※この作品はR-18です。

新・嗜虐西遊記─北遊記/ビ・ク城篇【終了】   作:ドン・ドナシアン

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2  囚われの被虐姫?

「ホウよ……。ホウよ」

 

 気持ちの悪い甘え声を掛けられた。

 まどろんでいたらしい宝玄仙は、寝台の上で完全に眼を覚ました。

 高い天井側にある鉄格子の嵌っている小さな窓からは、朝の光が射し込んでいる。朝なのだろう。

 すると、寝台の横にビク・トが立っていた。

 この軍塞の将軍にして、一応は、将軍の後宮施設の一部らしきこの部屋に監禁されている宝玄仙の「主人」ということになっている男だ。

 無論、そんなものは宝玄仙は認めてはいない。

 

「お前かい。朝っぱらからなんだい。夕べは散々に愉しませてやっただろう。まだ不足なのかい?」

 

 両手で身体を支えつつ、上半身を起こしながら嘆息する。

 ねちっこいこの男の性の相手をして、昨夜もまた散々な目に遭った。そろそろ年寄りの分類に入りそうな年齢のくせに、好色さと絶倫さは宝玄仙もたじろぐほどだ。

 昨日だって、この宝玄仙が結局は圧倒されたのだ。

 おかげで、全身がまだ気怠くて仕方がない。

 それに対して、目の前のビク・トはすでに興奮しているみたいだ。

 朝からうんざりした気分である。

 宝玄仙としても、まさか、自分が性交に飽きる日が来るとは思わなかったが、正直、このビク・トとの性交はうんざりしている。

 なによりも、こうやって囚われて自由を奪われているとう状況が気に入らない。

 

「もちろん、不足だな。お前も嫌いではないだろう? さあ、わしの相手をしてくれ」

 

 ビク・トの顔が好色そうに歪む。

 宝玄仙はまたもや嘆息してしまった。

 また、身体を起こしたために身体に掛かっていた敷布が落ちて、宝玄仙の乳房が露わになっている。

 もちろん、身体には下着一枚身に着けていない。

 そんなものは、この後宮に閉じ込められて以来、服どころか、あらゆる装飾具、それこそ、指輪はもちろん、髪留めまで取り上げられたままだ。

 そして、この自慢の身体であるが、露出した胸を含めて、胴体の全部にびっしりと式紋と呼ばれる模様を刺青されていた。

 宝玄仙の道術を封じる封印紋であり、これを刻まれてしまった宝玄仙は、一切の道術を使うことができなくなってしまったのだ。

 

「お寝坊さんじゃのう。だが、ちょっと頼む。朝から勃起しておるのだ」

 

 ビク・トが宝玄仙が横になっていた寝台に腰をおろし、気持ちの悪い猫なで声とともに、髪を撫でてくる。

 宝玄仙は、それを乱暴に手で払いのけた。

 

「気持ちの悪い声を出すんじゃないよ──。それに体臭が臭いんだよ。部屋に入ってくるなと言っただろうが」

 

 ビク・トを睨みつける。

 とにかく、できるだけビク・トが傷つくような言葉を選んで悪態をつく。

 だが、ビク・トは気にした様子もない。

 笑みを崩さずに、寝台の頭側にあるこぶし大の水晶玉に手を伸ばす。そこには五つのくぼみのある木製の台座があった、その台座に四個の水晶玉が埋まっていた。そして、そのうちの二個が白く光っていたが、ビク・トが手をかざすと、その二個の光も消滅した。

 その瞬間、宝玄仙の両手が付け根から消滅する。

 

「くっ」

 

 腕がなくなったことで体勢を崩してしまい、宝玄仙はごろりと寝台に転がってしまった。

 ビク・トが身体に掛かっていた敷布を掴んで、寝台の下に投げ落とす。

 おそらく、ビク・トと一緒に入ってきたのだろう。壁際には全身のみならず、顔の前まで黒い布で覆っている老婆が五人いるのだが、そのひとりが無言で床からその敷布を拾って、また壁に戻る。

 拾った敷布は、彼女たちの足元にあった籠に入れられた。

 よく見れば、彼女たちは汚れ物を入れるその籠のほかに、台車に載せた食事らしきものや洗面の道具なども携行しているみたいだ。

 しかし、ビク・トからの指示がないので、自分たち自身とともに壁に一体化しているかのよう置いたままだ。

 

 いずれにしても、入れ替わり、立ち替わりでやってくる世話係の全員が老婆である。なぜ、揃いも揃って老婆なのかは知らない。

 もしかして、時折やってくる嫉妬深い正妻のハク・エンの指示なのかもしれない。

 ここにきて、そろそろ半月は経ったと思うが、宝玄仙は城の主であるビク・トの周りにしても、正妻のハク・エンの周りにしても、身の回りの世話をする者についてはことごとく老婆であることを知っている。

 例外は、あの可哀想なハク・エンの専属侍女らしいハク・コという少女だろう。

 怒鳴られているか、竹鞭で打たれている場面しか見たことはないが、あのハク・コだけは若くて可愛らしい顔をしていた。

 しかし、それを除けば、ここまで徹底して周りの女を老婆で固めているというのは徹底している。

 

「とにかく、わしの相手をせよ。なにしろ、まらが勃ってのう。頼むぞ」

 

 ビク・トが宝玄仙の身体を抱きあげる。

 さっき両腕が消滅したが、両脚については最初からなく、宝玄仙の身体は付け根から四肢がない胴体と頭だけの姿だ。

 これもまた、どういう術がかかっているのかかわからないのだが、あの寝台の頭側の四個の水晶玉は宝玄仙の四肢に連接していて、光っているときには手足が出現し、光が消えているときには消滅するという仕掛けになっているのである。

 置きっぱなしになっているので、なんとか道術の仕掛けを解いて、手足を取り戻そうとはしたが果たせなかった。

 

 宝玄仙の出身の東帝国と、ここの北方帝国とでは道術の仕組みの根本が異なるのか、宝玄仙をもっていても、術の絡繰りが解けないのだ。

 それは、胴体に刻まれている術封じの文様も同様である。

 仕方なく、試しにそのまま部屋から逃げようとしたが、部屋から一歩外に出た瞬間に手足がなくなり、廊下に転がるだけで終わった。

 ならば、水晶を抱いて逃げてしまおうとして、やはり、宝玄仙は手足のないだるまのようになって廊下に転がる羽目になってしまった。

 とにかく、どういう仕掛けになっているのかを読み解かないと、この部屋から一歩も出られない。

 最近では今日のように、逃亡防止のために、最初から両脚を消されてしまってもいる。

 そうこうしているうちに、気がつくと半月以上の時間が過ぎたということだ。

 

「た、頼むぞって、なんだい──。朝っぱらから盛ってんじゃないよ。そもそも、まらが勃ったって、ただの朝勃ちだろうが──。ますでもかきな。それとも、ハク・エンに相手をしてもらいなよ。あれは、いつでもお前を待ってんだよ──」

 

「ハク・エンはただの政略結婚の相手だ。性交渉などもう一年以上ないわ。それに、女王陛下の妹だけあって、気が強くてなあ。わしの好みじゃないのだ。それに比べれば、おホウは華奢で可愛くて、なによりも被虐癖なのがよい……」

 

 寝台に完全に上がり込んで胡坐に座ったビク・トが宝玄仙の裸身をまさぐり始める。

 そして、乳房を揉みあげ、股間に指を這わせてきた。

 しかも、いかにも性技に長けた熟練さを発揮して、いきなりは一番敏感な場所には触れてこない。その周りからくすぐるような愛撫をくわえてきるのだ。

 そういう責めに弱い宝玄仙は、口惜しいがたちまちに息を荒くしてしまった。

 

「や、やめなよ──。い、いやだって言ってんだろう……。あ、ああ……」

 

 宝玄仙はせめて必死に抵抗しようとするが、手足が付け根から存在しないこの状態では、ただもじもじと動くことだけしかできない

 全身が熱くなり、汗とともにじっとりと股間が濡れてきたのがわかる。

 

「う、うう……」

 

「さすがの被虐癖だのう。もう濡れ濡れではないか」

 

 ビク・トが相好を崩して、指先で股間を柔らかくくすぐる。

 ほんの触れるか触れないかの加減であり、そんな感じで乳房や股間を愛撫されると、じんとした陶酔が身体から込みあがり包んでくる。

 いくら悶えても、手足のない身体──。

 悪態をついても、この淫らな責めから逃げる手段は存在しない。

 そう思うと、確かにぞくぞくと、宝玄仙の中にある被虐の虫が身体も心も支配する。

 でも、それが口惜しくて仕方がない。

 

「ああ、ち、畜生──。そ、そもそも、お前、頭がおかしいだろう。わたしのどこが、華奢で可愛いんだい──。正反対の性格だろうが。わたしはお前の正妻のハク・エンよりも、ずっと怖い女なんだよ──」

 

 ビク・トの愛撫に、胸を締め付けられるような被虐の支配を覚えて、宝玄仙は慌ててそれを振りほどくように毒づく。

 すると、ビク・トが宝玄仙の胴体を抱え直して笑った。

 

「ならば、怖いところを見せて抵抗してみせてみよ、ホウ。お前の嫌いな尻責めをしてやろう。抵抗しないと、また悶絶することになるぞ……。おい、啼き油を持ってこい」

 

 ビク・トが壁の老婆たちに声をかけた。

 宝玄仙に語りかけるときとは打って変わって、酷薄そうな冷徹な響きだ。

 それはともかく、「啼き油」と聞いてはっとした。

 幾度か使われたこともあり、そのたびに七転八倒しなければならなかった掻痒剤なのだ。

 ただの薬剤ではない。

 それにも道術が込められており、それを塗られたら最後、洗おうが、犯されようがなにをしようが猛烈な痒みと疼きが半日以上継続するのである。

 これまでに、この部屋からの逃亡を図ったのは五回──。

 その五回とも、罰として、その啼き油を尻穴や股間に塗られて放置された。あの水晶玉で四肢を消滅させられてだ。

 あれは、本当に苦しかった。

 それをまた塗るだと──?

 

「うわっ、やめておくれ──」

 

 宝玄仙は悲鳴をあげた。

 老婆のひとりがやってきて、あの独特の刺激臭のある油剤をビク・トに差し出したのだ。

 ビク・トはそれをたっぷりと指に載せて、宝玄仙の尻の方向に持っていく。

 

「ひああっ、やめろって言っているだろう──。わ、わかった。もう生意気は言わない。頼む。それだけはやめておくれ──」

 

 宝玄仙は狂ったように尻を暴れさせる。

 だが、そんなことをしても、防ぎきれないのはわかっている。

 ビク・トはゆっくりと宝玄仙の尻穴を押し広げていく。

 ぬるっとした油剤の感触が宝玄仙のお尻の蕾に拡がり、それがじわじわと尻穴の奥に向かって塗り足されていく。

 

「う、うう……」

 

 宝玄仙は歯噛みした。

 

「啼き油は尻穴だけにしてやろう。いい子だったら、この部屋を出るときに、両手を残してやる。しかし、いつまでも駄々を捏ねるなら腕もなしだ。わしはどっちでもいいがな」

 

 ビク・トが老婆に持たせている油剤の缶から指に啼き油を足しながら、幾度も幾度も執拗に掻痒剤を尻穴に塗っていく。

 そもそも、お尻の穴は宝玄仙の最大の弱点だ。

 ここをいたぶられただけで、もうその瞬間になにも考えられなくなるほどに感じてしまうのだ。

 いまもすでに、追い詰められて感極まりそうになっている。

 

「ここをいたぶられるのがそんなに嫌なのか?」

 

 ビク・トは指で尻の穴を責める手管を激しくしながら笑った。

 

「あ、あああっ、だめだよお──。いくう、いくよおお──」

 

 大きなものが込みあがり、宝玄仙はぶるぶると身体を震わせた。

 頭が真っ白になるような強烈なものがやってくる──。

 翻弄されるのが口惜しく、我慢しようと思って懸命に歯を喰いしばる。

 

「ははは、ここじゃな? それからここもじゃな?」

 

 油剤を塗っているビク・トの指が宝玄仙のお尻の中を縦横無尽に動く。

 しかも、的確に感じる場所を刺激してくる。

 あっという間に限界がやってきた。

 

「くうう、くそったれがあ──」

 

 宝玄仙は四肢のない身体を弓なりにして果てた。

 すると、ビク・トが宝玄仙を膝の上から寝台にうつ伏せにおろして、尻を向けさせる。

 そのお尻側でビク・トから布ずれの音がするので、股間でも出そうとしているのだろう。

 そのとおり、すぐにお尻の下から怒張が滑り進んできて、宝玄仙の女陰にめり込んでくる。

 

「ひあああっ」

 

 達したばかりの鋭敏な股間を貫かれ、宝玄仙は再び一気に高みに快感を飛翔させられる。

 律動される。

 しかも、背後からビク・トの手が左右の乳房に伸びて、これでもかと揉みたてられた、

 

「ああっ、あああっ」

 

 抵抗する手段を奪われて、四肢さえ消滅させられて、宝玄仙の意思に関係なく犯されて昇天させられる。

 宝玄仙ともあろうとものが惨めだ。

 だが、その惨めさが不可思議な興奮を連れてきてしまう。

 股間が狂ったように疼きだす。

 膣の中のビク・トの男根に絡む愛液がますます濃さを増して、そして、怒張を締めつけていくのがわかる。

 

「おっ、興奮したか、ホウ──。やはり、お前は被虐姫だのう──」

 

 ビク・トが乳房から手を離して、両手で宝玄仙の細腰を掴んだ。

 そして、乱暴に引きあげ、怒張で貫かせたまま、上下に激しく動かしだす。しかも、まるで物かなにかのように、音がなるほど宝玄仙の腰をビク・トの腰に叩きつける。

 

「ひ、姫って呼ぶんじゃないよ──。ひおおおっ、そ、そんなにしないでおくれ──。いぐううっ」

 

 あまりの激しさにあっという間に達してしまった。

 だが、ビク・トの粗暴な性交は終わらない。

 ますます興に乗ったかのように、凄い速さで腰を上下に動かされる。

 

「のごおっ……んんんっ、んごおお──」

 

 喉奥で声にならない絶叫をもらす。

 そして、がくんがくんと痙攣が起きた。

 達したのだ。

 しかし、許されない。

 さらに胴体を動かされる。

 幾度も幾度も子宮が怒張の先で突きあげられて、本当に白目を剥きそうになる。

 

「ほごおおおっ」

 

 またもや激しく達した。

 すると、ビク・トが乱暴をやめて、ぐいと股間に宝玄仙の腰を強く密着させた。ビク・トの腰がびくびくと震え、どっと膣に向かって精を放ったのがわかった。

 満足したのか、ビク・トは怒張を抜き、放り投げるように、仰向けに宝玄仙を寝台に置く。

 

「また夜来るぞ。いい子にしておれ」

 

 既に寝台から降りているビク・トが服装を整えながら言った。

 息を整えつつ、それをぼんやりと宝玄仙は眺めていたが、すぐに我に返った。

 ビク・トがそのまま部屋を立ち去る気配だったからだ。

 だが、まだ手足を復活してもらってない。

 水晶玉を操れるのは、ビク・トだけなのだ。あいつが手をかざして水晶玉を光らせないと、手足は消滅したままだ。

 これまで、散々に挑戦したから、宝玄仙はそれを知っている。

 

「ま、待ちな──。手足を元に戻しおくれ──。せめて、腕を──」

 

 本当に寝台から離れていくビク・トの背中に叫ぶ。

 激しい性交のあいだは気にならなかったが、啼き油を塗りたくられた尻穴から堪らない疼きと狂うような痒みが襲い掛かってきている。

 腕を戻してもらわなければ、それを癒す手段がないのだ。

 

「お前たち、ホウの世話をせよ。ただし、あれがどんなに苦しがっても、尻穴には触るな。わしが夕方戻るまで狂わせておけ」

 

 ビク・トは扉の外に立ち去ってしまった。

 

「ああ、待ちな──。待ってたらああ──。ち、畜生──。痒いい──。痒いよおお──」

 

 見栄も体裁もない。

 宝玄仙は乱れ切った黒髪を左右に激しく振って、四肢のない身体を激しく揺すった。

 老婆がふたりほどやってくる。

 そいつらが無言で宝玄仙の身体を拭き始める。また別のふたりが壁際で食事の支度だ。

 排尿と糞尿用の便壺を運んできた老婆もいた。

 

「ああ、痒いいっ、お尻を掻いてくれよ──。お前らもこの苦しみがわかるだろう──。後生だよおお──」

 

 無駄だとわかって叫ぶ。

 そのときだった。

 突然に便壺を寝台の横まで持ってきた老婆がぱんぱんと手を叩いた。

 宝玄仙も驚いたが、ほかの四人の老婆はもっとびっくりしたみたいだ。動きを中断して、そのひとりの老婆に視線を向けた。

 

「はい──。注目──。しばらくのあいだ、見ざる、言わざる、聞かざる──。壁に向かって整列──」

 

 老婆と似つかわしくない若い声で、その老婆が叫ぶ。

 すると、ほかの四人の老婆が呆けたようになって、壁に向かっていく。

 そして、壁に顔を向けたまま動かなくなった。

 

 操心術だ──。心を操る術……。

 

 四人が寝台の前からいなくなり、残った老婆が宝玄仙のいる寝台の横に来て、自分の顔の前の布をはぐった。

 やはり、老婆の顔だ。

 だが、宝玄仙にはわかった。

 

「朱姫──。お前かい──?」

 

 歓喜が込みあがる。

 顔は見知らぬ老婆だが、変身術を使っているのだろう。間違いなく、中身は朱姫だ。

 宝玄仙は確信した。

 

「ふう……。やっと会えました……。沙那姉さんと孫姐さんも、ご主人様を連れ出そうと潜入してきてます。もっとも、変身術があたししか使えないので、あっちは貢物奴隷としてですけど……。でも、一体全体、どういうことになって、ここの将軍の愛人さんになっちゃったんですか? 沙那姉さんも、とにかく状況がわからないと動けないって言ってましたよ」

 

 朱姫が呆れてるような口調で言った。

 しかし、宝玄仙は首を横に振って、召使いの老婆に変身している朱姫に眼を剥く。

 

「そんなことはどうでもいいんだよ──。とにかく、いまはこの尻穴の悩みをなんとかするんだよ──。さっさとしな──」

 

 宝玄仙は怒鳴りあげた。

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