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*このお話の続編↓
瀬人VSキサラ http://novel.syosetu.org/34340/
――――気がつくと、キサラは白と黒のチェック模様の部屋に戻っていた。
「気分はどうかね?キサラ……」
パラドックスに声をかけられて、意識が覚醒。顔を上げてパラドックスを見つめる。
先ほどまで蒼く澄んでいた瞳は、泥の混じったように黒く濁っていた。目元には涙の跡のように黒い刺青が刻まれている。そこに、あの気高く清らかな少女はいない。
「くる、しい……。かな、しい……です……。パラドックス、さまぁ……」
一呼吸ごとに息が詰まりそうになる。心臓の鼓動を感じるたびに、罪深い自分が生きていていいのかという不安に駆られる。救いがほしい。そのためなら、何だってできる。
「それは、君が自分の罪の重さに耐えられないからだ。さあ、行こうキサラ。君の罪の清算に……。デュエルモンスターズを滅ぼす戦いに……」
コクンと、何の躊躇いもなくキサラは頷いた。
「わかり、ました……。パラドックス、さまぁ……。でも……お願いが……ひとつだけ……」
パラドックスの眉が動いた。まだ自我を残しているのかと警戒したが……それは杞憂だった。
「セト、を……死なせて……あげたいん、です……」
「それは――なぜかね?」
「生きるってね……。とっても罪深くて……苦しくて……悲しいことなんです……。だから……終わらせてあげたいんです……。私の、愛している、セトを……救いたいんです……」
焦点の合わない、虚ろな目をしながらも、キサラははっきりと自分の愛を語った。
「おねがい……しま、す……」
それに対してパラドックスは――。
「ククク……。ハハハハハ!!」
いかにも愉快な様子で笑い、彼女を称えた。
「面白い! すばらしいな、キサラ! これほど穢れ! これほど己を見失いながら! 歪ませつつもセトへの愛だけは守り抜いたか! ――いいだろう。その願いを聞き届けよう。どうせデュエルモンスターズが滅べば海馬瀬人も無事では済まないのだが……。私の大いなる計画が遂行された後、改めて殺しにいくとしよう!」
「あり、がとう……ござい、ます……」
「ではそろそろ……私のデッキに入ってもらうとしよう」
パラドックスは、2枚の白紙のカードを彼女の前にかざす。光が迸る。キサラはそれを、ただ呆然と眺めていた。
「ククク……。とうとう手に入れたぞ! 『Sin 青眼の白龍』と、『青眼の白龍』をな!」
光が止むと、キサラの姿は消えていた。代わりに、"4枚の"カードがパラドックスの手に収まっている。
「――おや?」
彼は、『Sin 青眼の白龍』と『青眼の白龍』の2枚のカードを手に入れたつもりだった。しかし、2枚予想外のカードが増えている。
1つは、愛するもの全てを守り抜く守護龍。その名を――『蒼眼の銀龍』。
1つは、白き龍を操り、若きファラオを支える妃。その名を――『青き眼の乙女』。
キサラが闇に堕ちる、その最後の瞬間に見た夢が実体化したカードだった。パラドックスはそのカードを――デッキの外、服のポケットに仕舞い込んだ。
「捨てるには惜しいが……。これをキサラに見せる訳にはいかん。一旦保留だな」
――こうして、パラドックスは『Sin 青眼の白龍』を手に入れた。
こうやって戦力を増やし、その力を以って、ペガサス・J・クロフォードを抹殺し、デュエルモンスターズを歴史から消し去る。あらゆる時代を行き来するのは忙しいが、未来には変えられない。
「さあ……私の大いなる計画の完遂は、間近だ!」
パラドックスは、その部屋から黒い炎のようにぼやけて消えた。
時空を超えた、未来を賭けた戦いが、始まろうとしていた……。