「みぞおちフルヒット!ルイルイフォーム!キャピルン☆」
「むこうずねフルヒット!レイレイフォーム!キャピルン☆」
「キ、キラキラフォーム。きゃ、きゃ・・・キャピルン」
「「「・・・・」」」
リビングの扉を開けると女の子がいた。それも魔法少女と思われるコスプレをして決めポーズを決めていて千弥オタ芸に通じるものがある。
「ちょっと煌。声が小さい。言ってるでしょ恥ずかしさを捨てなって」
「そうだよ。キラメ。恥ずかしさなんか捨ててキャラになりきりなよ」
「無理だよ~こんな恥ずかしい姿人前でできないよ~レイラから卒業記念に瑠衣ちゃんが夢の国に連れてってくれるって言ってたから卒業旅行に行くんだと思ってワクワクしてたのに~何なのこれ~」
「私「国」とは言って無いよ。夢の「島」って言ったんだよ。それに両方とも同じようなもんだよ。ほら仮装だってするんだし」
「全然違うよ~」
「恥ずかしって言うけどいい・・・逆に考えるのよ。大学生のノリだから許されるのよ。これが会社員になったらもうこんな事できないのよ。それにこれが最後のチャンスなんだから!何より次の夏のイベントついに念願の壁サークル。あ~私もついに超人気コスプレイヤーの仲間入りか・・・両隣の面々なんか雑誌やTVで活躍する面々なんだからね」
「私知ってる。それ伊東ラ〇フ状態って言うんだよね」
「レイラそれ褒めて無いからね。むしろけなしてるからね」
「そうなの?てかルイ。オタ活も良いけどさ早く就職活動終わらせてよ」
「お願い。就活の話は止めて。今は現実から目を反らしたいの。最後のオタ活に精を出したいの」
「最後って。だ、大丈夫だよ。そもそも瑠衣ちゃんなら社会人になってもオタク活動続けれるから」
「煌・・・・あんた想像してみなさい。30代になってもコスプレしてたら痛々しいでしょ?」
「う・・・」
「だから今しかないの。この今(青春)を駆け抜けるしかないのよ」
「だからって私も巻き込まないでよ~」
「何度も言うけどどうせ知り合いは来ないんだから大丈夫。それに本じゃあ編集。会場じゃあメイクでバッチリキラリにするって言ってるんだからバレはしないわよ」
「でも・・・」
「あ~もう。いい。あなたは今十色煌じゃない。魔法少女キラリなのよ。世界を守る魔法少女なのよ」
「世界を・・・守る・・・」
「そう。世界の平和守る為なのよ。どんなリョナ展開を受けても諦めない。バラバラのミンチになってもそれでも折れずに戦う魔法少女なの。そんなキャラなのよキラリは。煌大丈夫。あなたならやれるわ」
「ルイ・・・それはちょっと感情論すぎるよ。そんな勧誘あのクソ白害獣が鼻で笑うよ」
「瑠衣ちゃん・・・・わ、分かった。私頑張る」
「それを分かっちゃうキラメもキラメだよね・・・・」
「それじゃあ・・・いくよ」
「顔面フルヒット!キラキラフォーム!キャピルン☆」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・え?」
決め台詞をバシッと言い決めポーズをした時に僕らと目が合った。
ガン
数秒固まっていたが力なく崩れ落ち顔面を床にぶつける。
「コロシテ・・・・コロシテ・・・・」
そして正気に戻ったからか壊れたように何度も何度も呟く。
「・・・・お風呂こっち」
「・・・・うんありがとう。じゃあヒロ君ちょっと行ってくるね」
「うん。・・・・・え?」
女の子は関わりたくない様子でさっさと由奈を連れてお風呂場に行ってしまう。僕はこの完全アウェーな空間に一人取り残されてしまった。
「ふ~。すごかった~露天風呂で海が一面に見れるだなんて最高」
僕が電話を終わるのと同時に由奈がお風呂から出てきた。
「へ~海を一望できるなんてすごいね」
寮のお風呂がまさか露天風呂だなんて思っても無かった。
「まあ・・・こんな天気だからいつもみたいに綺麗じゃないけどね」
「残念。ねえまた来て入りに来てもいい?」
「いいけど、その時は一人で入ってね。ペタペタ触られるの好きじゃないから」
また由奈が触ろうとしたからか遠ざかる女の子。
「相変わらず女の子にペタペタ触るの好きだね」
前に蓮菜ちゃんが泊まりに来た際にわざわざ蓮菜ちゃんが入っているお風呂に突撃していったのを思い出す。それを僕は血涙を流しながら待っていた事も。女子校のノリを誤解しているような気もする。
「ルイルイお腹空いた~何か作って」
「おい。私はあんたのママじゃないんだから自分で作りなさいよ。なごみさんがいないからって私に甘えるんじゃないわよ」
「ヒロ君。私もお腹空いた~」
「そっちの子もなんか自由ね・・・」
「そうだねお昼食べて無かったからね。何か出前でも頼もうか?みなさんもどうです?お金出しますから」
「え?いいの」
「はい。雨宿りとお風呂入れさせてくださったお礼です」
「わーい」
「わぉ太っ腹♪」
「ほら煌も泣いてないで好きなもの頼みなさいよ」
顔面を床にぶつけた女の子も魔法少女の服装から着替えたが先ほどのショックが大きく未だ机に突っ伏していた。
「・・・たこ焼き。銀だ○ファミリーパック」
「分かりました」
「え?」
僕が言うとさっきまで反応がなかったのにバッと顔を上げる。
「いいの?もしかしてあなたはたこ焼きの神様か何かですか?」
「いいえ違います」
何か勘違いしているようだがたこ焼きで事態は収拾したようで安心した。
「ぷは~いや~大雨の中しかもタダで食べる宅配ピザの味は格別ね~」
僕がお風呂から上がると到着していたデリバリーの料理と置いてあったであろうお酒を片手に宴会状態であった。量を見て流石大学の寮だけはある。
「そういえばさっき電話してたけど紫苑さんに?」
先に食べていた由奈が聞いてくる。
「うん。それとお義母さんとお義父さん。様子が気になって」
それもあるがあの場で一人では耐えられなかくて電話に逃げた。
「様子どうだって?」
「うん。泣いたりせずに楽しく過ごしてるって。ほら写真も」
「そっか・・・」
写真を見せると由奈は嬉しいような寂しいような顔をする。これも成長なのだろうし放任主義の両親の子だからとか色々と納得する事ができるがそれを受け入れるには僕たちにはまだ時間がかかりそうだ。
「ちょっと宮子。あんた少しはペース落としなさいよ。お肉食べる速度早すぎるのよ」
「くぴくぴ。もぐもぐ。うまうま」
僕たちを連れてきた女の子はお肉のピザにさらにお肉が山盛りにトッピングされたピザとチューパイを黙々と食べている。
「ヒロ君も食べたら」
「うん。そうする」
僕も由奈の隣の席に座る。
「そうだ。ねえ乾杯しよ」
「いいね。乾杯」
「乾杯」
コン
僕と由奈はジュースで乾杯する。
「二人はジュースでいいの?」
「うん」
「僕も運転とかありますし」
そもそも結婚したのが未成年だしその後すぐ由奈が妊娠したのでお酒を飲むという習慣が無い。
「で?そのカップル知り合い?」
ルイルイと言われてた女の子が当然の質問をしてくる。
「・・・誰だろう?」
「誰だろうね?」
白髪の女の子と由奈は目を丸くしてお互い顔を見合わせる。まさかまだ自己紹介もせずさらにお風呂に入ってペタペタ体を触っていたとは。
「待って?初対面なのに連れてきたのしかもその後一緒にお風呂入って触りっこしたの?」
当然の突っ込みである。
「うん。しちゃいました」
「された・・・」
笑顔の由奈と対照的にうんざりとした顔をしていた。
「宮子あんたそんなキャラだっけ?」
「忘れがちだけど私友達多いよ」
「てかあんた今までどこ行ってたの?あんたに用があったのに居なくて誰も知らなくてしょうがないから夏のイベントの予行練習してたのに知らない人連れて来ないでよ」
「海。泳いでたら大雨が降って来たし雷まで鳴ってきたから帰って来た」
「泳ぐってまだ海開き前なのによく泳ぎにいったわね・・・雨は知ってたけど雷も鳴ってたのね。稽古に熱を出し過ぎて全然気づかなかったわ。家じゃあ本気で練習できないし」
「その結果があれ?」
「あれって言うな。今度の夏のイベントでみんなで披露するんだから」
「イベントってお笑いの?」
今度は由奈がツッコミを入れる。
「どこが漫才だ どこが?てかお前ら誰だ。どこ大のやつらだ。おら 」
「瑠衣ちゃん。ヤンキーみたいな絡み方はダメだよ。ごちそうしてもらったのに」
「・・・私もヒロ君も大学行ってないんだ。お仕事が忙しくて・・」
「え?」
わざと語弊がある言い方。そして悲し気な表情。ずっと隣で見てきた僕は演技だとすぐ分かるがさすが女優。一瞬で空気が重くなる。
「ご、ごめんなさい」
コスプレを見られ死にかけだった金髪の女の子。確かきらめさんが謝る。
「大学に行けないほどお金なくてそれでお仕事しててまた明日から馬車馬のごとく働かされるのにそれなのにわざわざ私達の為に奢ってくれて。・・ぶええええええん」
号泣している。由奈の目論見通り勘違いしている。それを見て満足そうににっこりする由奈。
「いやいや誤解です。もう由奈言い方が悪いよ。僕は演技だって分かるけど普通の人には分からないんだから。本当の事言っててもさも『訳アリです』みたいに意味深な顔して意地悪しちゃだめだよ」
「む~ヒロ君はどうして私より他の女の子の味方をするのかな・・・ぷくぅ~」
「なんかその怒りかた身近で見た事あるわね・・・ん?由奈?」
「あーーーーー!!」
「どうしたのキラメ。今度はいきなりそんな大きな声だして。たこ焼きにタコ入ってなかったの?」
「ち、違うよ。思い出したの。女の人どっかで見た事のある人だと思ったらこの人小町由奈さんだ」
「え!あの女優の?」
「そうそう。最近やってたドラマ『金色恋愛』のヒロインの一人」
「そうでーす。小町由奈でーす。正直もっと早く分かるかなって思ってたんだけどな~」
「ご、ごめんなさい。ドラマじゃ金髪か黒髪だったから今まで分からなくて。サイン・・・サインもらってもいいですか?」
「もちろんです」
「やったーーーー」
「『金色恋愛』・・・由奈・・・ああ月9の。瑠那が見てて1話だけ見たけど確か役ってたばこ吸ってた怖めの子だったわよね?」
「そうそう。私も最初は不良みたいで怖い人だなって印象だったんだけどね。話が進むにつれ印象が変わってまさかあんな展開になるなんて思わなかったよ。先日の最終話なんかなごみんとレイラとみんなでずっと感動してたよ」
「うんうん。感動しすぎてなごみんなんか色んな所から液体出してたよ」
「なんか卑猥に聞こえる。そういえばその最終回見終わった後みんなで泣きながらチョコボール買ってきたよね」
「煌達も?瑠那も箱買いしてたわよ。何があったの?」
「瑠衣ちゃんまさかドラマ1話しか見て無いの?あんな良いドラマなのに!?」
「愚門ね。オタクはドラマとか見ないでアニメを見るのに忙しいの」
「もったいない。あんないいドラマ見ないなんて。たばこを吸ってる理由もそうだけどまさかタイトルの『金色』とちょくちょく出る『チョコボール』あの二つにあんな伏線があったなんて・・・それで最後・・・最後・・・ぶええええええん」
ドラマの最終回の内容を思い出してまた泣き出してはじめる。
「泣かない泣かない。あんたはたこ焼きでも食べてなさい」
また泣き始めたきらめさんをなだめながらここでようやく全員の自己紹介をすませる。
「でもまさか宮子が連れてきたのがあの有名なね~名前は聞いた事はあるわ。元アイドルでそれもアイドルを卒業してすぐ結婚したって一時期すごい話題になってたっけ。けどまさか旦那さんがこんな若い人だとは・・・てっきりもっと年上だとばかり思ってたわ」
「僕の方が一つ下で由奈とは学生結婚です」
「は?学生結婚!ねえ?二人はどういう関係だったの」
「強いて言うならアイドルとそのファンです」
「まじ!?アイドルとファンの恋愛なんて都市伝説だと思ってた」
「でもすごーい。私達より年下なのに学生なのにアイドルなのに結婚決めるなんて愛の力すごーい。IT‘Sラブパワー」
お酒の影響かすごいハイテンションのレイラさん。それにしてもまさかこんな事を今まで知らない人に言うとは思って無かった。
「・・・ねえ?結婚して変わった?」
「え?」
今まで会話に入らなかった宮子さんが僕たちに突然質問する。