「・・・・・・男日照りか、白いの」
憎まれ口を叩いて肩を掴んだのはアルトリア・オルタであった。
「い、いえ、そんなことは」
「成長はしても男には飢えていたようだな。そんな様に成り果てるとは、貴様は本当に私の可能性か」
弱みを見せたランサー・アルトリアにここぞとばかりに雑言を投げかけるのは、日頃の姉面の仕返しだろうが、それだけではなさそうだった。
(まあ、自分とはあっさりしたキスだったのに、彼女とはあんな濃厚なのをキメたんだ。そりゃ怒りもするよねえ)
傍らのダ・ヴィンチは全て把握している。というより、敢えて発案者のアルトリア・オルタの妬心を煽ってエスカレートさせるのが目的なのだ。
冷静だが負けず嫌いなアルトリアである。こうして互いに煽ってやれば大胆な行動も取れるようになる。
いい具合に白熱したところを見計らって、
「オルトリアくん、文句を言うのなら筋違いだぜ? なんせそのでっかいのはマスターに嬲られていただけなんだ。露骨に差を見せつけたマスターにこそ罪科は向けられるべきじゃないのかな?」
「む?」
確かに、とアルトリア・オルタは立香を見やる。
「ふん、小知恵だな、ダ・ヴィンチ。だが乗ってやろう。私とて女だ。こうまで手筈を整えられて踏ん切りがつかぬほど臆病者でもない。
さあそこに寝るがいい、立香。貴様は自分のしたことに苛まれるのだ」
「待った待った。その前に解さなきゃ。せっかくのハーレムだ。急いじゃ勿体ない。そもそもの目的を見誤ったら、それこそ台無しだ」
てきぱきとダ・ヴィンチは手配りをする。
やがて、その布陣は整った。
立香は寝台の端に腰を下ろし、両足を投げ出し、その両足をシェヘラザードとランサー・アルトリアが抱えている。
両脇にアルトリア・オルタと荊軻が座り、背後にダ・ヴィンチが座った。
まず両足の二人は足の先を自らの豊満な乳房の谷間に抱き込み、冷えぬよう温めながらふくらはぎを揉んでいる。
トレーニングの後なだけに、ひどく心地よかった。視線を下ろせば、乳房に埋没した自分の足が見える。
一夜を共にすれば全ての財を吐きだそうと惜しくない極上の女性二人の、その魅力の詰まった乳房を足裏で感じているという事実は、立香の優越感と背徳感をひどく刺激する。
だがそれに構ってばかりも居られない。
両脇に座る華奢な二人は、立香の手を取って自身の尻に添え、脇からきゅっと抱きついて立香の乳首に舌を這わせている。
「ちゅ、ちゅ、ちゅる、る」
荊軻は小鳥が啄むように、いたずらな、嬲るような、少しくすぐったいくらいに、
「じゅるる、る、れる、れろれろ」
ぴんと固く屹立した乳首に容赦なく吸い付き、舌の表裏も使って舐め回していくのはアルトリア・オルタ。
「うあっ」
思わず声が漏れる。
胸に広がった甘い疼きが脳に電流のように駆け巡り、思わず腰が動いた。連動して足もびくりと動くのだが、谷間から逃すまいと抱き込んでいる二人の乳房に足の指を押し込む形になり、跳ね返ってくる柔らかい感触にぞくりと背筋が震えた。
その背筋には、ダ・ヴィンチが下着を外した乳房を押し付け、首筋を撫でながら耳を舐めていた。
「ふふ、王様気分だろう? きっとどんな王様だって、ここまでのことはしたことないよ」
耳元で囁かれると腰がぞくりとする。
「待って、ねえ待って! これ、よすぎる!」
思わず声をあげるが、それを聞き入れる筈もない。
「ああ、随分敏感なのだね。さては夜な夜な、ここを一人寂しく弄って慰めていたね?」
乳首の感触を楽しむように、舌先でちろちろと舐りながら荊軻が言った。
「ち、ちがっ、そんなこと・・・・・・」
「ふん、違うものか。如何にダ・ヴィンチが香を焚いているとはいえ、初めてでここまで感度が良いわけがない。その指で摘まんで転がしていたのだろうに」
図星である。立香はあまりの羞恥に口を噤んだ。
「いいえ、我が王。なにも恥ずかしがることはありません。男性でも女性でも性感帯は同じ。開発さえすれば同じように悦ぶことが出来るのです。
寧ろ誰に諭されることなく目をつけた王は賢いと見るべきです。人の肉体は、自分で思うより余程、楽しみ甲斐のあるものなのですよ」
太ももに指を這わせながら、シェヘラザードは言う。
「く、うう」
思わず腰をよじらせる。
つらいのは、ここまで入念且つ執拗に愛撫されているのに、最も刺激の欲する下腹部に一切触れられないことである。
「あの、ダ・ヴィンチ殿。主の下着が濡れています。これは、よくないことなのでは?」
心配そうに手を伸ばしてくるランサー・アルトリア。彼女は男の生理など判らない。怪我をした動物を撫でるような仕草で、下着の膨らんだ部分に振れる。
不意の刺激に思わず腰が跳ねた。
「あ!」
思わず手を引いてしまう。
「はは、大丈夫さ。それはそうなるものだからね。でもまあ、確かにそれだけ雫が漏れてしまうんじゃ、下着を替えないといけない。それにそろそろ限界だろう。
二人とも、脱がせてあげたまえ」
その言葉を拒んだり羞恥を感じたりする余裕は、立香にはない。寧ろ早く解放し、触れてほしい。
無意識に腰を浮かせ、シェヘラザードとランサー・アルトリアは恭しい手つきで立香の下着を取った。
ぴん、と天井を向いた男性器が表れた。
「ほう」
感嘆の吐息を漏らしたのは両脇のアルトリア・オルタと荊軻である。
長さは十三センチ程度であろうか。太さもある。色素沈着の見られない初々しく瑞々しい色合いでそそり立ち、先端から雫を垂らして幹を伝っている。
先端の真っ赤な亀頭がひくひくと震えている。目にした四人が、ふと胸を疼かせてしまうほど愛らしく、同時に逞しい逸物であった。
「君は随分勿体ないことが好きのようだ。処女も人妻も胸をときめかせてしまいそうな代物を股座にぶら下げているくせに、こんなにもぴっちりした下着で隠してしまうとは」
脱がせられた立香のボクサーパンツを受け取って、荊軻は臭いを嗅いだ。
不思議と卑しさも厭らしさも感じない仕草だった。下品とすら思わないのは、荊軻の爽やかな人柄故であろう。
「良い香気だ。酒に似る。この香りと味に、しばし世から浮かぶのは女に生まれた幸運だ」
思わず立香のそれに手を伸ばしかけたのは、荊軻だけではない。アルトリア・オルタも興味津々といった様子で指を絡めそうになったが、シェヘラザードが制止した。
「お待ちください、皆さま。我が王は嬲られるのがお気に召したご様子ですので、もう少し」
焦らせ、と言った。
両耳を舐めしゃぶるダ・ヴィンチが目を輝かせながら、
「それはいい。男も女も、焦らされると昂るものだ。被虐に悦ぶ者は総じて智者だ。予想される更なる悦びまで、ゆっくりと登る階段、その道程さえも楽しめる賢しさがあるのだよ。立香くんはその性質のようだし、まあゆっくりと、浸るような快楽に溺れてもらおうじゃないか」
そうと決まると、この英霊たちは容赦がない。
「んっ! んん、ん!」
生真面目なアルトリア二人は方針さえ固まってしまえば余念がない。アルトリア・オルタは舌の先端で、触れるか触れないかという具合にちろちろと乳首を舐め、そうかと思うと唇で甘噛みしながら吸ってくる。
ランサー・アルトリアも愛しげに主の腕を胸の中に挟み、太股を揉み解して、力の入ってしまう足を脱力させてしまう。手の甲が、時折睾丸に触れる。シェヘラザードを窺うとこくりと頷いたので、指先で一度だけなぞるように撫でてみる。
この二人の手管だけでも、全身から脳内へ叩き込まれる快感への抵抗が出来なくなるほど蕩けてしまうのに、荊軻やダ・ヴィンチは本来の性格の余裕で、巧みに立香を苛んでくる。
「恥ずかしい子だね、耳と乳首であんなにヒクつかせて。可愛いよ」
わざと立香の羞恥心をかき混ぜる。
「ああ、もっと強く掴んでおくれ。私の尻はどうだ? 遠慮しなくていい。跡が残るくらい掴んでも構わないよ」
立香が指に込める力に合わせて愛撫の強弱を変えてくる。
「・・・・・・」
そんな、全員の手管と立香の反応を見極めて、シェヘラザードは半透明の薄布の奥、自身の恥部を隠す黒い紐状の下着を脱ぎ、抱えていた立香の足を下ろし、足の指の先を、そこに押し当てた。
「あ・・・・・・」
思わず吐息が漏れた。シェヘラザードのそこも、既に熱くなっている。足の指先が湿った。
「えっ!」
あまりに予想外の感触に、自身に襲い来る快感の波さえ霞むような驚きに目を見張ったのは立香である。
「しぇ、シェヘラザードさん!?」
声が裏返っている。
動揺する立香を優しく見上げながら、シェヘラザードは言った。
「お手透きの慰めに、私の卑しい場所をお楽しみいただければと。どうぞ指を動かして感触など、お楽しみください。勿論、我が王のお好きな乳房も忘れません」
そう言うなり、立香の足を抱いて脛を乳房で包む。
童貞の立香にとって、女性器は憧れである。欲求も好奇心も、童貞特有の興味で溢れている。
それを、シェヘラザードほどの女がなんという粗雑さで捧げてくるものか。しかもこの女は自分の価値が判らないのではない。判っていて、立香のためにシェヘラザードほどの女のそこを葡萄を踏み潰すような粗雑さで捧げているのだ。
思わず眩むほどの優越感に酔った。
試しに親指と人差し指で膣口を挟むようになぞると、
「あ、ん、んん、ふ、う、んん」
蠱惑的に喘いだ。半分ほど、主のための演技ではある。
立香は全身の甘い快楽も忘れて、足に意識が集中した。そのことに没頭した。
シェヘラザードも立香の優越感と嗜虐心をよく引き出すよう、心得た喘ぎ方をする。閨房に長けたシェヘラザードだけがなし得るおもねりであろう。
「・・・・・・」
不満なのはダ・ヴィンチを除く三人である。
「ふん、やはり貴様も男だな。女のそこへは、なににしても触れたいと見える」
不満げな様子を隠しもせずアルトリア・オルタは鼻を鳴らし、尻を触らせていた腕を掴んで、愛らしい下着の中に突っ込ませた。
熱く湿った女性器の感触が、右手に広がった。
「うあ・・・・・・」
呻いたのは立香である。指先で触れたのは充血した小陰唇で、くにくにと柔らかい。それが充分な湿り気を持って立香の指を迎え入れ、指の触れた部分が口づけするようにヒクついた。
足先よりも神経の発達した手だからこその感動である。
「オルタ・・・・・・」
「か、顔を見るな、馬鹿者」
優しく指先で撫でてみると、びくりびくりと体が反応して一瞬腰が引く。さすがのアルトリア・オルタでも、この様を直視されるのは恥ずかしい。
「そっちは優しくしてあげなさい。私のは少し乱暴でも構わない」
耳元の囁きの後、左手が荊軻の女性器に導かれた。
「さあ、指をいれてごらん」
言われた通り、中指を差し込む。ぬぷりと、容易に飲み込んだ。
「抵抗がないから驚いたかい? それはそうだろう。君のそれを飲み込むための穴だ。指くらい、物足りないくらいだ」
ちらり、と立香の性器を見やる。
荊軻の言葉に、射精しかねないほど反応して暴れている。
「ん、んは、あ、そう、好い調子だ。充分濡れているから、少しくらい乱暴でもいい。君はいま、誰よりも偉いんだ。壊すくらいの気持ちでいきなさい」
「ふ、ん、んん、く、ふ、んふ、な、生意気にも思いやる。わ、私とて指を受け入れるくらいとうに準備は出来ている。二本でも余裕なところだ」
確かにオルタの女性器は既に糸を引くほど濡れそぼっており、膣口も口を開けている。指を二本どころか、立香の性器も飲み込むだろうが、言葉の端々と抑揚に緊張と躊躇がある。
それが、立香の嗜虐心をくすぐり、指を滑らせて陰核をなぞった。
「んふう!」
びくん、とひときわ大きくオルタの華奢な体が跳ねた。
構わず、包皮越しにビー玉を転がすように愛撫した。
「き、きさ、まぁ、あっ!」
反応が好いと、男は子供に戻る。童心に帰った熱心さで、立香はオルタのクリトリスを転がし、摘まむ。そのうち、オルタは身を震わせて絶頂した。
「ふう! ん、んん! ん! ん、く・・・・・・う、ふ、うう」
体が何度も跳ねる。制止するように立香の腕を両手で抱き、波が引くのを乙女の気持ちで待った。
やがて、呼吸が戻り、立香を睨んだ。
「や、やってくれる。貴様も一人前に男か。ふん、手管としては稚拙だが、好い反撃だった」
「下手だった?」
不安げにオルタを見る立香。この辺りは純朴な少年である。オルタが不快だったらという気遣いと不安だけが表情にあった。
「でも、感じてたように見えたけど・・・・・・」
「・・・・・・たわけ。貴様の指なら下手でも構わぬということだ。女の口から言わせるな」
紅潮した頬を隠すように、オルタは膝を進めた。
立香の胸に舌を這わせるように腰を引いた体勢では、腕を突っ張って指を伸ばさなければならず、それも刺激に反応して無意識に腰を引いてしまうと届かなくなる。
腕を抱き込んで背筋を伸ばし、耳元に口をつけた。
「代わるぞ、ダ・ヴィンチ」
「オーケー。荊軻くんも同じようにしてあげたまえ。私はちょっと準備をするよ」
ダ・ヴィンチが身を離し、寝台を降りる。
その行く先を反射的に目で追おうとしたが、両耳を舐められてその余裕を失った。
「うあ」
二人とも熱心である。耳全体を口に含んで甘噛みし、耳輪を舐め上げ、耳孔付近を舐め回す。
性器や性感帯を直接刺激されるのとはまた別種の快感である。背筋に走った甘い電流は断続的で、腰に伝う度に体全体がびくりと跳ねる。
熱心さは舌使いだけではない。二人とも唾液でべとべとにした乳首を指で転がしている。
「・・・・・・」
取り残されたのはランサー・アルトリアである。
男女の閨を幼い知識で朧げに想像するくらいしか察しのつかないランサー・アルトリアは、こういう時どうすれば良いのか見当もつかない。
傍らを通り過ぎたダ・ヴィンチに訊こうかと思ったが、ふと視線が止まった。
「・・・・・・」
身を寄せる。
誰にも構ってもらえず、寂しさを主張するように跳ね回る男性器が、今の自分と重なってひどく可哀想に見えた。
だがどうすべきか判らない。この愛しい主の最も敏感な部分をどう愛してやれば主が悦ぶのか、察しがつかない。
「失礼します、大きい方のアルトリア様」
ふと後ろから声が掛かり、気づいた時にはドレスの胸元を寛がせられていた。支えを失った豊満な乳房が揺れて露出した。
「挟んで差し上げてください」
言われた通り、ランサー・アルトリアは乳房の谷間に、主のそれを仕舞った。
「うお!?」
驚いたのは立香である。上半身の愛撫の心地よさにうっとりと惚けていたところに、待望の刺激である。それも、なんという柔らかな質感。おそらくはうっすらと掻いた汗であろう。しっとりと吸い付き、高品質の枕の如く柔らかい。
生命であれば誰でも安らがずにはいられない感触が、優しく性器を包んでいる。見やると、平時でも立香の視線を吸いつけて止まない魅惑の乳房が愛し子を抱くようにして自分のを包み込んでいた。
「し、獅子王さん?」
「語り部殿?」
困惑はどちらも同じである。
立香はあの清廉で無垢なランサー・アルトリアがこんな大胆な行動に出ていることが信じられず、ランサー・アルトリアはここからどうすべきか判らない。
シェヘラザードが優しく身を寄せて、
「上下にゆっくりと乳房でさすって差し上げてください。感触が判るように、決して早めず、ゆっくりと」
言われた通り、ランサー・アルトリアは乳房を自分の手で挟み込み、ゆっくりと上下させる。
「うあ・・・・・・」
何度目かのため息がまた漏れた。
焦らしに焦らされた、待望の刺激である。意識のほとんどは男性器に向けられ、全身の感覚とリンクした気分である。
温かい粘質のスライムに全身を浸した心地よさである。
「む・・・・・・」
対抗するのはアルトリア・オルタ。自分の持たざる乳房に立香が翻弄されるのは気に食わない。
乳首を摘まむ指を離し、指先で弾く。
「くっ」
立香の体が跳ねる。勝ち誇って見下ろすと、ランサー・アルトリアが僅かに眉を寄せた。
「主、これは如何でしょう?」
乳房の上下を一旦止め、真っ赤に腫れた亀頭を包み込み、前後に揺する。
「そ、それすごい!」
性器の中でも最も敏感な部位である。あっさりと悲鳴を上げた。
見上げてにやりと微笑したのはランサー・アルトリア。明らかに二人ともが張り合っている。アルトリア共通の負けず嫌いである。
ありがた迷惑なのは立香である。
思わず射精感がこみ上げてきた。
「こら、喧嘩をするものじゃない。誰のための宴か思い出しなさい」
庇うように、荊軻が立香を抱き寄せた。
「あ・・・・・・」
強すぎる快感が離れ、頭を抱かれた心地よさがあった。
「す、すみません、荊軻殿。つい・・・・・・」
「・・・・・・ふん」
実のところ、荊軻はアルトリア・オルタが勧誘したわけではない。
ダ・ヴィンチまでの参加が決まった時、偶然管制室でその模様を聞いていた荊軻が、
「これは、誰かが止め役にならないと拗れるな」
と、察して名乗りを上げたのである。
アルトリア・オルタがランサー・アルトリアを意識しているのは周知の事実である。ランサー・アルトリアは弁えて姉のように譲ってやることが多いが、やはりそこはアルトリアである。時折負けず嫌いが顔を出して冷静さが損なわれる。
そんな時、シェヘラザードは自分から口を出さないだろう。ダ・ヴィンチはどうか。止め役になるかもしれないが、面白がって煽る可能性もある。
ならばと、荊軻は参加した。全て、運命共同体の主のためである。
「怖い方のアルトリア様、どうか加減を忘れずそのままに。大きい方のアルトリア様は、私の申すままに」
一瞬、閨の空気に相応しくない緊迫感を孕んだ空気を戻したのは、シェヘラザードである。
荊軻もすっと離して、耳元に口をつけ、
「乱暴なのが好みならすまなかった。ただね、じっくりと堪能して欲しかったものだから、差し出口を挟んでしまった」
「ううん、ありがとう、荊軻さん」
一旦、冷静になってしまうと快感の波は随分と引いてしまう。
荊軻が再び耳を舐めて乳首を転がすが、反応が鈍くなってしまった。
「黒い騎士王、主は君との接吻が望みだそうだぞ」
「む?」
「さっきの意趣返しだそうだ」
立香は察した。
アルトリア・オルタの手を引いて、強引に唇を重ねた。
「んむ!?」
ランサー・アルトリアにした時と同様、いやそれ以上の熱心さで口内を舐る。アルトリア・オルタの機嫌を取るように、優しく、様子を窺いながら。
アルトリア・オルタも反撃するように舌を絡めてきた。
「んぶ、ず、じゅる、る、るる、れる、じゅ、ずず」
無論、立香の乳首を指で弾くのも忘れない。
「彼女にも同じことをしてあげなさい」
耳元で荊軻が囁き、立香は両手で慎ましいオルタの乳房をまさぐった。
「んん!? ん、んむ、じゅ、ずず、ん、れる、る」
互いが互いの口内と胸を愛撫する。徐々に高まっていく性感は、先ほどの冷静さを昂奮に上書きしていく。
一方、素直に反省しているランサー・アルトリアは、シェヘラザードの言葉通り、ゆったりとした愛撫に切り替える。
「どうぞそのままで。決して離さぬよう」
シェヘラザードは断りを入れて、乳房の間から顔を出した亀頭に舌を這わせた。
「んへっ!?」
驚いて思わず目線をやろうとするが、すぐにアルトリア・オルタに両頬を挟まれて固定された。
「ん、ふ、れ、る、るる、れろろ、へあ、れろれろ」
舌先で溢れ出るカウパーを掬い取り、鈴口に舌の腹を当てながらゆっくりと舐め上げる。
一滴の先走り汁も逃さない舌使いに、立香の胸が熱くなった。
これまで、自慰しかしたことのない立香である。先走りといえば拭き取るものだ。時折亀頭に塗すことはあったが、受け入れて舐め取ってもらうのは当然初めてである。
(こんなに、嬉しいことだったんだ)
受け入れてもらっている。悦んでいることを、喜んでもらっている。そのことが、こんなにも感動するものだとは思わなかった。
その感動が、止めになった。
「ふあ!」
愛らしい声をあげたのはランサー・アルトリアである。鈴口からねっとりとした大量の精液が噴き出した。
焦らされた末の射精だけあって、勢いがある。
亀頭を舐めていたシェヘラザードの顔を白く染め、アルトリアの乳房にも降りかかる。ロケット花火のように、綺麗な軌跡を描いて落ちていく。脈動するたびに吐き出された精液は所有権を主張するようにシェヘラザードの顔とアルトリアの乳房に証拠を浴びせた。
「ご、ごめん」
忘我の瞬間が過ぎ、射精が収まった。眼下では自分の体液に染められた二人。男にとっては征服欲をくすぐる絶景だが、女にとってはどうであろう。たとえ愛した男のものであっても、予告も断りもなく体に浴びせられれば怒るのが当然かもしれない。
だが、二人の反応は違う。
ランサー・アルトリアは呆然としている。
話に聞いた射精というものが自分の胸の中で起こり、人体から白濁色の液体がゼリー状となって吐き出される光景に肝を奪われ、その不思議さに思考が停止している。
シェヘラザードは慣れている。
男の幼稚な征服欲というものを、体で判っている。褐色の肌をべっとりと染め上げた精液の熱さを肌で感じ、媚びた目で立香を見上げ、
「ん・・・・・・」
指でそれを掬い取る。頬を伝うそれを、鼻頭に張り付いたそれを、額から鼻筋へ落ちていくそれをいちいち指で掬い取り、口に含む。
顔じゅうの精液を口に集め終わると、口を大きく開けて見せた。
「こく・・・・・・」
口を閉じ、喉を鳴らし、また口を開けて見せてみる。
これ以上に、射精後の男の満足感と征服欲を満たしてくれるし様はないであろう。
立香も思わず生唾を呑んだ。
満足した様子の立香に安堵して、シェヘラザードはランサー・アルトリアの耳に口を寄せた。
「殿方の精液は、尿道に残ったままになると逆流して炎症を起こします。搾って差し上げてください」
その言葉で、はっと我に返るランサー・アルトリア。
(尿道炎!?)
そうなっては一大事、とアルトリアは胸を更にきつく寄せて上下に扱く。
絞るだけなら手でもよさそうなものだが、まだ思考が止まったままなのであろう。
一方、立香にとっては極上のひと時。射精後の敏感な性器に、強すぎる刺激ではかえってつらい。だがふんわりと柔らかい乳房なら正に夢心地。
「ほ、おう・・・・・・」
熱いため息が漏れた。
鈴口から出損なった精液がにゅるりと、スティック糊を絞るように出てきた。
シェヘラザードはそれを指で掬い、ランサー・アルトリアの口元に持っていく。
「どうぞ、アルトリア様」
疑いもなく、童子のような自然さでちゅるりとそれを吸い取り、
「ん・・・・・・?」
軽く眉根を寄せ、大急ぎで飲み下す。
「な、生臭いのですね。それに苦い・・・・・・。本当にこれが人の体から」
「それも慣れるまでです。我が王が喜びの絶頂に達した証。寧ろ愛おしく思えるものです」
「な、なるほど。主が喜んでくださったのなら、確かに」
射精後の甘い余韻の中、眼下ではそんなやり取りがされている。
立香の頭にはなかなか入ってこない。何故なら弱めた刺激でアルトリア・オルタと荊軻がずっと愛撫しているからだ。
が、それも快感の波が引いていくに従って弱くなり、荊軻がすっと、ティッシュ箱を差し出した。
「君が拭いてあげなさい。優しく、丁寧にね」
普段の立香なら言われる前に気づいた筈だが、人生初めての至福の時のためか、言われてようやくティッシュを抜き出してランサー・アルトリアへ向かう。
「ご、ごめんね、アルトリアさん。べちゃべちゃして気持ち悪いよね」
「い、いいえ、主、お気になさらず」
不器用で微笑ましいやり取りをしながら、立香はアルトリアの乳房を手で支え、優しく拭き取っていく。
(や、やわら・・・・・・)
頭の中でさえ言葉にならない感動であった。
柔らかさは勿論だが、しっとりと汗ばんで、やや熱い。生身の女体にしか持ちえない魅惑の感触が、手にある。頭は茹だったように上気して、拭き取る手がともすれば疎かになった。
「あ・・・・・・」
それでもなんとか、アルトリアの乳房を綺麗にした時には、もう我慢が利かなくなった。
両手でアルトリアの乳房を持ち上げながら、谷間に顔を埋めた。
「主?」
頭上の声も耳に入らない。
なんという魅惑の渓谷だろう。アルトリア・オルタを愛撫した時は、手に実に心地よい絶妙な感触だったが、こちらは優しさというものを固体にしたように柔らかい。
どちらの感触も甲乙つけがたい魅力だが、こちらは深さがあった。顔がすっぽりと収まってしまい、両頬も両耳も乳房で包んでしまえる。
胎内回帰したような安らぎが、立香を包んでいる。これは、情欲ではないだろう。
ランサー・アルトリアはそれを察して、立香の頭を抱いた。
「子供に帰りたいのですね、主」
だが、つい言葉にしてしまった。
男にとってはつらい言葉だろう。立香は思わず身を離した。
「ご、ごめん。つい!」
背に寝台が当たった。バネに弾かれたような反応である。
「ふん、持ち腐れだな。せっかく胸中に飛び込んだ鳥を逃すとは」
軽侮したようにアルトリア・オルタが言った。勝ち誇る様子はない。純粋に気の利かないランサー・アルトリアを見損なっている。
今の自分にはないものを持ち、それを以てすればひと時の癒しにもなれていた筈なのに、野暮にも言葉にしてしまって羞恥を煽り、安らぎを撥ねつけてしまうとは、なんという不手際であろう。
ランサー・アルトリアにもそれが判った。恥じて俯いた。
「はいはい、喧嘩しない。立香くんもそれくらいで退いちゃダメさ。安らぐなんてのは生命として当たり前。温泉に浸かれば誰しもため息が漏れる。子供に帰りたいなんて欲求は誰しもに当て嵌まるものなのさ。それを幼稚だ未熟だと嘲うのは、そういう機会が訪れなかった幸運な馬鹿者の中傷に過ぎない。
過度なストレスに晒されれば、誰だって無垢な幼年期への回帰願望を持つ。いい機会だから知っておきたまえ。自我や意識の許容量を超えつつあるストレスと向き合うため、一時だけでも自分を隔離して癒すための欲求が回帰願望だ。
だから、君が女の人に母親を見て、母の胸に埋もれて子供に帰りたいと願う気持ちを、否定したり笑ったりすることがなによりも恥ずかしいことなのさ」
言いながら、ダ・ヴィンチは素早く寝台に登って立香を抱き寄せた。
「況してや、ここに集った者でそんな君を笑う者など居るはずがない。最初に言ったことを覚えているかい? 羞恥は扉の外に置いてきた筈だ。
さあ、ここは一番、男のクソ度胸というやつでもう一枚、理性という便利だが不自由な皮を剥いでみようじゃないか。
さあ、なにが欲しいんだい? お乳かな? それともどこかむず痒いのかな?」
そう言われたところで、凡才を持ち、凡人の精神から脱し切れない立香には抵抗がある。況してや愛しい人と二人きりの寝所ではないのだ。
生死をも共にするサーヴァントが五人も集う場所である。男として、彼女らに見栄を張りたい気持ちは捨て切れない。
「ううん、やっぱり難しいか。じゃあ私はもう少し様子を見ることにしよう。
シェラザードくん、後は頼んだ。なにはともあれ、ここは一番手慣れている者が担当すべきだろう」
「な、なにを・・・・・・?」
立香がダ・ヴィンチの胸から顔をあげて、怯えたように問う。このフレンドリーだが凡人に理解しがたい感性を持つ天才の思いつくことは、時になによりも恐ろしくなる。
ダ・ヴィンチは言った。
「おいおい、君はなんのために彼女たちが集まったと思っているんだね。こんな程度で終わらせるほど、英霊というのは詰めの甘い生き物じゃないぜ?
据え膳食わぬはなんとやらだ。君という、日頃から一度はつまみ食いをしてみたくなるマスターが、慰安という名目でわざわざ飛び込んできたんだぜ? ぱっくり食べたい願望を多かれ少なかれ持ち合わせた者が集ったんだ。
君は童貞のまま、ここを出られるとでも思ったのかい?」