※この作品はR-18です。

ケモミミの女の子+異種姦ときどき おねショタ   作:霧里

4 / 17
迷子の男の子

「はぁ…バカか、俺は」

 

呟くと同時に、トレヤの足は止まっていた。

 

気が抜けたと言えばそう。執拗なまでに追いかけて来ていた狼たちの気配が薄れ、ようやくと目先の危険がなくなれば誰だってそうなる。

 

洞窟の壁に背を預け、崩れるように腰を下ろすと、思い返すのは今朝の出来事だった。

 

「それじゃ、留守番はお願いね?」

 

そういって、いつものように柔らかい笑顔を浮かべ、森の中へ入っていくコハナを見送った。

 

いつも通りといえばそう。狩人が生業のコハナが森に入るのは当たり前で、俺だって相手が狼とかなら、別に心配なんてしなかった。

 

デカいクマが出た。

 

村の大人が森から逃げ帰ってきたのはその前日。

「じゃあ、僕がちょっと見てくるよ」って、あんまりに軽い調子で言うもんだから、皆コハナに任せっきりにしてしまったんだ。

 

一人で行かせたくなんかなかった。

 

コハナ一人に無茶をさせようとする大人たちが信じられなかった。

 

「一緒に行く」と、せめて俺だけでもコハナの力になりたくて、堪らず口にした言葉は、当然コハナに窘められてしまう。

 

「僕が留守の間は、トレヤくんがお姉さんを守らないと」

 

そんな風に言われてしまったら、流石に何も言い返せない。

 

渋々と頷いた振りをしたまではいいものの。

居ても立っても居られなくなった俺は、結局 家から抜け出し、コハナの後を追って森の中へと入ってしまった。

 

「くそっ…」

 

ぽんっと、肩に乗せられた手の平の感触を思い出す。

柔らかくて、温かくて、それを追いかけた結果がこれだ。

 

森に入って少しもしない内に、出くわした狼たちに追いかけ回された。

なんでこんな村の近くにって、中途半端な知識が仇になる。

森は危険な所だからって、散々教えられていたのも忘れて吐いた悪態は、なによりも迂闊な自分に向けられたものだった。

 

命からがら洞窟に飛び込んで、それでも追いかけてくる狼たちを振り切って…。

 

まぁ、なんとか生きているだけでも儲けものかも知れないが、生きて家に帰れるかは分からない。残った問題の重たさに、どうしても気が滅入りそうだった。

 

まずは少しでも体を休めよう。それからだ、来た道を辿るか、先に進むのかを考えるのかは。

 

落ち着いて。コハナに教えてもらった事全部を思い出しながら、なんとか自力で帰り着かないと、どんな顔して会ったら良いのか分からない。

 

それ以前に、もう一度会えるかな…。

 

「っ! ダメだろ俺。しっかりしろよっ…」

 

弱気を叱りつけるため、後頭部を洞窟の壁へと打ち付けた。

ガンっと、瞼の裏に火花が散り、思わぬ痛みに目が覚める。

 

「いってぇっ…」

 

加減を間違えた。

 

つぅっと、血の流れる嫌な熱が首筋を流れていく。

心が曇る。込み上げてきた何かが涙に代わり、今にも溢れそうだった。

泣いたらダメだ。泣いたらダメだ。今泣いてしまったら、立ち上がれなくなる。

 

そんな、弱気が聞かせた幻聴だったんだろうか?

 

「トレヤくんっ!」

 

洞窟に響く優しい声。

 

いつもいつもそうやって、名前を呼ばれて嬉しいはずなのに、俺のことを子供扱いしてくるような声音が、いつからか嫌になっていた。

 

でも、その声を聞いてしまった途端に、自分がまだ子供だった事を思い知らされる。

 

「へ…。ハナ、お姉ちゃん…」

 

助けになんて来て欲しくなかった。

余計な心配を掛けたくなかった。

こんな格好悪い自分の姿を見られたくもなかった。

 

なのに…。

 

薄暗い洞窟の奥から駆け寄ってくる見慣れた姿。

何か言おうとして何も言えなくなり、安心に胸を満たされると、目元が緩んでいくのを抑えられなくなる。

 

「あ、ぅ…ひぐっ。俺、おれ…ごめ、ごめんなさい…っ」

「良かったっ。無事で…っ」

 

抱きしめられて、背中に手を回される。コハナの温もりに全身を包まれた瞬間、必死で耐えていたものが途切れると、そのまま声を上げて泣いていた。

 

一通り、一頻り。

 

コハナの服が自分の涙で濡れるほど泣き腫らしてしまった。

それも、ようやく落ち着いてくると、今の自分の状態が、急に恥ずかしくなってくる。

 

好きな人の胸の中で、どうしようもなく泣いてしまった。

格好がつかない。今更つけられるものもないけれど、どうしたってバツは悪い。

 

「あの、ハナ。もう、大丈夫だから…ごめん」

 

名残惜しさを振り切って、なんとか体を離そうとすると、逆に、強い力で引き留められてしまう。

 

「別に照れなくたって。もう少し休んでよ?」

「照れてなんか。俺は、もう平気だし。ハナが来なくたって…別に」

「そう? 僕はちょっと疲れたよ。君の事、散々探し回ったし」

「うっ…。それは、ごめん…」

「いいよ。トレヤくんが無事ならさ」

 

罪悪感からか、そう言われてしまうと何も言い返せない。

ただ、されるがままに抱きしめられていると、コハナの胸の内から甘い匂いがする事に気づいた。

 

なんだろう?

 

どうしてか、落ち着かなくなる。

 

コハナに抱きしめられて、恥ずかしい事は恥ずかしい。

ドキドキするし、モヤモヤともさせられるその感覚が、急に何倍にも膨れ上がり、どうして良いか分からなくなる。

 

目の前にコハナの身体がある。その腕に抱きしめられている。

 

細い首、白い肌。

 

緩んでいた胸元から続く胸の膨らみに、視線が吸い寄せられてしまう。

 

触れてみたいと思った。

 

子供の、悪戯心とはまた違う衝動が俺の胸を逸らせる。

 

抱きしめられているのを良いことに。その肌が目の前に晒されているのを良いことに。浮かんだ汗の一滴に誘われるように、知らず知らず、俺はコハナの首筋に唇を寄せていってしまう。

 

「んっ…」はにかんだ声が甘く響き、肩が寄る。

くすぐったさから逃げる様な、いじらしい仕草にドキドキが強くなった。

 

「もう…。くすぐったいよ、トレヤくん。変な悪戯して、どうしたの?」

 

コハナの問いかけに、ぼやけていた意識がハッと戻る。

 

気づけば何をしていたのかもさえ曖昧で、唇に残った温もりがイヤに熱く感じてしまう。

 

「え、あ、俺…今、何やって…」

 

責められる事もなかった。

 

そもそもこんな悪戯で怒るような奴でもないけど、むしろそっちの方が気が楽だったかもしれない。

 

いつもとは違う反応だった。笑うでも、からかわれるでもない。

ただ、照れたように頬を染め、隠すように胸元を正された。

 

胸がドキドキとした。

 

コハナの見せる女の子の仕草に、堪らないものが込み上げてくる。

そんなんじゃまるで、俺のことを男として見ているみたいじゃないか。

 

子供扱いするでもない。まして、じゃれつく子犬を嗜める風でもなかった。

肌を見られて、触れられて。異性の前でするような当然の照れ隠しは、俺に期待の感情を抱かせる。

 

「ねぇ、もしかして…さ? なんか、甘い匂いしてる?」

「え? あ、うん…ハナからするのかなって、おもったけど…」

 

言われて気づく。

 

さっきまで必死だったから気づかなかったんだろう。

 

洞窟を満たす甘い匂い。

 

お菓子の焼けるような匂いじゃなくて、花の香りの様な、もっと生々しい匂い。

息を吸い込み、それが胸を満たすほどに、モヤモヤとした感情が強くなる。

目の前の女の子が、いつも可愛いコハナが、いつにも増して魅力的に見えてきて、視線は吸い寄せられるのに、その顔を直視できなかった。

 

「あははっ。そっか、そうなんだ。まぁ、トレヤくんでも分かるくらいって相当きつい匂いなんだね、これ。僕なんかもう、鼻が効かなくてさ…」

 

しどろもどろに答えを返すと、困ったようにコハナが笑う。

 

隠すように胸元を押さえながらも、コハナの首筋からは、1つ2つと、珠の汗が滲んでいた。「はぁ…」と熱っぽい吐息が甘く響き、伺うように俺を盗み見る視線が、どうしてか、くすぐったく感じてしまう。

 

なんか変だ。頭がクラクラしてくる。

 

コハナの声に、その仕草に甘いものを感じて、狼たちから逃げ惑っていた時以上に心臓が暴れだす。

 

もどかしい。

 

不安を感じるほどの焦燥感が胸を打つ。

いっそ、暴れてみれば楽になれるんじゃないかって、ざわついた胸の内に乱暴な感情さえ灯っていた。

 

「ハナ。この匂いって…なに? なんか、おれ…」

「分かんないけど。これ、エッチな気分になるやつみたいで…さ」

「えっ…ちって。なんだよ、それ…そんなの」

「したことない? 一人でさ? こう…なんか、するでしょ?」

「しないよっ、そんなっ…だって、それは…」

 

好きな人とする事だって…言えたら良かった。

 

けど、そうじゃない。ただ、出来なかっただけ。

コハナに対する感情を、そういう目で見たくなかった。

 

一度でもそう見てしまうと我慢が効かなくなりそうで、現に今だってどうしようもなくなっている自分に気づいてしまう。

 

小さい頃から好きだったんだ。

 

だけど、このドキドキがそうじゃないと気づいたのはいつからだったのか。

 

顔を会わせただけで嬉しくなり、そのくせ視線が会うだけで恥ずかしくなる。それに気づいた時にはもう、素直な言葉を向けられなくなっていた。

 

コハナお姉ちゃんって、甘えていた頃の自分をぶん殴りたい。

気を引きたくて無茶をして、怒られてるのに構って貰えるのが嬉しくて。

 

挙げ句、狼に追いかけ回されて、こんな洞窟の奥にまで転がり込んで。

 

それでも懲りないものなのか。

 

コハナが探しに来てくれた事、二人っきりなれた事が嬉しくて、どうしても心が浮ついてしまう。

 

もしかしたら、今なら、良いんじゃないか?

 

コハナの身体に触ってみたい。

 

ドキドキする。エッチな気分にさせられるこの甘い匂いのせいにして、抱きしめられるよりも、抱きしめてみたい。

 

「ねぇ、トレヤくん。僕のこと…好き?」

「っ…」

 

告白じみた問いかけは、それ以上の誘惑をもって俺の頭を揺らしていた。

 

これからエッチな事をする。しても良いよって。

遠回しに許された様な気がして、勝手な想像が頭の中を駆け巡る。

 

コハナの頬が赤い。

 

瞳が熱っぽく潤んでいる。

 

それは、洞窟に漂う匂いのせいなのか。

それとも、これが女の子の匂いっていうんだろうか。

 

気づけば、体温を感じる程の距離で見つめ合っていた。

お互いの吐息が頬にかかり、それは何とも甘い匂いを運んでくる。

 

「ぼ、僕もさ…はぁっ。キツイ、んだよね。トレヤくんの事みつけた、やった、よかったって…安心して、抱きしめてたらさぁ。なんか、すっごい、男の子の匂いするし。分かる? 僕、今…ずっとさ? 頭の中ぽやってしててさ。僕だって、君のことで一杯なんだよ? 我慢してたんだ…トレヤくん見つけなきゃって。だって、ハナってさ…最近はカッコつけて呼ぶけど、トレヤくん、いつもコハナ姉ちゃんって甘えてくれてたし。んっ、はぁ…あ、嫌いなんかじゃないないよね? 僕のこと…さ? 恥ずかしいのは分かるんだけど。とは、おもうんだけど…。僕の事助けるっておもってさ…。こんなお姉ちゃんで、悪いんだけど、ね?」

 

興奮で上気した頬。羞恥に染まる視線で見つめられるともうだめだった。

 

喋りながらも、熱い吐息が繰り返し頬に掛かる。

 

言い訳を口にしながらも、俺の様子を伺ってくる。

罪悪感を口にしながらも、興奮が抑えられていない。

 

いつも明るくて、いつも優しくて、でもいつもの柔らかい笑顔はそこにはなくて。

熱っぽい吐息、潤んだ瞳。風邪を引いた時みたいに顔は赤く、俺を抱きしめる指先からは、寂しさと、期待のような感情が伝わってくる。

 

「嫌いなわけっ!」

 

それを跳ね除けるなんて出来なかった。

 

思わず大きな声を出したことも気づかない。

 

「だって、俺…今日はっ、ハナのこと助けてやろうって、こっそり後を着けて、なのに、結局…ごめん。俺が馬鹿だったから、ハナまで」

 

驚いて、ビクッと小さくなるコハナの肩を掴まえると「だって、だって」と、まとまりのない言葉ばかりが口をつく。

 

こんな事言いたいんじゃないのに。

 

もっと、こう、なにかコハナを安心させてやれる言葉があるはずなのに。

 

それでも「いいよ、いいんだよ」と、俺を抱き返してくれたコハナの手からは、さっきまであった不安の色が無くなっていた。

 

「いいよ。怒ってないから。僕が心配だったんだよね? 頑張ろうって、ちょっと失敗しちゃったけどさ。嬉しかったよ。だから、ほら、おいで…」

 

招かれるままに抱きしめられて、再び胸の内に収められる。

触れ合う肌。自分にはない柔らかさに包まれると、安心とは違う別の熱が、体の奥から生まれるのを感じていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。