男の俺は聖女になれませんが……聖女の力を覚醒させるチ××はあります! 作:elly
第一話
(この棚にもないか……)
放課後、図書館に行ってある調べ物をするのが、最近のルパートの日課である。
ルパートには、ローナのことがずっと引っかかっていた。
〈聖女の力〉が弱まったにも関わらず、それが戻ったこと、そして、何度も関係を持ったのに、〈聖女の力〉を持ち続けていること。
代々多くの聖女を輩出している家に育ち、聖女に関する知識もそれなりに持ち合わせているルパートですら、ローナのような事例は聞いたこともなかった。
だから、過去にそのような事例がなかったのか、聖女について書かれている書物を片っ端から調べることにしたのである。
(他の棚も覗いてみるか……)
ルパートが次の棚に移動すると、そこには先客がいた。
その先客は、不安定な脚立の上に立って、高い場所にある本を取ろうとしていた。
(あの脚立……だいぶガタが来ているな。大丈夫か?)
ギシギシと軋む音が不安を掻き立てる。
「きゃっ……」
小さな悲鳴を上げて、脚立の上に立っていた人物がバランスを崩した。
「危ない!」
ルパートは脚立の背後に回り、倒れかかっている人物を後ろから強く抱きしめた。
両腕に弾力性のあるボールのような感触が伝わる。
「すまない、助かったよ……あっ、君は!」
「アミーリア先輩!」
ルパートが助けたのは、アミーリアであった。
第二話
「入学式以来だな。学校には慣れたか?」
「いえっ! 寮生活は初めてなもので……」
今、ルパートはアミーリアと二人っきりで会話をしている。アミーリアを目の前にして、ルパートの鼓動は早くなり、手のひらは汗でぐっしょりと濡れていた。
それもこれも、憧れの人と一緒にいるからだ。
「今日は宿題の調べものか?」
「あ、いや、個人的な調べものです」
「勉強熱心なんだな。で、探し物は見つかったか?」
「それは……」
ルパートは一瞬、口ごもった。調べている内容を誤魔化そうと思ったからである。しかし、幼い頃から将来の大聖女として育てられているアミーリアだったら、何か知っているのではないかと考え直した。
「実は……〈聖女の力〉について調べています」
「〈聖女の力〉?」
「はい。失われた〈聖女の力〉が元に戻ることはあるのかなって……」
「……私もそれは……聞いたことがないな」
「……ですよね」
「だが、非常に興味深い。もし、<聖女の力>を元に戻す方法がわかれば、どれだけの者が救われることか……」
アミーリアは天を仰いだ。そして、何かを思いついたのか、ルパートの方へ向き直った。
「そうだ。先生たちに聞いてみるといい」
「へ?」
「ああ、古の聖女たちが個人的に書き残していた記録が存在する。確か、学園長のご専門だったはずだ」
「学園長……」
有益な情報を貰ったが、学園長にわざわざ聞きに行くのはさすがにハードルが高い。
「それ……と、そうだ! マリア先生もそうだったな」
「……」
ますますハードルが高くなった。
「マリア先生は君の担任だろう? ちょうどいいじゃないか!」
素晴らしい提案をしたとばかりに、アミーリアは目を輝かせている。
「そうですね。ありがとうございます……」
消え入るような声で、ルパートは礼を言った。