男の俺は聖女になれませんが……聖女の力を覚醒させるチ××はあります! 作:elly
第九話
「ローナ、こんなところで何やっているんだ?」
なるべくローナを刺激をしなように、穏やかに尋ねた。
「……」
しばらくの間、ローナは沈黙していた。
ルパートはローナの返事を待ち続けるしかなかった。
長い時間が経過したような気がした。ローナの返事を待ち続けるのも、しんどくなってきたときのことだった。
「そっちに行ってもいい……」
消え入るような声でローナは言った。
(え? こっちに来る? それって……)
ローナが言わんとしていることは、ルパートのベッドで一緒に寝たいということだろう。
大胆な申し出に、ルパートはどぎまぎした。しかし、ローナの声色からすると、ルパートが期待しているようなことは起こりそうにない。
「うん……いいよ」
本来なら、断らなければならないのだろうが、ルパートは断れなかった。
(添い寝するだけだ。添い寝するだけなんだから、何もやましいことはない!)
寮のベッドは当然だが一人用で、二人で一緒に寝ることはできなくはないが、かなり体を密着させる必要がある。
ルパートはぎりぎりまで体を端に寄せ、ローナのために場所を空けた。
ローナが静かにベッドの中に入ってきた。
すると、ふわっと甘い匂いが立ち上り、鼻孔をくすぐった。
(これがローナの匂い……)
思えば、今回に限らず、女の子にこんなに接近することはなかった。
(こっちがドキドキするよ……)
眠気は完全に覚めていた。
第十話
「ルパート君、あのね……」
ローナは静かに口を開いた。
「私……この間の面談で……もう、後がないって……」
ずっと堪えていたのだろう。ここまで言うと、ローナはしゃくり上げ始めた。
「テストの点数が悪かったってことか……? だったら、次頑張れば……」
ルパートは、無言でローナの手を握った。勇気づけるつもりだった。
するとローナは、話を続けた。
「ううん……違うの。問題なのは成績じゃなくて、〈聖女の力〉の方なの……」
「……」
かける言葉がなかった。
学科や実技の成績であれば、どうにでもなる。しかし、〈聖女の力〉だけは努力だけではどうにもならないからだ。
〈ルズベリー女学園〉は国立の聖女養成学校であり、入学できるのは、〈聖女の力〉を持つ者のみだ。
〈聖女の力〉を持たざる者は、この学園を去らなければならない。
〈聖女の力〉は個人差が大きい。ヘイヴァース家やグラント家のような名家の娘は、大抵、安定した強大な〈聖女の力〉を生まれつき持っている。だが、それ以外の者の〈聖女の力〉は、必ずしも安定していない――〈聖女の力〉が弱くなったり、ある日突然力が消えてなくなるということも無きにしも非ずだ。
そして、残酷ではあるが、一度〈聖女の力〉が弱まったり消えてしまうと、もう二度と〈聖女の力〉が元に戻ることはない。きっとローナにも、〈聖女の力〉が消える傾向が出てきたのだろう。