき自分が抱き着かれた時のように、素に返って恥ずかしくなったとか?
ただもしかすると一点を見ると他が見えなくなる性格なのかもしれない。そんな見えざる一面に触れることが出来て地味に嬉しかった。
しかしやっぱり温かい。不謹慎ではあるが彼女と抱き合っていた時が一番温かった。
だから
「一つだけ正直に答えてほしい」
「……はい、なんでしょう?」
この温もりが偽りでないことを確かめたかった。
「俺はアンタの妹さんの代わりか?」
少し間が空き、海風は表情を崩すと首を横に振る。
「まさか」
それ以上の言葉は無かったが、彼女の自然と出た笑みから嘘ではないと判断した。
そう、思い込んだ。
「行きましょうか」
「あぁ。ところでアンタの家までどのくらいなんだ?」
「だいたい一時間ぐらいですかね? バスだと十五分ぐらいなんですが……ね?」
「大丈夫なのか? 疲れたり……」
「御心配ありがとうございます。でも大丈夫です。だって畏れ多いですが海風は艦船ですから」
力強く言うと海風はグッともう片方の手を握りしめる。
「そうだったな」
それでも妹が消えて心細いだろう。やせ我慢しているのはわざわざ言わなくてもわかることだ。
だから彼は決意した。身の丈に合っていない考えなのは自覚しているが、それでも。
この命、彼女を支えるために使おうと。
「あの、畏れ多いですが、よろしければ貴方のお話を聞かせていただけませんか? 差し支えるの無い範囲でいいですので」
「そうだな……。どこから話そうか……」
◆ 続く
「ところで畏れ多いのですがちょっとした疑問がありまして……」
「疑問?」
「はい。なんで海風の股から血が出たのでしょうか? 痛くはありましたが、今は怪我をしている感覚がなくて……」
「……マジで言ってる?」
「え? えぇ。……あ! ごめんなさい。男性ですから女性の身体の構造はわからないですよね。帰ったら明石にでも聞いてみます」
「その明石って誰なのか知らないが、聞いても恥をかくだけだぞ」