イッセーがヒロインたちと一線を越えちゃう話 作:Scorcher
どちらかといえば相方であるイリナのほうが目立ってしまっているような気がしたりも。次回からはしっかりとゼノヴィアパートになります。
俺と部長が一線を越えてからしばらくした頃。駒王町内で教会関係者が何者かに斬殺される事件が多発していた。
事態は重く見た部長は接触をしてきた教会関係者の戦士ゼノヴィアと、俺の幼馴染だった紫藤イリナと共同で事態に当たることにした。
無事に首謀者である堕天使コカビエルを倒すことに成功したものの、そのコカビエルから明かされた『ある事実』にゼノヴィアはショックを受けることとなっていた。そして……
◇
ゼノヴィアとイリナが教会本部への帰還する日。俺はイリナの幼馴染ということで見送りに駒王町の外れまで足を運ぶ。
「それじゃあイッセーくん、また会えたらいいね。」
「そうだな。今度会える時も敵同士じゃなければいいな。」
「うん……きっと、大丈夫だよ。」
ほとんど話すことは出来なかったけど、久々の幼馴染との再会は俺だけじゃなくイリナにとっても懐かしさがあるようだった。それだけに、彼女は笑顔の中にも寂しさを滲ませていた。
「行こう、ゼノヴィア。」
「あ、ああ……」
ショートヘアで青い髪、毛先の一部がエメラルドグリーンの美少女。イリナの相棒であるゼノヴィアは歯切れの悪い様子で前へ進もうとしない。そうして立ち止まったゼノヴィアに、イリナは不信そうな顔を向ける。
「ゼノヴィア……どうかしたの?」
「イリナ……その、私は……」
既に事情を把握していた俺。イリナに対しては俺から説明をすると言ったものの、ゼノヴィアはそれを断っていた。どうしても、自分で話さないといけないと思っているらしい。
「私は……もう、帰れない。」
「えっ……?」
俯いたままイリナに向けて声を上げるゼノヴィア。呆気にとられるイリナは彼女に言葉を返す。
「何を言っているのよ。確かにこの街にはイッセーくんがいるし、リアスさんたちは悪魔でも良いヒトたちだったけど……任務が終わったんだから帰らなくちゃ……」
「ごめん、イリナ。」
「ごめんって……ゼノヴィア、急にどうしたの……」
理由も言わずに謝るゼノヴィアに、イリナは怪訝な表情を浮かべ聞き返そうする。しかし、イリナがそう声を上げようとする前に、ゼノヴィアは身に纏ったローブを脱ぎ捨て、背中から黒い翼を顕現させる。
「……っ!!!ゼノヴィア……あなた、どうして……!?」
「………」
戦闘用スーツの背中から生えた黒い両翼。それは紛れもなくゼノヴィアが人ではない存在、悪魔となったことを示していた。
「くぅっ……!一体……どうしてこんな……!」
憤怒の形相となったイリナもローブを脱ぎ払うと即座に聖剣を顕現させ、ゼノヴィアにその切先を向けて斬りかかろうとする。俺はたまらずそんな2人の間に割って入り、イリナに向けて声を上げる。
「待った!違うんだイリナ!これには色々と言えない事情が……」
「退いてイッセーくん!リアスさんの眷属のあなたには手出しは出来ない。でも……そうじゃない悪魔だったら、たとえ誰であっても……!」
「ゼノヴィアも部長の眷属になったんだ!その……コカビエルとの戦いで……」
「イッセー、もういい。」
割って入った俺に向けて、ついにゼノヴィアが口を開く。そしてそのまま、俺の前と立ってゼノヴィアはイリナと対峙してしまう。
「イリナ、お前が私を斬りたいというのならそうしてくれ。確かに私はリアス部長の眷属悪魔だ。だが、今でもお前のことは友人だと思っている。」
「何よ……悪魔なんかになっておいて、友達ヅラしないで……!」
面と向かってゼノヴィアに罵声を浴びせるイリナ。だが、その表情は悲痛であり、目には涙が浮かび上がっていた。
「イッセー、リアス部長にはすまなかったと伝えてくれ。せっかく悪魔にしてくれたというのに、何も出来ずに申し訳ないと。」
「そ、そんなこと……言えるわけねぇだろ!誰が仲間を見殺すことが出来るっていうんだ!?」
「なか……ま。」
俺は再びゼノヴィアの前に立ち塞がり、左手にブーステッド・ギアを展開する。いくら幼馴染が相手とはいえ、この状況を黙って見ていられるほど冷静ではなかった。
「イリナ!お前がゼノヴィアに手を出そうとするっていうのなら、俺を倒してからにしろ!」
「イッセーくんまで……!どうして……こんなの……!」
聖剣を構えるイリナの目からは大粒の涙が零れていた。そして、しばらくの緊張状態が続いた後、イリナは顕現させていた聖剣を収めるのであった。
「いまここであなたたちを斬ってしまえば、教会本部と悪魔の抗争に発展しかねない。それくらい、私でも分かっているわ。」
そう言いながら脱ぎ捨てたローブを拾って着直すと、彼女は踵を返して一人で駒王町を後にする。そして、俺たちに背を向けたまま口を開く。
「ゼノヴィア、今まで一緒に戦ってくれてありがとう。戦士としてだけじゃなくて、友達とても……楽しかったわ。」
「ああ、私も楽しかったよ。でも、もうここまでだ。」
「……さようなら。」
こうして堕天使の暗躍による聖剣騒動は一応の終息を迎えた。しかし、俺の後ろにいたゼノヴィアの顔には涙こそ浮かんではいなかったものの、複雑な表情をしているのであった。