男の俺は聖女になれませんが……聖女の力を覚醒させるチ××はあります! 作:elly
第五話
――ドンっ!
「「痛っ!」」
鈍い衝撃と共に、ルパートの上に重量のあるものがのしかかって来た。
マリアから逃げることに必死で、前方に注意を払っていなかったため、誰かと正面衝突したらしい。
「ローナ⁉」
「るぱ……じゃなくてクレアちゃん⁉」
お互い顔を見合わせる。
「ごめんなさい! 今、急いでいるの!」
ローナは素早く立ち上がると、そのまま走り出した。
(ローナのやつ……一体、何だ?)
ルパートが首をかしげていると、
「ローナさん、お待ちになって! 今日こそは話していただきますわよ!」
とローナの名前を叫び、金色の巻き髪を振り乱しながら後を追う者がいた。
(あれは……同じクラスのエレーナじゃないか!)
(何をやっていたんだあの二人……)
ルパートは、ローナとエレーナの追いかけっこが気にかかっていた。
エレーナ・ボイントン――大金持ちの貴族の娘だ。金は唸るほど持っているが、ルパートやアミーリアの家に比べれば、天と地ほどの差がある。
(そもそも、追いかけっこするほど仲が良かったのか、あいつら……)
「ただいまあ!」
そうこうしている間に、張本人の内の一人であるローナが帰って来た。
第六話
「エレーナと随分仲がいいんだな」
単刀直入に聞く。
「ああ、あれ……別に遊んでいたわけじゃないよ……」
ローナの口ぶりからすると、心底困っているようだ。
「話してみろよ。力になれるかも知れない」
「うん……実はね、どうして〈聖女の力〉が戻ったのか、しつこく聞かれてるの……」
「お前、まさか……!」
慌てて身を乗り出す。
まだ確証はないが、ルパートもローナも、<聖女の力>が戻ったのは、関係を持ったことが原因なのではないかと思っている。
だが、そんなことを他人に言おうものなら、大事になる。だから誰にも言わない、いや、事が事だけに言えるはずなんてない。
「大丈夫! 心配しないで。私の足が速いことはルパート君も知っているでしょ?」
「そうだな……」
一応は納得した形になったが、不安しか残らなかった。
早くも翌日、ルパートの不安は的中した。
「さあ、その特訓とやらを、わたくしにもして下さいませ!」
何とローナは、エレーナとその取り巻きのベスとメアリ―を連れて来た。
「ごめん、クレアちゃん。捕まっちゃった……」
「はあ?」
聞けば、いつものように逃げていたところ、三人に挟み撃ちにされてしまい、敢え無く捕まってしまったということだ。
そして、窮地に陥ったローナは、苦し紛れに、ルパートと特訓をしたと口走ってしまったらしい。
「どうしました、クレアさん? わたくしにも特訓を――」
エレーナが一歩足を踏み出した。
「特訓も何も……」
どうにか誤魔化せないものか――しかし、一筋縄ではいかない相手のようだ。
(困った……何も思いつかない)
ルパートは顔を伏せた。