ぷっつりと、あっけないほど簡単に、俺の理性の糸は途切れていた。
頭がガンガンするし、胸のドキドキは止まらない。
乾いた喉を掻きむしり、その痛みのせいか目の前が真っ赤に染まっていく。
「はぁっ、はっはっ…んくっ…はぁはぁっ…っ!」
「トレヤくん? トレヤくん、大丈夫? ねぇ?」
心配そうに覗き込んでくるコハナの顔。すぐ近くにある女の体。
ああ、そんな事考えちゃいけないのに。
中途半端にエッチな事をしたせいだろうか。アレで終わりじゃない事くらいは、俺にだって分かってしまう。あんなのはただの前戯で、子供を作る行為の先にある快楽を衝動的に求めてしまっていた。
「きゃっ!? やっ、だっ。トレヤくんっ、まって、ねぇっ。落ち着いてよ、お願いだから」
コハナの声が遠くに聞こえていた。
赤く染まった視界の向こうで、ジタバタと彼女が藻掻いているのも分かる。
強くて、優しくて、いつも俺の前を歩いていた彼女が、今はどうしてだか俺に見下されていて、それが凄く爽快だった。
こんなに小さかったんだ。こんなにも弱かったんだ。
押しのけようとするコハナの手を払った拍子に、俺の手の甲が彼女の頬を打つ。
小さな悲鳴があがり、驚きと、困惑とが入り混じった視線の中に、僅かなりの恐怖の色が滲んだのが分かる。
ゾクリとした。
後悔からじゃない。これは歓喜だった。
征服と支配に心が満たされる。
匂いだ、甘い、花の香りのような匂いが、コハナの匂いと重なっている。
それが俺を狂わせていた。
身体の奥から力が湧いてくるような感覚。あれだけ吐き出した後なのに、股間はすぐに熱を持ち、さらに力強さを増していく。
女を組み敷いて、痛めつけ、自分の性を押し付ける。
その興奮が俺から理性を奪い、全身に力を巡らせていた。
「ダメだって、トレヤくんっ。今はっ、ここから出ないと、ほんとに…僕たちおかしくなって、やっ、やだっ…ぬがしちゃ、だめ…きゃっ!!」
暴れるコハナの頬をさらに打った。
小さな肩が恐怖に震え、強い痛みが彼女の心を押さえつけたみたいに力が緩む。
もう一度、今度は意図的に、彼女をしつける為に手の平を返すと、痛みに震えたコハナの身体から抵抗の色が弱まっていく。
俺だけじゃない。おかしくなっているのはコハナも同じだった。
いつもなら、こんなくらいで根を上げるやつじゃない。
きっと、この甘い匂いのせいなんだろう。
見たこともない顔をしていた。
打ち続けたことで赤く染まった頬。力なく開いた口から「はぁ、はぁっ」と、繰り返し熱い吐息を漏らし続ける。
俺を見上げる視線には、恐怖と混乱と、そして、僅かばかりの期待が入り乱れ、それらが溶け込んだ涙に瞳が潤む。
正直、興奮した。
何をしても良いんだって思い違える。
ここには誰もいないから、ここでは誰も見ていないから。
甘い匂いが俺に力をくれて、コハナからは奪っていく。
間違った勇気に背中を押されたまま、俺は組み敷いたコハナの身体に手をかけていった。
服を脱がそうとして、もたついてしまう。
「トレヤくん、トレヤくん」呼び続ける声が鬱陶しい。
なんとか俺を正気に戻そうと、こんな所まで来て、未だにお姉さんぶっているコハナの姿が腹立たしくなる。
黙れと口にする代わりに、衝動が、再びコハナの頬を打ち据えていた。
「いったっ! やめっ、だめだよっトレヤくんっ。いま、そんなのしちゃ、僕たち、ダメになって、僕だってホントに無理で…我慢できな…あっ」
頬を打つ度 抵抗が緩む。それだけで胸のすく思いがする。
ぎゅっと瞼を閉じ、肩をすくませて縮こまる姿は、いつもお姉さんぶっていたコハナからは想像もつかないほど弱々しく、そんな頼りない姿がますます俺を興奮させていた。
いつもお姉さん風吹かせやがって。
今は俺のほうが強いんだから。
今日こそは分からせてやるんだ。
俺は男で、コハナは女なんだ。だから、それならもう…。
肉付きの良い太もも。スラリと引き締まった綺麗な足から、ズボンを引き抜き、下着を剥ぎ取ってやった。
逃げようとするコハナを押さえつけ、抵抗を続ける彼女の丸出しになったお尻に平手を打つ。柔らかい肉がフルリと揺れた。乾いた音を洞窟に響かせる内「ぐすっ」と、涙混じりの声が聞こえてくる。
「もう…やめてよ。トレヤくん、お願いだから…。僕と一緒にお家に帰ろ? ね? 続きなら、君がしたいんだったら、僕は良いから…お家でなら大丈夫だから…」
その弱々しい姿に、俺はさらなる興奮を覚えてしまっていた。
洞窟の中。壁に生えた苔が怪しく光るだけの薄暗い中で、コハナの身体を押さえつける。
誰も咎めやしない代わりに、誰にも止められず、行為はますますとエスカレートしていくばかりだった。
コハナの瞳に涙が滲む。恐怖で声を震わせながらも、その汗に、その肌色に、節々から立ち上る女の気配は強くなっていた。
逃げようと抵抗して、俺を正気に戻そうと哀願する。
そんなコハナをしつけるように、手を掴み、足を抑え、無防備に晒された肌を平手で打ち据え続ける。
「んぁっ、はっ、や、いたっ…やめて、やめてよ、トレヤくん…きゃっ!」
涙で濡れた悲鳴の中に、艶めいた悲鳴が混ざり込む。
打ち据えた頬、叩いたお尻が赤に染まり、引っ掻いた太ももがビクリと、驚いた様に震え上がった。
匂いがする。
甘い花の香りの中に、コハナの、女の子の匂いが混ざり合う。
肌に浮かんだ汗から、涙を流す瞳から。何よりも、愛液の滲む割れ目から香る甘い匂いに、俺の興奮は強くなる一方だった。
太ももに押し付けていた時よりも、その手の平に包まれていた時よりも、固く、大きく、痛いほどに膨らんだ 俺の肉棒。
ドクン、ドクンと、強く脈打つ姿は、一見卑猥な様でいて、やっぱり何処か邪悪に見えた。
後ろからコハナの身体に覆いかぶさり、背中を押さえて地面に押し付ける。
大切な所を隠そうと、閉じる太ももに爪を立て、お尻を叩く。その痛みに声が上がり、緩んだ身体の隙間に腕を差し込んだ。
膝の裏を抱え上げ、持ち上げるように閉じようとする足を無理矢理に開かせる。
ぬちゃっと、太ももを濡らしていた愛液が広がっていた。
叩かれ、爪を立てられて、何をそんなに感じたもんか。
開いた足の間。太ももと太ももを繋ぐように透明な糸を引くと、途中で出来た雫の重さに負けてぷつっと千切れていく。
まるで、奴隷に付ける足かせの様だ。
コハナがどんなに嫌がろうとも、痛みと未知の快感は、彼女を縛り付けていた。
身体が先か、心が先か、違いなんてその程度。
早く彼女のを屈服させてみたいと、衝動に突き動かされた俺は、躍起になって彼女を貶めていく。
「あぐっ、痛いっ。トレヤくんっ、そんな乱暴に…。せめて、もっとゆっくり…おねがっ、くぅっ、あ、はぁ、んふっ、あぁぁ…やめ、お家かえってからだったら、いいから、しても…だからっ」
「嫌だっ。それで、戻ったら、ハナはまたお姉ちゃん風吹かせてさっ。俺の事子供扱いするんだろっ!」
「子供扱いだなんて。そんなつもり、僕は…」
「つもりじゃなくてもそうじゃんかっ。さっきだって、俺が子供だからって、あんな、あんな、中途半端な事させたんだろっ。何も知らないからってバカにすんなっ! 俺だって、おれだって、このくらい出来るんだからなっ!」
「ちがっ! アレは僕、ホントに君とだったらって…それで」
「だったらっ、最後までしてもいいじゃんかよっ!!」
俺の感情に肉棒が吠える。跳ね上がった先端が割れ目を舐めあげると、コハナの口から「ふぁっ…♥」と、微かな快感の音色が漏れた。
抱えた足を大きく開かせ、背中を押さえつけた手に力を込める。
逃さないように、逃げられないように。
身動きの取れなくなったコハナの割れ目に、愛液の滲む縦筋に肉棒を差し込んでいった。
ヌルリとした感触が纏わりつく。
先端が中へと沈み込むと、ズルズルと開いた割れ目の中に吸い込まれていく。
「ひぃっ、や、ぁっ…あ、挿って、だめっ、トレヤくん…ぬい、あ、ゃ、ふぁ、ぁぁ…♥」
間の抜けた声だった。
抵抗を示すものじゃ決して無い。
肉棒が奥へと進む度に、女の柔肉が絡みついてくる。
雁首が沈み、竿の半分までもが簡単に飲み込まれていった。
窮屈に感じる程の締め付けを押し開きながら、最後の窄まりを先端が通り過ぎると、そのまま一気に肉棒を根本まで押し込んでやる。
「くはっ! あ、くっ…や、だ、はっはっ、あ、あぁ…僕の、に…んひっ、おちんちん…あっ、ゃっ…!!」
突然の衝撃にコハナの口から、パクパクと、カチカチと、音が鳴る。うわ言の様に言葉を漏らしながら、噛み合わなくなった奥歯を震わせると、口元から涎が流れていく。
最高の瞬間だった。
自分の全部が、コハナの中に溶けていくような感覚に言葉をなくす。
肉棒が熱い、肉棒が気持ちいい。それが全部で、それが全てで。
根本から立ち上ってくる射精感に押されて、コハナを押さえつけていた腕に力が入ると、さらに深くを求めて腰が跳ね上がってしまう。
「はい、らっ、だめっ…やっ、それ以上、僕こわれ…ちゃ、あっ、くぅっ!」
その刺激にコハナの奥が、きゅぅっと締まりだす。
手の平で包まれていた時よりも深く、太ももに擦り付けていた時より強い肉感に包み込まれて、指先よりも細かいヒダの感触に腰が抜けそうだった。
「そんなっ、事言ってっ。ハナだって感じてるんだろっ。さっきから、俺のモノぎゅっと締め付けてさっ。もうイキそうなんじゃないのかっ」
「そんなことっ、イかなっ、ぃ。僕は、こんな…乱暴にされて、喜んじゃたりなんか、あ、ひっ、あ、やだ、やだ、まってまっ…あ、やぁぁぁぁっ!」
悶えるコハナの体を押さえつけながら、腰を乱暴に振り抜いた。
ゾクリと、ゾクゾクと、押さえつけたコハナの背中から、抱え上げた太ももから、駆け抜ける快感が俺の方にまで伝わってくる。
声が惚ける、嬌声が上がる。
艷やかなその仕草に俺の興奮が重なり、熱いものが込み上がってくる。
股間はもうグチャグチャだった。
俺の先端から漏れる汁と、コハナの股間から溢れるヌルヌルと、どっちがどっちかも分からない。腰を打ち付け、肉棒を暴れさせて、混ぜ返し、ごった返して、掻き出すように動かすと、彼女の中からヌルヌルが溢れてくる。
音が鳴るほど強引に、音が立つほど乱暴に。
泡立ち、掻き回されて、ダラダラと下の口から涎が溢れた。
「ほらっ、ほらっ。今はっ、今はっ! 俺の方が強いから、ハナは俺の物になってるんだからっ、だからっ…く、そっ」
苛立ち混じりに腰を叩きつけたのは失敗だった。
駆け抜ける快感に肉棒が震え、暴発しそうになる精液を飲み込むのに必死にさせられる。
ガタガタと馬鹿みたいに腰が震えだす。ふっと意識が遠のきそうになると、なんで自分がこんな我慢をしているのか分からなくなっていく。
ただ出せば良い。
2回でも3回でも、コハナが音を上げるまで射精を続けて、きっと今の自分にはそれが出来る予感があった。
きっと、ただの感傷だ。
きっと、聞きたいだけだったんだ。
コハナの口から、もうダメって、参ったって、俺のものになるからって。
散々子供扱いされてきて、ここでもまた我慢できずに出してしまえば、いつまで立っても子供扱いされてしまいそうで、それがイヤだった。
「はっ、くっ、やめっ、あ…♥ とれや…く、はっ、はっ、あ、ふぁっ…♥」
コハナの口から漏れていた甘い悲鳴が、確かなものになっていた。
「やめて」「だめだ」と、口で言うほど抵抗は弱くなるばっかりで、代わりに快感を示すような嬌声の色が強くなる。
開いた口。涎を口元から漏らしながら、そのままふっと力が抜けていく。
かと思えば、肉棒を包み込んでいた柔肉が急に締まりだし、押さえつけていたコハナの背中がフルリと震えて反り返った。
「あ、あぁぁっっ、やっ、やだやだっ、ぼく、いっ、あ、だめ…おかしくなるっ。これ、むり、むりむりむりぃ…っ、いっちゃ、あぁぁぁっ!!」
ゾクゾクと、ビクビクと、身体を震わせ声を上げ、精液を絞り上げようとした柔肉に、肉棒を執拗に責め立てられる。
「くぅぅぅっ。な、んだよっ、やっぱ、感じて、イッてるんじゃないかっ」
「そ、れはっ、ひゃっ、あ、やだ、うごかさ、な。いまはっ、や、いって、ぼくっ、ぼくぅぅ、んっ、んぅぅぅぅっ、あ、ひゃぁぁ…♥」
甘い、甘い声が聞こえる。
俺が肉棒を動かす度、コハナが喉を震わせて快感を訴えてくる。
まるで夢を見ているみたいだった。
肉棒が気持ちよくって、コハナとエッチしているのが嬉しくって。
射精の瞬間に目が覚めてしまうんじゃないかって、それが怖い。
気づけば、コハナの隣で眠っていて、くすっと優しく微笑む彼女に頭を撫でられる。そんな仕草に目を奪われるんだ。
一瞬見えた光景に胸が苦しくなる。
こんなはずじゃなかった。こんなつもりじゃなかったのに。
だけど俺はもう、自分で自分を止められなくなっていた。
コハナの身体を組み敷しき、押さえつけ、足を開かせる。
肉棒を割れ目に突っ込めば声が上がり、まるで粗相でもしたみたいに広がる愛液の中に、赤い血の色が一筋と紛れていた。
心と身体、その全部が快感に埋め尽くされる。
肉棒を女の子に包まれて、好きだった女の子を押し倒して。
初めてを奪ってやった興奮に勃起が強くなる。根本に溜まった射精感を抑えるのも限界だった。
「ほらっ、ハナっ。そろそろ、だすよっ! 分かるだろ、ハナのここにさっ!」
突き上げた肉棒の先端が、コハナの深い所を舐めげた。
その刺激に背筋を反らし、声を上げ、弾けた快感にビクビクと、彼女の身体が震え上がる。
「はぁっ、はぁっ、んっくっ、あ、ぁぁぁぁ、や、だめ…ぼく、は…だって」
ゾクゾクと、揺れる快感が肉棒を通して伝わってくる。
カチカチと歯を鳴らし、どうにもならない感情に首を振る姿が、俺を苛立たせてしょうがない
「もう、お姉ちゃんじゃないんだよっ。ハナは俺のなんだから、だからっ、言って、言えよっ。ほしいですって、俺の、精液、出してって、そしたら…さっ。許すから、もう、終わりにするからさぁっ!」
「あっ、くはっ、ん、ぉ…っ! つよ、とれやくん、だめ、そんなしたら、僕…だって、欲しくなって、我慢が…がまんが、ぁぁぁっ…!!」
突き上げた肉棒が、奥へと突き刺さった。
そのままグリグリと先端を押し付け、小刻みに中で揺すってやると、抱えあげていた太ももがプルプルと揺れ始める。
「あっ、はぁっ、それ、それすきっ! ぐりぐりって、ぐちゃぐちゃって、腰が震えちゃって、わかんないっ、わかんないよもうっ。トレヤくんは、僕を…こんなにして…だめって、いったのに、ぼく、おねえちゃんだから、だめって…いひっ♥」
肉棒がきゅぅと締め付けられた。
小さな絶頂を繰り返す度、溜め込んだ精液を吸い出そうと、絡みついた柔肉に肉棒を舐められる。
「た…のに。やめてって、なのに、ぼくぅぅ…」
コハナの体から抵抗の色が完全に無くなっていた。強張っていた四肢から力が抜けて、俺の動きに合わせようと、もっと貪欲に快感を欲しがるみたいに腰が動き始める。
「もう…いいや…」
ふいに、聞こえてくる諦めの言葉。
何もかもを手放した後の様な軽い声音。
「信じて…欲しかったなぁ。トレヤくんとならって、思ってたのにさ。あははっ…でも、もういいや。こんなもんなんだなって…こんなんじゃなかったはずなのにさ。出して…出せばいいじゃん…だって僕は、もう…僕はだって、君のものなんでしょ?」
罪悪感、だったのだろうか?
コハナを犯す快感の中。聞きたかったはずの言葉が、投げやりに放られ、胸が締め付けられたような気がした。
どうして我慢出来なかったのか、どうして信じて上げられなかったのか。
洞窟に漂う甘い匂いのせいにするのは簡単だったけど、そんな悩みも、射精の前の強烈な快感の前には全て無意味だった。
ぐっと、肉棒をコハナの深い所へと押し込んでやる。
そのまま小刻みに、掻き回すように腰を揺らし、彼女が好きだと言った動きを繰り返してやると、快感に震えたお腹の中が無数のヒダを作り、すぐにも肉棒に絡みつていくる。
「ハナ、ほらっ、出すから…一緒に、イって、俺の全部…だすからっ」
「あはっ♥ やっ、んぅ、きもち、気持ちいい。トレヤくん、とれや…くんっ。もっともっとして、僕、なんかっ…壊れるくらいがっ、壊しちゃっていいからっ、だからっ!!」
最高の瞬間だった。
抱えてきた愛憎が精液へと変わって昇り詰めていく。
根本から膨らみ、竿を嘶かせ、先端から快感を爆発させた。
身体に力が籠もる。
絶頂に反り返るコハナの背中を押さえつけ、抱え込んでいた太ももを抱き寄せる。肉棒を深くに届かせようと、乱暴に腰を突き入れた。
「あひっ、あ、ふっ、はぁ、はぁ、あ、ん、あぁ、いっ、きもち、い…んっ♥」
細い喉を鳴らし、甘い悲鳴を上げながら、濡れたコハナの唇から俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
トレヤくん、トレヤくん、トレヤくん。
「ごめん…ね」
快感で染まったコハナの頬に、涙が一筋と流れていった。
頭がおかしくなりそうだった。
悪いのは俺なのに、謝らなきゃいけないのは俺の方なのに。
なのに、射精が止まらない。快感と罪悪感を燃料にして、ドクドクと肉棒の奥から精液が吹き出してくる。
「ハナ、唇…顔を、こっちに…」
「ん、うん…トレヤくん、ん、ちゅっ…」
顔を向けさせ、唇を交わし。押さえつけるばっかりだったコハナの身体を抱き直すと、俺は今日一番の、今まで一番の快感と共に、残っていた精液を彼女の中に吐き出していた。
分かっていたはずだった。
甘い花の匂いが俺たちをおかしくさせる。
コハナの言うように、さっさと洞窟から出るべきだった。
あれ以上、エッチな事をしちゃいけなかった。
乱暴でも強引にでも身体を重ねてしまった。
「大丈夫だよ」「君は悪くないから」「僕は平気だから」
快感の波が通り過ぎ、多少の正気を取り戻した後、そう言ってコハナは疲れたように笑っていた。
初めて見る顔だった。
いつもの優しい、柔らかい笑顔はそこにはなくて。それっきり、俺と視線が重なることもなかった。
何も言えない。
そんな顔をさせてしまった俺は、ただ頷いて、その笑顔に甘えるしかなかった。
ー
身体は動かなかった。
洞窟の奥へ進むほど、強くなる花の匂い。
ヤバいと、心の何処かで警笛をならしながらも、コハナの身体が気になってしょうがなくなってしまう。
巨大な花。
洞窟の最奥でそれを見つけた時にはもう限界だった。
逃げなきゃいけないのに。
その気持ちが萎んだ代わりに、視線がコハナの方へと向いてしまう。
「にげ、て、トレヤくん…早くっ! こんな時くらい、僕のお願い聞いてよっ、最後くらい…いいでしょ」
太い蔦に身体を縛られ、コハナの身体が花弁の方へと引きづられていった。
助けなきゃ。なのに、身体が動かない。
逃げなきゃ。なのに、身体が動かない。
どっちも選べず、それどころか肉棒は勃起を強くしていた。
無数の蔦に縛られたコハナの姿に興奮して、身動きの取れなくなった彼女を犯したくなって、絡みつく快感に足が止まってしまう。
動けない。
逃げようとして、助けようとして、劣情で足が止まる。
ズルリ、ズルリと…。
見ている間にもコハナの身体は、花弁の方へと引きづられていく。
「あ、ハナ…」
そうするだけで、どれだけ彼女が力を振り絞ったのか。
たった一時、絡みつく触手たちを引き千切る勢いだった。
伸ばされたコハナの手に肩が押されると、俺はそのまま尻もちを付くよう倒れ込んでしまう。
「走れっ! バカッ!!」
「あ、あ、あ、あぁぁっぁあっ!!」
初めて聞いた怒声だった。
その声に弾かれたように体を起こし、振り返ることも忘れて洞窟から逃げ出していた。
現実を思い出したのはその後だ。
自分の部屋のベットで膝を抱えているのですら恐ろしい。
家に帰り着き、姉さんに叱られて、それでも無事で良かったと泣かせてしまった。
悪いとは思う。だけど、それよりも俺の心を抉ったのは。
「ハナちゃんはどうしたの? 一緒じゃなかったの?」
答えられなかった。知らないとまで、嘘をついてしまった。
俺を見る姉さんの目の色が変わっていた。長い付き合いだ、それこそ生まれた時からの、コハナと一緒だった時間よりも長い。
「しばらく、部屋にいなさい」
気づいたはずなのに、何も言われなかった。それどころか、叱られる前より落ち着いた声が余計に辛い。
「ごめん、ごめんなさい、ハナ…ハナ、お姉ちゃん…ごめ…ひくっ」
泣いたってどうにもならない。それでコハナが戻ってくるわけもない。
膝を抱え、頭から毛布をかぶって耳をふさぐ。
ただ、何も聞きたくなかった。
だって、聞こえてくるんだ。
「バカっ!」て、あの時初めて聞いた声のままに、コハナが俺を責め立ててくる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
謝ったって許してくれない。だってこれは、俺の幻聴で、コハナはもう何処にもいないから。分かっていても、分かっているから余計に…。
コンコンっ…。
「ひっ!」
扉を叩くノックの音にすら震え上がってしまう。
だってすぐそこにいる。
ゆっくりと開いた扉、そこに見えた人影が何かも分からないまま、俺は悲鳴を上げていた。