「帰って来れた。帰って来れたぞぉぉおお!!」
「そんなにはしゃいじゃって。子供みたい」
「私としては静かにしてほしいのだがね」
『帰って来れた事に咽び泣く男、スバイダーマッ‼︎』と言わんばかりに咆哮した為、エミヤ達は苦笑したものの俺としてはかなりの安堵感から来た爆発なのでそこは見逃してほしい。
そう思いつつ、どんなサーヴァントが来ているのかを楽しみながら玄関にある鍵穴に鍵を差し込んで、鍵を開けてから中に入ろうとしてさっきまでの安堵感は一気に吹き飛んで硬直する事になった。
なんせ、一戸建ての住宅が並ぶ住宅街に居を構える我が家は外見こそは今回の騒動前から何も変わってないのに、内装はかなり変わっていたのでここは本当に我が家なのかと確認する為に門と玄関を何度か往復してからエミヤ達に聞いた。
「ねぇ、もしかしてトラロックって来てたりする?」
「当然だろう? 我々は複数で来たのだからな。元の大きさでは入り切らん」
「マジか〜………まぁ、当然っちゃ当然か」
正直、帰路の途中で死にかけていたのでそこまで気が回らなかったのだが、そもそも我が家は両親に姉と妹が1人ずつの5人家族なのでその人数で快適に暮らせる広さの戸建て住宅を買った。
しかも、FGOでは絆とレベルをカンストさせたサーヴァントは最低でも10体はいたので、彼らが全員で来た場合は圧倒的に広さが足りないのでトラロックが来てくれないと困る。
そして、この時になって漸く思い出したのだが家族の安否についての確認ができてないと若干、焦りながら改めて玄関から入ると帰宅した事に気が付いたトラロックが出迎えてくれた。
「お帰りなさい、マスター。びっくりしたでしょう?」
「あぁ、最初に開けた時は何事かと思ったよ」
「こんな状況ですもの。このぐらいは当然の対策だと思うのだけど」
「だな。他に誰がいる?」
「居間に来た方が早いわ」
彼女に促され、エミヤ達を引き連れて居間に向かうと絆とレベルがカンストしていたサーヴァントの中でこっちに来た奴らが10人も揃っていた。
「一応、確認を取りたい。順番に名乗ってくれるかい?」
「じゃあ、俺からだな 」
こうして、魔改造された自宅の居間にて彼らが自己紹介をしてくれたのだが多種多様と言うか、リリース当初からダラダラ続けて中堅クラスにまで成り上がってはいたもののトップランカーになる気概はなく、どちらかと言えばストーリーを読みたいからやっていた。
そんな俺の元に来てくれたサーヴァントは以下の通り。
エミヤ、両儀式(剣)、トラロック、キングハサン、モルガン、ポール・バニヤン、伊吹童子、紫式部、ティアマト、楊貴妃の計10名。
正直に言って、カンストさせたサーヴァントは趣味に走った部分は否定しないが一般学生の元にこの人数が来てくれるだけでもありがたいし、余程のヘマをしない限りは生きていけるだけの能力を彼らは持っていると考えている。
「来てくれて本当にありがとう。当面はやっていけそうだよ」
「慢心するな、契約者よ。今の状況でそれは命取りになるからな」
「勿論だ、じぃじ」
実際、崩壊した世界において慢心は地雷原の中でタップダンスする様な物であり、慢心王で有名なギルガメッシュみたいに人生経験やスペックに余裕がある訳ではないので余計なリスクは可能な限り、避けるのが無難だろう。
その為、自己紹介を終えてこれからどうしようかと言う話になったので話の合間にLANEなどのSNSで家族と連絡を取り合うと、FGOをやっていた姉と妹はそれぞれのサーヴァントが来てくれたので生きている事は確認できた。
しかし、両親とは未だに連絡が取れていないので生存は絶望的だろうなと思いながら、ため息を吐いて本当にこれからどうしようかと悩み始めた。
(別れの挨拶以前に、死に顔すら拝めないとはね。こうなるんなら、普段からもうちょい気の利いた言葉でも掛けとけばよかったよ)
後悔先に立たず、なんて上手い諺がある様にやるべき事は先にやっておかないと、後になって後悔する事をこれほどまで実感する事はそう多くないと思う。
その為、本気で悩んでいると俺の腹の虫が鳴った。
「む? もうそんな時間か」
「あぁ、どうやらそうみたいだな。そろそろ食べたい所だが、食べ物の場所とかってわかる?」
「それに関しては私が知ってるわ。この家の内装を弄る際に知ったもの」
「じゃあ、任せて良いかな? 帰ってきてから汗を流してないからそろそろ風呂に入りたい」
「分かった。詳細はトラロックに聞くから用意しておこう」
「助かる」
その事に、エミヤが反応して俺がトラロックに聞くとどうやら内装を弄った際、どこに何があるかを把握した様なので安心し切ってスマホを居間の机に放置した状態で風呂場に行ってしまった。
その結果、スマホのロックを解除して姉妹達との会話を見られた事を知るのは風呂を出てからだった。
モルガン side
「ふむ、やはりな」
「何かわかったの?」
「我が夫の家族と連絡を取り合っていたのは、この端末を操作していた事からわかっていた。だから、様子を見ていたのだがある時から表情に影が出る様になったから気になっていたのだがこれで納得した」
私の言葉に、伊吹童子が聞いてきたので我が夫と彼の姉妹とのやり取りを要約して伝えると、伊吹童子の他に聞いていた紫式部やバニヤンまでが涙を浮かべる事になった。
「そ、そんなのってあんまりだよ」
「それじゃあ、彼に残されたのはその姉妹だけって事?」
「ほっとけない」
そして、我慢できなくなった彼女達は風呂で汗を流す彼の元に向かったのだが湯上がりだったのか、『うぉう!? 何事!?』と言う悲鳴を聞く事になった。
「うっかりだったでござる」
「全くだ。次からは気を付けてくれ」
「そうするよ」
体を洗い、汗を流してから脱衣所にてタオルで余分な水を拭いていると伊吹達が乱入してきた為、素っ頓狂な悲鳴をあげたのでエミヤ達まで来て事情を説明する羽目になったのだが事の発端は俺のスマホを覗き見たモルガンだった。
スマホの中には、いくつかのアプリが入っていてその中のLANEにある会話履歴を見られた結果、両親の生存が絶望的だと知った伊吹達が俺の所に来たとの事だった。
確かに、両親とはもう会う事ができないと考えると泣けるし、できれば寿命などで長生きしてほしかったのも本音だが、今回の騒動を引き起こしたのが一柱の女神だと聞いた以上は立ち止まる事はできない。
彼我の戦力差を聞けば、復讐云々は考える気力が失せる程の差があるらしいのでする気はないが、会ったら文句の1つでもぶち撒けたいと思いながら部屋着に着替えて席に座ると出来合いの物とは思えない程の料理が並んでいた。
「これ、作ったのはエミヤとティアマトか?」
「足りないのはインスタント食品で間に合わせたのだが、大丈夫だったか?」
「構わないが、家に備蓄してあったのを使ったんだったら後で補充しておかないとな。できるかは分からないが」
「それに関しては大丈夫」
どうやら、冷蔵庫にあった物では足りなかった様で被災した際にある程度は食っていける様に、家族でインスタント食品を買って備蓄していたのだ。
緊急時なので、使うのは仕方ないとして使ったのならどこかから持ってこないと、と思いながらそう言うとティアマトがドヤ顔で語った事に驚きを隠せなかった。
なんせ、緊急事態と言う事で必要な物は店を梯子して泥棒紛いな事で持ってきたらしいからな。
「マジか。その時の生存者と遭遇したら何を言われる事やら」
「緊急時だからこそ、そこまで気にしてないと思うのだが?」
「それでも余計なリスクは避けたいのさ。特にティアマトやじぃじみたいに特徴的な外見の奴はそう多くないしね」
「そうか」
実際、サーヴァントはモブキャラと違って特徴的なキャラクターが大多数なのでかなり目立つし、平時であればじぃじやティアマトは不審者や変な人と思われて通報されてもおかしくはない。
今回の騒動がなければ、どうやって目立たない様するかで頭を悩ませそうだなと思いながら食事を始め、彼らとの会話に弾んでいると騒動が起きてからの疲労が一気に来た様で眠くなってきた。
(これで後は両親がいて、姉や妹と共に来たサーヴァント達と一緒に生きていけたら良いんだがなぁ)
そんな事を思いつつ、充分に食事を楽しみ、歯を磨いてから寝る事にした。色々ありすぎて、肉体的にも精神的にも疲れ果てているとティアマトから言われたし。
その為、俺のベッドに入ると泥の様に眠る事となった。
トラロック(テノチティトラン)の呼び方、どっちが良い?
-
トラロック
-
テノチティトラン