活動報告にて、ご意見を募集しています。
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(あれ……わたし……?)
湯船でのぼせたように、全身が熱く、意識が曖昧な状態で、スターダストは目を覚ました。
(ねむい、なぁ……。でも……ねちゃ、ダメ……)
気を抜くと眠りに落ちてしまいそうな、ゆるやかな気持ちよさ。それに抗い、ボーっとして機能していない視覚を働かせて――。
(――え?)
彼女の思考が一気に覚醒した。
天地左右その全てが、紅くテラテラとした、粘膜質の肉壁に覆われ、大文字に開かれた四肢に密着していた。まるでサンドイッチの具にでもなったようで、動くに動けない。空気はない。その代わり、彼女は乳のように温かく、汗のように生命力を感じる粘液の中で溺れていた。肺までその液に満たされていながら、息苦しさを感じることはなかった。
(こっ……ここって……! カラダの、ナカなの……!?)
液体のせいで上手く声帯が動かせず、心の中で呟いた驚きに対し、
『ええ、そうよ……。ここは私の子宮の中……』
長く耳に残るように響く声が応えた。
『あなたの名前は……“Sinスターダスト・ドラゴン”。私の、かわいいかわいい赤ちゃん……。生まれたい気持ちはわかるけど……。おそとはあぶないから……それは、もう少し、大きくなってから……ね?』
(ふっ、ふざけないで! 私は、シン、シゥ……『スターダスト・ドラゴン』! あなたの赤ちゃん、じゃ……な……。あぅ……)
彼女は、自分の言葉に戸惑いを隠せなかった。自分が、すごく悪いことを……すごく誰かを悲しませることを……口走ろうとしていたような気がしたからだ。
『はいはい。ワガママはそれぐらいにして……。じゃあ、ごはんの時間よ……』
あやすような声に続いて現れたのは、二本の太さが異なる触手だった。一方は指二本分ほどの細さで、自分のお腹を目指している。もう片方は、手首に匹敵する太さのもので、彼女の目の前を横切っていくのが見えた。
自分は半ば胎児同然。そして『ごはんの時間』。用意されたのは二本の触手。
まさか――と思ったその時、一瞬の鈍痛と共に、『ごはん』が与えられ始めた。
(ひぎぃ!?)
臍に、細いほうの触手――臍の緒が挿入されたのだ。そしてすぐさま栄養を放出。それにより、無知な少女は今まで知らなかった感覚と出逢った。
(うああぁぁ……! ドクッ、ドクッて……喜んでる! 私のカラダ、勝手に喜んじゃってるぅ……!)
血管が、消化器が。彼女の心とは別に歓喜の感情に震え、与えられた栄養と愛情を飲み干していく。神経を通じてそれらを認知した彼女は、口をパクパクさせながら悶える――その機を、片割れの触手は逃さない。
(んぐぅ!?)
太いほうの触手が、口腔に挿入された。
(こ、こんな変なもの、口にいれちゃ、ダメ、だよね!?)
吐き出すか、噛みきるか、くわえ込むか……ともかく口と舌を動かす。その結果、触手が持つ特長を、脳に最も近い粘膜細胞で感じる羽目になった。
張り詰めるほどぎっしりと詰まった肉の塊。そこにあるのは頼もしく逞しい生命力だ。子が親に、雌が雄にひれ伏すように――征服してほしい、支配してほしい、貴方の色に染めてほしい……という本能が沸き上がってくる。
(すごい、コレ……。口の中で、ビクン、ビクンって暴れて……。むねぇ、ドキドキするよぉ……!)
そんな本能に応えてくれるものが、触手内の狭い管を旅して、こちらに向かってくるのが触覚で分かった。
(あぁ……! 来てぇ……! 早く来てぇ……! もっと、ドキドキさせてぇ……!)
何が来るのかは分からない。本来なら警戒し、拒否するべきだった。しかし、少なくとも悪いものだとは断言出来ない、本能がそれを欲している……という言い訳に流され、吸い出し、絞り出すような口淫を始めてしまう。
『かわいい……。“Sinスターダスト・ドラゴン”、とっても淫らでかわいいわ……。ご褒美に受け取りなさい……。愛情たっぷりの、ごはん、をね……』
彼女の痴態に満足した母と触手は、『ごはん』をたっぷりと噴出した。
(んんんぅ――――――!? 熱い! あつい! 口から胃の中までぇ……全部やけどしちゃうよぉ!!)
口腔を一瞬で満たし、無理やり、食道に……胃に流し込まれた熱くドロドロとした液体は、おおよそ彼女の常識には存在しないものだった。
最初に感じたのは苦さと塩辛さ。しかし、魚介を何日も溶岩で煮詰めたような高熱と旨みある香ばしい匂いが苦味を中和する。さらに、塩辛さから派生して味蕾が甘みを誤認識した。
(にがぁい……。しょっぱぁい……! うまい……? あま、い……!? わ、わかんない! わかんないよぉ!!)
苦さ、塩辛さ、旨さ、甘さ……これらの混沌とした味が、水の一杯や二杯では決して薄まらない量と濃度で味覚細胞を強襲した。しかも強い粘り気によって長時間絡み続ける。味覚神経に異常な高圧電流が流れ、脳はそれを処理しきれずにオーバーヒートを起こした。
脳の許容しうる容量を超えた分の情報は、快感として全身へと溢れ出した。
(あぁ……! オイシイぃ……! キモチイイよぉ……! これは……これはいったい何なの!?)
なんにも知らない白紙の頭。しかし賢く可愛らしいその胎児は、快楽を受け取っただけで満足せず、探求心を芽生えさせる。優しい母親は、それに応えて教えてくれた。
『その味、その熱さ、その快感が……“愛情”のカタチなのよ。“Sinスターダスト・ドラゴン”……』
(あい、じょう……? これが、愛情なの……?)
こんな、燃えるような威力が愛情なのか……。知識が上塗りされ、書き換えられることを、彼女は何の抵抗もなく受け入れた。更新された知識は、彼女の行動原理の礎となる。
(だしてぇ……。だしてぇぇええ!! もっと欲しい! 愛情を……。いっぱい……いっぱい注いでぇぇええ!!)
口の粘膜だけでなく、舌全体、首の筋肉まで動員して、触手にご奉仕する。それを見かねてか、触手が新たに二本追加された。蛇のようにくねりながら、狙いを股間に定め、焦らすように少しずつ近づいてくる。
(あ……。また、太いのが……。私に、『愛情』を、くれるの……?)
股間にあり、体内へと繋がる2つの穴。そこからも触手が入り、溢れるほどの愛情を注いでもらえるのかと思うと……息を乱すように、呼吸しているかのように、下の口が開いたり閉まったりするのがわかった。
(入れて……! 入れてぇ……!)
触手を口にくわえたまま、目でおねだりする。それに対し、2本の触手は返事をする代わりに、勢いよく首を突き入れた。
(んっ……はああああ!!)
彼女はまた新しいことを覚えた。股間に、こんなにも敏感で快楽神経が密集した口があったとは知らなかった。いや、力強い生命力と、それが与えてくれる快感は、本来この口で味わうものなのだろう。その証拠に、口のように意識をしなくても、勝手に触手を締め付け、咀嚼をしている。
排泄するための穴をナニかが逆流してくる感覚が、こんなにゾクゾクとした気持ちよさを生むとは思いもしなかった。挿入と排泄の間で行われるバトル。その火花が、自分の快楽神経にダメージを与え続けているのがわかる。
(キモチイイぃ……! キモチイイよぉ……! もっとぉ……たっぷりの愛情でぇ……気持ちよくしてぇぇええええ!!)
触手が入っただけでこれほどの快感なのだ。そこにさらに『愛情』が注がれればどうなるか……。不安すら、期待感を高めるスパイスとして働く。
触手が熱を帯び、一回りほど膨らんだかと思うと……4カ所全てで、『愛情』の大爆発が起こった。
(んはぁぁああああ!! き、きたぁ!! 熱い! 熱いぃぃ!! 溶けるっ、とろけりゅぅぅぅぅ!!)
いずれの穴も、その伸縮性を生かし、ゴクゴクと灼熱の液体を飲み下していく。
口腔から胃腸へ。肛門から腸へ。膣壁から子宮へ。血管から心臓へ……。
それは長時間に及び、一定のリズムで脈打つ注入の拍動と、胸の中の心拍が完全なシンクロを果たし、心地よい一体感が生まれる。その勢いと量を喩えるなら、彼女が風船のように、膨らみ、はちきれんばかりであった……。
否。比喩などではなく、彼女の体は確かに膨らんでいた。ただし風船のようにではない。樹木がすくすくと育つように……栄養と愛情を受け続ける彼女は、母の胎内で成長していった。無論だが、彼女の成長に合わせて触手の太さも最適化されるので、快感が衰えることはない。むしろ、時間と比例して蓄積していくぐらいだ。
同時に、彼女にとっての世界たる肉壁にも動きが現れた。成長した彼女とは逆に、収縮を始めたのだ。
(うわぁぁ……! せ、せまい……!)
大きくなる身体……。小さくなる世界……。
圧力と摩擦は当然強くなる。鱗が押し込められ、柔肌が歪み、締めつけを感じるほどに。
まるでパン生地にでもなった気分だった。たっぷりと味付けをされ、作り手が望むような形になるように、伸ばし、丸め、揉みくちゃにされる……。そして完成品は、材料の原型を留めていないのだ。
(キモチイイ……。こわれるぅ……。なにかが……こわれてるぅ……)
理性……。羞恥……。常識……。記憶……。
彼女の中にある壁が、ひとつ、またひとつと、壊れていく。壁が壊れる度に、打たれたような快感が走る。壊れた壁からは、快楽の激流がなだれ込む。身体の中の隙間が埋められていく……。
そして彼女はついに、最後の壁――外殻とでも呼ぶべきものの存在を感じた。
それは、『スターダスト・ドラゴン』の、存在という殻だった。
同時に、『愛情』の噴出が、休憩のごとく止まった。
『さあ……。それが最後の壁よ。それを壊せば……貴女は、サナギが蝶になるように、新しい自分に生まれかわる。私の胎の外で、生きることができる。
さあ、イメージしなさい……。
貴女は……。どんな自分に、生まれ変わりたい?』
(どんな……わたしに……?)
母との、おそらく胎児としては、最後の会話だ。
(わたしって……なにが、したいのかなぁ……。――遊星)
不動遊星の顔が思い浮かぶ。自分は……彼のことが好き『だった』。だから今まで、『スターダスト・ドラゴン』として、彼の傍で生きてきた。
同時に、それが理由で、罪を背負った。不安だった。怖かった。しかし、いま好きかと聞かれると……。
(遊星より……おかあさんのほうが、すき……。だって……こんなに、愛情を、くれたんだもん……。パラドックスさまも、きっと、遊星よりすてきな人。だって、わたしを、おかあさんのところに、つれてきてくれたもん……)
これからは母と、パラドックス様のために、生きていきたい。ただし。
(遊星に、罪滅ぼしと、恩返しぐらいは、しなきゃダメ、だよね? おかあさん……)
――彼女の決意を揺るがすものは、何もなかった。
(私は……『スターダスト・ドラゴン』をやめて、『Sinスターダスト・ドラゴン』になるの……)
(おかあさんと、パラドックス様のために、デュエルモンスターズを滅ぼして、ゼロ・リバースを防ぐために、戦うの……)
(そのついでで、遊星への罪滅ぼしと恩返しをするの……。すてきなおとうさんと、おかあさんを、遊星に返してあげるの……)
(だから……だから頂戴……! 愛情をぉ……もっとぉ……! 逝って! イって! 生まれ変わるほどの愛情をぉ!! 私にぃ、注いでぇぇええええ!!)
肉壁の外圧で動けないはずなのに。
彼女は、腰を上下に、首を前後に激しく揺らし、触手にねだる。口、喉、食道、胃腸、肛門、子宮、膣壁、血管……あらゆる管と粘膜を収縮させ、触手を絞る。
そしてとうとう、触手が二回りほども膨らみ、『愛情』の洪水が彼女に流れ込んだ――!
(んんんんんん!! ふぁぁああああ――――!? 逝くッ!! イクッ! 生くッ!! わ、わたしぃ……生まれ変わるぅぅうう!!)
もうこれ以上、身体が成長することはなかった。身体の内圧が上がる。もはや心身共に限界が訪れ、破裂しようとしていた。心の外殻と、身体の鱗がひび割れていく……。
『さあ、生まれなさい!“Sinスターダスト・ドラゴン”!』
(ふああああああああ――――!?)
次の瞬間、彼女の全身が黒く発光した。
暗黒の光の中で、彼女の存在が作り替えられる。とっても大きなものを壊したときの爽快感、壊してはいけないものを壊した背徳感が、彼女を最大級の絶頂に導く。
時間にして数秒。だが永遠とも思えるような浮遊感。それが終わるとキサラの腹から、ドシャっと、羊水や白濁液と共に、『Sinスターダスト・ドラゴン』が産み堕とされた……。
「おめでとう……。おめでとう……! 貴女は、新しい自分に生まれかわった。私が、貴女のお母さん――『Sin青眼の白龍』。さあ……貴女を胸に抱かせてちょうだい?」
『Sin青眼の白龍』――もとい、罪に堕ちたキサラが産み堕としたのは、赤子というにはあまりに大きな、しかし可愛いらしく、妖しい少女だった。
暗闇の森のように、髪色は漆黒と浅緑が縞を成し、黒髪や銀髪が、所々混ざりながら寝癖のように跳ねている。銀髪は母親譲りだろうか。髪が羊水と白濁液に濡れ、顔に貼りついているところや、雫を垂らすところが、何ともいやらしい。また、長い黒髪が仮面のように左眼を隠していることで、ミステリアスな雰囲気も醸し出している。
マシュマロの肌、桃の頬は、お菓子の家のように見た者をしゃぶりつきたい衝動に駆らせる。幼い四肢と、涙を隠すように黒髪で覆われた左眼、憂いの闇が混じったエメラルドの右眼で縋りつかれれば、如何なる堅物でも堕とせるだろう。
ドラゴンとしての身体的特徴も、罪に穢れている。グリーンのオーロラの如き竜の鱗は、その一部が、白や黒の無機質な鎧に変化していた。生命の美しさを感じさせる白銀の翼は、鍛えられた刃のように、硬く、白と黒以外の色を持たず、あらゆるものを斬り裂くような鋭さを持つものに改造されている。
『Sinスターダスト・ドラゴン』は、キサラの声こそ聞こえていたものの、すぐには反応できなかった。あまりに外界の刺激が、強かったからだ。
(き、きもちよすぎるぅぅ……。おそとって……すごく……しげきてきぃぃ……)
肌と床が擦れる感触。肌を流れる粘液の感触。息を吸い込み、吐き出す感触。
そのいずれもが、あまりに新鮮な体験で、彼女の神経は過敏に反応していた。ビクンビクンと震えながら、悶えるばかりである。
「はぁ……っ。はぁ……」
1分ほど経ち、やっと慣れてきた彼女を襲ったのは……虚無感と疼きだった。
(や……やぁ……! くち、おへそ、おま○こ、おしりぃ……! うで、むね、かお、ふとももぉ……! なんで、なにも、ないのぉ……!?)
何もない夜の砂漠に放り出されたように、不安で、寂しくて、怖くて……。
「どうしたの?『Sinスターダスト・ドラゴン』。私にだけは――甘えていいのよ?」
……見つけた。やっとオアシスを見つけた。
……いや違う。オアシスより、もっと大切で、安らぎがあって、水よりもっと素晴らしいものを与えてくれる存在……。
「お……かあ……さん……!」
まだ走れない彼女は、必死にハイハイをしながら、母の下へ駆け寄る。母は、近くまで自力で来られた我が子を褒めるように抱き寄せた。
「――よく生まれてきてくれたわね。よしよし……」
「ふぁっ……! ふわぁぁ……!!」
なんて気持ちいいのだろう。心臓の脈が速くなる。
なんて安心できるのだろう。心臓の脈が遅くなる。
なんて素晴らしい感覚だろう。心臓の脈は、自分に最も適したものに落ち着いていく。
母の手で包み込まれた背中が気持ちいい。母の背を包み込んだ自分の手が気持ちいい。
この人の言うことなら何でも聞こう。そんな素直な心が作られていく。
「じゃあ、いい?『Sinスターダスト・ドラゴン』。これからは、パラドックス様の悲願の為に、不動遊星に、恩返しと罪滅ぼしをするために、デュエルモンスターズを滅ぼす戦いに、身を投じるのよ? わかった?」
「……うんっ」
えへへ、と微笑みながら、母親の言う通りに、自分が胎内で志した通りに、彼女は生きていくことを誓った。
「よく返事できたわね。可愛くて、賢くて、淫らで……とってもいい娘ね、『Sinスターダスト・ドラゴン』は。じゃあ、ご褒美に……」
キサラは、黒いワンピースドレスの胸元をずらした。そこに現れたのは、たっぷりと瑞々しさを蓄えていそうな柔らかい果実――乳房だった。
「さあ、召し上がれ……」
少女は迷うことなく、乳房を逃がさないように両手で捉え、乳首から大きな口でくわえ込む。
端から見れば、童女が二十歳前の女性の乳房に迫っている構図だ。現実的にはありえない……だからこそ、そこにはカタルシスがあり、淫らさが引き立つのだ。
乳房にみっちり詰まったものを、本能のままに強く吸い出した少女は、その味に酔いしれた。
(あぁ……! これって……。『愛情』の味だぁ……!)
喉を鳴らしながら、呼吸を忘れているのではないかと思うほどの勢いで、ゴクゴクと少女は母乳を飲み下していく。
愛情、性欲、快楽、贖罪……。そういったものに、星屑の少女は、どこまでも堕ちていく。溺れていく……。
――こうしてパラドックスのデッキに、『Sinスターダスト・ドラゴン』が新たに加わった。
彼の計画の、完成は近い――。