「この匂い…やだなぁ」
奥に進む程、強くなる甘い花の匂い。
次第に鼻も効かなくなり、追いかけていたトレヤくんの匂いも薄れてくると、彼が遠のいていくみたいで焦りばかりが大きくなる。
幸いの一本道。足跡だって続いてはいるから、後を追うのに問題はないけど。
「はぁ…」
大きく息を吐いて足を止める。なんだか息苦しい。
急に空気が薄くなったとか、毒ガスが出てるだとか、命の危険を感じるようなものではないけれど。
だからだろうか? 自分の体の異変に気づくのが遅れてしまったのは。
むせ返る花の匂いが頭にまで回ってくる。
上せたみたいに、ぼぅっとしてくる頭を振って、なんとか意識を取り戻そうとはしてみても、霞んだ視界がクラリと揺れただけで、逆にバランスを崩しそうになった。
壁に手をついて、なんとか先に進むことは出来てもそれだけだ。
吐息が熱い。風邪を引いた時みたいに息苦しい。
嫌に敏感になった肌は、衣服に擦れるのですら刺激と受け取り、そのもどかしさに体が締め付けられた。
息苦しさに負けて、衣服を緩める。
冷えた洞窟の空気が緩んだ胸元に入り込み、火照った肌を撫でられると、それが少しだけ気持ちよかった。
「はぁ…はぁ…っ。んっ、ぁっ、はぁ…」
ふと、甘い響きが喉を揺らす。
荒い呼吸の合間に混ざる程度でも、その響きの正体に気づかずにはいられない。
「うそ…まって。これって…僕、だって今…」
胸の鼓動が強くなった気がした。
焦ってる訳じゃない。疲れてる訳でもない。風邪なんて引いてる場合じゃない。
肌を落ち着かなくさせるこの感じ。それ以外の全部が遠のいていくこの感じ。
えっちな気分になってる、そうさせられている。
原因なんて、この花の匂い以外に考えられなかった。
これ以上嗅がされていたら、きっと何処かで我慢が出来なくなる。でも、だからって引き返す道もなく、それ以前に まだ彼を見つけてすらいなかった。
「待ってて、トレヤくん。僕が、絶対…に」
彼の名前を口にして、ぼやけていた目的をハッキリさせる。
ちょっとエッチな気分になっただけ。分かってしまえば、そこから意識を逸らすくらいは出来る。
頭が重い。感覚も鈍い。動かそうとした体は、欠けた歯車みたいに、どうしてももたついてしまう。それでも、なんとか洞窟の奥へと進んでいくと、少し開けた場所で足が止まった。
「あれ…」
トレヤくんの跡を追いかけていた狼の気配が横に逸れていた。
他の獲物でも見つけたんだろうか?
争った形跡も無ければ、彼が倒れ込んだような跡もない。
トレヤくんの足跡は洞窟の奥へと続いて、狼の足跡だけが暗がりへと溶けていく。
グルルルルゥっ…!
「っ!?」
その唸り声に視線が動いた。暗がりの奥、生き物の気配がする。
そこには、2頭の狼が折り重なっていた。
牙を向き、唸り声を上げる一頭の上に跨りながら、その身体を押さえつけたもう一頭が、激しく腰を打ち付けている。
ああ、そっか。
僕がエッチな気分にさせられているように、彼らもきっとそう。ここまで来て、食欲よりも性欲に負けてしまったんだ。
薄暗く、不思議と仄明かるい洞窟の中でもよく分かる。
一つ、二つ。三つと四つ。興奮で血走った狼の眼が僕を捉えると、獲物を見つけた捕食者の動きで近づいてくる。
「来ないで…は、無いよね。ははっ…」
正直、戦いたくはなかった。
普段なら、狼の2匹くらいどうとでもなるけど今は辛い。
ナイフを構えて、だけど狼の方がまだ速かった。
囲まれない様にと後退り、狭い横穴に逃げ込もうとした所を回り込まれてしまう。
眼の前の狼を睨みつけながら、後ろにも気を配る。
ジリジリと間合いが詰められていく。明確な敵意に息が詰まりそうだった。
動けない。動いた瞬間に、逆の方から襲われる。
どうにか早めに一匹は倒したいのに、焦りばかりが募っていた。
甘い匂いに呼び起こされた性感が、身体の深くにまで根を張っている。
狼たちの気配を探ろうと、集中すればする程、自分の中の官能にも気づいてしまい、そのもどかしさに身体が揺れる。
早く来い、早く来い…。
焦れる。このまま睨み合いを続けてたら、確実に僕の方が持たなくなる。
致命的な隙きを晒してしまう その前に、なんとか飛び出してきた一匹を倒して、それから、後は…。
ギリと歯噛みをする。焦燥に一瞬だけ気が逸れる。
その隙きを、狼たちは見逃さなかった。
目の前の一匹が猛然と駆け出し、僕に向かって飛びかかってきた。
出遅れた、だけど。
ナイフを構え、動きを合わせる。飛びかかってくる狼の動線に、ナイフの軌跡を合わせて振り抜いた瞬間に「ガウッ!」と、背中から響く声に、一瞬体が固まってしまった。
「っ! あ…くそっ、浅いっ」
忘れてた。目の前の事に集中しすぎて、後ろの狼から気がそれてしまった。それどころか、一瞬体が固まったせいでズレたナイフの軌道は、飛びかかってきた狼の毛皮を浅く切り裂くに留まってしまう。
だけど、まだっ…。
飛びかかってきた狼を一旦やり過ごし、構え直したナイフを直ぐ様振り抜く。後ろを見ないまま背後を切りつけようとして、いつもなら馴れた動作も今はその一瞬が致命的だった。
まるで、初めて狩りに出た時の様なぎこちなさ。
練習した動作を そのままなぞるような単調な動きは、簡単に狼に躱されると、逆にその爪が僕の方へと伸びてくる。
飛び退こうとして、出来なくて。もたついた足が絡まると、飛びかかってきた狼に押し倒されてしまっていた。
背中を地面に打ち付けて、一瞬だけ意識が飛んでしまう。
次に目が覚めた時には、狼にマウントを取られそうになっていた。
「こんのっ、どけってっ!」
強引に身体を跳ね上げ、横腹に回し蹴りを叩き込む。不意に蹴飛ばされた狼は、悲鳴を上げて、僕の上から転げ落ちていく。
まずは一匹。
安心する間もなく、すぐにも立ち上がろうと、地面に手を付いた瞬間だった。
「あ…」
間抜けな声だ。驚いている暇があれば、すぐに身を守るべきだった。
頭では分かっていても身体は動かない。絡みつく性感に邪魔をされ、反応が遅れてしまう。
四つん這いの姿勢。両手と、両膝とを地面について、立ち上がろうとした瞬間の不安定な体勢を狙ったように、ガンっと頭を殴りつけられた。
勢いのまま、頬から地面に崩れ落ちる。
痛みと衝撃で、甘ったるく鈍っていた頭が正気に戻った一瞬、咄嗟にナイフを振ろうと指先に力を込めた。
だけど、狼だって馬鹿じゃない。
僕の唯一の武器を奪おうと、手の甲ごと踏みつけられた。
ジリジリと、ナイフを握り込んだ指が、ヤスリで削られていくような痛みに震える。それでも、離すまいと力を込め直した僕の肩に狼の牙が食い込んだ。
「あぎぃっ! いった…この、はな、せ、あっ、た…だめ、ちから…」
痛みと衝撃に力が抜ける。
直接噛まれた訳じゃない。ベストの皮地がなんとか牙を防いでくれてはいても、狼の顎は強く、肉を潰されそうな痛みに腕が痺れた。
指が解け、ナイフが滑る。
ずんっと、重圧が伸し掛ってくる。
狼に肩を抑えられながら、逃げ出そうと暴れている僕の背後に気配が迫る。さっき蹴り飛ばした狼が、唸りを上げて僕の上へと跨ると、背中に、お尻に爪が立つ。
「いっ! やだっ! 止めろっ、離せって…お前たちなんかに、僕の…」
僕の…。口にしようとして、口ごもる。
これから自分がどんな目に合うかなんて、嫌でも想像が付いていた。
食べられる? なんてある訳がない。
暗がりでまぐわっていた2匹の狼。今度はその対象が僕に移るだけだ。
狼たちにとってはいい獲物だろう。オス同士でしか解消出来なかった所に、ノコノコとメスがやってきたんだ。多少の種族の違いなんて考慮に入る筈がない。
「ひっ…。や、やだ…やめ、そんなの…っ!」
顔を上げようとして頭を押さえつけられる。
そのまま、狼が僕の上へと跨ってくると、いよいよとそれが視界に入ってしまった。
分厚い毛皮を割くように、飛び出た赤黒い肉の塊。太くて、大きくて、震えるその先端からは、ダラダラと白く濁った汁が流れ出している。
甘い、甘い、花の香りの中に、精の匂いが混ざり込む。
オスの匂い。精液の強い匂いが鼻から流れ込み、それと意識した途端、全身が発情したみたいに熱くなってしまう。
「ちがっ…僕、こんなのと、エッチしたい訳なんか…」
首を振って、顔を反らして、なんとか狼の肉棒から逃げようとする。
赤黒い肉の塊。熱くて太い肉棒が頬を叩き、唇をかすめていく。
今にも口の中に入ってくるんじゃないか。
想像しただけで、怖気を感じるのと同時に、得体の知れない熱が体の奥から生まれてきた。
興奮しちゃってる。
花の匂いのせいだって分かっていても、頬に擦り付けられる肉棒の熱が、その先から漂う精の匂いに、どうしても身体を熱くさせられてしまう。
頭を押さえつけていた狼の前足に力が籠もり、肩を抱き寄せるように爪が掛かる。
ズイっと腰が近づいてきた。
コツでも掴んだのか。頬を叩いていた肉棒が、次第に唇を捉え始めていた。精液の流れる先端を僕の唇へ、その中に潜り込ませようと、グリグリと押し付けてくる。
「んっ、ふぅっ…んんぅぅぅっ…!? ゃ、めっ…んっ」
唇に狼の精液が塗りたくられていた。なんとか唇を引き結び、侵入だけは拒んでみても、固く熱り立った肉棒の先端が上唇に出来た隙間に引っ掛かると、簡単に捲くりあげられてしまう。
狼の肉棒にキスをさせられる。
押し付けられた肉棒が歯茎にまで届き、それが横に逸れると、頬の裏側に肉棒が入り込んできた。
グチュグチュと音が鳴り、唾液と、肉棒の先から流れていた精液が混ざり合い、少しずつでも口の中に入ってくる。
ドロドロとして、ネバネバとしていて、獣臭くて、生臭い。
野性味の溢れる精臭とその味は、嫌でも僕の立場を思い知らせてくる。
ただの女の子。ううん、この場に置いてはただのメス。
強いオスに押し倒されて、甘い匂いに唆されて。
身体が興奮すると、それにつられるように肉棒が欲しくもなり、下腹部に生まれた性感が、足の間を熱くさせていた。
そんな時だった。
「きゃっ…! あっ、んぅ、やめっ、そこ…こすっちゃ…あふっ、んっ!!」
不意に飛び出てしまった声に、堪らず口が開く。頬の裏側を犯していてた肉棒が、僕の口の中に入り込むと同時に、甘い痺れに下腹部が震えあがった。
四つん這いの体勢。開いてしまった足を、慌てて閉じようとしても遅かった。
後ろから伸し掛っていた狼の肉棒が、ズボンの上から僕の股間に擦り付けられる。
「ひうっ、んっ、あっ、ちゅっ、ぁっ、んくっ…やめっ…んんぅぅっ!!」
舌の上で暴れる肉棒の感触に目が回る。
口が塞がれて、息苦しくって、意識が遠のきそうになりながらも、股間からの刺激に目が逸らせない。
幸いだったのは、ホットパンツの生地が厚手の物だった事。そして、性欲に狂った狼は、ズボンを破くよりも肉棒への刺激に乱心してる事。
ただ擦り付けられている今のうちなら、それ以上にはならないと。
その事に、少しは安堵して、それが心に隙きを生んでしまった。
ズキンと、痛いほどの刺激に股間を苛まれる。
甘い匂いに高まっていた性感は、強すぎる刺激を生んで、痛みに感じる程の快感を股間から発していた。
もともと獣人は性に奔放な人が多いけど、だからって僕がそうなりたい訳じゃない。ましてこんな、その辺の狼に犯されて快感を感じるなんて、屈辱以外の何でも無かった。
「ぐっ…こ、の…んっ、あっ…ぅぇ、っんぅぅぅっ、けほっ、あっ…」
握りこぶしを作り直し、震える足に力を込めても、やっぱりダメだった。
起き上がろうとした所で爪を立てられ、頭を地面に押さえつけられてしまう。
肩に、背中に、ナイフの切っ先の様な鋭く冷えた痛みを突きつけられ、荒々しい力に体を押さえつけられると抵抗する気が萎んでしまう。
殺される。
理性的に考えればそうだった。
けれど、股間を擦り上げてくる肉棒の刺激がどうにも甘く響くと、ズボンの向こう側に直接触れて欲しくなる。
自分から脱いでしまいたい。
一瞬でも浮かんだ想像を振り払おうとして、でも、甘い花の匂いのせいか、妄想が止められない。狼の熱い肉棒を、女の子の部分で感じたら、それはきっと気持ちがいいと、頭ではなく、身体が欲しがっていた。
口を犯す肉棒から流れる精液の残りでさえも、何処か甘く感じてしまう。
残り香だけでも、こんなに甘いのに。
口の中に出されちゃったら、どんなにだろう。
花の甘い香りと、狼の精の匂い。そして、股間を刺激する確かな快感。
昂ぶった感情が、喉元にまで出かかってしまいそうな中、ふと、それは口の中で大きく膨らみだした。
「んっ!? んっ、だ、めっ…やだ、やめ…っ」
熱さを増して、太さを増して、我慢するみたいに先端から滲んでいた精液の流れが止まる。溜まっている、溜め込んでいる。花の甘い香りが漂う中、濃すぎる程の精の匂いが肉棒を通して伝わってくる。
肉棒を吐き出そうとして首を振る。追い出そうとした舌の動きが、余計に肉棒を刺激しているのさえも気づけ無い。
狼の肉棒が押し込まれる。口の中を深くまで、喉の入り口まで入り込んでくる。
頭を抑えられ、身体が地面に押し付けられる。
腰が突き出され、頬が狼の毛皮に包まれた。
ドクンっと、それは、一瞬の出来事だった。
口の中に溢れ返る精の匂い。ドロドロとした精液が、喉の奥へと直接流し込まれていく。ドクン、ドクンと、肉棒が震える度に、お腹の中に広がる精液に熱いものを感じてしまう。
「んっ、んくっ、ぁっ、ゃっ、だっ、けほっ、んく、んぅぅぅ…ぅぇっ」
飲みたくない。飲みたくないのに。飲まないと、喉が塞さがれる。
無理にでも喉を鳴らし、けれども咳き込んで、逆流した精液に鼻の奥を刺激される。
口の中にまで溢れかえってきた精液に舌が浸る。歯の隙間を通して、頬の裏側にまでドロドロと流れ込んでくると、あんなに強かった花の香りが、精液の匂いに追い出されていった。
それで、少しは性感が遠のけばよかったのに。
今度は、強烈なまでに広がったオスの匂いに、本能的な部分が引きずり出されしまう。ブルッと背筋が震え上がり、軽い酩酊感に頭が揺れる。お腹の奥から湧き上がってくる官能の響きに欲望が膨らんでいく。
「ん、んくっ、あっ、はっ、かはっ、けほっ…んぅぅぅっ!!」
口の中に出されながら、股間への刺激に目眩がした。
痛いほどの快感に腰が震え、溢れる愛液に興奮を自覚させられる。
ズボンの中はぐちゃぐちゃだった。
濡れた下着はシワを作り、ヒダになり、肉棒の動きに引きずられて、僕の割れ目を刺激してくる。張り付いた下着が敏感な肌の上を掻き乱すと、まるで、無数の指先に割れ目を弄られるような気がしてくる。
知りもしない感覚に、でも、それがどうしても気持ちがいい。
ドクンっと、肉棒が震え上がった。
肌着の作るヒダが伸ばされるほどの衝撃が、ズボンの上から股間をズリ上げた。
股間から、お腹にまで、跳ね上がった肉棒から、勢いよく噴き出した性の熱が僕を汚していく。服に染み込みポタポタと、地面にこぼれ落ちていくのを眺めながら、もったいないと、心の何処かで考えてしまう。
「はぁぁぁっ、ぁぁぁぁぁっ、んっ、ふ、ぁ…っ」
声が震える、心が震える。
ダメだ、ダメなんだから。
グラグラとする頭を、ガクガクと震える腰を必死に抑え込む。
いまイッちゃったら、どうにもならなくなる。
狼の肉棒、それを欲しがる自分を認めるわけにはいない。
こんなの、ただの花の匂いのせいだから。獣みたいに、狼たちと同じ所に落ちたくなんかない。早くトレヤくんを助けに行かないと、僕のせいなんだから、このぐらいなんてこと無いんだ。
だから…。
あまりにも細い糸。残った正気を撚り合わせて、なんとか自分を繋ぎ止める。
ドクンッ、ドクンッと、射精が続く。
その勢いが弱くなり、狼たちの気勢が削がれたその瞬間。僕は、残った理性をバネにして指先を弾かせた。
そこにあるナイフを手繰り寄せ、狼の首元へ刃を突き立てる。
握りを返し、傷口を抉り、吹き出す血を顧みないまま、腰を跳ね上げると、後ろから伸し掛ってきていた狼の体を浮き上がらせた。
晒されたお腹。散々僕をイジメてくれた肉棒目掛けて、思いっきり足を蹴り出してやる。急所を蹴り上げられ、動転した狼が体勢を立て直す前に、今度は僕が彼の上に足を落とす番。
グサリと…。
やってしまえば呆気ない。
突き入れたナイフの刃が肉を裂き、嫌な感触だけが指に伝う。
「はぁっ…はぁっ…はぁぁぁぁっ。んっ、ぺっ…ちょっと、飲んじゃった」
ちょっと所じゃないけれど、変な熱がお腹に溜まってる感じもするけれど。
そんな大したことじゃないと、自分に言い聞かせるように軽口を叩く。
正直にヤバかった。
気が抜けた途端に、その場にへたり込んでしまう。
後少し、僕が弱かったりしたら。この花の香りが強かったりしたら。
どうしても考えてしまう。狼に犯される自分の姿が、鮮明に想像できてしまう事に心が冷えた。
けど、それと同時に、どうしようもない官能の響きが熱を持ち、僕の身体を色めき立たせてしまうのも確かだった。
エッチしたい。
せめて、独りででも解消しないと何も手につかない。
これからを考える前に自慰が頭をよぎる。気を抜いた瞬間に、女の子の部分を弄ってしまいそうになる指先をどうにか抑え込む。
「しっかりして、しっかりしろよ、僕。まだ、だめなの、分かるよね?」
性感帯に触れそうになった指先を咥え、血が滲むほどに歯を立てた。
痛い。痛いけど、気持ちいい、じゃあ…ダメだから。
「っ!!」思い切って力を込めると、性の熱が引っ込むほどの痛みに体が痺れた。
「これで…少しは、大丈夫…。僕は、まだ…平気だから」
薬を塗って、布を巻いて傷口を塞ぐ。
とりあえず、狼たちは居なくなったんだから。後はトレヤくんに追いつくだけと思えば、少しだけ気は楽になっていた。