エロシーンのある後編は、23日0時に投稿です。
知り合った時から茉莉花のマナーがいい事には気付いていた。そうとは思っていたが、自分が思っているより数段優れていると実感したのは一緒に焼き魚を食べた時だ。
俺が骨を外して身を食べるとき、あまり綺麗に食べることができずにいた。ふと彼女の方を見ると骨が綺麗に皿の端に避けられていて身も食べ残しが無かった。
あまりに呆然とした顔で見ていたのだろう。得意げな顔で自慢をされた。
「焼き魚を食べるときはお腹側を裂くんじゃなくて、脇腹を裂くようにすると綺麗に食べられるんですよ」
と、簡単なコツも教えてもらった。他にも細々としたマナーがあるようだが、基本はそれを守ればいい感じになるとのことだった。
食後、マナーの良さを心の赴くままに称賛した。その流れで親からああいった作法を教えてもらったのかと問えば、違うと回答された。自分から学んで覚えたとのことだった。
「ほら、片親ってだけでバカにしてくる不躾な人っているでしょ。バカにされないため、学力とマナーを高めたんですよ。柊さんはそんなこと無かったですか?」
「いや、そういう奴はいたな。学力は同じだが、マナーじゃなくてスポーツとか肉体関係を高めたけど」
バカにしてる相手より格上と周囲が判断させれば、相手が白い目で見られるばかりになる。同じ考えに至るとは中々に性格が似通っているらしい。
「マナーってどうやって学んだんだい?そういう教室に行ったとか?」
「いえ、本を読んで身に着けたんです。日本のマナー一覧みたいな本ですよ」
「扇子を常備してるのもマナーの一環?」
「いえ、違います。でも本に書いてあって、それでカッコいいなって思って持ち始めました。これは扇子の扱い方専用の本を読んだりしたから様になってるでしょ」
そう言って片手で扇子をバッと開き、口元を隠すように顔の前に掲げた。扇子に描かれている絵が、相手方へ見える様にするのが作法だと、後で教えてくれた。
実際彼女の扇子さばきは非常に雅で様になっている。開き方や閉じ方、扇ぐ速度やこうして口元を隠す動作一つ一つに惹かれてしまう。彼女の美しい顔や、濡羽色の長髪も相まって、映画のワンシーンを切り取ったかの如く印象を抱く。
因みに彼女の扇子さばきに憧れ、自分も扇子を持ち歩いたことがある。だが彼女の隣で扇子を扱うと自分の動作があまりにも稚拙で持ち歩くのを止めた。茉莉花は少し悲しんでいた。俺のマナー不足で君も軽く見られるのが嫌だからと説得した。今その扇子は俺の部屋で扇子立てに飾られている。
「口を開けるのもあまりマナーが良くないって話だから、これを使って口を隠すとかなりカッコいいでしょ」
「本当にそうだね。学校でそんなことしたら惚れられちゃうでしょ」
「私の学校だと扇子の持ち込みは禁止されてるんですよね。だから笑ったときなんか手を使って隠してます」
その作法も見せてもらったが、結局彼女の魅力を損なうようなことは無かった。そう伝えるとやはり得意げに微笑んだのだ。その時に顔は隠されなかったので、彼女から家族認定されてると思うと自然と笑みがこぼれた。
同居が始まる一カ月前の話だ。
▽▲
高校生がセックスの快楽に溺れるとどうなるか。答えは単純、成績が落ちる。
朝から晩までセックス漬けという訳ではないが、初めてセックスをしてからはどう親の目を掻い潜るか考え、それかセックスをしてばっかりだった。そんなもんだから当然成績が落ちた。
一学期の中間テストは今までの成績から考えると、下へ位置することになった。それでも上位にはいるから親は何とも言ってこない。けれど自分たちがあまりに爛れた生活を送っていると愕然とした。なのでしばらくは自制をすることにした。
どちらにせよ茉莉花が生理の時なんかはセックスをしないのだから、その期間が延びたと考えて勉強を励むことにした。
同じ高校に通っていて、一学年違うだけなので少しは教えられる。そういうなのでリビングでお互い机に向き合っていた。
最も今は休憩中だ。朝からやっていて親たちが夕飯の材料を買いに行くまで続けていたので休んでいる。その疲労に加えて茉莉花は生理なので調子はあまり良くない。親の目がないうちに甘えるだけ甘えようとしている。
「兄さん~、頭撫でて~」
「はいはい。いいですよ」
「ん~、何か返事が適当だ~」
今はソファに座った俺の太ももに頭が乗せられている。適当に付けたテレビはどこぞの世界遺産の成り立ちの説明をしている。意外と面白くて集中していたせいか、返事がおざなりになってしまった。
そんなことを言い合いながら休憩をしていると外から車のエンジン音が聞こえてくる。その他の音も含めると買い物へ行った両親が帰って来たのだろう。太ももの上の頭がピクリと動くが、体を起こすことは無かった。
結局玄関の扉が開く音でも動かず、リビングの扉の前まで足音が聞こえてからやっと体を起こして離れた。以前はこうなった時はエンジン音が聞こえただけで離れたものだが、玄関が開く音、廊下の足音と後ろにズレ込んでいき今では扉の前まで粘るようになった。
茉莉花は上手く隠し通せていると思い込んでいるようだが、母親には甘えているのがバレているらしい。恐らく廊下の足音で離れる様になってからだろう。母とそうなのだと確認したことは無いが、こういったときに彼女から見えないようにサムズアップをされるようになった。今もされた。
このことがバレても仲の良い兄妹に思われるだけなので、茉莉花にはバレていると伝えていない。それにこのままの調子ならどこまで甘えたままなのかも少し興味があるのも伝えない要因の一つだ。
因みに父は何も気付いていないらしく怪訝そうな顔をしてから遅れてサムズアップをする。それは茉莉花にバッチリ見られている。多分再婚した父は急にサムズアップする陽気な人だと思っている。
「柊、帰ってきたら配達員と鉢合わせてお前宛の荷物を受け取ったぞ」
そう言って父から段ボールを手渡される。隣にいる茉莉花が覗き込んできて、
「前行った旅行先の住所ですね」
と言う。部屋へ持って行こうと立ち上がったら母に肩を抑えられて再び座らされる。この中に入っているものは茉莉花の誕生日プレゼントで、何を贈ればいいのかと母に相談していた。普段使いできるものなので恥ずかしがらず今渡せということだろう。
茉莉花の誕生日は少し先だが平日になる。確かに日曜日の今日中に渡した方がいいだろう。
因みに茉莉花の名前の由来は六月八日の誕生花が茉莉花なのでそう名付けたとのことだ。何と安直な、そう思ったが俺の誕生日は一一月八日で誕生花は柊だ。両親は出会う前から気が合っているねと盛り上がっていたことがある。
「何かお土産を買ってたんですか」
「いや、これは誕生日プレゼントだよ。少し早いけど誕生日おめでとう」
そう言って荷物を渡そうとしたが、段ボールのままでは不適当だと思い開封するための道具を取りに行くため立ち上がる。幸い適当な道具は直ぐに見つかったので封を切る。中身は緩衝材とプレゼントだけでなく、簡単な袋を入っていたためそれを手に持って茉莉花の元へと戻る。
「ちょっと早いけど誕生日プレゼントだ」
手渡してから急に気恥ずかしなり、じゃあ、と言って自分の部屋に立ち去ろうとしたが、これまた母に止められる。
ニコニコとしながら丁寧に包装を剥がしている。ラッピングされたものを包装紙を破かないように開くのが中々に楽しいと語ったこともある。だが早く中身を見たい気持ちを抑えられないのか、時々ビリッと紙が破ける音がする。
それでも遠目からは分からないほどの傷しか付けずに包装を剥がし終わる。箱に書かれた文字を見て、
「これは、扇子ですか」
と聞いてきた。
「そうだ。いや、なに、ほら。中学は扇子の持ち込みは禁止されていたけど、高校は良いって話を聞いてな。
元々使っていた扇子もかなり年季が入っていただろ、それと折角高校入学したんだから新調するのもいいんじゃないかと思ってな。
いや、気に入らないんなら捨てて貰って叶わないぞ。俺はあまりセンスがいい方じゃないから、多分趣味に合わないと思うから」
箱の蓋を開け扇子を手に取る。大きさは普段彼女が使うものと同じ大きさのものを作って貰ったので違和感はないはずだ。それに新品だから開く動作も不自由なく行えるだろう。
案の定片手でパッと開く事が出来た。扇面に描かれている絵を見て質問をしてくる。
「これは茉莉花の花ですか?」
「そうだ。特注デザインを頼める店で買った。一目見て君のものだと分かるデザインを注文したんだ。とは言っても茉莉花の花を書いてくれって頼んだだけで詳細は職人さんがしてくれたけど」
ほー、と声を出しながら絵を眺めている。軽く口元が緩んでいるのを見るに気に入らないってことは無いらしく安心する。
そうして扇面を眺めているとあっ、と声を上げた。一輪だけ違う花が混ざっていることに気付いたらしい。
「この花は」
「柊の花だ。職人さんと話して、どうせなら送り主が分かる様なものをアクセントとして入れよう、そうなってね。
それで貰う人も送る人も花の名前だから両方を描こうってなった。だからのその扇子は一目で柊から茉莉花への贈り物だって分かるようにデザインしたって話だよ」
そこまで言うと恥ずかしさがピークを迎えたので部屋へ戻るために立ち上がった。母は静止をかけるが流石にもう耐えられない。歩き出そうしたが茉莉花も立ち上がったので気圧されてしまった。
彼女は今迄使っていた扇子を掴み、軽い足取りで二階へ上がった。自分の部屋に戻っていったのだろう。直ぐに戻ってきたが、扇子を一つしか持っておらず、それは今し方プレゼントしたものだった。
ズンズンと俺へ近づき、興奮気味に両手を取られ、
「今までで一番嬉しい誕生日プレゼントです。ありがとうございます。兄さんの誕生日も楽しみにして下さいね」
と礼を言ってきた。あまりの迫力に俺の誕生日の事はそんなに考えないでいいよと返すので精一杯であった。
この日から今までの扇子は使わず、俺が贈ったものを使うようになった。だがこの日を境に扇子を開くとき、花の絵が描かれた面を自分の方へ向ける様になった。
それは作法として間違っているのでは、そう質問をすると、
「そうですけど、こんなにいい絵を何も知らない人に見せるなんて勿体無いです。それに出来るだけ長い間、この絵を目に焼き付けたいんですよ」
とのことだった。
▽▲
プレゼントを渡した後、かなり嬉しかったのか一分と同じ場所に座っていられないほどそわそわとしていて、とてもじゃないが勉強をする気分にはなれそうに無い。
「兄さん、気分転換も兼ねて漫画喫茶にでも行きませんか」
扇子を眺めている茉莉花からそう話しかけられる。確かに朝から勉強漬けで疲れもあるし、この調子ではいくら時間を費やしたところで頭に入らないだろう。
なので両親に夕飯までには帰ってくると伝えて出掛けることにした。
「なんだか、こうやって兄さんと漫画喫茶に行くの、随分久しぶりですね」
「そうだな。四月あたりが最後だな」
気になるから一緒に行きませんか。そう茉莉花に誘われて行ったのがお互いの漫画喫茶デビューだ。俺は興味を持ったことが無かったが店を出る頃には、漫画喫茶と言う場所の居心地の良さに感動していた。それから何度も茉莉花と行っている。
お互いに初めて入ったのが二人一緒だったからか一人では行く気になれず、行きたいときはこうして二人で行くようになった。彼女からすればナンパ除けという口実もあるのかも知れない。最も店内で他人と会話をしている光景を見たことは一度もない。他人と他人が話しているのだって見たことが無い。
「そういえば、前に兄さんが読んでた漫画の最新刊が出たみたいですよ」
元々茉莉花が漫画喫茶に行きたかったのは、友人との会話のネタや流行を追うために見たかったからだけらしい。お金に困っている訳ではなく単純に私物で部屋を圧迫したくないから紙では買いたくないとのことだ。
二人で入る適当な部屋を取り、その部屋へ入る。
「じゃあ俺、漫画と飲み物取ってくる。茉莉花のはいつものでいいよな」
「いつものでお願いします。ここで待ってますね」
そう言って直ぐに備え付けのパソコンに向き合い、持参したUSBをパソコンへ差す。それを横目で見ながらブースから出た。
茉莉花用にコーンスープと、氷をたっぷり入れたカップにウーロン茶を、自分用に野菜ジュースをコップに入れ、適当な漫画を何冊か掴んで戻る。
「ありがとうございます」
お礼を言いながらも茉莉花の視線はモニターから離れない。自前のイヤホンを付けて真剣にAVの厳選をしている。
どういった制度なのかよく分からないが、気に入ったAVを一作品、USBに入れて持ち帰ることができるらしい。その作品を選ぶためまずは作品のタイトルやサムネを見る、次に映像を飛ばし飛ばしで確認する。この作業中々楽しいですよ、と興奮気味に語られたことがある。よく分からないが楽しそうだねと返したはずだ。
大量のAVを茉莉花が持っていると知ったのはセックスをするようになってからだ。どうやって集めたのかと聞けば、こうして二人で漫画喫茶に来てAVをダウンロードするのを二回目の来店からやっていたらしい。全く気付かなかったので、それを知らされた時にかなり驚き、しばらく声を出せなかった。
それまでは俺にバレない様にUSBにデータを入れていたようだが、セックスをするようになってからは隠すことでもないと考えを改めたようで、俺の目の前でも堂々とAVの厳選をするようになった。
一緒に選びませんか、とも誘われたことがある。しかし個人的には映像作品より静止画の方が好きなのでどれを見てもピンとくることはないと伝えた。それからは彼女が真剣に選ぶ背中を見るだけだ。
背中越しのモニターは相変わらず鬼畜系や調教系の作品ばっかりが映る。だが彼女の中でも線引きがあるとのことで、女が複数人なのはいいが男が複数人なのはどうしても嫌とのことだ。
理由を問えば、
「複数の男性と同時にセックスするなんて下品ですよ。汚らわしい」
と吐き捨てる様に言った。その理論なら女が複数人でも同じじゃないかとか、色々言いたいこと浮かんだが口論になるのも面倒だったので、
「そうだな」
とだけ返した。
そんなことを考えながら茉莉花の後姿を眺めていたら、視線に気付いて振り返る。一緒にダウンロードする作品を選びたいのかと思ったのか、身振りで近くに座るように促される。選ぶ気はないので手元の漫画を開き、彼女の誘いを断った。
持ってきた漫画を読み終わる頃に持ち帰る作品を決めたらしい。後ろに倒れて俺の太ももの上へ頭を収める。飲み物も尽きたので新しいのを注いでこよう、そう思ったが服の裾を掴んで離れるのを拒否された。仕方がないのでスマホを弄ったりして茉莉花が満足するのを待つ。
ふと気になってモニターを見ると選んだAVのタイトルが見えた。長々しいタイトルだ。要約すると、変態カップル調教される生娘、みたいな文章だった。AV業界には色々な作品があるのだなぁ、そんなことを思いながらモニターに視線を投げていると、
「今度、一緒に見ましょうね」
と茉莉花に言われた。どうやら内容に興味を持ったと思われたらしい。半分正解なので反論もせずに言葉を聞き流す。
その後、お互い飽きるまで漫画を読み、喉が渇かない程度にドリンクバーを利用した。読み疲れた頃にはいい時間になったので家へ帰ることにした。
次回、フェラチオとイラマチオ