男の俺は聖女になれませんが……聖女の力を覚醒させるチ××はあります! 作:elly
第一話
学園生活二日目――この日は入学式の日であった。
入学式は講堂で行われたが、新入生だけではなく、上級生たちも皆、講堂に集まっていた。
名門聖女養成学校にふさわしく、終始厳かな雰囲気の中、式は進められた。
式自体は何の面白みもないもので、居眠りでもしたい気分であったが、後々、クレアと入れ替わることを考えると、目立たず、大人しくやり過ごすのが無難であろう――と思っていたのだが、どうやら周りはそうは見てくれないようだ。
「クレア・ルイーズ・ヘイヴァース――クレア・ルイーズ・ヘイヴァースはいませんか?」
「く、クレアちゃん!」
なかなか立ち上がらないルパートを見て、隣にいたローナが小声で囁く。
「はっ、はい!」
この学校では、新入生一人一人の名前が読み上げられる。
自分の名前が読み上げられた生徒は、返事をして立ち上がる。
ルパートも他の生徒に倣って、立ち上がらなければならなかったのだが、〈クレア〉であることにまだ慣れていないのと、ぼんやりしていたのとですっかり聞き逃してしまったのだ。
ルパートが慌てて立ち上がると、ちょっとしたどよめきのようなものが起こった。
理由はすぐにわかった――ルパートがヘイヴァース家の人間だったからだ。
この国で、ヘイヴァースの名を知らない者はいない。だが、ここまで反応が大きいとは思わなかった。
(役目が終わるまで何とか目立たずに過ごしたかったんだが……)
ルパートのささやかな望みは、叶えられそうになかった。
第二話
「ほわあ~。生徒会長さん素敵だったあ。あんな完璧な人がいるなんて……」
入学式が終わり、教室に移動する途中、ローナは、感嘆とため息が混じったような声を出した。
「ねえねえ、クレアちゃんもそう思わなかった⁉」
「え、ええ。そ、そうね……」
いきなり同意を求められ、考え事をしていたルパートは、大いに慌てた。
ルパートの考え事も、その話題の生徒会長――アミーリアのことであった。
入学式の前に配られた式次第で、アミーリアが生徒会長なのは知っていたし、短い時間ではあったが、昨日もアミーリアと一緒の時間を過ごした。
しかし、壇上に立ったアミーリアを見て息を呑んだ。
天窓から差し込む光が、壇上に降り注いでいたのだが、アミーリアのプラチナブロンドの髪が、その光を受けてキラキラと輝いていた。
まるでアミーリア自身が黄金の光を放っているようにも見え、何とも神々しい光景であった。
(大聖女……)
ルパートは、口の中で小さく呟いた。
まだ聖女候補生に過ぎないアミーリアであったが、もうすでに大聖女の風格があった――いや、アミーリアならば、将来、確実に聖女になるであろう。
「ああいう人が大聖女になるんだろうなあ。やっぱり、持って生まれたものが全然違うよ……」
「うん。確かに生徒会長は特別だと思う。名門グラント家の中でも群を抜いているかもね」
「だよね~。でも、クレアちゃんだってヘイヴァース家のお嬢様じゃない! 負けていないよ!」
「ぎゃっ!」
ローナが強く背中を叩いてきたので、思わず声が出た。
「んっ……あれ?」
ローナが、ルパートの背中を叩いた手のひらをじっと見つめている。
「ど、どうしたの……?」
(もしかして、男だってバレた……?)
ルパートの背中を、冷たい汗が流れ落ちた。
「クレアちゃんの背中って、意外と逞しいんだね。昔はほっそりしてたのに……」
「き、鍛えているの! 背中に脂肪がついていたら恰好悪いでしょ? ほら、背中の開いたドレスを着ることもあるし……」
アミーリアの時と同じ言い訳をしてみたが、通じるだろうか。
「そうか! さすがクレアちゃん。昔から美意識が高かったもんね~」
どうにか騙せたようだ。しかし、この学校の他の生徒たちがみんなアミーリアやクレアのような素直な性格だとは限らない。