新・嗜虐西遊記─北遊記/ビ・ク城篇【終了】 作:ドン・ドナシアン
「止まれ──」
三箇所目の関門の前でまたもや檻車が停まった。
これまで二つの城門を通り過ぎたが、同じように厳重だ。見張りの櫓がいくつもあり、立派な城塔もある。
また、この第三城壁に詰めている兵もまた、この檻の中から見える範囲だけでも四百人はいるだろう。厳重だ。
最初の関門のあった城壁から、この三番目の関門のある城壁までは、この檻車程度の馬車が交互通行できるほどの通路を進んできたが、経路は迷路のように複雑であり、沙那をもってしても、一回では覚えられなかった。
それだけでなく、おそらく通路以外の場所に入れば、たちまちに罠が作動するような造りになっているように感じた。
思った通り、このビ・ク城の要塞に強引に潜入するのは不可能なのだろう。
元軍人の沙那の眼からは、敵軍どころか、間者ひとりでさえ寄せ付けないという不落の城の評判に相応しいと思った。
「こいつらが今回の貢物か?」
関門の門番をしている兵が三人ほどやってきて、沙那たちが監禁されている檻に近づき、卑猥な視線を向けてくる。
沙那たちが入っている檻車には、五人の若い女がいて、沙那を含めて全員が全裸だ。
乳房も尻も股間も剥き出しであり、番号が書かれた札のさがった首輪を嵌められている。
ただの首輪ではない。
「奴隷の首輪」だ。
かつて、沙那がさせられていたような身体を操るたぐいではなく、
だが、その痛みは頭の中の脳に直接刻まれるようになっているので、どんなに痛みに強い者でも耐えることは不可能なのだ。
それだけでなく、瞬時に全身を弛緩させて動けなくさせることもできる。
ここに来るまでのあいだ、護送兵の扱いに耐えかねて、幾度か抵抗を試みたが、そのたびにこの奴隷の首輪の洗礼を浴びて、無力化された。
抵抗や不服従の罰は、十人ほどの護衛兵たちからの寄ってたかっての輪姦だ。
連行される女に手を出すのはご法度らしいが、懲罰としての強姦は許されているそうだ。
だから、護衛の兵たちは、沙那たち女奴隷が拒絶したくなる命令を与えては、口実を作って、懲罰という名の輪姦を繰り返したりした。
このビ・ク城に辿り着くまで三日──。
一番懲罰を受けたのが沙那だ。
多分、反対の隅で居眠りをしている孫空女がその次──。ほかの三人の里娘は最初の一回ずつだけだったと思う。
なんだかんだで、護衛兵たちは沙那と孫空女ばかりを狙いうちにして、懲罰輪姦を繰り返した。
思い出すと、この連中に対する怒りで腹が煮える。
絶対に機会があれば仕返してやろうと思う。
「檻は開けねえぞ。護送完了の刻限は午後の三の刻だ。もう時間がねえ。さっさと通しな」
檻車の護送の長となる兵が応じた。
「三の刻? もう時間がねえじゃないか。お前ら道中で遊び過ぎだろう。ぎりぎりまで遊んでやがったな」
「まあ、それも役得だ。次の貢物の運搬任務は半月後だろう。それに希望を出しな」
「出すよ。当たり前だろう。だけど競争率も高いしな。あーあ、将校様に貢ぐか」
「まあ、貢ぐに見合う仕事であるのは確かだな」
護衛長が持っていた棒を檻車の中に伸ばし、沙那の股間のあいだにすっと持ってきて、股間を突く。
「あっ、なにをするの──」
沙那は思わず叫んだ。
この檻車の中に入れられて運搬されてきた五人の女は全員が首輪の後ろに手錠を繋がれているのだが、沙那だけは両足首を檻車の外側の鉄格子に脚を開くように繋がれ、開脚した脚を檻の外に向けて隠すことができないようにされているのだ。
こんな風にされたのは、最初の日のことであり、沙那が排尿を兵たちの前でするのを嫌がったためだ。
とにかく、そんな風にされているので、棒の先端で股間に悪戯をされても、避けることができないのである。
「あっ、いや、やめなさいよ──」
沙那は必死に右に左にと腰を動かして、淫靡な悪戯から逃れようともがく。
だが、護衛長は沙那の悲鳴を笑いながら、棒を女陰に突っ込もうとしてくる。棒の先端はわざと丸くしてあり、そんな風にして遊ぶのに適するように細工もしてある。
一方で、五人のうちに三人の里娘はそれを見て真ん中で怯えるように身を寄せ合っている。
両手を首の後ろに固定されているのは彼女たちも同様だ。さらに、足首にも手のひらふたつ分ほどの長さの鎖で繋がった足枷を嵌められている。
「ははは、もっと逃げねえか。また突っ込むぞ。そらそら」
護衛長が揶揄い口調で棒を沙那の股間に挿入しようとしてくる。
沙那は悲鳴をあげながら懸命にそれを避ける。
すると、ずっと居眠りをしていた孫空女がやっと眼を開けて、沙那に視線を向けた。
孫空女については、沙那のように足首を鉄格子に開脚で繋げられるような意地悪されていない。
里娘と同じように、拘束されているだけだ。
だから、一応、檻の中だけなら自由には動ける。
まあ、手枷と足枷をつけたままだが……。
その孫空女が口を開く。
「また、栗毛女かい──。お前、いちいちやかましいよ──。うるさいから寝られやしない。いい加減にしな──」
孫空女は沙那に向かって、忌々しそうな表情で悪態をついた。
この護送のあいだ、ずっとこんな感じだ。
沙那も護衛長の悪戯な棒を懸命に膝で跳ね避けつつ、振り返って孫空女を睨む。
「うるさいわねえ、赤毛──。だったら、あんたがやられなさいよ。なんで、わたしだけ──」
「知らないよ──。とにかく静かにしな。お前が反抗的なおかげで、みんな迷惑してんだよ。兵の方々にいちいち逆らうじゃないよ」
孫空女だ。
「ははは、だが、栗毛と赤毛のふたりは仲が悪いなあ。たまたま、同じ里で捕えられて差し出されたということだが、やっぱり仲間じゃなかったんだな」
護衛長がやっと棒を引いてくれた。
今度は棒を突っ込まれなくてすんだ。
沙那はほっとした。
「こいつとは、あの里で偶然に一緒になっただけだよ。たまたま一緒に捕まっただけで、会ったこともない他人さ」
孫空女が反対側の檻の壁から応じる。
「そうみたいだな。もっとも、ハク・エン様への貢物奴隷のお前らの関係なんてどうでもいいけどな」
護衛長が言った。
すると、城門の守備をしているところから、別の兵がやってくる。
「おい、お前ら油を売ってていいのか? もう行っていいぞ」
「おっと、いけねえ。刻限が迫っているんだった。遊んでいる場合じゃねえや」
護衛長がはっとしたように空を見る。
いまの刻限を陽の高さで測っているのだろう。慌てたように部下に出発を告げる。
やっと檻車が、三番目の城門を抜け、ビ・ク城の内側に進みだした。
ビ・ク城というのは、北帝国が最近になって東帝国から割譲させた占領地に築いた軍塞だ。
東帝国と北帝国の国境を接した小競り合いは、もう百年近くも間隔を置いては繰り返していることであり、そのたびに国境の位置は変化をしている。
このビ・ク城が建設された地域一帯は、一年前までは東帝国に属する場所だったらしいが、現在のビ・ク要塞の指揮官であるビク・ト将軍によって奪われ、北帝国に属することになったそうだ。
軍才に優れたビク・ト将軍の侵攻に、東帝国の辺境の守備兵はなすすべもなく降伏し、慌てた東帝国が和平交渉として差し出したのが、このビ・ク城を中心とする州らしい。
そのまま占領地の軍政将軍となったビク・ト将軍は、占領地となった州内の各里に対して、通常の税に加えて、あるものを定期的に差し出すように命令をした。
それが貢物奴隷の差し出しだ。
州内に三十ほどある里の全てが半年につき五人の貢物奴隷をビ・ク城に搬入すること──。
それが将軍の命令だ。
なぜ、貢物奴隷なのか、それをどうするのかは、沙那の調査でもわからなかった。
ただ、貢物奴隷は、十五歳から三十歳までの若い女に限るとそれ、もしも、差し出すことができなければ、その里の全員を皆殺しにすると布告した。
実際、最初に命じられた里は、貢物奴隷の差し出しを拒否し、その里は見せしめとして、全住民が里ごと焼き殺されてしまった。
それから、各里における貢物奴隷としての若い女の徴発が行われているというわけだ。
だが、それぞれの里も、できる限り自分の里から貢物奴隷を出したくなく、奴隷を購入してあてがったり、たまたま里近くにやって来た旅の女を誘拐しては、貢物奴隷として差し出すということをしている。
沙那と孫空女も、そうやって、ある里で捕えられて、そのまま貢物奴隷として差し出されたというわけだ。
いずれにしても、貢物奴隷がどうして集められているかは不明だ。わかっているのは、この一年のあいだに城に搬入された貢物奴隷はかなりになるはずだが、ただのひとりも生きて外には出てないということだ。
唯一の噂は、そもそも、占領地から若い女を集めさせているのは、将軍のビク・トではなく、将軍夫人のハク・エンらしいということだ。
ただ、真偽はわからない。
とにかく、入ってみなければわからず、かといって、普通の潜入では要塞への侵入はほぼ不可能であり、唯一の可能性がこうやって貢物奴隷をして搬入されることだった。
少なくとも、沙那はそう結論した。
そして、いまに至っている。
やがて、檻車が大きな建物の敷地内に入っていった。
さらに進み、やっと檻車が停止したのが、三方を建物に囲まれた中庭のような場所だ。
そこに守備兵らしき武装した男女が三十人ほど集まっていて、檻車はその兵たちの中心に停車する。
「出ろ」
護衛長が檻車の扉をあけて、沙那たちを地面におろしだす。
沙那の足首もやっと鉄格子から外され、数日ぶりに脚を閉じることができた。もっとも、すぐに足首に、ほかの女たち同様に足枷を嵌められる。
「貢物奴隷五名です。運搬任務を完了し、引継ぎを行います」
護衛長が敬礼とともに報告をしたのは、守備兵たちに中にいたひとりの女官だ。
かなり立場が上なのだろう。
ずっと沙那たちを傍若無人に扱ってき護衛長がその女官に対しては、怖ろしく緊張した様子で接している。
「連れてきなさい」
女官が告げる。
指示は護衛長に対してではなく、ここで待っていた守備兵たちに対してだ。
すぐに沙那たちは、ここにいた守備兵たちに囲まれた。
「前に向かって歩け──。ぐずぐずするな──」
いきなり守備兵たちから、鞭を浴びせられた。
革鞭だ。
それを左右から次々に浴びせられる。
「きゃああ──」
「ひいいっ」
「ひゃう」
鞭打たれる里からの女たちは悲鳴をあげた。
沙那や孫空女は彼女たちほどの声はあげなかったが、それでも鞭が秘部や乳房などの敏感なところに当たると、呻き声のようなものを口に出した。
沙那たちは鞭打たれながら、正面の建物の中に入らされた。
その建物内にある部屋に連行され、そので随分と身なりがよいひとりの四十代なかばくらいに見える女が椅子に座って待っていた。
「ハク・エン様、新しい奴隷です」
女官が頭をさげる。
彼女が将軍夫人のハク・エン?
なるほど、装束だけでなく、それなりに高価そうな宝石に身を包んでいる。
年齢のわりには美しいと思ったが、ただ美人ではあるが酷薄さを連想させるような顔をしていた。
夫人がなにかを推し量るように、沙那たちを見た。
「そっちの三人は多分三級ね。でも、こっちの五番の栗毛と端っこの一番の赤毛はいいわね。一級と二級でいけるかもしれないわね。まあいいわ。いずれにしても、検査してみればわかることだし」
夫人が言った。
三級? 二級? 一級?
なんのことなのかさっぱりとわからない。
「まずは赤毛よ。こっちを見なさい」
夫人の前には、籠で編んだ五個の壺があった。
大きなものではない。
手のひら程度の小さなものであり、口の部分が小指の先くらいしかない籠壺だ。
そのひとつを手にとって、孫空女に向ける。
「ああ? なんだい? うあっ」
いきなり孫空女が消滅した。
なにが起きたのかわからない。
沙那は眼を丸くしてしまった。
「えっ?」
「なに?」
「ええ?」
里の娘たちも呆然としている。
その娘たちも、次々に壺を向けられていなくなる。
沙那は仰天した。
「最後はお前ね」
夫人が沙那に壺を向ける。
なにもできない。
次の瞬間、沙那はなにもない空間にいた。
真っ暗でなにも見えない。自分の身体でさえもだ。
いや、そもそも手足もなければ、身体もない。
あるのは、感覚だけだ。
だが、なぜか、股間の一部──肉芽だけに外気のようなものを感じた。それだけだ。
それ以外の一切の感覚が消滅してしまった。
「じゃあ、とりあえず、皮から剥こうかしら。それからいつものように検査からね。淫気の搾り取り具合によっては、格上げていくわ。水準以下なら、三級として放置処分ね」
夫人の声だ。
だが、言葉は聞こえるが姿はない。
ただ、夫人の声は唯一の感覚のある肉芽の方向から聞こえる気がする。
「ひいいっ、いやああ」
次の瞬間、沙那は肉芽に衝撃を感じた。
いきなり皮を剥かれて、なにか柔らかいもの──筆のようなものでくすぐられたのだ。
しかし、自分の悲鳴も聞こえない。
存在するのは肉芽の刺激だけだ。
そして、その瞬間、沙那にはわかった。
いまの状況だ。
どういう術なのかは不明だが、沙那がいるのは、さっきの籠壺の中だと思った。
理由はない。
ただ理解できた。
つまりは、肉体を封印状態にされた。
ただ、おそらく、あの小さな壺の口の部分から肉芽の先だけが出ていると思う。それを外から刺激されているのだ。
だが、堪ったものではない──。
「いやあああ」
沙那は筆の刺激に必死で抵抗しようとした。
だが、そもそも身体がないのだ。
逃げることもできない。
「おや、随分感じやすいねえ。そっちの赤毛もやはり、思ったように敏感のようね。随分と粋がいいわ。ほかの三人はやはり、反応は平凡ね。いいわ。赤毛と栗毛には、掻痒液を使って。早いけど、痒み責めに移行しましょう」
夫人の声が聞こえる。
一方で、沙那はひたすら声にならない悲鳴をあげ、抵抗手段のない肉芽への責めを受けるしかなかった。
そして、少しして、肉芽をくすぐる筆にたっぷりの水分のようなものを感じた。
猛烈な痒みが襲い掛かったのはすぐだ。
沙那は闇の中で絶叫した。