イッセーがヒロインたちと一線を越えちゃう話 作:Scorcher
何が嫌かといえば、ユーグリット・ルキフグスという名前が問題というもの。ユークリッド、ユーグリッド、おそらく最強の誤字率を誇るキャラ名だと思います。
ちなみに内容はシスコンを脳破壊を施すだけです。こんな扱いですが、彼にはあとで再登場してもらいます。
次回は非エロパートのラスト。本作における数少ないオリジナル要素を詰めた回となります。
アーシアが妊娠してからしばらくしたある日。平穏は突如として打ち破られた。旧魔王派であり、これまで現悪魔政府には敵対の意思を見せていなかった勢力が蜂起。
『クリフォト』を名乗る勢力の首魁はルシファーの正当なる子孫であり息子、リリンことリゼヴィム・リヴァン・ルシファー。そして、そのリゼヴィムを担ぎ上げたのがユーグリット・ルキフグス。グレイフィアさんの実の弟なのであった。
◇
度重なる激戦の果て、俺たちはクリフォトを追い詰めることに成功する。アーシアに手を出そうとした首魁のリゼヴィムは、ファーヴニルと実の孫であるヴァーリの手によって葬られた。自称・超越者だったのだけど、神器を無力化出来る以外は大したことがない奴だったようだ。
しかし、だからといって全てが解決したわけではなかった。身に纏った赤龍帝の鎧が半壊した状態の俺が対峙する相手ユーグリット。四大魔王と同等の実力を持つこいつと一騎討ちとなった俺は、劣勢に立たされていた。
「どうやら、リゼヴィムが討たれたようだな。我々の首魁として、あの道楽者にはもう少し生きていて欲しかったが……まぁ良い。」
「はぁ……はぁ……お前らクリフォトも、これでもうおしまいだな……!」
「おしまい?何を言っている。我らの目的は既に果たされた。この狂った世界を無に帰す唯一にして最高の手段は、リゼヴィムの死によって解き放たれたのだからな……!」
ユーグリットがそう歓喜を滲ませながら声を上げると、突如として地面が激しく揺れ出す。そして、崩壊しかけた戦場にさらなる瓦礫が飛び交うと、上空には一匹の巨大な魔物が姿を現す。
「あれは……!?」
キメラ、キマイラを素体にしたか、あるいは四足歩行である何かしら生き物をモチーフにしたのか。異形に異形を重ね、悍ましさに溢れ返った存在。あらゆる神話体系で口にすることさえも憚られ、次第にその存在さえも朧気となった黙示録の獣。
「見ろっ!この世の全てを滅ぼす黙示録の獣、666(トライヘキサ)が復活を果たしたぞ!」
その魔物の復活は、実質的な俺たちの敗北であった。クリフォトによるトライヘキサの復活阻止。その目的は首魁であるリゼヴィムを討っても成就されてしまった。それでも
「クソがぁぁぁぁっ!」
「おぉっと……!」
俺が瞬時に接近して、渾身の力を込めて放った拳。ユーグリットはそれ難なく魔法障壁を展開して防ぎ、その障壁を利用して俺を軽く吹き飛ばす。
「がはぁっ……!あぐぅっ……ち、ちくしょう……!」
瓦礫の山に叩きつけられ、鎧は完全に破壊されてしまう。そんな俺を見兼ねたドライグが、堪らず神器の宝玉を光らせて声を上げる。
『相棒、もう十分だ。トライヘキサが復活した以上、お前がこいつと戦う意味もない。今は大人しく退くべきだと思うぞ。』
「ふざけるな……こいつはリゼヴィムを焚き付けて、俺たちから全てを奪おうとしている張本人だぞっ!それを見逃すことなんて……」
なんとか瓦礫の山から這い出た俺は、復活したトライヘキサ以外に興味を示さなくなったユーグリットと再び対峙する。
「見苦しく、醜いものだな。下等な人の身でありながら悪魔を騙り、大した力もないまま赤龍帝を身に宿し、何も果たせないまま朽ち果てていく哀れな奴め。」
「うるせぇ……!お前みたいに……何もかもに恵まれたやつに、俺の何が……」
「ああ、分からないさ。分かりたくもないがな。これ以上力もなく私の行く手を阻もうというのであれば、そろそろ消えてもらおうとしようか。」
そう言うとユーグリットは巨大な魔方陣を展開し、その魔力の塊を俺に向けて放とうとする。
「顕現したばかりのトライヘキサ……その力の一部を使うにはちょうどいい相手か。」
魔力の塊である球体の周りには、呪いの文字のような何かが延々と駆けずり回っていた。ユーグリット自身の魔力にトライヘキサの力を合わせ、全てを無に帰す魔力を俺に放とうとしていた。
「くぅっ……クソっ……!」
「お別れだ。力なき哀れな龍よ。」
勝ち誇るような笑みを浮かべて、ユーグリットは展開した魔力の塊を俺に向けて解き放つ。そして、その力の前に俺が消滅しようとした瞬間、突如として何者かが遮るように立ちはだかる。
「くぅぅぅぅぅっ……!」
ユーグリットの放った魔力を相殺する誰か。トライヘキサの力までも混ざった異形の力さえも、俺には一切当たることがないのであった。
「はぁっ……はぁっ……い、一体……何かが……あっ!?」
「なんとか間に合ったようですね。」
俺の前に魔力の一切を防ぎきる障壁を展開したのは、ユーグリットの姉であり、リアスの義理の姉であるグレイフィアさんだった。
「姉上……!」
「お久しぶりですね、ユーグリット。ずいぶんと元気そうではありますが、イッセーさんをこのような目に遭わせるなんて……一体どういうつもりなのでしょう。」
戦闘服を身に纏ったグレイフィアさんは、訝しい表情を浮かべて弟のユーグリットを見つめる。それに対して奴は、先程のトライヘキサ復活時よりも興奮をした様子で口を開く。
「見ればわかるでしょう。姉上の周りにいる虫けら共を滅ぼそうとしているのです。その赤龍帝だけでなく、偽りの魔王も、天界も、冥界も、何もかも全てを!」
話によると、ユーグリットは実の姉であるはずのグレイフィアさんをかなり慕っており、いわゆる重度のシスコンとのことであった。
「そのためにあのような怪物を復活させ、わたくしがあなたのモノとならないこの世界を滅ぼしてしまおうと……そう考えたのですか。」
「私は姉上のためを思って行動しているのです!偽りのルシファー……サーゼクスなどに篭絡された姉上がいる世界など……存在価値すらないのですからっ!」
噂に違わぬシスコンぶりであった。さらにこいつがクリフォトとして蜂起したことで、グレイフィアさんの冥界における立場は微妙なものとなっていた。どこまでも姉に迷惑を掛ける弟でもあった。
「はぁ……ユーグリット。あなたは何か勘違いをしているようですね。確かにわたくしはグレモリーに嫁ぎ、魔王サーゼクスとは夫婦になりました。」
そしてミリキャスくんという魔王の子供を生み、彼女は名実ともに魔王の妻という立ち位置を確固たるものにしていた。もちろんそれは、姉を慕う実弟であるユーグリットにとって耐えがたい屈辱なのであった。
「ですが……わたくしとってはサーゼクスが全てなわけではありません。魔王の妻であることに変わりはありませんが、今はそれ以上に……」
そう言いながらグレイフィアさんは、倒れ込んでいた俺の身体を起こしてくれる。そして、俺と向かい合ったまま、ユーグリットに向けて改めて声を上げる。
「とても立派で、素敵な家族が増えてしまったのです。兵藤一誠さんという……とても素敵な人が。」
「あ、姉上……い、一体何を……」
グレイフィアさんの言葉が理解出来ないユーグリッド。言葉で分からないならと言いたいように、彼女は俺の身体を抱き寄せてくる。そして、実の弟が見ている前で、俺の唇を奪うのであった。
「んぶぅっ!?んぢゅっ、ぢゅるっ……んぢゅぅぅぅ……!」
「ぢゅるっ、んぶぅっ……れろぉっ……んぢゅっ、んぶっ……れろれろれろぉっ……!」
意識が飛びそうなほどの、舌が絡み合う濃厚なキス。あまりの気持ちよさにチンコが勃起をしようとしていた。そんな俺とグレイフィアさんのキスを目の当たりにしたユーグリットは、絶望に顔を染めて涙声となって叫び狂う。
「な、な……何をしているんだ姉上ぇっ!そ、そんな薄汚い転生悪魔などと……!貴様ぁっ!姉上に一体何をしたんだぁっ!?」
「んちゅっ……ちゅぷっ……ぷはぁっ!うっふふ……決まっているじゃないですか。わたくしとサーゼクスが致したことを、わたくしはイッセーさんとも……いいえ、サーゼクス以上にわたくしを……」
頬を赤く染めて、グレイフィアさんは俺との関係を赤裸々に語る。その事実を聞かされたユーグリットは、せっかくの美形を面白いほど憤怒に染め上げて、先程を遥かに上回る魔力を展開し始める。
「お前たちがぁぁぁぁぁっ!!!!お前たちがいる世界などぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!」
泣き叫びながら世界を滅ぼそうとする銀髪の美形悪魔。しかし、防御を一切考えない攻撃であったため、隙だらけであった態勢の懐にグレイフィアさんは容易く入り込む。そして
「ぶふぅっ……!」
たった一撃の痛烈なビンタ。それを受けたユーグリットは、展開していた魔力を消滅させて倒れ込む。肉体的なダメージはほとんどなかった一方で、精神はグレイフィアさんによってボロボロとされており、倒れ込んでからは一切動かなくなるのであった。
「あ、あね……うえ……」
「不出来な弟を処するのも姉としての役目。ユーグリット、わたくして決してあなたに憎しみを向けることありません。ですがその代わり、もう愛情を向けることもないでしょう。」
少しだけ寂しそうに、それでも晴れやかな表情で、グレイフィアさんは自らの手で打ちのめした実弟に憐れみの目を向けていた。それを知ってか知らずか、倒れ込んだユーグリットの顔はどことなく幸せそうであった。
◇
「グレイフィアさんっ!」
「イッセーさん。本当に……ご無事で何よりです。」
「はいっ……!でもそれより今は……あれを……!」
俺は身体を引きずりながら、弟へ引導を渡したグレイフィアさんの元へと歩み寄る。そして、共に空へと顔を向け、異形の存在ともいえるトライヘキサを見つめる。
「早く……あいつをどうにかしないと……うぐぅっ……!」
「落ち着いてくださいイッセーさん。そのお身体では、しばらくは戦うことも出来ません。」
「で、でも……今すぐにでも……!」
「トライヘキサへの対処は既に完了しています。ただ、急を要しましたのでイッセーさんには許可を得ないままでしたが……」
「俺に……許可?」
どういうわけか、少しだけ申し訳なさそうにするグレイフィアさん。俺がその理由も、彼女が放った言葉も意味も分からずにしていると、突如としてトライヘキサの巨体が淡い緑色の光に包まれていく。
「あれは……!?」
「どうやら、始まったようですね。」
光に包まれたトライヘキサは抵抗の意思を見せようとはしなかった。むしろのその緑色の包まれたことで気分を良くしているようで、耳を劈くような咆哮ではなく、万人を癒す歌声のような音を響かせていた。
「まさか……あの光は……!?」
「ふふっ……!おそらくは、イッセーさんがもっとも身近で感じているのですから、もうお分かりでしょう。」
トライヘキサはおろか、その周囲一帯を包み込む新緑のオーラ。それは俺やグレイフィアさんの元まで流れてきて、満身創痍だったはずの俺の身体を一瞬で癒すのであった。
「アーシア……!?」
リゼヴィムの悪意、そしてユークリッドの願いによって復活したトライヘキサ。しかし、その黙示録の獣と呼ばれた異形の存在は、世界すらも包み込む聖母の微笑によって戦意を喪失させたのであった。