男の俺は聖女になれませんが……聖女の力を覚醒させるチ××はあります! 作:elly
第三話
「アミーリア!」
前方からアミーリアの名を呼び、歩み寄ってくる生徒がいた。
(あの人は……)
ルパートはその生徒に見覚えがあった。
入学式の司会をしていた生徒会の副会長だ。名前は――。
「カレン!」
ルパートとアミーリアの前にやって来たカレン・ホフマンに、ルパートは会釈した。
「あら、あなたは……」
「カレン、こちらは――」
「知っているわ。ヘイヴァース家のご令嬢でしょう? クレア・ルイーズ・ヘイヴァースさんよね」
いかなる感情も入っていない声だった。
「は、はい……そうです……」
カレンに見つめられると、背筋がぞくぞくした。
カレンもアミーリアに劣らぬ美貌の持ち主であったが、印象は全く違った。
笑顔を絶やさないアミーリアに比べ、カレンはただひたすらに無表情であった。
腰まである艶やかな漆黒の髪は、どこまでも真っすぐで、明るい髪色のアミーリアとは正反対だった――二人が並んで立っていると、まるで光と闇のようだ。
「アミーリア、あなたを探していたの。今すぐ生徒会室に来てもらえないかしら」
「わかった」
アミーリアはルパートに、
「……というわけだ。私はもう行かなくてはならない。君の調べ物は私にとっても非常に興味深い。何かわかったら教えてくれ」
と言い残し、カレンと共に立ち去った。
第四話
アミーリアと会話できたのは嬉しかったが、重責を担うことになった。
ルパートは学園長室の前に立っていた。
アミーリアから手がかりをもらった手前、学園長かマリアに尋ねに行くしかない。
本来なら、こういった質問は、教師に聞くのが筋である。しかし、ルパートは、担任教師のマリアがどうも苦手であった。
だから、わざわざ学園長の元を訪れたのである。あの学園長なら、名門ヘイヴァース家の娘を無下にしないだろうというのもあった。
「クレアさん? そこで何をしているの」
急に背後から声をかけられ、びっくりして振り向くと、そこにはマリアが立っていた。
「え、その……学園長にお聞きしたいことがありまして……」
マリアは、無表情でじっとルパートに視線を投げかけていた。何のことはない仕草であったが、その美しく整った顔立ちでやられると、えらく迫力があり、余計なことまで喋ってしまいそうな気になる。
「残念だけど、学園長は出張中よ。しばらくお戻りにならないわ」
「そう……ですか。だったらまた出直します」
長居は無用だ。そそくさとその場を去ろうとした。
「……待って」
またもや背後から声をかけられた。
「あの、まだ何か……」
心臓がドキリとした。
「あなたの用事……学園長ではないと駄目なのかしら? 私でできることだったら――」
「い、いいえ! せっかくですが結構です。急ぎの用事ではないので!」
ルパートは、駆け足でマリアの前から逃げた。