コクーンの政務を行う聖府の代表。その正体はコクーンの滅亡を望むファルシの王「ファルシ=バルトアンデルス」。
それがガレンス・ダイスリーである。
ガレンスはある時、突如として自分の自室に現れた怪しげな男と出会った。
(この男……この世界線の者ではないな?)
ガレンスはすぐにそれを察知した。しかし、こちらを殺そうとしたり危害を加えようとしている気配はない。
暫くのにらみ合いの後、男はとある本を一冊差し出してきた。
「……なんだそれは?」
「現実改変の書ですよ、代表。」
「現実改変の書だと?」
ガレンスは訝しんだ。そんなものが実際にあるとでも。そう思うのも無理は無かった。
「この本は置いていきます。後は代表のお好きなように……」
「貴様………一体何者だ。」
「ファンの一人ですよ。」
そう言い残した謎の男は、次の瞬間にはふっと消えていた。
「消えた………。あの男……いや、声は男だがローブを被っていて男なのか女なのか判別できなかった……。何者だ、奴は。」
ガレンスの目線は、男が置き残した『現実改変の本』へと向いていた。
ガレンスはそっと本を開く。本は白紙だ。といっても最初のページにそのルールについて説明が記載されている。
それは次の通りだ。
・この本に書かれた事は現実となる。
・書かれたページが消されたり焼却されると、書き換えられた現実は消滅する。
等といったシンプルなものである。
さて、どうするか。ガレンスは少し思案した。その時、ふととある人物の事が脳裏に浮かんだ。
コクーンに恐るべき最強の暗殺者が存在するという。
その名を金色の闇、そしてその保護者の名はティアーユ・ルナティーク。
最強の暗殺者と、高い知能を有しているティアーユ。この二人をファルシよりの思考にして自分達の元に引き込めば、新たな戦力として活躍してくれるかもしれない。
そう思ったガレンスは机にある万年筆を手にする。
そして、試しにそれを書き記した。
『金色の闇及びティアーユ・ルナティークはファルシよりの政府の上層部およびPSICOMに所属している。』
と。
これだけで本当に現実が改変され、彼女達二人は本当にPSICOMに所属している事になっているのだろうか。
少しまだ疑念の感情が拭えないガレンスは、配下の者にPSICOMの所属者リストを持って来させた。
暫くして届いた書類を一枚ずつ確認するガレンス。
それらしいのはまだ見つからない。やはりデタラメだったのだろうか。
そう思っていたその時、その二枚の書類を目にして、ガレンスの眉がピクリと動いた。
金色の闇とティアーユだ。見間違うはずがない。間違いなくPSICOM所属になっている。
しかも最近ではなく、去年頃からだ。
(これは本物だ……。……面白い。)
あの現実改変の本は本物の力を有している事を、ここでガレンスは完全に理解した。
さて、ここで時間を少し戻そう。ガレンスが文章を書き込んだ直後へ。
…
………
……………
コクーンにて暮らす暗殺者・金色の闇とそのパートナーにして保護者であるティアーユ。
彼女達二人は街をただ歩いていた。ふたり一緒に。
男達の視線は二人の中で特にティアーユに向いていた。正確にはその胸にだ。
闇よりも豊満なその胸は歩く度に軽く揺れている。たわわに実った爆乳に色めかしいグラマラスな体つき。
振り向かない訳がなかろう。
その時だった。
「んっ?」
「ん………?」
違和感を覚えた二人が思わず天を見上げた。
急にその場にノイズのようなものが走った。
その時、二人の服装は既に一瞬にして変わっていた。
体つきがよく分かるピッチりとしたハイレグ風の服装を下に着て、その上に羽織るは威風堂々たるコート。
PSICOMの威厳を放つかのような、闇は漆黒の、ティアーユは紅蓮の色模様をしたコートを身につけている。
コートの一部にはそれぞれエンブレムが刻まれている。
それぞれ神話に出てくる魔物のようなデザインだ。彼女達二人がPSICOMの中でも特別な人員である事を示すかのようなエンブレムだ。
年季の入った手袋も、まるで彼女達が歴戦の猛者である事を感じさせるような印象を、見た者に与えるかのようだ。
そのブーツもまた、歩く度に鳴る足音は威厳を放っているかのようである。
こうして現実改変の本の力で、金色の闇とティアーユはPSICOMの一員となったのである。
しかし実力はどのようなものかまだ分かっていない。
実力を試すためにガレンスは再び書物に書き込んだ。
既に不穏分子の組織のアジトに乗り込み壊滅させる命令が下っているという事を。
一瞬の内にノイズが走る。
「行きましょう。」
「ええ、今すぐに。」
闇とティアーユは短い言葉のみを交わすと、素早く走り出した。敵の本拠地へと向かって。
その走力は、オリンピックの金メダル選手をも遥かに凌駕するほどのものであった。
やがて、あっという間に不穏分子の本拠地へとたどり着いた二人。
騒ぎになる彼らへ二人は言い放つ。
「聖府に楯突く不穏分子……ここで始末させてもらいます。」
「覚悟はいいかしら?ここで死ぬ覚悟は。」
闇の能力によって、髪の毛は大きな拳を二つ形成し、ティアーユのその手には座頭市に出てくるような仕込み杖が握られていた。
「ふ、ふざけるな!!」
「撃て!!撃て!!!」
相手側が次々とアサルトライフルで発砲してくるが、闇とティアーユはこれを軽々と回避していく。
闇の髪の毛で形成された大きな拳は次々と敵を殴り飛ばして壁を破壊する勢いで叩きつけたり、倒れている所を上から叩き潰す。
ティアーユはまるで座頭市めいた居合で次々と敵を斬り捨てていく。空中に斬られた敵の鮮血を舞わせながら、魔法の詠唱を行う。
仕込み杖に納刀した途端、その上級火炎魔法である『ファイガ』が全体に放たれた。
次々と残る敵の断末魔が挙がり、既に死体となっている敵も焼きつくされていく。
やがてそのアジトは凄まじい炎に包まれ、二人は無感動な表情を浮かべつつ、その場を去っていく。
焼きつくされたアジトには焼かれている死体だけが残っていた。
それからして報告を聞いたガレンスは、この現実改変の本が本物である事を改めて思い知らされた。
目をつけた者を次々とPSICOMの者として現実を書き換えれば今まで以上の手駒を増やせるという事だ。
暫くして、彼女達と面識がある少女達を突き止めると、ガレンスは現実改変の本に次々と、その少女達がPSICOMのメンバーであるという現実を、虚構の現実を書き込み始めた。
ノイズが………走った。
古手川唯と結城美柑。グラマラスなスタイルをした生真面目な女学生と可愛らしい女子小学生。
しかし、ガレンスの書き換えによって二人もまた恐るべき戦闘マシーンめいたPSICOMの者へとなっていた。
その衣装は先の二人との違う特徴があった。
唯の方は偶然なのか分からないが、コートの胸部分に彩南高校の校紋めいたエンブレムの入ったブローチが着いている。
とはいえやはり特徴的なのはその下。ぴっちりとした競泳水着めいたハイレグである。
むちっとした彼女の尻肉や豊満な胸がきっちりと分かるようになっている。
本人は「ハレンチな…」といやな顔をしているが、動きはよく出来るので、しぶしぶそういうデザインなのに納得はしているそうだ。
美柑の方はその下にはハイレグではなく、明細色の軍服のようなものを着ているようだ。
なぜ他と違うのかは未だに謎である。
さて、戦闘能力はどうであろう。ガレンスは現実改変の本に書き込みをして、別の反対勢力の基地を壊滅させるよう命令を受けたと書き込んだ。
一瞬でノイズが走り、二人はその基地へ向かって走り出した。走った時点でも凄まじい走力である。
まるでそれは色つきの風を放つ何かのようだ。
やがて、二人は殴り込み、怒号が響く。
銃撃を唯と美柑は軽やかにそれを回避して、火炎系、氷結系、電撃系の魔法を次々と放ち、一人また一人と反対勢力の人間を絶命させていく。
「はあっ!!」
さらに、そのシャウトと共に唯がそのむっちりとした太ももで相手の頭部を挟み込む。
普通ならその手の癖のある男にとっては幸福であろう。
しかしそれは一瞬であり、次の瞬間にはその下半身を動かしてその相手の首をへし折った。
現実を改変させられる前の唯からは想像も出来ない身体能力、そして戦闘能力である。むろん、それは美柑も同様だ。
ゆっくりと、カツカツと歩きながら、差し出した両手から魔法を次々と放ち、無感動に敵を倒していく。
その姿はまるで幼女の姿をした軍人が無慈悲に敵を殺すようであった。ある意味、恐ろしい光景だ。以前の美柑からは考えられない。
やがて、その場に敵は一人もいなくなり、唯も美柑もいなくなっていた。
その後、報告を聞いたガレンスはある三人に目をつけた。
唯の友人である西連寺春菜、籾岡里紗、そして天条院沙姫である。
三人ともスタイルが良い。しかし、何よりガレンスが目をつけたのは三人目が名家の令嬢である事だ。
(この名家を味方にしておけば、後々で何か役に立つかもしれない。それなら後のこの二人もPSICOMのメンバーという形で現実改変しておく方がいいだろう……。)
「ふむ………。」
早速万年筆に手に取り、現実改変を開始する。むろん、三人の家族の者や知人もそれを認識して、受け入れているようにする事も忘れずに書き込んだ。
今にして思えば射程範囲の広いヘブンズ・ドアーのようなものである。この現実改変の本というものは。
やがて、それぞれに憩いの時間を過ごしていた三人にノイズが走り、その顔つきはキリッとしながらもどこか恐ろしい闘志、殺気を感じさせるような顔つきになっていた。
現実改変の影響で、既にその場にあったかのように置かれている服に三人は素早く着替えた。
それぞれ紫、黒、金色のハイレグ風の衣装を下に着て、その上にコートを羽織る。
そのコートにはそれぞれ、虎、鬼、そして龍の威風堂々たるイラストが刺青の如く刻まれている。
三人はそれぞれに黒い手袋を身につけると、装備を確認する。
春菜は刀、籾岡はリボルバー、そして沙姫はレイピアだ。それぞれに魔法を付与しての攻撃もできる仕様になっている。
少しして、三人はその場にはもういなかった。先程の二人と同様に色つきの風となり、ガレンスに楯突く者達の抹殺へと向かっていった。
…
………
……………
「はあっ!!」
「うぎゃあっ!!」
「そこおっ!!」
「がっ!?」
「遅くてよ!!」
「ぎゃああっ!!」
既に敵対勢力の基地の一つは三人の美少女達によってその場は血と硝煙と戦闘の音と断末魔が響く混沌の空間と化していた。
動く度にぴっちりスーツ越しの彼女達の実った胸は激しく揺れていた。しかし、男達は見とれる暇も無かった。相手は自分達を殺害しようとしているのだから。
春菜はどこで覚えたのか、卓越した居合術で次々と敵を斬り捨てていく。その刀身に次から次へと敵の血がついていく。
春菜は刀を握るその手に人を斬る感触を味わうが全くもって気にしていない。現実改変の影響故にか、殺しに対する抵抗も恐怖も全く感じていない。
あるのは、ガレンスの為に、聖府の為にひたすら敵対勢力を潰すことだけ。
それは後の二人も同様だ。
「ほらっ!くらいなよ!!」
軽いノリでファイアなどの火炎魔法を付与した弾丸をリボルバーから発射して敵を撃ち抜く籾岡。
撃ち抜かれた敵は次々と燃え上がり、焼け焦げていく。その間に籾岡はリボルバーの弾をリロードする。
弾を撃ち尽くす前に、弾倉がすっかり空になってしまう前にリロードする……。現実改変の影響でプロの習性が昔からのように身についていたのだ。
リボルバーは44マグナム故に通常なら肩が外れてもおかしくない。44マグナムのリボルバーはそれ程の強い威力だ。
しかし、現実改変の影響によって、そんな高い威力のリボルバーでの片手撃ちすら平然とやってのける身体能力へと現実を書き換えられている。
故に平気でリボルバーを撃ち、リロードし、また撃ち抜き、空間に撃たれた相手の血と脳漿をぶちまけていく。
そして沙姫。まるでサイコパスのように、上品でしかし恐ろしい笑みを浮かべつつ、そのレイピアで敵の眼球や喉元、胸などの急所を一突きにしたり、振るって切り裂いたりして片づけていく。
それは自分の付き人の一人をも、完全に凌駕するほどの身体能力であった。
余裕そうな笑みを浮かべながら次々と敵を仕留めていくその姿は気高しさというか、恐怖すら感じる。冷酷なお嬢様と言ったところか。
「あら……もうおしまい?もう少し骨があると思いましたけど……ふふ……。」
死体と化した敵達を見下すように見つめ、微笑を浮かべる沙姫。完全にPSICOMのメンバーの一人に昔からなっているような振る舞いだった。
なっているようではない。なっているのだが。
こうして、七人の美少女達が現実改変の影響によって、恐るべきキリングマシーンめいたPSICOMの女戦士と化した。
彼女達がこれからどうなるのかそれは分からない。
しかし、いつかはライトニング達の前に恐るべき強敵として現れ、殺し合う。
それだけは明らかであり、ガレンスにとってもそれはいつか来る楽しみとなっていた。
ただ、気がかりなのはあの本を渡した人物は何者かについてだ。
ガレンスにはそれが気がかりであったが、今はこの本の力で自らのしもべとなった彼女達に、更なる活躍の場を与える事に意識を向けていた。
彼女達はこれからも、修羅の道を歩んでいくのだろう。
威風堂々たるコートを靡かせて、年季の入った手袋の上から各々の武器を手にし、強力な魔法を放ち、眼前の敵を屍に変えながら。
最後にこれをご覧になった読者に、あの書物を渡した者の正体を教えておく事にしよう。
その者は、決して交わること無き二つの物語のそれぞれの存在が交わっている世界線を好み、そして、改変を好んでいる。
だから、ガレンスにあの書物を渡したのだ。その改変を目にし、己の心を満足させるために。
まだお分かりにならないだろうか。
その目的の為にガレンスに現実改変の本を渡した謎の人物の正体
それは………
匿名さん、貴方なのだから。
終
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