※この作品はR-18です。

湊友希那リョナシリーズ。   作:美肉。

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湊友希那を絞殺するリョナ小説。


湊友希那首絞め。

「やめてっ! ちょっと! やめなさいっ!」

 音楽家・湊友希那の切迫した声が響いた。なんの余裕もない必死の悲鳴だった。

 けれど僕は何もやめなかった。だって嬉しい。今まで、どんなことでも無視をされてきたのだから。手を振っても声をかけても手紙を渡しても花束を見繕っても、家の前で待ってみたり後ろを一緒に歩いたり、スーパーマーケットで会話をしたり野良猫について共有しても無視をされた。あるいは苦い虫を噛み殺したみたいな顔をした。そんな友希那だった。そんな友希那でも愛おしかった。だってカッコいい。時おり可愛くって、身なりは美しい友希那だった。

 そういう友希那がついに僕に向かって悲鳴を上げてくれた。

 そんなことだけでとても嬉しい。ただ驚くだけじゃない。わかるんだ。今、僕の眼前で顔を引きつらせる友希那は生命の危機を感じている。僕が驚異だと思い込んでいる。本能の部分がきっと僕について不審に思って警告している。それが嬉しかった。そういうのが好ましかった。友希那の中に、あらゆる人物を飛び越えて強烈な印象を与えることができたのだから最高だった。

 僕は友希那に引っ付いたままだった。

 今、友希那はパジャマ姿だった。緩い、ワンピースに似た形の薄紫色の一枚を着ている。対する僕の服装は簡素だった。黒色の長ズボンに白色の半袖シャツで、シャツの上から空色のものを着ている。僕たち二人はそのまま部屋のほぼ真ん中の位置に居た。僕は友希那の身体をどうにか僕の自由にしようと力んでいた。肩を掴み、尻を掴み、顔を近づけて震えていた。僕たちは常にそれが気に入らないみたいに手足を忙しなく動かして拮抗していた。友希那が動く度に長い長い薄紫の毛先が揺れ、輝かしい瞳に恐怖心が溜まってゆく。呼吸する度に友希那の肌の表面の甘い香りが入ってくる。もうもうと連続する吐息を皮膚で感じる。僕はきっと口角が上がっていると思う。対する友希那はひたすら恐怖に飲み込まれているように視えた。絶望しているらしい。休日の昼間、家の中にも家の周囲にも誰もいない時間帯に不法侵入をし、部屋の中にまで押し掛けた面識のない男について友希那は冷えた恐怖心を感じているようだった。脈拍は激しく回転をし、唸る心臓とひりつく脳裡が『コノ男ハ危険』と叫んでいるようだった。

 そんなことが友希那の顔を視ているだけで理解できた。可愛いものだった。今まで、勇ましかったりほほ笑ましかったり、意外とぼんやりしている様子の友希那は何度も視てきたけれど、こうして恐怖に包まれた尖った表情も視ることができて僕は全身の毛穴が強張るほどの幸福を意識していた。

「離しなさいっ、このっ、離して……!」

 僕はいつまでも喚き続ける友希那のことを投げ飛ばすようにベッドに押し倒した。

 友希那の部屋のベッドは高尚だった。濃厚な紫色の毛布は手触りがいい。枕も同様の色でシーツは白色だった。二人で踊っているみたいにそのまま落下するとベッドはギシ……、なんて低く軋み、それから僕は友希那の真上にのさばった。柔らかい寝具に両膝を強くねじ込み、大股の内側で友希那の身体を捕捉した。腹部の位置に尻を強く落して身体そのものを固定した。そうした男女の体格差は致命的で、こうなると友希那はもう本格的な抵抗もできなくなった。

 つまり馬乗りだった。眺めがいい。ベッドに打ち上げられた様子の友希那について僕はじっとり眺めた。乱れた頭髪も、相変わらず引きつった容姿のことも十分に観察できた。

「い、嫌っ……」

 友希那は反抗的な声を上げたので僕は彼女の頬を一発殴った。ぶへっ……、という何か爆ぜるような低い音が鳴った。僕は右手を突き出して力強く握った。もう一発殴るぞ、という合図だったが友希那は声を上げなかった。

「やめて……」

 ただ友希那は冷え切った声色で僕をみつめていた。僕もまた友希那のことを視た。瞳のその奥の本能の部分をじろじろ観察した。拳を少し浮かばせ、少し友希那のほうに突き出すと友希那はヒイッ……、といい声を喉から漏らした。

 それは友希那の脳裡のあらゆる恐怖心が湿り気を帯びた証拠だった。

 今まで、強烈な友希那の恐怖心は友希那のことを好戦的に奮い立たせていた。しかし僕からの『鉄拳制裁』を受けたことであらゆる気概が消沈、力関係を身体そのもので理解した友希那はたちまち勢いを喪失し、そういった敗北感が声色にまで滲み出たというわけだった。

 歌姫とはいえ所詮はオンナだった。オンナなら殴れば簡単だった。どんな抵抗もなくなるし、抵抗しようという気概さえポッキリ折れてしまう。僕はそんな縮こまった様子に満足して拳を下ろした。それから友希那の腹部を撫で、そこからさらに胸元を撫でた。

「な、何を……」

 緩いパジャマをわざと巻き込みながら僕は友希那の乳房を撫で上げ、指先で首元を通り抜けると顎を掴んで頬を擦った。友希那はじっとしていた。ただ身体の表面で自由にその形を探ったり撫でる僕の手つきのことを凝視していた。それはどこか別の場所から飛んできて、服に引っ付いた昆虫をどうすることもできずただ眺めているだけというあんな様子によく似ていた。僕は友希那が恐怖により硬直し、どんな抵抗ももうできないことを理解したうえで悠長に友希那の顔面に触れた。

 友希那の顔面は暴れたことで少し汗ばんでいる他に、殴られたことで若干晴れた左頬がほんのり赤色だった。指の腹は唇を弾いて鼻筋をなぞると目元をくりくりと愛撫した。瞼の適当な箇所をさすると通り過ぎ、額を撫でてから前髪を整えてやった。

 友希那から手を離した僕はそれから右手を懐に差し込んだ。内ポケットから黒色のケーブルを取り出した。

「なっ……」

 友希那の表情が引きつった。

 僕はおでんでよく視るしらたきのような恰好に巻き込まれたケーブルをほどいた。約一メートルの全長が自由になり、僕はその端と端を両手で握って友希那の首にケーブルを素早く巻き付けると力強く引っ張った。

「ぐぎぎぃっ……!」

 友希那のざらついた声が響いた。たるんでいたケーブルがピンと張り、友希那の喉元に強く食い込んでいた。僕は友希那の身体に体重をかけつつ背中を丸め、友希那の頬に近づきながらさらにケーブルを引き絞った。肌の上でケーブルはこすれながら狭まり、喉を強く圧迫した。友希那はやはりざらついた呻き声を漏らしながら首元を掻き毟った。さらに背後でパタパタと音がした。それは友希那が両足を激しく暴れさせてマットレスを叩いている音だった。僕の股の下で身体そのものが妙な方向に仰け反ったり、時おり外側に向かって強張っている。もちろんそんな抵抗でケーブルや僕自身を退かすことなど不可能だが、それでも友希那は目を大きく開いてどうにか苦痛を解消しようと焦っていた。

 その目元というのも、瞼を開いているというより眼窩の中の眼球が上にせり出ているような印象だった。ほとんど点になった瞳はただ天井の方向だけを凝視し、友希那は時おり掠れた声を出して蠢いた。

「かあっ、あっ、ぐぐぐっ……」

 仰向けのままじたばたと蠢く友希那のことを僕は全身で固定した。そして躾けるみたいに両手を引き絞った。もうこれ以上ケーブルが友希那に食い込むことはないと思っていたが、意外にも絞れば絞るだけケーブルは首元の肌を引きずりながらさらに内側にめり込んだ。酸素の供給は確かに疎かになっているらしく友希那の頬や額の肌はすでに危険な赤色を帯び、膨れたようにも視えた。額や頬に脂汗が浮かぶと同時に鼻孔が忙しなくひくつき、そのうち透明な粘液がどこかから逃げるみたいにツーと垂れた。溢れ出る唾液もまた口角を下ってびちゃびちゃに濡らし、充血した眼球は変わらず天井に向いていた。

「ひぎゅうっ、たじげ……」

 僕は友希那のほとんど人らしくない声を聞いてさらに両手を引っ張った。すると背後で猛烈な音が鳴った。ブチチチチッ……、という湿った音で、次の瞬間に何かこんもりと香ばしいものが鼻孔をくすぐった。脱糞だった。絞殺による生命損失の危機に瀕した友希那がなけなしの糞を肛門からひり出したようだった。彼はより背中を丸めた。鼻と友希那の鼻が触れ合うほどに僕たちは近づいた。重度の酸素欠乏に陥った友希那は肌の色が赤い色から紫がかったものへ変色しつつあった。僕は両手でケーブルをぎゅっと握り、最後のひと押しといった様子で引き締めると次の瞬間、眼窩の中の友希那の眼球がぐりゅんと仰け反った。

「あがっ――」

 それをきっかけに友希那の身体のあらゆる表情が途絶えた。

 口から突き出た舌はそのまま左口角に向かって垂れ、首元は力なく左向きに落ちこぼれた。両腕は飽きてしまったみたいにシーツの上にくたびれて、あれだけうるさかった両足はいつの間にか落ち着いていた。

 僕はその弛緩した友希那を少しみつめた後、何か思い出したみたいに身体を持ち上げた。

 射精した後みたいな虚脱感が肩から全身に流れ込んでいた。

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