新・嗜虐西遊記─北遊記/ビ・ク城篇【終了】 作:ドン・ドナシアン
「どうしたんだい、ソン? そろそろ、色々なことを喋りたくなったんじゃないのかい?」
ハク・エンは、再び腰から乗馬鞭を抜いた。
もちろん、それでソンの裸身を打擲するというような優しさは与えない。
宙吊りの裸身をぶるぶると震わせるソンの顎を乗馬鞭の先でしゃくりあげる。
「くっ……、げ、下衆なことしやがって……。こ、こんなことであたしが泣きを入れるとでも思ってんのかい……」
ソンは自分を吊り上げている鎖を握りしめて、ぎりぎりと歯を喰いしばっている。
掻痒効果のある媚薬を乳房と股間にたっぷりと塗りこめてやったソンの裸身は、大量の汗にまみれており、大股開きにしてやった足先からぷたぽたと汗をしたたらせている。
あの拷問用の掻痒剤を全く薄めずに、原液で塗りこめてやったのだ。
痒みなど遥かに超越して、ソンの身体は異様なまでの性欲のうねりに狂わされているはずだ。
これはそういう媚薬なのだ。
「ふふふ、もっと愉しませてあげるわ」
ハク・エンは待機している五人の侍女に指示して、ソンの足枷を外させる。
ソンの両脚が自由になった。
すぐに、狂ったように内腿を激しく擦り合わせ始める。
「あああっ、もうだめええ、痒いいい──」
だが、そんなもので痒みが癒えるわけもなく、ソンは顎をあげて悲痛な声を出し始める。
「ここには男はいないけど、お前がわたしに心の底から屈服して、おまんこしたいって叫べば、適当な男兵を連れてきてあげるわよ。もちろん、ハク・コとのことを喋ってからだけど」
「だ、だから、そのハク・コを目の前に連れて来いって、言ってんだろう──」
「あっ、そう。じゃあ、しばらく、そのままにしといで」
ハク・エンは、ソンから距離をとって腕組みをした。
この痒み責めに耐える女は、まずいない。
一般的に女は痛みに強く、気絶しても激痛に耐える女は珍しくはないが、まず痒みを耐えるのは無理だ。
意地を通せば、それだけ苦しみが長くなるだけであり、いずれは堕ちる。
ただ、まれにその痒み責めに気絶するまで耐える者がいないとも限らないが、このソンはどうだろう。
もっとも、それでも気絶させるような慈悲は耐えるつもりはないが……。
「あああっ、痒いいい──。なんとかしてよお──。痒いいい──」
しばらくすると、いよいよソンが宙吊りの身体をかなりの激しさで暴れさせだした。
唇を噛みしめ、赤い髪を打ち振って、涙まで浮かべている。
余程に痒いのだろう。
そうやって、終わることのない痒み地獄に、苦悶の声をあげながら、痒みを少しでも忘れようと、裸身をくねらせる。
やがて、その動きも鈍くなる。
そろそろ、半刻が過ぎた頃だ。
握っていた鎖から両手が離れた。
首輪に嵌めた魔道具がソンの体力を奪っている。
だから、体力が尽きるのも早いのだ。
むしろ、頑張った方だろう。
「木馬を持っておいで」
ハク・エンは、侍女に指示した。
すぐに、隅に準備していた三角木馬が運ばれてきた。
鋭角の尖った部分が天井を向いている拷問具だ。四本の脚には小さな車輪がついており、簡単にそれを動かすことができるようになっている。
それがソンの脚のあいだに、強引に差し入れられた。
鎖を緩めさせる。
ソンの身体が木馬の上に沈む。
「ああっ」
ソンが身体を弓なりにした。
股間が木馬の背に喰い込んだのだ。
「くそうっ、お、おろせよおお──」
ソンが泣き喚いた。
「本当にそこからおりたいのかい? むしろ、ずっと乗っていたんじゃないの? 腰を使いなさい。少しは苦しみが癒えるわよ」
ハク・エンは身悶えるソンを腕組みして見守りながら言った。
ソンが躊躇するような表情を見せたのは、長い時間ではなかった。
すぐに、木馬を脚で強く挟むようにして、股間を擦り始める。
「うあっ、ああっ、ふあああっ」
嗚咽のような呻き声とともに、腰が前後に動きだす。
そして、あっという間に狂ったような腰遣いに変わった。
「あらあら、浅ましいわねえ」
ハク・エンはにやりと微笑むと、侍女に再び指示して、木馬をソンの脚の下から外させる。
再び、ソンの両脚は宙吊りになった。
苦しいのはこれからだ。
なまじ、痒みが癒えた瞬間があっただけに、それがなくなったときの苦しみは桁違いになる。
「ああ、そんなああ──」
案の定、ソンの苦しみ方は、木馬に乗せる前とは比較にならないくらいに大きなものになる。
「もっと、苦しんでおくれ、ソン」
ハク・エンは笑った。
くすくすという笑い声がした。
コク・ジョはだんだんと意識を取り戻してきた。
ぼんやりとした視界に映ったのは、まずはハク・コの顔だ。
自分を見下ろしている。
そして、はっとした。
なにが起きたかを思い出したのだ。
あの一級奴隷として監禁しているソンという赤毛女が突然に、ハク・コからある機密事項を教えてもらったのだとおかしなことを言い出し、まあ、それ自体はあまり重要視していなかったが、そもそも、ハク・コには、この軍塞から帝都に送っている淫丹石と霊丹石を横流ししているのではないかという調査をしていたことがあり、それでとりあえず、いい機会なので言い分を聞こうと、ハク・コがいると教えてもらった、ビク・トの後宮区域に単独入ったのだ。
そこで、ハク・コは待っていて、空き室に誘われた途端に、首に強い衝撃を感じてわけがわからなくなった。
もしかして、気絶させられたのか?
「こ、これはどういう……、あぐうっ」
どうやら、台のようなものの上に横たわっているようだった。そして、とにかく、ハク・コに説明を求めようと口を開いたのだが、その途端に、強い激痛が襲った。
それだけでなく、激しい嘔吐感が込みあがる。
「あら、ちょっと薬が強すぎたみたいですね。ちょっと待ってください、コク・ジョ様……」
ハク・コが横の台のようなところから、なにかを手に取った。
針──?
もしかして、毒──?
その針先がコク・ジョの首に近づく。
慌てて、手で払いのけようとして愕然とした。
その腕の感覚がないのだ。
拘束されているというのとは違う。
まるで、存在を感じない。
驚いて、視線をやる。
「うわっ、なんで──?」
コク・ジョは叫んだ。
腕がない。
なにもないのだ。
コク・ジョの腕は付け根からなくなっていた。
すると、首にちくりとした痛みを感じた。
「くっ」
すると、急に頭がぼんやりとした。
同時に不思議な快感が拡がる。
心の高揚感とでもいうべきか、ものすごくいい気持ちになった。
なんだ、これ……?
コク・ジョは当惑した。
「な、なに……これ……?」
コク・ジョは焦った。
おそらく、なにかの自白を強要するような魔道薬を注入されたのだと理解したからだ。
訊問用の薬物であり、コク・ジョは使われたことはないが、使ったことがある。
それを打たれると、快感とともに気分の高揚感が襲い、質問に対して口が軽くなる。
そういうものだ。
それをハク・コがコク・ジョに──?
とにかく、状況が理解できない。
「急に動いたり、大声をあげようとしたりしない方がいいですよ。身体でも心でも、無理に抵抗すると取り返しのつかない後遺症が残ったりします……。さて、私に訊きたいことがあるのですよね? なにをお知りになりたいですか?」
ハク・コが柔和な微笑を浮かべながら言った。
だが、その笑顔にぞっとした。
これは、コク・ジョが知っている、あの大人しくて気が弱いハク・コではない。ぞっとするような不気味な凄みがそこにあった。
いまだにどういう状況なのか理解できないが、ハク・コがさっきと同じ裸身にガウンを掛けただけの姿をしていることを考えると、それほどの時間は経っていないのだろう。
とにかく、逃げよう──。
コク・ジョは起きようとした。
「えっ?」
しかし、できなかった。
手と足の感覚がない。
慌てて、自分の身体に視線を向ける。
横たわったままなので、完全にはわからないが、さっきの腕だけでなく、反対の腕、さらに両脚も存在しない。
付け根から消滅している。
コク・ジョが信じられなかった。
「こ、これはどういうことよ──。あがあああ──」
コク・ジョは絶叫した。
その途端に頭が割れるかと思うような激痛が頭に襲う。
「あら、やっぱり抵抗があるようですねえ。でも、本当に素直にならないと、元に戻らなくなりますよ。ほら、気を楽にして……。ちゃんと全部喋れば、手足は戻しますから……」
ハク・コが言った。
手足を戻す?
やはり、ハク・コがなにかの細工を?
だが、どうやって……。
そもそも、ハク・コはなにもできない、気が弱いだけの無能じゃなかったのか?
もしかして、かなりの高位の魔道遣い?
コク・ジョは唖然とした。
「発狂しても構わん。自白剤を足してしまえ」
ハク・コではない男の声がした。
もしかして、ビク・ト将軍?
この部屋にいるのか?
手足がなくて身体を起こせないので、声のする方向にうまく顔を向けられないのだが、少し離れた位置にいる気配だ。同じ部屋にいるのは間違いない。
「ビ、ビク・ト様──。これはどういうことでしょうか──。お、お助けください」
とにかく、叫んだ。
だが、そのコク・ジョの首にすっとハク・コの手が伸びた。
相変わらずに、にこにこと微笑んでいる。
「それは可哀想ですよ、お父様。少し弱めれば、抵抗力もなくなります。そうすれば、薬に心が負けますから」
ハク・コの指がコク・ジョの首にかかって、ぐっと締めつけられた。
血の流れが止められた──。
息もできない。
血を通る場所とともに、気道を塞がれたのだ。
暴れるがどんどんと身体は脱力する。
そして、頭がくらくらと揺れ、視界が暗くなる。
ハク・コの手を振りほどけない。
首は絞められ続ける……。
意識が遠ざかっていく……。
「ハ、ハク……コ……さ、ま……」
最後まで言葉を紡げない。
死ぬ……。
コク・ジョは朦朧とする意識の中で恐怖した。
「ふふふ、本当は責められるのが大好きですけど、責めるのもできますわ。少しのあいだ、水の底に行ってきてくださいね」
水の底?
辛うじて、その言葉が頭に入った。
次の瞬間、首にかかっていた指の力が緩められた。
一気に血が昇ってくる。
「くはっ、ああっ、はっ、はあっ、あああ……」
急に覚醒した。
止まっていた呼吸も復活する。
血が激しく全身を駆け巡る。
そして、開放感とともに、大きな快感が全身を襲う。
気持ちいい……。
なに、これ……?
コク・ジョは混乱した。
「ほう、股間を濡らしたか? 失禁とは違うな」
再び、ビク・トの声──。
濡れた?
まさか……。
「抵抗せずに、薬を受け入れれば快感が走りますわ。死にかけて弱まり、ちょっと抵抗力がなくなりました。それで快感が襲ったのです」
「そういうものか」
「はい」
ふたりがそんな会話をした。
本当になにが起こっているのか……?
これは、あのハク・コ?
コク・ジョは信じられないでいる。
そして、ハク・ジョによって、コク・ジョの身体が持ちあげられた。
咄嗟に顔を動かして、周りを見る。
さっきの部屋だ。
そして、ビク・トもいた。
ハク・コと同じように裸身にガウンを掛けただけの姿だ。壁際にある椅子に腰掛けたままであり、じっとこっちを見守っている感じだ。
だが、思念はそれで終わりだ。
水を満水した大きな桶のようなものに放り込まれた。
胴体も頭も完全に水の中に沈む。
「もがっ、あふっ、ごぼっ」
必死に水の外に出ようとした。
だが、手も足もないのだ。
胴体をもががせるだけで、身体を浮かべる方法がない。
大量の水が口に中から身体に入る。
しかし、水の外に出そうとする気配はない。
コク・ジョは水の中で胴体を暴れさせ続けたが、息苦しさが限界を越えて、動かなくなる。
それでも、引きあげてくれない。
すっと、意識が引いていった。
髪の毛を掴まれて、顔が水の外に出された。
「ぷはっ、はっ、はあっ」
盛大に息をする。
しかし、すぐに髪の毛から手が離されて、顔が水の下になる。
「もがっ、がっ」
再び、息ができなくなる。
必死にもがくが、なにもできない。
すると、またもや、失神寸前で水の外に顔を引っ張られた。
「がはっ、がはあああ──」
だが、すぐに水の中に沈められる。
いよいよ朦朧とする。
「んがああっ──」
それを十回くらいは繰り返された。
「もがっ、がっ?」
だが、今度は水の中に、ハク・コの指だと思うものが入ってきた。
二本──。
コク・ジョの股間を愛撫し始める。
的確に快感の場所を突いている──。
コク・ジョは水の中で眼を見張った。
一気に絶頂感が襲い掛かった──。
「んぐううう──」
コク・ジョは水の中で達していた。
手足のない身体をがくがくと震わせる。
水の外に顔を出された。
すぐに、水の中に浸けられる。
「もが、もが、もが──」
水の中で愛撫が始まる。
頭が朦朧となる中での愛撫には、まったく抵抗できない。
またもや、快感が飛翔した。
今度は達しても、水の外には顔は出してもらえない。
息が……。
コク・ジョはもがいた。
そして、愛撫は続いている。
三度目の絶頂──。
すると、水の外に顔が出た。
「ああああっ、あああっ」
吠えるような声を水の外で叫んでいた。
手を離されて、水の中に顔が戻る。
そして、また指が襲い、絶頂させられた。
顔を水の外に出された。
「ぐはっ、がっ、ゆ、許して──。お願いだから許して──」
コク・ジョは泣き叫んだ。
恥も外聞もない──。
必死に哀願する。
もうなにも考えられない。
すると、身体が引きあげられ、顔だけでなく、胴体も水の外に出た。
身体が横たえられる。
「うはあっ、あああっ」
なにかが身体に覆いかぶさる。
そして、股間に熱い塊が突き挿さった。
「おはああっ」
股間を貫いたのは、ビク・トの怒張だった。
床に横たえられたコク・ジョをいつの間にかやって来たビク・トが犯したのだ。
律動が始まる。
「ああっ、あああっ、いぐううっ」
なにも考えられない──。
コク・ジョは悶絶した。
頭が真っ白になる。
まだ、律動は続いていた。
コク・ジョは腰をのたうたせ、膣いっぱいに咥え込まされた怒張を受けとめながら、狂ったような官能を解き放つ。
抵抗などない。
とにかく気持ちいい……。
それしか考えられない──。
「いやああ、あああっ」
またもや絶頂する。
「凄い締めつけだ。一度出してしまおう」
コク・ジョを犯しているビク・トが腰を動かしながら笑った。
次の瞬間、熱いものが膣の中に迸った。
「ああああっ」
またもや、絶頂した。
もうわけがわからない。
こんなに連続絶頂するなど、あり得ない──・
「まるでたがが外れたようだ。果てしく達し続けるな」
「そういう薬です。快感に抵抗できないのです……。さあ、コク・ジョ様、もう一度訊ねますね。わたしからなにを問い出そうとしましたか? なにを調べたかったのですか……?」
ハク・コの声……。
「それは……」
コク・ジョはかすんだ意識の中で、質問への答えを語り始めた。
大いなる快感と満足感とともに……。