男の俺は聖女になれませんが……聖女の力を覚醒させるチ××はあります! 作:elly
第五話
(大きい……ものすごく……)
ルパートはアミーリアの胸にくぎ付けだった。
自分の偽乳と見比べてみる。
この偽乳も結構立派な大きさだが、アミーリアのはさらに大きい。
「どうかしたのか?」
アミーリアが、ルパートの様子をおかしいと思い始めたようだ。
「えっ、あ……」
言葉に詰まる。
「いえ、あの、制服がお似合いだなって……」
「そうか。どうもありがとう。君もよく似合っている」
背中を冷たい汗が伝っていく。どうやら上手く誤魔化せたようだ。
「さあ着いたぞ。ここが寮だ」
「……立派な建物ですね」
「古いのが難点だがな」
アミーリアはそう言うが、むしろ古さがこの建物の最大の美点であった。
寮内は、隅々まで手入れが行き届き、ドアのノブにいたるまでピカピカに磨き上げられている。その丹念な手入れが、古い建物や調度品をより重厚なものに見せている。
「ここが君の部屋だ」
アミーリアは親切にも、ルパートを部屋の前まで連れて行ってくれた。
「どうもありがとうございました」
「後輩の面倒を見るのは先輩の役目だ。私の部屋は向かいの建物だから、困ったことがあったら遠慮なく訪ねてきてくれ」
「は、はい! ありがとうございます!」
「君と私の仲じゃないか。そんなに緊張しなくていい」
ルパートの緊張をほぐすように、アミーリアはルパートの肩にぽんと手を置いた。
「んっ……?」
アミーリアは不思議そうな顔をして、ルパートの肩を撫でまわしている。
(もしかして、男だってバレた……?)
アミーリアの手を払いのけることなどできるわけないので、ルパートはひやひやしながら、されるがままになっている。
「君は……着やせするタイプなのか? 意外と肩ががっしりしている……」
「えっ……えっと……その……そ、そうなんです! 私、こう見えても体を鍛えてまして……」
自分でもかなり苦しい言い訳だと思った。
「なんだ、そうだったのか! どうりでいい筋肉がついていると思った。今度トレーニングのコツを教えてくれ」
苦し紛れの言い訳だったが、アミーリアは信じてくれたらしい。
見た目とは裏腹に、アミーリアはかなり天然なのかも知れない。
第六話
部屋は二人部屋だった。
(これじゃあ、寝るときも気が抜けないじゃないか――)
ルパートは現在、胸と尻にふくらみを作るために、偽物の乳房と偽物の尻肉がついた窮屈な下着を身に付けている。これをずっと身に付けていなければならないと思うと、げんなりする。
(あまり勘が鋭い子じゃなければいいけど……)
こればかりは祈るしかなった。
ガチャっ――。
ドアノブを回す音がした。どうやらルームメイトが来たらしい。
緊張が走る。一体、どんな子何だろう……?
ガチャガチャ、ガチャっ――。
ドアノブを回す音はすれども、一向にドアが開く気配がない。
(ひょっとして……?)
「きゃっ!」
ルパートが普通にドアを開けると、一人の少女が倒れ込んで来て、図らずもルパートは、少女に押し倒される形となった。
「いたたたたたた……」
背中を強く打ち付けてしまったらしい。
一人の人間が勢いよく倒れ込んで来たのだ。体重が軽かったとしても、それなりのダメージはある。
ルパートは起き上がろうと思い、
「ちょっと君……どいてくれるかな?」
と上に圧し掛かっている薄ピンク色の髪の少女に声をかけた。
「はっ、はいっ! ご、ごめんなさい……」
少女がゆっくりと顔を上げた。
「「あっ!」」
顔を見合わせると、二人は同時に声を上げた。
第七話
「クレアちゃん……?」
「もしかしてローナ……か……?」
今日は昔の知り合いによく出会う日だ。
ルームメイトは、ローナ・ブラッシャーだった。
ローナはルパートとクレアの幼馴染である。
ローナの母親はヘイヴァース家の通いの使用人で、いつもローナを連れて仕事に来ていた。そのため、毎日のように子ども同士で遊んでいたのだ。
家庭の都合で、ローナ一家は引っ越した。それ以来、ローナとは会っていない。
だが、一目見てローナだとわかった。小動物のような、人懐っこそうな顔の造作は当時のままだ。目に見えて変わったのは、髪の長さくらいか――肩までの長さだった髪が、肩甲骨のあたりまで伸びている。
「その……元気だったか……?」
「うん……」
一瞬だが、ローナの表情が暗くなった。
何かあったのか――と思わず聞きそうになった。
「う、うん! 元気、元気! そ、そうだ! これから学校の中を見て回らない?」
「え……まあ、別に構わないけど……」
ローナの態度にはしっくりこないが、ローナだって年頃の乙女だ。言いたくないことの一つや二つあるのだろう。
言いたくないことがあるのは、今のルパートも同じだ。
特に、ローナは、ルパートのこともクレアのことも知っている。どこで正体に気づくかわからない。
せっかく久しぶりに出会えた幼馴染であったが、可能な限り距離を置こう、とルパートは考えた。
だが、もしローナに真実を打ち明け、協力を仰ぐことができれば、この学園生活もだいぶ楽になるだろうとふと思い浮かんだが、すぐに打ち消した。