→Sin化済みのキサラさんが、スターダストを堕とします。
胎内回帰、丸呑み、unbirthな描写をお楽しみください。
*今後の執筆に向けて、意見を募集しています。
くわしくは活動報告欄にて!
*分割してみました。
1-1、青眼と星屑
その青年と龍は、言葉が違った。
その青年と龍は、住む世界が違った。
その青年と龍は、血の色が違った。
それでも……2人は固い絆で結ばれていた。
なのに――――。
「不動遊星! 貴様のスターダストは頂いていく! この時代と共に滅びるがいい!」
「すっ……スターダストぉぉ!!」
2人は時空を超えて引き裂かれた。全ての罪を識る者の手によって――――。
**
「さあ……。目覚めなさい、スターダスト・ドラゴン……」
「うっ……うーん……?」
声が聞こえたことで、鎖で十字の磔にされていた少女は、眠たそうな細目をしつつも、顔を上げた。
光り輝くエメラルドの髪に、少々の癖っ毛。マシュマロの肌に、短めの四肢。桃の頬に、くりっとした丸い緑眼。美少女と呼ぶには少し可愛いすぎるぐらいの、包み込んであげたくなるような、逆に布団のように包み込まれてみたくもなるような、そんな気持ちを抱かせる女の子だった。
……手先、足先、胸元、背中が、ドラゴンのそれでなかったなら。
つまり、手先と足先には鋭い爪がある。胸元から股にかけては、下着の代わりとしてか、グリーンのオーロラの如き竜の鱗で覆われている。背中には鱗だけでなく、生命の美しさを感じさせる白銀の翼も生えていた。
……まあ、『むしろ竜娘がいい』という紳士も、世間にはいるだろうが。
「……お姉さんはだぁれ?」
白と黒のコントラストが激しい部屋で、磔にされている彼女――スターダスト・ドラゴンの眼前にいたのは、美しい女性だった。
女性としては長身なほうだろう。細くスラリとした腕。見事な骨格に基づく、うなじから肩へのライン。美しく張り出した乳肌。そのいずれもが、大理石のような輝く白さを見せる。乳肌は途中から、蝙蝠の翼のような暴力性と身軽さを孕んだ黒のドレスで隠されている。白い肌と黒い服のコントラストが激しく、互いの威力を高めていた。
髪は引き締まった腰まで届くストレートで、輝く水面から深海の底へ至るように、白銀から漆黒へのグラデーションを見せている。星屑の少女を見つめる大きな青い眼は、濃密な樹海の如き見通せない闇を同時に内包し、その一部が涙の跡のように目元を黒く染めていた。
「さぁ……誰かしら?当ててみて? 貴女と同じデュエルモンスターズの精霊で、レベル8の通常モンスター。これがヒントよ」
「……ゴギガ・ガガギゴ?」
「貴女……。主人に似て天然ね……」
「えっ? わたし遊星に似てる? うれしいな……えへへ」
まるで、専制的女教師と無邪気を通り越した女子児童のようなやりとりである。
「この眼や肌を見てもわからないの?」
青く大きな眼と、白い肌……。
「あ! ブルーアイズ・ホワイトドラゴン!」
「正解よ。まあ……人間の姿の時は、気軽に『キサラ』と呼んでくれても構わないわ」
かつて、海馬瀬人というデュエリストが愛用していた強力なモンスターカード、『青眼の白龍』――。その雷名はスターダスト・ドラゴンまで聞き及んでいる。しかし――。
「でも……どうして……。消えたはずの青眼の白龍が、こんなきれいなお姉さんの姿で……」
ネオドミノシティのモーメントが暴走したことで起こった大災害『ゼロ・リバース』。それにより、遊星の、ジャックの、クロウの両親は蒸発し……海馬瀬人と青眼の白龍も、モーメントと運命を共にしたというのが、スターダスト・ドラゴンが知っている歴史だ。
「ふふっ、誉めてくれてありがとう。でもスターダスト。あなたは自分がこんな可愛らしい幼女になったことには、何とも思わないの?」
「あ……あれ?ほんとだ! なんで!?」
「ふふっ……。全てはパラドックス様のおかげよ……」
そこから青眼の白龍――キサラは、スターダスト・ドラゴンに、まるで聖書を読み解くように教えた。
死の淵から自分――キサラを蘇らせたのも。不動遊星の手からスターダスト・ドラゴンを回収したのも。スターダスト・ドラゴンを人間の少女の姿に変え、言葉が通じるようにしたのも……。
全ては――パラドックス様によるものだと。
そうして主人の偉大さを称えた上で、キサラはスターダストを闇にいざなった。
「さあ、スターダスト。あなたも、パラドックス様にお仕えするつもりはない? それが、デュエルモンスターズの精霊にとって、唯一残された救済と幸福への道なのだけれど……」
「……フンだ! あっかんべー!」
両手が拘束されているのでちゃんと出来なかったが、目と舌でその誘いを蔑んだ。
「お姉さんやパラドックスとかいう人が、何を企んだって無駄なんだから! 今に見てて! 遊星が……遊星が、絶対助けにきてくれるんだから!」
スターダストは遊星を信じていた。誰が敵であろうと、どんな困難が立ちふさがろうと、遊星が負けるはずがない、絶対に迎えに来てくれる、と。
「……そうよ。その態度よ……」
「えっ?」
だがその感情は――とても罪深いものだった。
「その態度が……! 遊星に頼ってばかりのその態度が……! あなたの罪よ! スターダスト!!」
此処より、罪に堕ちたブルーアイズによって、スターダスト・ドラゴンは、裁きの天秤に掛けられる――。
「どういう意味……? わたしの、罪……?」
「そう。あなたが遊星を頼り、慕うほど……それは重圧となって、遊星を苦しめることになるのよ」
戸惑うスターダストに対して、全てを見通しているかのように話すキサラ。その姿勢の差異は、スターダストの自信をさらに失わせる。
「でっ、でたらめいわないでよね! わたしと遊星は……固い絆で結ばれてるもん! お互いのことが、大好きだもん!」
「物わかりが悪いのね――証拠を見せないとわからないほどに……」
証拠――。そのキーワードに反応したかのように、キサラの右横で、部屋の模様よりもっと細かい白と黒の砂嵐で四角形の面積が覆われた。おそらく映像装置なのだろう。
「この映像。あなたにとっては……2年ほど前のことかしらね?」
砂嵐が止むと、その映像では、スターダストの想い人が、日の射さぬ暗い部屋で、椅子に伏していた。
「――遊星!」
そんな彼女の声と関係はないだろうが、遊星が顔を上げた。現在より少し若者らしい棘々しさのある顔立ち。だがそれ以上に衝撃的だったのは……。
「……泣いてる、の……?」
血のように、少しずつ滲み出る涙が、彼の足元の灰色を黒く染めていった。
『なぜだ……! ジャック……! スターダスト……!』
2年前の映像、ジャック……。このキーワードから、スターダストは遊星が泣いている理由がわかった。
2年前……遊星の友だったはずの男、ジャック・アトラスは、遊星のDホイールとスターダスト・ドラゴンを奪い、故郷を捨ててシティに旅立ったのだ。しかし……。
「彼の涙の原因は貴女。彼の涙は貴女の罪。それが理解できるかしら?」
「えっ……?」
悪いのはジャック、もしくはジャックをそそのかした誰かだと思っていたスターダストには、その言葉の意味するところをつかめなかった。
『俺のせいだ……。俺が弱かったから、ラリーや、スターダストを、あんな目に!!』
「……彼は、自分の無力さと、それによって起こった悲劇を嘆いて泣いている……」
無知で愚かな星屑の少女に、キサラは遊星の言葉の意味するところを講義した。
「わかる? 貴女に強さがあれば……ジャック・アトラスを拒めるだけの意志があれば! 遊星は涙を流すことはなかった!この涙は、貴女が背負うべき罪なのよ!」
「そんっ……な……。そんなことっ!」
今まで一方的にキサラの話を聞かされていたスターダストだったが、遊星の一番近くにいたのは自分、遊星の魂のカードは自分だという誇りから、いい加減吹っ切れた。
「違う! 私は遊星の力! 遊星の魂のカード! だから私には……遊星を、遊星の仲間を、守れる力がある! 心がある! 私は弱くなんかない!!」
「……弱くなんかない、心がある、ねぇ……」
噛み締め、砕くように、キサラは星屑の少女の言葉を繰り返した。そして、容赦ない出る杭を打ち据える。
「……じゃあなんで、そんなチャチな拘束すら振りほどけないの? 貴女がそんな大したものを持ってるなら、さっさと遊星のところへ帰ればいいのに……ねぇ?」
「うっ……くっ……!」
鎖が冷たい音を鳴らす。星屑の少女がいま出せる力の全てを以て動いても、その程度のことしか起こらないのだ。
「それに……あなたってシンクロモンスターよね? 『青眼の白龍』や『ブラック・マジシャン』のように、自分の意志でデッキや手札に動いたことはある? 遊星のプレイングで呼ばれて、遊星の言うとおりに動いただけ……。そんな貴女の心に、どれほどの価値があるの? 意味があるの? ねぇ……私に示して見てよ。分かるように言ってみせてよ……ねぇ?」
「うぅ……くぅっ……」
容易に噛みつけそうな程までキサラは肉迫し、詰め寄る。星屑の少女は、叱りつけられた子犬のように、弱々しく恐れをなす外なかった。
(……そろそろね)
キサラは自分が経験したことであるから、よく知っていた。己の罪と向き合うには、中途半端な力や誇りは邪魔なだけ。それを除去した上で、押しと引き、飴と鞭を巧みに操ることが、心を堕とす秘訣だと……。
「さぁ……。正直に言ってごらんなさい……。遊星を守る意志も、力もない貴女が、何故遊星の傍にいたいと願うのか……。自分の本当の気持ちを晒してごらんなさい……。怒ったり、叱ったりしないって……約束、するから……ね?」
耳元で、ゆっくりと囁く。天使のような慈悲と、悪魔のような魔性を孕んだ声……。とうとう、懺悔の涙と共に、スターダスト・ドラゴンの本心が零れ始めた。
「だってっ……。わたしっ……! 遊星、のことが、大好きっ……だから……っ……!」
徹夜した後の眠そうな顔も。機械を弄った後のオイルの匂いも。デュエルに勝ったときのしたり顔も。絆を守るために闘志を燃やす姿も――。
みんなみんな、スターダストは大好きだった。
「だからっ……わた、しっ……。遊星のっ、そばに、いたい、のっ……!」
「……でもそれが、どれほど罪深い欲望なのか……。理解、できたわよね?」
「――いやだっ……! いやだよぉ……!」
首を振り、もはや涙を『零す』のではなく『流し』ながら、彼女は駄々をこねる。
「寂しいのは、いやなの……! 悲しいのは、いやなの……! わたしを……ひとりぼっちにしないで……!」
それに対してキサラは、スターダストにぐいっと近づき――包み込むように、彼女を抱き締めた。
「……大丈夫……。大丈夫よ……」
「……えっ?」
繰り返し、繰り返し……キサラは落ち着いた声で、スターダストに語りかけた。スターダストは戸惑いを隠せなかったが……。
「ごめんね……。貴女があまりに可愛らしいから、ちょっと苛めたくなっただけなの……。ごめんね……。でも、本当に大丈夫だから、ね……?」
「き、キサラ……さん?」
戸惑いのあまり、スターダストは彼女を名前で呼ぶ。それが、堕ちるところまで堕ちきった龍であるということを忘れて……。
堕天した龍は、その隙を見逃さない。
「貴女のことを本当に理解できるのは、私だけ――。
貴女を本当に受け入れられるのは、私だけ――。
貴女を本当に導けるのは、私だけ――。」
「キサラ、さん……だけ……?」
子守唄のように、ゆったりとしたリズムで言葉を紡ぐ。スターダストは、確かめるように、覚えるように、それを繰り返す……。
「私が貴女の、傍にいてあげる――。
私が貴女の、寂しさを埋めてあげる――。
私が貴女に、愛を与えてあげる――。」
「キサラさん、が……わたしに……」
少しずつ……だが次々と。赤子が言葉を学びとるように、スターダストの中にキサラの存在が刷り込まれていく。ウトウトし始め、目がとろけているスターダストに抵抗はない。隔たりなど、何一つ存在しない……。そして、最後の壁を超える時がきた――。
「だから……任せて? 私に……全てを――――」
もはやスターダストは、その意味を理解していない。罪に堕ちた龍の、魔女のような妖しい灰色の眼が見えていない。しかし……。
「うん…………」
船を漕ぐ一過程のように、だが確かに、星屑の少女は頷いて返した。
理由も葛藤もない。
子が母の言うことを聞くのに……理由など不要なのだから……。
――ずぶっ。
「えっ…………?」
どれだけの時間呆けていただろうか? 星屑の少女は、熱くてぬめりとしたモノの存在を自分の脚で感じ、自分を取り戻した。
いままで、何があったのか。いま、何が起こっているのか。いまから、ナニが始まるのか。
思い出しながら、確かめながら、想像しながら、辺りを見渡した結果……少女の呼吸が、一瞬止まった。
左右には、自分の胴と同じぐらいの太さの、柔肌の柱。そして自分の脚は――――。
――女性の股間に呑み込まれ、もはや膝が見えなくなっていた。
「ひっ!? いやぁ! いやだぁぁ!!」
自分は食べられるのではないか? 餌として溶かされるのではないか? そんな本能的恐怖から、彼女は腕と大腿筋をフル稼働して逃げようと試みる。
「食べないでぇ! 死にたくない! 死にたくないよぉぉ!!」
「あら? 死ぬんじゃないわ。……生まれ変わるのよ」
そう優しい声をかけたのは、服を脱ぎ捨て、頭蓋ほどの大きさに縮んだスターダストを膣に挿入している張本人……キサラだった。顔ばかりは温もりを感じるほどに笑っているが、その根底にあるのは……狂気だった。
「貴女は私の子宮の中で……『Sinスターダスト・ドラゴン』として生まれ変わるの。パラドックス様をマスターとして崇め、デュエルモンスターズを滅ぼし、歴史に変革をもたらす尖兵として戦う……。それって、素敵なことじゃない?」
狂人にとっては素敵だろう。しかし、スターダストにしてみればたまったものではない。へそが見えなくなりつつある絶望的状況下、泣き叫ぶ声の中には、自分を助けうる唯一の決闘者の名があった。
「いやっ! た、助けて! たすけてぇ! 遊星! 遊星ぃ!!」
しかし、それすらも狂気の傘の下には含まれていた。
「あらぁ。これは遊星のためにもなるのよ? デュエルモンスターズが滅べば、
貴女と遊星が出会った罪は消える。それに、ゼロ・リバースが起こらないから、遊星の両親は死なずに済む。
不動遊星に両親を返してあげる――。
これ以上の罪滅ぼしと恩返しなんて、きっとないわ。たとえ遊星が貴女の傍からいなくなっても、私とパラドックス様が、貴女を愛する……。だから……安心して、生まれ変わりなさい……」
「あ……あぅ…………」
諦めたつもりはない……。
しかし、もう肩が動かず、髪に粘液を感じ始めた今、もう抵抗の言葉を放つ気力は、彼女にはなかった。
ただ……。
情愛か、追憶か、切望か……。頭のてっぺんから、爪の先まで――全てが呑み込まれる瞬間まで、彼女はその名を呼び続けた……。
「ゆう、せ……い……。ゆ……う……せ、い…………」
「うっふふ……。――おやすみ」
母性の美しさの絶頂とも言える、豊かに大きく膨らんだお腹を撫でながら、キサラは我が娘となる星屑の少女に語りかけた……。