男の俺は聖女になれませんが……聖女の力を覚醒させるチ××はあります! 作:elly
第七話
結果的に、ローナに打ち明けたことは正解だった。
ルパートは、バスルームだけではなく、自室の中での自由も手に入れた。寝る時間も起きる時間も、もう気にする必要はない。ベッドの中まで、あの変な偽物の胸がついた下着を着なくてもいい。
幸いなことに、ローナとはクラスも一緒だったので、可能な限りルパートと一緒に行動して、女としての生活に慣れていないルパートをサポートしてくれた。
その代わり、ルパートは、ローナの勉強を見てやった。
ルパートとローナは、学園生活を送る上でお互いなくてはならない存在になりつつあった。
この日は、担任の教師と面談の日であった。
担任の教師は、マリアという名の若い聖女だ。
情報通の同級生によると、マリア自身もこの学園の卒業生で、庶民の出でありながら、聖女としての高い資質を持ち、異例の早さで聖女になったそうだ。その優秀さ故、大聖女候補にもなっているという。
マリアは優秀であるが、それを鼻にかけることがない、気さくな人物であった。生徒たちにとって、教師というよりも、仲の良い姉といった存在だ。
なんとなくだがルパートに対しては対応が素っ気ない感じがした。
(もしかして男だってバレてる……?)
今回の面談で、そのことを問い詰められるかも知れないと思うと、さらに緊張した。
「クレア・ルイーズ・ヘイヴァースさん」
「はい……」
(こうやって近くで見ると……結構美人だな。お堅そうだけど……)
このような状況にありながら、不謹慎なことを考えてしまうのは性だろうか。
「今回の成績ですが……」
――コンコン。
マリアが話始めようとしたとき、ドアがノックされた。
「ちょっとよろしいかしら」
「学園長!」
マリアがドアを開けると、そこに立っていたのは学園長であった。
「何か御用でしょうか……今、面談中でして」
「ええ、わかっています。クレア・ルイーズ・ヘイヴァースさんの面談は、私が直々に担当いたします」
「あの、それはどういう――」
マリアは理由を尋ねようとしたが、
「さ、こちらへいらっしゃい」
と学園長はマリアの問いに答えようともせず、ずかずかとドアの内側に入ってきた。
「は、はあ……」
学園長の圧に押され、ルパートはゆっくりと椅子から立ち上がると、そのまま学園長の後についていった。
「さあ、お座りになって。飲み物は紅茶でいいかしら?」
「はあ……」
さきほどから気の抜けた返事しかしていない。だが、学園長はそれも全く意に介さない。
それにしても、学園長が自ら面談するとか、紅茶が出て来るとか、一体、どういうことなのだろう?
「まずは、ヘイヴァース家のご息女様が、我が学園に入学してくださったことを大変光栄に思っています……で、どうかしら? 学園生活は」
「えっ、ええ……何とかやっておりますわ。ほほほ」
ルパートは作り笑いを浮かべた。
「そう。それは良かった。いえね、貴女のご両親が『くれぐれも娘を頼む』と多額の寄付をしてくださってね――」
ここでルパートは、全てを察した――ルパートには一切知らされていないが、両親がした多額の寄付のおかげで、ルパートはこの学園内で特別扱いを受けるだろうことに。
学園長との面談ということだったが、学園長室に来てから一度も成績の話が出てこない。
「あの、学園長。私の成績はどうだったのでしょうか?」
疑問に思ったルパートは、思い切って聞いてみた。
「成績? ヘイヴァース家のご息女様に成績の話をするなんて……そんな野暮なこと!」
学園長は一笑に付した。
第八話
ルパートが学園長との面談を終え、寮に戻ると、同じく面談を終えたローナがいた。
「ただいま――」
(んっ……何だか様子がおかしいな)
ローナの面談は、ルパートよりもずいぶん前に終わったはずだ。それなのに、ローナは上着も脱いでいない。それに、表情も暗い。
「ぐすっ……」
鼻を啜る音がした。
(もしかして泣いているのか……?)
さすがに心配になった。ローナには日頃世話になっている。自分にできることだったら、助けてやりたい。
「ロ――」
――ゴーン、ゴーン……。
意を決してローナに話しかけようとしたところ、夕食の時間を告げる鐘が鳴った。
夕食に誘ったが、ローナは食堂に現れなかった。
ルパートが部屋に戻ると、灯りはついておらず、ローナは頭まですっぽりと布団をかぶって寝ていた。
(体の具合が悪かったのか……?)
声をかけて確かめたかったのだが、本当に体の具合が悪くて寝ているのなら、起こしてしまうのは可哀そうだ。
ローナの眠りを妨げないように、ルパートは音をなるべく立てないようにした。
(そろそろ寝るか……)
ルパートは、静かにベッドに潜り込んだ。
(んっ……人の気配……?)
深い眠りに落ちる寸前、ルパートの微かな意識は、人の気配を感じ取った。
(ローナ!?)
首だけを動かし、気配のする方を見ると、ローナが突っ立っていた。