男の俺は聖女になれませんが……聖女の力を覚醒させるチ××はあります! 作:elly
第七話
ふと顔を上げると、エレーナと取り巻き二人はすぐ目の前にいた。
「……」
話せることはないので、沈黙することにした。
「何も語る気はないのですね?」
「……」
「わかりましたわ。では……どうしてわたくしに特訓していただけないのかしら? わたくしが納得できる理由を教えて下されば、潔く引き下がります」
「ローナの〈聖女の力〉が戻ったのは単なる偶然! 偶然どころか、〈聖女の力〉が弱まったということ事態が間違いだったの! ただそれだけ!」
「ウソおっしゃい! そんなの理由になっていませんわ!」
「そっちが納得しようがしまいが関係ない。これが事実だから!」
ルパートは立ち上がり、ドアに向かって歩き出した。ドアを開けて、エレーナ一行に退出を促すためだ。
「お待ちになって!」
エレーナが、ルパートの背中に手を伸ばした。
――ずるっ。
エレーナの手は、今一歩のところでルパートの体に届かず、代わりに掴んだものは、カツラだった。
「こっ、これは……?」
手にしたカツラとルパートを見比べ、エレーナは呆然としている。
エレーナだけではない、その場に居合わせている全員がただただ呆然と立ち尽くしている。
「おと……おと……男……?」
取り巻きの一人であるベスが、まるで恐ろしい魔物と遭遇したみたいに後退りしている。
「ひっ――」
そして、まさに悲鳴をあげようとしたとき、ローナが咄嗟に口を押さえた。
「何故……何故……男の方がこの学園に……?」
第八話
結局、エレーナたちにもルパートの正体を明かす羽目になった。それはつまり、弱みを握られたことになる。
「事情はわかりましたわ。その代わり……」
「黙っているから、教えろってことだろ?」
「ええ。話が早くて助かります」
ルパートは大きなため息をつき、ちらりと横目でローナを見ると、ローナは大きく頷た。あのことを話してもいいと言いたいのだろう。
「最初に言っておくが……これは不確実で危険なんだ。ローナの場合は成功したが――」
「わかっております。大きな利益を得るには、それなりのリスクがあることは百も承知ですわ」
「大体……どうして力が欲しいんだ? 今のまま行けば、確実に聖女になれるだろ」
「普通の聖女じゃ駄目ですわ! わたくしは大聖女になりたいんですの!」
「……」
エレーナの迫力に、ルパートは気圧された。
「ヘイヴァース家で生まれ育ったルパートさんにはおわかりにならないでしょうけど……わたくしの家のような貴族が、抜きんでるためには何としても一族から大聖女を輩出する必要がありますの!」
エレーナが必死なのはよくわかる。大聖女を輩出した家と、そうではない家は、同じ貴族と言えども天地ほどの差がある。
特にエレーナの家は、大金持ちではあるが、父親は庶民の出身だ。金に困っている貴族の娘と、貴族の身分が欲しい大金持ちの庶民との互いの利益のためだけの結婚は、最も軽蔑される。
「そうか。だったら俺とローナが何をしたか教えるよ」
本当のことを話せば、頑ななエレーナもさすがに諦めるはずだ。