あれから、新宿に逃げ込んだアマチュア無線の資格を有する人物である
現状において、5チャンなどの既存のSNSやサーヴァントと契約した者同士で構築されるSNSなどにおいて、様々な情報が飛び回っているのでカルト集団や反社の様な組織の事も考えてある程度、信用できる人じゃないとこちらの手の内を晒したくはない。
その為、俺が持っている情報はトラロック達を介して得ても可能な範囲で姉妹であろうとも伝えていないし、都市に住む人達の生活に対して基本的にはノータッチで行こうと思う。
こうする事で、場合によっては俺らに敵対する奴らの侵入も許す事になるだろうが、行政やらの経験者に変わって都市を統治できるかと問われればNOだし、恐怖政治による独裁ってのも性に合わないので実際に来て活動し始めたら対処するのが現状では最適解だと思っている。
その為に、サーヴァントと言う力を背景にした行政における発言権は最小限にしたし、この事に関して不本意だった姉妹達にもサーヴァントの数の差によって半ば強制的に合意させた。
これも、争いの火種にはなるだろうこう言うのは自分の立場をはっきりさせないと、問題が発生した際の解決の糸口が掴めないだろうから前に進む為のリスクだと考える事にしている。
正直に言って、1ヶ月前まで平凡な学生だったボンクラが決める決断じゃねぇだろと毒突きながら、日課のトレーニングを済ませてシャワーを浴びようと準備しているとバニヤンに呼び止められた。
「マスター?」
「どーした、バニヤン」
「エミヤ達が呼んでるよ? なんでも例の組織についての情報を掴んだんだって」
「分かった、すぐに行くよ」
例の組織、と言うのはカルト集団である人間同盟と暗躍する犯罪集団である葛城財団であり、2つの組織は世界が崩壊してから新しくできた組織だと言うのがSNSで飛び交っている情報であり、それなりに被害が出ている様だ。
その為、崩壊後に新たな城塞都市として急速に発展した俺達を目障りにしていたり、アングラな取引ができると接触してくるんじゃないと予測していたので、こちらも手の空いたサーヴァントを使って情報収集に務めていた。
その結果が纏まったので、まずは俺達で情報共有しようと思いながらバニヤンと共にエミヤ達がいる場所に向かった。
「ん〜、こっちから潰しに行った方が早くね?」
「だが、彼らに接触したら危険な目に遭うかもしれないぞ?」
「だろうな。だからこそ、言わせてもらうがいつまでも“子供じゃいられない”」
現状、エミヤ達の手伝いによって色々と決断できている部分はあるが本音としては、親の元で何も考えずにグータラと生きていきたいってのが今も心の奥底にあり、正直に言って面倒臭い。
だが、エミヤ達が集めてくれた情報には城塞都市から比較的近い場所に2つの組織の拠点がある様で、2つの拠点は互いに距離はあるがこちらから強襲する分には問題ない場所にあるようだ。
その事から、事が大きくなる前に降りかかる火の粉は払う必要があると思って姉妹達にも情報共有する事にした。
「………面倒だし、行かなくていいんじゃない?」
「そーそー。被害も出てないし、対処しなくていいっしょ」
「甘いな、2人とも」
崩壊前の秩序がない状態で、そんな呑気な事をほざく姉妹に呆れながらも状況を説明する。
「そもそも相手は有無を言わず、サーヴァントを敵視する組織と非人道的な研究をしようとする組織だぞ。例え、こっちから接触しなくても向こうはお構いなしで襲ってくるさ」
「でも………」
「でも、なんだ? じゃあ、おめぇらは何の抵抗もせずに襲われたり、拐われても良いって訳? 折角来てくれたのに?」
実際、ゲームにおいて絆レベルをカンストさせたサーヴァントがそれぞれの元に来て契約してくれたから、こうやって崩壊後でも他の人達と比べて高待遇な扱いを受けられている節がある。
もしも、高待遇を受けられる理由であるサーヴァントが襲われて亡くなったり、拐われて契約が切られたらどうなるか?と聞かれたら良くて他の人と同等の待遇にまで引き下げられ、悪ければ反感を持った人達に襲われて殺されてもおかしくない。
それだけ、普通の人とサーヴァントの力は違うので相性とかが悪くなければ、日頃の共同生活として一緒に生きて行こうと言うのが普通の考えだと思っている。受肉したとは言え、この世界で生きている存在だしね。
そんなマスターと見定めた人が、周りから差別されて迫害されるかもしれないと言うリスクを背負ってまで来てくれたサーヴァントに対して、“今は問題になってないから放置する”と言う問題解決の先送りで応えるのは、余りにも不誠実じゃないかと個人的に思う訳。
「君らはそれで良いかもな。最悪、自分の身だけを考えばいいから。だが、トラロックの力で城塞都市を作っちまった俺はそうも行かん。今はまだ、100人程度だがこれから増えていく人達の命をトラロック達の力を借りて守っているからな。例え、些細な揉め事であっても見逃す訳にはいかん」
「………」
「まぁ、好きにしたら良い。俺は潰しに行くがサーヴァントと契約した人に対してとやかく言えるだけの力はないしね」
これもまぁ、本音だ。
実際、崩壊前後の奇跡でサーヴァントと契約できた人に優劣は存在しないし、あったとしても精々がサーヴァントの数と性能の差ぐらいだと思っているので、他の人にとやかく言うのはお門違いだと考えている。
その為、俺はサーヴァントを連れて今はまだ仮想敵である人間同盟と葛城財団を潰しに掛かるが、姉妹にそれを強制するつもりはないので家族間での今回の情報共有はここで終了として、俺はトラロック達と共に組織のアジトを潰す作戦を練る事にした。
「だけど良かったのか? 彼女達との仲に亀裂が入ったぞ?」
「構わない。互いに、サーヴァントとの契約っつー似た様な力を持っている以上は契約する前、世界が崩壊する以前の様な仲には戻れない」
情報共有後、会議室と銘打った個室に向かう途中でエミヤが聞いてきたので冷静に答えると更に聞いてきた。
「それでも肉親だろう?」
「俺も仲違いはしたくないんだけどね。互いの不和や亀裂を乗り越えて団結できるか、乗り越えられずに崩壊するかは彼女達の考え方次第な部分もあるからねー」
人の考えなんて千差万別、様々だと言うのは崩壊前から分かっていた事なので崩壊時の混乱から生き残り、姉妹達と合流した当初から彼女達と契約しているサーヴァントの協力は期待していない。
精々、協力があったら捗る程度に期待値を定めておけばそこまでガッカリする事もなく、仮に裏切られたとしても冷静に対処できると言うものだ。
その為、エミヤ達に「変に背伸びしてんじゃねぇぞ」と茶化されながら移動した。