セッ○スしか娯楽がない! 作:性戦の別府
グラン暦772年 春 グランベル帝国直轄領アグスティ 郊外にある屋敷
降伏の調印式が終わったあと、騎士ジャンヌは主であるラケシス王女と共に郊外にある屋敷へ案内された。
現在部屋の中にいるのはジャンヌだけ。ラケシスはこことは別の部屋に連れていかれた。
グルッと室内を見渡した後、少女は思う。私達はこれから先どうなるのだろうか───と。
ふう、と息をつく。どうなるかなど分かり切った話だというのに。
(メイドのあの言葉……つまりそういうことよね)
屋敷に到着後、案内を帝国兵から引き継いだ女中が「身を清めておくように」と言っていた。
ここはユリウス皇子が所有する屋敷。そこへに連れてこられた“元敵である女軍人”に対するセリフ。答えなど簡単に分かった。
(……私一人で満足してくれないかしら)
ジャンヌは理解していた。自分はユリウス皇子の“女”にされる。そしてラケシス王女も毒牙にかけるつもりなのだろう。
出会ってから短いとはいえ、ジャンヌはラケシスという女性を敬愛し、忠誠を捧げた。故にその身を男の───それも親子ほど年齢が離れた相手の───欲望に汚されるのは認められない。そんな残酷な話は認めたくない。
皇子の女になるのは、被害を受けるのは自分だけで済ませたい。彼女はそう考えている。
(都合が良い話だって分かっている。だけど私は───)
思考の海に潜っているジャンヌの耳にコンコンとノック音が届く。少女は座っていたイスから立ち上がり“訪問者”を迎え入れた。
「どうぞ。鍵は閉めてません」
「───やあ。入らせてもらうよ」
室内に入ってきた相手はユリウス皇子だった。なにか嬉しいことでもあったのかニコニコと満面の笑みを浮かべている。
ジャンヌは片膝をつき頭を下げる。それが“今の自分の立場”だと彼女は分かっていた。
「初めまして殿下。私はジャンヌと申します」
「うん。調印式で顔は見ていたけどこうして話すのは初めてだね。僕がユリウスだ」
ユリウスはそう話しながらベッドまで歩き、その上に座る。ポンポンと右手でベッドを軽く叩いた。ここに座れということなのだろう。
ジャンヌは「失礼します」と一言だけ発し、となりに座る。ユリウスは満足そうにうなずいたあと、彼女の腰に手を回しその身を引き寄せた。
「君がボクを見た後、膝をついて迎えてくれたね。それは自分の立場というものを理解しているってことで良いのかな?」
「はい」
「へぇ……覚悟は決まっていると。その若さですごいね」
そう言いながらユリウスは胸を、腰を、ふとももをいやらしい手つきで撫でまわしていく。
ジャンヌは背筋が凍りつくようなおぞましさを感じた。自分よりも年下であろうこの少年は、しかし間違いなく“オトコ”だった。
少女はオトコの行為を必死に耐えながら「こんな思いをラケシス様にさせてはいけない」と、どうすればこの魔の手の対象を自分だけに向けることが出来るのかを考えた。
使命感に満ちたその表情に気付いたユリウスは、ジャンヌの頬を舌でひと舐めしたあとこう告げた。
「ジャンヌ。君がいま何を考えているかあててみようか? どうすればラケシス王女を守ることが出来るか……そうだろう?」
「……ッ!」
「顔に出やすいね、君は。……ま、そう考えるのも当然か。だって君は彼女の騎士なのだから」
ユリウスは腰掛けていたベッドから立ち上がりテーブルへと移動する。そして近くに備えてあった水瓶から木製のコップに水を注いでいると……
「───お願いします! どうか! どうかラケシス様には手を出さないでください!」
ジャンヌが床に伏せ地に額をこすりつけながらそう叫ぶ。
少女の土下座を愉快そうに見ながらユリウスは残酷すぎる言葉を放った。
「君達反乱軍……いや、解放軍と名乗ってたか。とにかく君達は敗北を認め、降伏した。その結果ボクはラケシスにジャンヌという“戦利品”を手に入れた。それをどう扱うかはボクの自由だ。そうだろう?」
「うぅ……ッ!」
正論だった。この世界では敗戦国の人間、それも軍人の末路などろくでもないものだと相場が決まっていた。
王家の血を引き国家の象徴にもなりえるラケシスの身柄など、本来なら悲惨極まりない結末を迎えるはずだった。それが奴隷という形とはいえ生きることが許されているのだから、充分すぎるほどの温情……慈悲である。
「いまこの地は帝国であり、だからこそ帝国の法が適用される。そして帝国法によれば反乱を起こした者は一族郎党まとめて死刑。しかし反乱軍は二人を戦利品として差し出すことで死刑を回避した。そうだ、ボク達帝国は君達反乱軍に対してこれ以上ないほどの慈悲を与えている」
「……………」
「それなのにさらなる慈悲を、情けを望むと? いやはやまったく君は傲慢だなぁ」
ユリウスはコップを揺らしながら「ハッハッハッ」と笑う。ジャンヌは少年の言葉に何一つ反論を思いつかなかった。
苦悶の浮かべ、涙すら床に落とし始めた少女を見て、ユリウスはここが攻め時だなと判断する。
コップの水をすべて飲み干した後、床に伏せているジャンヌを抱き上げ、ベッドまで連れていく。
突然の行動に困惑する少女を無視し、再度ベッドに座らせる。そしてユリウスは自分を見上げる少女に対し“それ”を持ちかけた。
「取り引きしようか」
「とり、ひき……?」
それは彼女にとって悪魔のささやき。
「ボクは元服を迎えると同時に父上の後を継ぐことが決まっている。そしてその時に嫁を、正室を迎える」
「は、はい……」
ひとつひとつピースをはめていく。
「その正室がね、君に似ているんだ」
「ッ!!」
選択肢を確実に奪っていく。
「似ているといっても年齢とかスタイルが、だけどね。だからこそ、うん、君はちょうど良い相手になる」
「私が……? なんの……?」
“それ以外”を選ぶ思考能力を少女から奪っていく。
「夜伽の練習さ。ボクも男だからね、正室相手に恥をかきたくない」
「よ、とぎ……」
故にこれは必然の結末。
「ジャンヌ、これは取り引きだ。ボクのセックス・テクニックを鍛えるための相手になってくれたなら───」
「ラケシス様には! あの御方には手を出さない!?」
「───そう、
例えるなら、それは地獄に堕ちた者の頭上へ垂らされた蜘蛛の糸。つかみ取れば天へと昇ることが許される救いの糸。
だからこそ少女は……
「受けます! その取り引き、私が受けます!」
……少女は手を伸ばしてしまった。
その取り引きには抜け道があった。
ユリウスは確かに言った。ボクは絶対に手を出さないと。
しかしそれは「ラケシスとセックスはしない」に繋がらない。そう……ラケシスから求められた場合、ユリウスはそれに応じることが可能だ。
これは間違いなく詭弁だ。しかしジャンヌはその詭弁に気付けなかった。だから抜け道として成立してしまう。
精液と愛液まみれで息を乱し、騎乗位で激しく動く
◆ ◇ ◆
調印式が終わったその日の夜。
郊外にある屋敷へ連れてこられた後、ジャンヌとは違う専用の部屋に監禁されたラケシスのもとに“かつての戦友”が訪れる。
「あ、貴方達は……!」
「こんばんは。覚えているかしら。シルヴィアです」
「ふふっ、ラケシス、ちょっと老けちゃったね。こっちも人のこと言えないけどさ。……わたしはティルテュよ。部屋の中に入っていい?」
「ええ、ええ! 入ってちょうだい!」
かつての、いや今でも戦友だと思っている二人をラケシスは歓迎した。
ラケシスに与えられた部屋は貴族用に作られたものであり、室内には調理器具が一通り揃っている。
彼女はお湯を沸かし、お茶を淹れ、手ずから振るった。二人と久々に会えたことでラケシスの中に大きな喜びが生まれていた。
小さなお茶会は半刻ほど続く。その時間はお互いの身の上話を語ることに使われた。
そして……
「───なるほど。そういう経緯で貴方はこの国に」
「……あの子達の姿がわたしの子供に重なってしまって。だから見捨てることが出来なかった」
ティルテュの疑問に対しラケシスはそう答える。
今から数年前。レンスターに身を寄せていたラケシスは息子デルムッドを迎えに北を目指した。
息子がいるのはレンスターから北にあるイザーク王国のティルナノグ。街道経由で目指した場合帝国の監視に確実に引っかかる。故に彼女はイード砂漠経由で向かうことに。
旅は順調だった。しかしその道中にあった名も無き小さな村で悲劇に会う。
そこは暗黒神ロプトウスに捧げる生贄の集積場だったのだ。
村に居たのは暗黒神を信仰するダークマージと、生贄として各地から攫ってきた沢山の子供達。
ラケシスはその子供達を見捨てることが出来なかった。
「子供達を救うためにわたしは戦った。だけど敗北し、この国に送られて……いまはこうしている」
カップの底に視線を置いたままラケシスは淡々と語る。二人の友人は口をはさむことなく彼女の話を聞いていた。
実は話していないことがある。相手が友人であろうと話せないことがある。
名も無き村で、子供達を救うべく戦いを挑んだラケシスは敗北した。そして……その身を汚された。オンナとしての尊厳を徹底的に奪われる行為。それを監禁場所であるシルベール砦に到着するまでずっと行われていた。
シルヴィアにも話せないことはあった。あのバーハラでの戦いの後。彼女は家族のために穢れた行為であっても進んで行い生きてきた。二人の子供を孤児院へ預けたのは、それが最も生き残る可能性があったから。だから彼女は子供を手放した。
ティルテュに関しては……もはや語るまでもない。
ラケシス達三人はここまで過酷な人生を歩み───乗り越えてきた。
だからこそ絶望に対し立ち向かうことが出来る。
ラケシスは目線で合図を送る。それに気付いたシルヴィアはこくりと頷いた。
「ティルテュ。貴方に頼みたいことがあります」
「……聞きましょう」
「わたしとシルヴィアをユリウス様の奴隷にしてほしい。そうお話しして欲しいの」
R-18作品の場合、どの原作でもジャンヌという名の少女はひどい目にあうよね!(偏見)