男の俺は聖女になれませんが……聖女の力を覚醒させるチ××はあります! 作:elly
第三話
玄関を出ると、馬車が待っていた。
「荷物はもう積み込んであります。足りない物があれば、ご連絡ください。それでは行ってらっしゃいませ」
押し込められるようにして馬車に乗せられると、別れを惜しむ間などなく、馬車はすぐに動き出した。
(困った……)
改めて自分が置かれた状況を考え、ルパートは頭を抱えた。クレアのふりをして学校に行けと言われたものの、〈ルズベリー女学園〉に関しては、全寮制の聖女養成学校としか知識として持っていない。
(こんなので学校生活なんてやっていけるのか……? ただでさえ男っていうハンデを抱えているのに)
不安しかない。
長い馬車旅であったが、移動中の景色を楽しむことも、寝ることもなく、ずっと未知の学校生活のことばかりを考えていた。
馬車は〈ルズベリー女学園の〉校門の前でルパートと荷物を降ろすと、さっさと走り去ってしまった。
生徒なのだから、このまま校門をくぐり、敷地内に入ればいいだけの話なのだが、まず最初にどこへ行くのかもわからない。
校門の外から見る限り、この学校の敷地はかなり広そうだ。しかも、敷地内にはいくつもの建物が建っており、下手に入ろうものなら、確実に迷子になりそうだ。
そして、通りすがりの学園関係者を捕まえようにも、到着した時間が悪かったせいか、周囲にはそれらしき人は全くいない。
(困った……。このまま誰かが来るのを待つべきか……?)
途方に暮れ始めていたその時だった。
「そこの君!」
背後から突然呼びかけられたのだ。
第四話
「は、はいっ!」
反射的に返事をし、おそるおそる背後を振り返った。
(うわっ、すごい美人……)
そこには、スラリとした長躯をルズベリー女学園の制服に身を包んだ美女がいた。
(あれっ? この人、もしかして……?)
ルパートが彼女の素性に気づいたのと同時に、
「んっ。君はもしかして……ヘイヴァース家のご令嬢ではないか?」
と向こうもルパートの素性に気がついたみたいだ。
「は、はい。クレア・ルイーズ・ヘイヴァースです。あのグラント家の……」
「ああ。アミーリア・グレイス・グラントだ」
忘れるはずがない。アミーリア・グレイス・グラントはルパートの初恋の相手だ。
「再会できてうれしいよ。元気そうでなりよりだ」
アミーリアが案内役を引き受けてくれて助かった。
「あの、私のことを覚えて下さっていて光栄です……」
「忘れるはずなかろう。君たち双子の姉弟の愛らしさは評判だった。君こそよく私のことを覚えていたな」
「せ、先輩のことは一日たりとも忘れたことはありません!」
そう。アミーリアのことを忘れたことはない。ただ単にアミーリアが初恋の相手だったからではない。アミーリアが昔から頭抜けて美しかったのだ。
プラチナブロンドのロングヘア―とサファイアブルーの瞳は幼い頃と変わらないが、当時の面影を残しながらも、表情がすっかり大人の女性になっている。
(ごくっ……)
そして、ルパートはアミーリアのある部分から目が離せないでいた。