「こう言う時に場違いなんだが、こう言った崩壊した世界で活躍するのが改造車両だと思うんだよねー」
「悪くないが状況が状況だ。部品がないと改造できないし、そもそも日本に油田がないのも問題だ」
「だよねー」
ガゴンガゴン、と道路の中央に放置された車などを押し除けながら無賃乗車中のバスを運転中、前方を警戒中のエミヤと意味のない雑談をしているのだがバスの移動速度は決して速くはない。
崩壊前の世界なら、チンタラ走ってる部類に入るであろう時速20〜30kmぐらいの速度で移動しているのだが、これには理由があってそれはエネミーとの不用意な接敵によってバスが大破するのを避けるのが目的だ。
なんせ、俺のサーヴァントだけでも7人も引き連れている上に姉妹と彼女達のサーヴァントによって守られている避難民を拾ったら間違いなく、2桁以上の団体になるので移動するだけでも苦労する。
その上、壊れても修理できるだけの腕を持っている人が生き残っているとは思えないので、幹線道路や高速道路と言った開けた場所じゃない限りは可能な範囲で低速運転をして対応しやすくしている。
「………本当にここで合ってるの?」
「その筈だ。メッセージを送って合図を出そう」
そして姉妹の内、姉に指定された場所は通っている大学から程近い高校の一室に避難しているとの事で、建物を一望できる校庭を挟んだ道路に停車したのだが俺達がいる場所からだと、双眼鏡を使っても照明が光ってないのでどこにいるかが分からない。
『今、到着した。校庭を挟んだ道路にバスが停車したのが見えるか?』
『見える。前もって打ち合わせた合図を送って』
『分かった』
その為、メッセージアプリを起動してメッセージを送るとすぐに返信が返ってきたので、事前に照らし合わせた符号である4回連続でライトの光を点滅させると返答が返ってきた。
『確認した。サーヴァントを寄越して頂戴』
『分かった』
これも、符号通りなので派遣するとしよう。
「バニヤン、伊吹、楊貴妃。打ち合わせ通りに出迎えに行って欲しい」
「もしも襲われたら?」
「………想像したくないが無力化して連れてきて。増援が必要なら戦いながら校庭に出てくれればすぐに行くから」
「分かったわ」
世界が崩壊すると言う、大規模な災害以上の事が発生しているので可能であれば家族を救いたいのは大抵の人なら考えるだろうが、警察や軍隊といった治安組織が壊滅しているのでそれまで隠れていたり、隠していた本音や欲望が出てきてそれを優先する可能性が家族であってもゼロではない。
その事から、俺の姉であっても最大限の警戒をするに越した事はないので戦闘になっても、すぐに対応できる伊吹童子とバーサーカーであるバニヤンに加えて、SAN値直葬ができるフォーリナーである楊貴妃を向かわせる事にした。
兄弟姉妹でも、疑心暗鬼で疑わないといけない状況なんて嫌だなぁと本気で思いながら、バスの出入り口から降りた彼女達を見送って深くため息を吐きながらハンドルに肘を付いた。
「………随分、気に病んでるわね」
「あぁ、昨日の朝までそこそこ良好だと思っていた関係を疑わないといけないからなぁ。正直言って辛い」
「それも彼女達の判断でわかる事だ」
「だと良いんだが」
「その時は我々が守るつもりだ。だからマスターは大船に乗ったつもりでいろ」
俺の様子に、両儀式とエミヤが声を掛けてくれたので心配しながら本音を漏らすと、エミヤに頭をガシガシと撫でられながらフォローされたのである程度の余裕ができた。
何しろ、以前の俺なら外に出たら常に気を張って自分の身を優先して他人を気に掛ける事はあまりしてなかったのだが、今はそんな俺を慕って守ってくれるサーヴァント達がいる。
いわば、俺は1人じゃないって事を実感できるので肩の力を抜く事ができた。
そして、暫く待つと伊吹童子達が姉を始めとする何人かを連れてきたので何事もなかったように思えたが伊吹童子達は兎も角、姉達の表情は堅かったので何かはあったのは確かなようだ。
「元気そうで何より、と言いたいが何かあったのかい?」
「単純よ。仲間割れ」
「あぁ、理解した」
その為、俺の疑問に対して応える様に伊吹童子が簡潔に言ってくれたので察してしまった。
なんせ、避難する途中で遭遇したエネミーやまだ会った事はないがシャドウ・サーヴァントによって、殺された人や人間が人間を殺す現場に居合わせてしまったら精神的に来るし、発狂して壊れてもおかしくはない。
俺自身、ここに来る道中で惨殺された死体を直に見ても感情を殺したり、意識的に見ない様にしているから精神的に安定しているだけで直視したら最低でも泣くだろうな。
そんな考えから、伊吹童子から詳しく聞くと姉と姉のサーヴァントによって助けられた人達は、姉と俺についてくるグループとサーヴァントを寝取って偉い地位に就こうとするグループに分かれて険悪な雰囲気になった。
そして、寝取ろうとしたグループの内の1人が何を思ったのか、伊吹童子に近づいて彼女の豊満な胸を鷲掴みにしたのでそいつはバラバラ死体よりも酷い状態になったし、他の寝取ろうとした奴も手足の骨を折って素早く動けない様にしたらしい。
何でも、伊吹童子達は寝取ろうとする行為自体を毛嫌いしている様子なので、それに相応しい末路を与えたと言ったので姉達の心情を察する事になる。
「まー、席に座ってくれ。もう1箇所、行かないといけないし」
「あー、うん」
そんな訳で、バスに乗り込んだ姉達を席に座らせて発進させると姉と契約しただろうサーヴァント達が話しかけてきた。
「えっと、弟くん?」
「悠馬」
「え?」
「林田 悠馬だ。姉の真理が世話になった。よろしく」
「よろしくお願いします」
そのサーヴァント達は斎藤一、オデュッセウス、アルジュナの3人で高身長イケメンが並んでいるので俺と同じく、趣味に走ってんなーと思いながら彼らと会話をしつつ、妹が彼女のサーヴァントと立て籠っている建物へとバスを走らせた。