「んで、あいつの容態は?」
天井から降り注ぐ、全てを殺菌消毒しているのだと言わんばかりの光と、それを受ける汚れ一つ無い真っ白な床。
これから先どれほど長く現界していようが、病人を扱う場所というものを好きになれることは決して無いだろう。
その感覚が、自身の心の内に普段よりもはっきりと心の表側に浮かび上がってきている理由を認識しながら、ヴィータは問いかけた。
こつこつ、と管理局指定の制服の上に真新しい白衣を身に纏った女のヒールが、硬質な床を叩く音。
眼前に幾つも浮かび上がった立体ディスプレイ上の多種多様な文面をつらつらと眺めながら、問われた側のその女性は静かに口を開いた。
淀みなく、すらすらと。
「そうですね、いくらかの擦過傷が腕や足にありますが、それ以外は目立った外傷は無し。脈拍や呼吸にも異常ありませんし、脳波も安定。加えて魔力的な汚染の痕跡も見られません。私見を言わせて頂ければ、殆ど健康体ですね」
「………そうか」
当初自分が予想していたよりも遥かに上方修正された結果を耳にして、鉄槌の騎士は張り詰め続けていた己の身体から、少しだけ力を抜いた。
それとともに吐き出されていく長い長い吐息が、静かな医務室に響き渡る。
ちらりと目線を横に向けてみれば、透明なスクリーンの向こう側には、清潔な白いベッドに横たわった彼女の友―――高町なのはの姿。
身体に被せられたシーツの下で規則正しく上下する腹部と、ピタリと閉じられている瞳が、少女が深い眠りの中にいることを示唆していた。
彼女が横たわるベッドの周りでは、幾つかの光球がふわふわと旋回しながら、対象のバイタルを休むこと無く計測し続けている。
戦う事しか能が無い己などよりも、他者を癒すことに遥かに秀でた知識を持つ船医が、そこから送られてくるデータを見て問題は無いと判断したのだ。
これで、考えうる限り最悪の結果だけは避ける事が出来たと、再び安堵の息を吐く。
「ご苦労だったな。そいつ頼んだ。今んトコ最初の生き残りだ、よろしくしてやってくれ」
「はい、お任せ下さい。ヴィータさんも、取り敢えずお休みになったほうが良いですよ。こちらに来てから3日、ずっと働き詰めだったんですから」
画面から顔を上げて、鋭利な美貌のドクターは肩にかかるか掛からないかといった黒髪を掻き上げながらそっと微笑んだ。
「あぁ、はやてに連絡入れたら少し休む。きっと心配してるだろうしな」
ヴィータは返事もそこそこに、医務室のドアをくぐる。
長時間の飛行やサーチャー、探査魔法の運用によって消費された魔力は、常人とは一線を画する力を持つ彼女をもってしても決して見過ごせないレベルのもので、今こうして立っているだけでも体の奥から疲れが湧き上がって来るようだった。
自己保存の為にも、また、効率良く捜索を続けるためにも、今は休息を取るべき時であるのは明白だ。
足を半ば引きずるようにして彼女が己の船室へと辿り着いた時には、体内の気怠さは耐え難い程のものとなっていた。
ベッドサイドで休止状態になっていた端末を立ち上げ、自身の主の元へと一行だけの簡潔な知らせを入力する。
『高町なのはが無事見つかった』
これで一先ず、やらねばならない事は全て終わった。
極度の緊張から解き放たれた身体の求めるままに、ヴィータは力無くベッドへと倒れこむ。
己が再び目覚めた時には、先の病室の収容人数を上回るほどの人間が見つけ出されている。
そんな未来があっても良いだろう、という淡い願いをその胸に抱きながら、少女の意識は瞬く間に深い闇の中に落ちていった。
第一発見者が彼女の元に運び込まれてきたのは、艦が捜索隊として送り込まれて、その惑星上に降下してから三日目の事だった。
存在を確認できた最後の瞬間に極短いSOSを送ってきた行方不明艦の姿は、少なくとも軌道上からのスキャンではどこにもその姿を見つけ出す事が出来ず、やむを得ず危険を伴う直接的な捜索に切り替えてすぐの事だ。
親密な仲にあるという紅き鉄槌の騎士の背に負われてやってきたのは、未だ十を過ぎたばかりだという幼い魔導師。
その小さな身体に有り余るほどの魔力を誇り、入局間もないにも関わらず幾多もの部署にその名を轟かせる一人の少女だった。
聞けば、彼女は大量に散乱した用途不明の機械らしきの残骸の中に意識を失って倒れていたのだという。
薄汚れたバリアジャケットにはしかし、大きな損傷は見られず、デバイス自身もスリープモードに入っていただけであっけなく再起動する。
一隻の船が原因不明のアクシデントによって瞬く間にその姿を消してしまうという、管理局始まって以来の出来事に対して、そのデバイスの内部ストレージに何らかの記録が残されていないかという期待も大きかったが、残念ながらその淡い期待は見事に裏切られた。
残されたの手がかりと言えば発見者たる少女の記憶のみ。
しかし、時間を掛けて行ったできうる限りの精密検査の結果、その身体が極めて健康体であることが判明しているものの、未だ彼女は目覚めずにいる。
愛くるしさに溢れる天使のような寝顔を透明な遮蔽スクリーン一枚挟んで眺めながら、船医である彼女はもう何杯目かもしれぬコーヒーを嚥下した。
幸いな事に彼女には大規模な治療の必要は無く、ただ備え付けの機器と幾つかの魔法を使う程度で、肉体的な負担はそれほど大きなものではない。
少女が発見されるまでの間に続いていた緊張状態、それによって精神的には多少の疲労が溜まっているのが自覚できていたが、それもまた今すぐに対処が必要な程では無かった。
ただ、今後新たな行方不明者が発見された時、そこにどの様な対処が必要なのかはまだ未知数である。
いざという場合に備えて少しでも仮眠を取っておくべきかと、軽い睡眠導入用の術式をデバイスから取り出そうとしたその時だった。
「ん……?」
デスクに座る彼女の正面、患者室の中で眠り込んでいた少女の意識が僅かに身動ぎするのがデータから見て取れたのは。
それは次第に計器を揺らす大きな反応となり、直視する彼女の目でもはっきりと確認できる程に。
年頃の少女らしい、大きなくりっとしたその瞳が、開かれた瞼の下から覗いていくのが分かった。
彼女は慌てて聴診器の形をしたデバイスを首に掛け、病室のロックを解除する。
微かに空気の抜ける音を追い掛けるようにして室内に足を踏み入れた女医は、茫洋とした瞳で自身へと視線を向けた栗色の髪の少女を安心させるように笑いかけた。
「おはよう。目が覚めたかしら?」
「ここ……、は…?」
「あなたの乗っていた船の捜索艦よ。その中の医務室。私はここの船医さん」
小さな声で問いかける彼女に余計な心象を与えないよう、女性は努めて柔らかい笑みを浮かべながら状況を説明する。
横になったまま、視線だけを向ける少女は、その言葉を咀嚼しながら頭に入れる様にゆっくりと頷いた。
意識もはっきりとしているようだと、胸を撫で下ろす。
「名前は、言えるかしら?」
「高町なのはです」
「身体に痛いところとか、ある?」
「特に、ありません」
一つ、二つと確認を取って行くに連れて、白みがかっていた彼女の顔にも次第に朱が差し込み始め、その瞳にもはっきりとした意志の光が灯るのがわかった。
これならば安心してよさそうだと微笑んで、その必要は無いにしても、幼い容姿につられたように剥き出しの少女のおでこに己の手を当てて体温を測る。
掌に伝わるのは、熱くもなく冷た過ぎもしない適温。
自身で感じたそれと、サーチャーからの身体データと照らし合わせようとした時だった。
「ふ……、ふふ……」
「?」
少女が、笑っていた。
とても愉快そうに、その愛らしい顔を綻ばせて。
サーチでは見つけられなかった何らかの影響が残っているのかと女医は一瞬危惧するものの、その笑みは暫くしてごく自然に引いていき、後には彼女も数度か目にしたことがある、管理局の魔導師として仮面を被った冷静な少女の顔が残されていた。
「ありがとうございます、助かりました。現在の状況、教えて頂けますか?」
「それが、さっぱり。あなたが乗っていた艦の姿は何処にも見つからず、搭乗員も全員行方不明。唯一見つけることが出来たのがあなたなのよ。だからこっちとしては、あなたの言葉だけが頼りなんだけど……どう?」
世間話に近いような軽い声色で女医は目の前で横たわる少女へと逆に問いかける。
目覚めたばかりの患者に向けていきなり聞いていいような話ではない。
ましてやそれが未だ二十歳にも満たぬ少女の場合であれば尚の事だ。
だがしかし彼女は、その冷静な態度に甘え、己の不安をそのまま吐き出すかのごとく声に出してしまった。
慌てて撤回しようにも、発してしまった言葉を元の場所に戻すことなど、人の身に出来るはずもない。
ただ自分の不備を恥じ、女医は微かに顔を俯かせながらなのはの顔を見据えた。
その答えは暫く待っても返ってくる事は無く、彼女はようやく血色の戻った顔を僅かに顰めて考え込んでいるように見える。
「……ごめんなさい。ここ数週間の記憶が、全く無いみたいで。外部から弄られた痕跡とか、ありますか?」
「んん、メディカルチェックの内容には、そういった他者の魔力波形は感じられなかったわ。とすると、一時的な記憶障害か何かかしら」
「力になれなくて、すみません」
「良いのよ、気にしないで。私が性急過ぎたのだから。さ、今日はもう休みなさい。明日からきっと直ぐにでも厳つい顔のおじさま達と顔付きあわせての事情聴取が始まるわ。少しでも体力を回復させておかないと」
「………はい」
自分のミスをカバーするように、患者に余計な不安を抱かせないように、努めて朗らかな笑みを浮かべながら彼女は少女の頭を優しく撫でた。
己が随分と昔に失ってしまった幼い頃特有のしっとりとした髪の質感が、長い医者としての生活で荒れた掌に柔らかく触れていく。
細い絹糸のような心地良さをいつまでも味わっていたくなるような、そんな誘惑に駆られるものの、意志の力でどうにか手を引き剥がして病室のドアを潜った。
スクリーンの向こう側で己を見つめている少女へと軽く手を振ると、彼女は小さく頷いた後でゆっくりと瞳を閉じる。
その意識が再びまどろみの中に戻った事を確認してから、女医は再びデスクへと座りなおして、なのはが目覚めた事に対する報告を纏めて上層部へと連絡した。
もっとも特に何が聞けた訳でもない為に、極めて簡素な文章ではあったが。
早速の聴取を求める要請を医師特権にて拒否し(彼女は未だ休息の必要あり)、翌日のスケジュールを何度かの応対で取り決めた後、女医は通信を切りながらそっと少女の様子を観察する。
シーツに覆われた小さな胸は規則正しく上下しており、各種の数値も正常に推移していた。
ふぅ、と吐息を吐いて、そっと病室内の灯りを落とす。
せめて今だけは、ぐっすりと休めるように。
「おやすみなさい」
カタリ、と微かな物音が耳に飛び込み、浅い眠りにあった意識が覚醒させられた。
目の前に広がる薄暗い空間、ただ非常灯の青白い仄かな光だけが、天井を染め上げている。
医務室の横に併設された私室にて、彼女は短い仮眠を取っていた。
第一発見者が目覚めてからまた少しの時間が経過して、惑星上でもとっぷりと日が暮れている。
未だに新たな行方不明者が見つかったという報告は届いておらず、その為一時的な休息を取っていた所だ。
そうした諸々の情報を思い出しながら、女医は馴染みとなった仮眠用のベッドより起き上がって、枕元に置いてあったメガネを掛ける。
室内に、特に変わった様子は無い。
机の上に投げ出されたままの幾つかの本や、脱ぎ散らかされた白衣その他。
何故目が覚めたのかも分からずに枕元の端末を確認するも、新たなメッセージが届いている訳ではない。
はっきりと時間を区切って己に睡眠魔法を掛けたと言うのに、予定の起床時間は後一時間程先の事だった。
はて、妙な事もあるものだと首を傾げながら、取り敢えずもう一度寝直そうかと思い至った所で、病室側につながった扉が小さくノックされる。
「どなた?」
医務室には仮眠中の札を掛けておいたし、緊急時であればノックなどせずとも端末からのアラームで叩き起こされる。
控えめにノックをしてくるその来訪者の姿が分からず、女医は若干声を潜めて訪ねた。
「あの、すみません。高町、です」
「あら……」
軽く目を見開く。
扉の向こう側から響いてくるのは、どこか心細さの混じった幼い少女のものだった。
「何か、調子が悪いの?」
手元のボタンを操作し、ゆっくりと開いていく扉の向こう側、ぼんやりとした光に照らされる彼女の姿に向けて問いかける。
簡素な術衣に身を包んだ少女は、胸の前で両手を握り合わせながら躊躇した様に顔を伏せていた。
その様子を見るに急を要する様な事態では無いとホッとしつつ、女医は部屋のライトを灯す。
「どうしたの?」
「あの、その、心細く、なってしまって」
「まぁ」
ともすれば消え入りそうな声で、恥ずかしそうに少女は言った。
随分と可愛らしい事を言うものだと、女医の口から思わず驚きの声が上がるが、しかし考えてみれば彼女とて年齢は未だ十と少し。
己の状況もあやふやなままで一人きりで居るというのが怖いという、そんな感情に襲われても仕方がない年頃だ。
どうぞ、と手招きすると、おずおずと室内に足を踏み入れてくる少女。
そのどこか小動物然とした姿が愛らしくて、女医は寝起きの胸の中にほっこりとしたものが芽生えるのを感じた。
ふふ、と微笑みながらその姿へと歩み寄る。
「眠れないなら、一緒に寝てあげましょうか?」
自分でも驚くほどに優しい声が出た、と女は思った。
「でも……」
「ほら」
口ごもる少女の手を優しく取り、静かに己のベッドへと引いていく。
若干の乱れこそ見えるものの、それ以外は特に何の問題もない至極普通のベッドである。
二人で横になるには若干狭いが、少女の小柄な身体だ、何とかなるだろう。
自分がらしくないことをしている、という実感はもちろん彼女にはあった。
しかしながら、促されるままに今ゆっくりとシーツの上に横になった少女の醸しだす、なんとも言えない魅力的な雰囲気が普段とは違う彼女を後押ししていた。
これが母性といったものなのだろうか、などという事をぼんやりと考えながら、少女の隣にそっと寄り添い、二人の身体の上にシーツを掛ける。
触れ合わせた肌に伝わる高めの体温と少女特有のものらしい甘い香りが鼻腔をくすぐり、訳もなく彼女は身体を震わせた。
「ふふ……」
微かな微笑みが、胸元当たりから響く。
「どうしたの?」
「うふふ、先生の身体、柔らかいなぁって」
なんとも返答に困る言葉を返され、思わず口籠った。
他人に身体の柔らかさを言われたのなど、果たして何時以来のことだろうか、そんな取留めのない疑問が脳裏を漂っていく。
女医は、気が付く事が出来なかった。
己の懐にまで入り込んできたその少女の声色が、今までの彼女の発したものとは全く異なる響きと変じていた事を。
それは甘い香りを漂わせる、獲物を定めた肉食獣が舌舐めずりと共に吐き出すような、熱い吐息。
「っ!」
シーツの中で、少女が寝入りのポジションを定めるかのようにその身体を動かし始める。
そう認識した瞬間、不意にその幼い顔が、彼女の視界一杯に広がった。
互いの吐息がかかるほどの超至近距離で、なのはの視線と女医の視線が絡まり合う。
少女の深い色を湛えた瞳の中へと意識が吸い寄せられているかのように、女はそこから目が離せなかった。
その宝石のような瞳の奥底で、何か良くないものが輝いたような気がした瞬間。
「でも、御主人様のモノになるには、もうちょっと足りないかも」
「え? ―――――ん、んッ!?」
独り言のような少女の呟きが耳に飛び込んできて、しかしその意味を理解しようとする時間は与えられなかった。
その言葉に間髪入れず、女医の唇は相対する幼い少女のそれに塞がれる事になる。
熱く、そして外から見る薄さからは考えられない程の柔らかさ。
咄嗟の出来事に反射的にそれから逃れようと脳が指令を生み出すが、何故か身体はその指令を受け取っても麻痺してしまったかのように動き出す様子が見られない。
それどころか、緊張とは全く逆の方向に、全身から力が抜けていくかのようである。
その瞬間を待っていたかのように、弛緩して半開きになった唇をこじ開ける、少女の小さな舌。
まるでそれ自体が独自の意思を持っているかのように、彼女の口腔を絶妙な動きで掻き回していく。
幼い少女が行うには、あまりにも扇情的に過ぎる、水音が響きあう濃厚な口付け。
脳内に幾つもの疑問や恐れが湧き上がるものの、何処かに抜け出てしまった身体の力は一向に戻ってくる気配など無かった。
女の思考は、その熱烈な口腔愛撫を受け続けている内に次第に霞がかり、微熱を生み出し始める。
彼女には、幼女に口付けられて悦ぶような性癖などまるであらず、自身が同性愛者であるという認識すら存在していなかった。
それだというのに、何故自分はこんなにも身体を熱くさせてしまっているのか。
鈍く疼く下腹部の内側を自覚しながら、この状況下で考えるべきでは無い思索に囚われそうになる女医。
しかし、突如として口内に現れた異物感にそれは中断させられた。
「は、……ぁん………んん、ふ」
「ん、んぅッ!?」
声にならない声が、密着させられた二人の唇の間から漏れ出る。
少女の口の中から自身の中へと、何か小さな球状の物体が、撹拌される唾液と粘膜同士の中を奥へ奥へと潜り込もうとしているのが感じられたのだ。
ゆっくりと、けれども確実に、彼女の喉の奥へと向かっている。
これは、危険だ。
状況は何一つとして理解出来ていないものの、医師か、はたまた魔導師としてか、直感でそれを判断した彼女は、首元に掛けたままとなっていた自身のデバイスに意識と魔力を飛ばして起動させようとする。
「!」
だが、咄嗟のその試みが成功する事は無かった。
彼女の行動を読み尽くしていたかのように、なのはの細い指先が待機状態のそれを摘み上げ、まるで粘土細工か何かのように一息でその中枢部を押し潰してしまったのである。
あまりにもな光景に、目を剥く。
何か途轍もない異常事態が少女の身に起こっているというそれだけの事は、彼女も辛うじて理解する。
気が付けば、口移しをされたらしい何かはするりと喉を滑り落ちて、身体の中へと入り込んでしまっていた。
ぼやけた視界の中、三日月の様に細められる、少女の瞳。
そして、やがて。
「っはぁ……ん。―――ふふ、意外と、悪くは無かったかな」
「はぁっ………ハァッ、は…………ぁッ……」
長いようにも、一瞬の様にも感じられた一方的な口付けが終わりを告げた。
うっとりしたように微笑み、訳の分からぬ感想を口にする少女と、声を上げることも出来ず、ただ荒い呼吸を繰り返す事しか出来ない女医は、再びベッドの上で横になったまま見つめ合う。
つぅ、と互いの口の間に引かれた銀色の糸が途切れ、なのははまるで事を始める前の娼婦の様に淫蕩な笑みを浮かべた。
彼女はそれを、ただ眺め、そしていつの間にか、下腹部の甘い疼きが激しく膨れ上がり始めている事に気が付く。
「ぇ……? な、に……?」
引き絞られ掠れた、蚊の鳴くような声がその喉から発せられた。
それに気が付いてしまった瞬間、一気に身体全体に広がり始める激しい疼痛のような感覚。
自身の体内に起こった変化に戸惑い、しかし困惑した表情と消え入りそうな声しか出すことが出来ない。
そんな女医の姿を、なのはは上半身だけを起こして愉快そうな目で眺めていた。
まるで、身体の内側、臓器の裏側、そういった部位の尽くが柔らかな羽で擽られているかのような、耐え難いもどかしさと切なさ。
そしてそれら全ての感覚が彼女の下腹部に集中しているかのように、一瞬にして爆発的に燃え上がる情欲の炎。
僅かな時間の内に、シーツの下の彼女の身体は一気に熱を持ち、汗ばみ始め、そしてそのショーツの内側を湿らせ始める。
「あぁ、どうしようねぇ、お姉さん。切なくって、もどかしくて、堪らないでしょう?」
全てを見透かいている様な少女の瞳、声、仕草。
確かに、その通りだった。
このまま放置されれば気が狂ってしまいそうだと思わんばかりに、今の彼女は快楽を欲している。
肌に触れる布の感覚すら心地良く、しかしそれらは悪戯に火に薪をくべるが如く、明確な刺激を与えてくれはしなかった。
今すぐにでも、己を慰めてしまいたい。
じんじんと甘い疼きに満たされ、張り詰めそうな乳房を、乳首を。
今まで男を迎え入れた時にもついぞ無かった程に、しとどに濡れそぼる秘所を、その淫核を。
頭の中はそれだけしか考えられず、もはや目の前の少女が何をしたのだとか、何があったのだとか、そのような事はどうでも良かった。
だが、蛇に魅入られた蛙のように麻痺した身体は指一本動かせず、身動ぎする度に余計な疼きが身体に溜め込まれていくばかり。
「ゃ…!…ぁ……!……ぅッ、ぁ―――!」
酸素を求める魚のように口をパクパクと開くものの、そこから飛び出るのは寸詰まりの意味を成さない言葉だけで、己の要求など何一つ伝えることが出来ない。
彼女のその姿を見るのが極上の愉悦なのだと言うように満足気な、それでいて酷く寒々しい笑みをその顔に浮かべながら、なのはは小さな指先を女医の顎に沿わせ、その顔を己の瞳と真正面に向かい合わせた。
触れられた皮膚とその皮下から、波紋の様に激しい疼きが駆け抜けていく。
「私に、何か言いたげだね。そうだよね、そんなに身体がエッチになってるのに、自分じゃあ、何も出来ないんだもの」
焼けた火箸を突きつけられたような。
そのような経験は無いにしても、事実その小さな指と掌から伝わるのは、そう表現する他ない程の熱。
現実的な熱では無く、精神を灼き尽くすかのように燃え盛る快感の炎だ。
肌の触れ合う僅かなその面積から怒涛のように流れこみ、女医の体内にて大きくなり続けている炎と合流し、更に大きな物へとなっていく。
「お姉さんがして欲しいこと、私が、ぜぇんぶしてあげる。でもね、それをお願いしてしまったら、もうお姉さんは二度と今のお姉さんには戻れなくなっちゃうよ」
なのはの嘲るような色を帯びた言葉も、既に彼女の一色に染め上げられた頭は捉えることが出来ない。
「それでもいいなら、ほら、おねだりしてみせて? お口を開く事を、許可してあげるから」
ただ、その身から溢れだす勢いで増殖を続けるその衝動を、どの様に振る舞えば叶えることが出来るのか、それだけを理解した。
彼女の身体は、限界を超えて膨れ続けている風船である。
空気の代わりに際限なく詰め込まれて行くのは、快感への欲求。
未だ嘗て味わったことが無いその絶望的なまでの疼きは、明晰であった筈の女医の精神を瞬く間に侵し尽くしてしまっていた。
グズグズに崩れ去ったそれが、悲鳴のような叫びを上げ続けている。
ただ一突き。
膨れ上がったそれを解放するにはそれで十分に事足りると言うのに。
何故か身体は動かすことが出来ない。
己では、その最後の工程を行うことは出来ない。
だが今、彼女の目の前にはなのはという存在が居るのだ。
彼女はきっと、自身にこの様な変化をもたらした張本人であり、決してその言葉に従う事などしてはいけない相手である。
と、そのような冷静な思考はもう、身体を駆け巡る膨大な熱量の中に溶けて形すら残されていない。
言われた通りに、口はすんなりと動かす事が出来るようになった。
舌も、今までが嘘だったかのように滑らかに回る。
ならばもう、躊躇う理由など欠片も無く。
喉の奥から、己の欲する事をそのまま、あらん限りの声で少女に向けて訴えかけた。
――――絶叫にも似た、懇願。
――――一瞬の、静寂。
それに対する返答の代わりに差し出されたのは、なのはのもう片方の掌だった。
玉の様な汗が吹き出し、幾筋もの髪の房が張り付いた女医の額に、そっと触れられる。
ひやりと、身体に溜め込まれた熱を一瞬だけ忘れてしまう程の冷たさが走り。
「呆気無いなぁ、もう」
呟きは最早女医の脳裏で意味を為す言葉として認識されなかった。
ピリリ、と微かな痺れがその脳を駆け抜け、涙でぼやけた彼女の視界に微かな魔力光が映り込む。
闇の中、怪しく輝く濃厚な赤紫色。
脳が爆ぜるかのような激しい衝撃が、頭蓋骨の中で荒れ狂う。
「――――――――~~~~~ッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」
そしてようやく訪れる、一瞬にして全身が天高くにまで舞い上がった様な、全身を包み込む喩えようもない浮遊感。
破裂した風船の中に閉じ込められていた空気が、無限の世界へと飛び出していくかのような、この世のものとは思えない開放感に、女はもはや声を上げることも出来ない。
陸に打ち上げられた魚のようにびくびくとベッドの上で跳ねる四肢。
やがて彼女の意識は、最早肉体の感覚を知覚出来ない程の遥か彼方へと打ち上げられた。
限りなく高く、高く、高く、高く。
永遠に続くのでは無いかと思われる上昇。
あ゛、といった具合の、やけに間の抜けた一音がその口から飛び出す。
ぐるり、とあらぬ方向に向かう眼球。
ついぞ感じたことが無い至高の感覚に包まれて、彼女の意識は拡散し、飛び散っていく。
そしてそのまま、二度と元の身体へと戻ることは無く、永劫の世界へと旅立っていった。
「よぉ、調子どうだ」
与えられた休息の時間も必要最低限にしか取らず、再び夜を徹しての行方不明者捜索へと赴いていたヴィータは、その戻り足、自室に戻る前にほんの少しだけといった風情を装い、医務室へと顔を出した。
帰還して、彼女が目覚めたという報を聞いてから、僅かな間をもおいていないと言うのに。
今日も今日とて、原生生物以外の生命体に出くわすことが出来ず、飛行と探査魔法の繰り返しで体力も気力も、些か衰えている。
だからこそ、たった一人であろうとも自分の手でそこから救い上げることが出来た相手に、無性に会いたかったのだ。
検査用のベッドに仰向けに寝転がり、周囲をゆっくりと回転する医療用のサーチャーの光に照らされていたなのはは、ヴィータもよく見知った朗らかな笑みを浮べて彼女を迎えてくれた。
「にゃはは、ありがとう。身体の方は、もう大丈夫みたいなんだけど」
「そうなのか?」
「ええ、身体的精神的共に極めて良好です。今すぐにでも実務に戻ることも可能な程かと。無論、上がそれを許すはずも無いでしょうけれど」
「ふぅん」
その脇の端末でサーチャーから送られてくる情報をチェックしていた女医に問いかけると、彼女もまた明るい声でヴィータに答えた。
気のせいかその肌は昨日と比べて随分と血色が良く、また肌の張りや艶が増しているようにも思える。
そんな彼女の後ろ側から覗きこむようにして端末上の表示を眺めてみれば、成る程確かにその数字は健康体の人間そのものだった。
リンカーコアに蓄えられた魔力も、普段の彼女と遜色無い。
「だけど、記憶は戻ってないんだな」
「うん、この星に来てからの事、全然思い出せなくて」
「ったく、厄介だな」
ぐし、と一度髪をかき上げて、ヴィータは忌々しげに呟いた。
彼女の目覚めさえあれば、未だ見つからない職員達の行方もはっきりとしたのではないか、という希望的観測が見事に外れてしまったことに対する苛立ちだ。
無論、誰が悪いという訳でも無い。
報告書によれば、記憶については外部からの影響も見られないということで、内因性の一時的な記憶障害ではないかとの所感が述べられているが、かと言ってこのまま悠長にそれが戻ってくるのを待っている訳にもいかないのだ。
一つ二つ、多愛も無い会話を横になったままのなのはへと投げかける。
どれだけ他の奴らが心配していたことか、彼女が行方不明になってから今まで、私有の端末に届いた沢山のメールの内容といったものを。
それを聞く彼女は申し訳なさそうな顔を浮かべながらも、努めて明るく振る舞うような大げさな動作でもう大丈夫だと何度も繰り返した。
そんな彼女の胸中を察しつつ、そろそろ退室しようかと用意を整え始めたヴィータの目の前に、そっとカップが差し出される。
見れば、医務室の備品であるマグカップを手にした女医が、いつの間にか彼女のすぐ後ろにまでやってきていた。
なにぶん少女とてなのはに負けず劣らずの小柄な身体の持ち主である。
その視線は丁度、女医の豊満な胸元のあたりに位置するカップの底を見上げる形となっていた。
「なんだ?」
「栄養剤、のようなものです。実働部隊の皆さんもそろそろお疲れでしょうから、有り合わせの素材で作ってみました。疲労回復、栄養補給、ついでに軽い睡眠導入性もあるので、ゆっくりお休み頂けると思いますよ」
「あたしよりも他の奴等に飲ませてやってほしいもんだが。ま、貰っとく」
女医はその頷きに合わせるように、パチリとウィンクを返す。
それなりに見知っている筈の相手であったが、彼女がそのような仕草を見せたことは今までヴィータの記憶には無い。
どことなく違和感を感じ取るものの、しかしそれもまた疲労から来るものかもしれないと心中で軽く首を振るった。
そのまま、受け取ったカップの中身を見下ろす。
白いカップの中で微かに波打つのは、黒く濁ったドロリとした液体だ。
そのままでは飲みにくいと何かのフレーバーでも加えたのか、熱帯の果物を想像させるような甘い匂いが微かに立ち上ってきている。
「ん……、なんだ、妙に甘いな」
僅かに粘度のあるとろりとした冷たい液体が喉を滑り降りていき、ヴィータは率直な感想を述べた。
匂いや外見に似つかわしく、薬品としては随分と甘ったるい味が口腔に纏わりつくかのようにも思える。
だが必要以上に喉に引っかかる程という訳でも無く、彼女は勢い良くカップを傾けて中身を飲み干し、息を吐いた。
「若干甘めには設定しておきましたが、そこまででしたか?」
「いや、良いさ。甘いもんなんて最近取ってなかったからな、そのせいかもしれない。昨日飛んだ奴等も今頃部屋で死んでる頃だろうから、時間ができたら飲ませてやってくれ。長期戦になりそうだしな」
「はい、了解しました」
ぐい、と口元を拭い、赤いバリアジャケットを纏った少女は踵を返した。
人間よりも無理が効く身体は、こういう時には本当に役に立つものだとぼんやりと考えながら。
「ヴィータちゃん、それじゃ、またね」
「おう、お前も早くそこから起き上がってこいよ」
背中にかかる友人の声に、何時もよりも力強く答える。
そのまま扉を抜けて去っていく彼女には、気付くことなど不可能だっただろう。
その背後で、つい今しがたまで朗らかに微笑んでいた二人が、まるで別物の様な笑みを浮かべて少女の後ろ姿を見送っている事を。
それは、黒い感情がそのまま形となったかのように酷く歪んだ、どこか淫靡さを漂わせる微笑みだった。
音もなく扉が閉まり、静寂に満ちた医務室。
そして静かに響く、押し殺したような笑い声。
「……成る程、睡眠導入性っていうのはこれのことか」
艦内のひんやりとした無機質な廊下をゆっくりと自室に向かいながら、ヴィータは独りごちた。
医務室を出て幾許かも経っていないのだが、あの液体の甘味がそのまま脳にまで到達したかのように、重く纏わりつくような霧が頭の中に立ち込め始めるイメージ。
じぃんと痺れるような甘いむず痒さが、身体の奥深くに宿り始めている様な感覚が生まれ始めていた。
それでいて、ポワポワと浮遊するような曖昧な感覚が身体中を包み込み、今こうして歩いている自分の足がまるで別のものとなってしまったかのような錯覚にまで陥る。
確かに、この状態でベッドに横になればさぞかし心地の良い眠りに落ちることが出来るだろうと、一人彼女は納得したように頷いた。
とにかく、眠くて眠くて堪らない。
「はぁ……は、ぁ……、ちょっと、効きすぎじゃないのか、これ」
ようやく辿り着いた私室のベッドの上へと倒れ込みながら、少女はあやふやになった視界一杯に広がる天井を見上げながら呟いた。
纏っていたバリアジャケットが光となって室内の空気の中へと溶けて消えていき、身に纏う衣装はストレージに変換されていた部屋着へと変わる。
部屋の隅で、机の上に設置された通信端末のランプが微かに明滅し、新たなメッセージが届いていることを知らせていたが、今は身体を襲う甘い眠気の方が明らかに強い。
内容は、それを開かなくても大体を想像することができた。
きっと友人達からの代わり映えのない、なのはの状況を問いかけるようなものだ。
目が覚めたら、それに返事をして、次いでに薬品の効果が高すぎるとあの女医に文句を言いに行こう。
既に深い眠りに落ち始めている彼女の意識は最後にそれだけを心に決め、ゆっくりと瞳を閉じていった。
その頬はゆっくりと朱に染まりつつあり、吐き出される吐息には湿り気を帯びた色が混ざり始めていたのだが、彼女がそれに気が付くことも無い。
深く暗い、蕩けそうなほどに甘い眠りの中へと、ヴィータの意識はゆっくりと沈み込んでいった。
「ぁ……ふ、ぅ………、ん……」
………。
「はぁ……っ、あ、ぅぅ……ッ…」
………………。
「ッ―――、ひ、ぁぁ……、………んんぅ……ッ」
…………………………。
「は、ぁっ……、ぇ……?」
全身に伸し掛かるような激しい倦怠感と、そしてそれを上回る程に体内でうねる熱の中で、ヴィータの意識は覚醒した。
ぼんやりと開かれた目の前に広がるのは、眠りについた時と同じ天井
非常用のライトの微かな光だけに照らされた、見慣れた天井だ。
だがしかし、その身体は眠りに就く以前よりも遥かに重たく、そして平時では考えられないほどの火照りを帯びているのが、寝起きの彼女にもはっきりと理解することが出来た。
「なに、が……」
口から出る声もまた、身体の熱に当てられたかのように湿り気を多分に含んでおり、そして微かに掠れている。
身体を起こす気にもなれず、訳が分からぬまま少女は鉛を巻きつけられたかのように重たい片手を持ち上げ、目の前にかざした。
見慣れた己の細い手。
それはまるで、つい今しがた水に浸したかのようにしっとりと濡れており、指先に微かに付着した液体がつぅ、と微かな糸を引いて垂れ落ちていた。
視界の中に収まるその二の腕もまた、皮下より吹き出したと思わしき汗が鈍く光を反射している。
熱に浮かされた頭のまま何度か濡れた指先を触れ合わせていると、それらは空気を含んで次第に白濁していき、粘着質な音を立て始めた。
それは何処かで見慣れたものの様な気がするが、しかし正体を検索しようとする程の余裕は彼女の頭の中に残されていなかった。
ぽたり、と力を失った腕が倒れこんで、ひやりと湿ったシーツの感触が素肌に伝わって来る。
起きなくては。
義務感のままに身体をベッドから起こそうと、ゆっくりと力を込める。
「ひ―――、はぅッ!?」
動こうとしたその瞬間に、身体の奥の方から鮮烈なまでの刺激が訪れ、思わず彼女は戸惑いの声を上げた。
下腹部から脳髄を貫くかの如く一瞬で走り抜けてきたそれは、思わず身体をゾクリと震わせてしまうほどの、快感に良く似た痺れ。
「なん、だよぉ……」
ズクズクと下腹部で疼くその感覚を歯を食いしばって耐えながら、ヴィータは身体を一気に引き起こした。
そうして見下ろした己の身体は、少女の想像だにしない状況へと成り果てている。
寝間着として使用している衣服は何の変哲もない半袖のシャツとショートパンツであるが、今現在それらの衣類は本来の役目を、即ち自らの肌を隠し保護する役割を殆ど果たしてはいなかった。
胸元を露出するまでに首や肩辺りにまで捲り上げられたシャツのすぐ下方では、申し訳程度の幼い膨らみが完全に露わになっており、その両の先端である桜色の可愛らしい突起が、まるで今にもはちきれんほどに充血し、ピンと天を仰いでいる。
前を止めているボタンが外れ、ジッパーも完全に降ろされてしまっている濃い藍色のショートパンツの内側からは、何の飾り気も色気も無い単色の下着が覗いており、そして重なりあう二つの衣は、明らかに股間の部分から染みだしたと思われる液体によってぐっしょりと濡れそぼリ、より一層その色を濃くしていた。
ヴィータが身体を動かそうとする度に、その胸から、そして目で見ることはできなくてもしとどに濡れそぼっていることが分かる花開いた蕾から、突き抜けるような心地良さが生まれて彼女の身体を苛んだ。
「はぁッ……、く、ぅあっ……!」
眠り込んでいる間、無意識のまま自分自身を慰めていたのか。
これだけの状況を提示されてしまえばさすがの彼女でも理解することが出来る。
しかし、その原因となった事象など全く思い当たるフシが無かった
そして、この後を引くような快感の残滓に包まれている身体の事に関しても。
どうにか起き上がると、睡眠中の己が行なっていたらしき行為の激しさが良く分かる。
幾度と無く身をよじっていた事を証明するかのようにきつくシワの刻まれたシーツの上は、汗やその他の液体で変色するほどに湿っていた。
特にそれは下腹部から臀部にかけてが顕著で、そっと指で触れてみれば布の表面はぬるつく液体に覆われている。
それは、引きずり上げたパンツの中でも同じ事で、一歩一歩と歩を進める度に液体の潰れる粘ついた音が響き、そしてそれと同時に甘い疼きが響いた。
「何、なんだよぉ、ったく……!」
対象の定まらぬ悪態を熱い息と共に吐き出しながら、ヴィータはよろめきつつも卓上の端末の前に立つ。
休止状態に入っていたそれに、濡れた指先をシャツの裾で拭いながらそっと触れて、睡眠中に何か新たな報告は入っていないかと半ば条件反射のように確認しようとする。
鈍い音を立てて虚空に映像を投射する端末。
その待機画面に表示された日付を目にした途端、少女は大きく息を呑んだ。
「な、に? ――――――五日、だと…!?」
そう、その場に表示されていた次元標準時は、彼女が眠りに就いた日付の優に5日後を指し示していたのである。
動揺を露わにしながらメッセージボックスを開く。
しかしそこには、山の様に大量に送られてきている友人達からの新着メッセージ以外には何一つとして新しいものが送られてきていない。
それは非常用の緊急回線の記録を見ても同様で、一切使用された痕跡がなかった。
この端末が故障しているのでなければ、彼女は完全に職務放棄とみなされてもおかしくない時間を自室に閉じこもっていたままであったというのに。
「く、そッ!」
混乱に、毒づく。
踵を返すようにしてクローゼットから真新しい衣服を取り出し、熱の醒める気配の欠片も無い身体に纏っていく。
布が肌に擦れるだけで、まるでその箇所を優しく愛撫されているかのような刺激が走ったが、それらに反応しそうになる身体を意志の力で持って押さえつけて、ヴィータは自室の扉を開いた。
音もなく横にスライドしていく扉の向こう側に広がっているのは、もはや見慣れた艦内の通路そのものである。
慎重に、一歩を踏み出した。
ひやりと、剥き出しのままの足が冷たい金属の床に触れ合う。
何かが起こる気配は無い。
全身を部屋の中から抜き出して、それほど広いわけではない廊下に佇む。
無機質な白い光の中、それらは何時もと何一つとして変わっていないように思えた。
しかし。
「……静か過ぎる、のか?」
そう、あまりにも物音がしないのである。
次元航行艦は、基本的に昼夜問わず運用の為の人員が存在しており、その艦内が一斉に静まり返ることなど、乾ドックにて大規模な補修を行うと言った特殊な場合を除いてあり得ない事である。
例えその場の一区画に人気が無かろうとも、常に稼働している様々な機構や術式の放つ音と言うものは決して途絶えること無く常時響いている筈なのだ。
右にも左にも真っ白な壁が続くだけの、静けさが耳に痛いほどの無機質な通路に立ち竦む少女。
その静寂を打ち破ったのは、点けたままになっていた室内の端末からの、新たなメッセージの受信を告げる小気味良いシステム音だった。
急いでその場に駆け寄り、画面の中央で強調されたそれを開く。
文書データは無し。
全くの白紙の中に、それほど大きい訳でも無い一つのメディアデータらしきものが添付されている。
それを開くべきか、開かざるべきか。
この状況下、彼女の目覚めを待っていたかのように送られてきたものだ。
何らかの罠。
もしくは挑発。
本来であれば、状況を整理するまで決して開こうとはしないであろうそれ。
僅かの間躊躇し、結局ヴィータはこの異常な状況に対して何らかの回答を得られる事を期待して、データの開示を選択した。
「これは……?」
端末の画面一杯に再生画面が拡大され、彼女の目の前で像を結ぶ。
決して高解像度とは言えないそれが映し出していたのは、ベッドの上で横になっているヴィータ自身を見下ろすような構図の映像である。
動画の脇に表示された日時は、丁度今から五日前を示していた。
自然と目で、その視点の位置である天井の隅を探る。
そこには、何も見当たらない。
『ん……、ぁ、はぁ………、ん……』
動画に動きがあったのは、再生が開始されてすぐの事だった。
静かに眠り込んでいたように見えた画面の中の己が、次第にその吐息を荒くし始める。
寝返りが頻繁に打たれ、その度に口から吐息以上のものが漏れ出ていった。
ヴィータはまたしても、乱れたままのベッドへと視線を向ける。
未だに、しっとりと湿ったまま、色濃い女の匂いを放ち続けているそれを。
『ひ……、ぁ……はぁあ………っ』
動画が始まって十分も経っていない。
あっという間にその腕は、身に纏う寝間着の下へと潜り込み始めた。
小さい、しかしはっきりとした嬌声。
身を捩らせながら、しかしそれでも決して閉じられたその瞳は開かれることは無く、映像の中の小さな少女は一人遊びに耽溺していた。
ヴィータは、そんな自分の姿に悔しげに顔を歪ませ、しかしいつしか目を逸らすことが出来なくなっている己に気が付く。
自分であって自分でない、そんな眠り続ける少女は、意識の底から快感を受け入れているかのような心地良さ気な艶声を上げながら、その指を動かしている。
これが、お前だ。
この映像を送ってきた何者かに、そう言われているかのような錯覚。
今まさに取り替えたばかりの下着の内側が、さっそく湿り気を帯び始めてきている現実。
『あっ、あぁ……っ、は、ん、んんんんっ!』
モニタ上の彼女が、全身をピンと硬直させて、今までで一番の声を上げた。
それがどういった意味なのか、理解出来ぬ程彼女に知識が無い訳でもない。
自分自身のものであるというのに、背筋が知らぬ間にぞくぞくと震えるようなその声を聞いていると、いつの間にか現実の己の指までもが物欲しげに股ぐらを布の上からなぞり上げている事に気が付き、ヴィータはハッとしてその手を押し留めた。
そのまま、思いを叩きつけるかのように荒々しく端末に触れ、映像を高速で送り始める。
表示された記録の長さは、五日間を表していた。
まさか、ここからずっと?
そんな、確信めいた想像を浮かべながら、あっという間に過ぎ去っていく映像を眺め続けている。
ただひたすら、薄明かりの照明の元で怪しく身悶えし続ける己の身体を。
そして、タイムラインが丁度半ばを過ぎた当たりで、ようやく一つの変化が訪れた。
相変わらずベッドの上で身体に指を這わせ続ける彼女の目の前に、ふと気が付いた時には真っ黒に塗りつぶされたかのような人影が立っていたのだ。
慌てて再生速度を通常のものに戻す。
身体をくねらせる彼女を見下ろすような仕草を取るその人物はしかし、映像自体にマスクが掛けられているのか全く正体が分からない。
ただ、辛うじて人の形をしている、というのが理解できる程度だった。
そのまま一分が経ち、十分が経った。
飽きること無く、眠り姫たるヴィータの痴態を観察していたらしきその影がようやく動きを見せる。
「!」
まるで己が見られているという事を理解しているかのように、それは、映像を見守るヴィータ自身に向けて手を振ったのだ。
真っ黒なままのシルエットが、その腕を左右に振るう。
その唯一の動きを最後に、それは現れた時と同様に瞬きの間に画面から消え去っていた。
動画の再生が終了するまで、それから何の変化も起こらずに。
彼女が目覚め、ベッドを降りようとしたその瞬間で停止した画面を眺めながら、ヴィータは身体中に再び満たされていた衝動を吐き出すかのように長く、か細い息を吐いた。
何の説明も、手がかりすらもつかめず、ただ己が自慰に耽る姿を見せられ続けただけである。
ふと気が付いてみれば、下着の限界を越えた量の水分は、新たなショートパンツすらもじっとりと濡らしていた。
着替えなど、まるで意味が無かったと嘲笑うかのように。
がつり、と少女の拳が部屋の壁を叩きつける激しい音が響いた。
硬質な金属で出来ている筈のそれに拳大の凹みがベッコリと刻み込まれ、彼女は苦虫を噛み潰した様な表情で再び部屋を出る。
硬い壁面とぶつかり合ったその箇所に生まれた鈍い痛みが、しかし今の彼女には疼痛の様にじんじんと体内を響きあい、下腹部から生まれるそれと相乗するかのように少女の吐息を震わせていた。
ひたり、ひたりと素足が冷たい床と触れ合う音が、何度も繰り返される。
その冷たさを持ってしても拭い切ることなど到底出来そうにもない熱に侵された吐息。
人の気配などまるで感じられない、無機質な光だけが溢れる無音の通路を、少女は警戒の色を上気した顔に浮かべながらゆっくりと歩いていた。
時折思いついたかのように手近にあった扉をあけて中を確認するものの、未だに人っ子ひとり見つけ出す事が出来ていない。
歩を進めるぺたぺたという音と、このような異常な状況下におかれてもなお冷める様子の無い荒く湿った吐息だけが通路の中に響く。
この艦に、何らかの非常事態が起こったのは確実だろうとヴィータは確信していた。
恐らくは、彼女が五日という長い時間眠り続けていた事も、その何らかの事態が影響しているのだろう。
あの黒い人影や、この身体の疼きもまた、同じように。
ぼうっとした思考に活を入れるかの様に頬を両手で叩く。
歩き出してからもう何度繰り返したかも分からない行為。
痛みと共に頬から伝わるある種の心地良さが、必要以上にその行いを繰り返させているのだが、意識的に彼女はそうした事実から目を逸らす。
自分自身に気合を入れる為だけにしている事であるのだと、何度も心中で己に言い聞かせながら。
「―――くそ、ここも、だめか」
何処まで言っても静寂に満ちた船内は、最早不気味さを通り越して滑稽な程の空虚な空気を生み出していた。
しかし、一度通路の壁に立ち並ぶ扉を開いて船員達の部屋の中を確認してみると、そこに広がっているのは極めて生活感に溢れた光景である。
雑多に置かれた私物や、脱ぎ捨てられたままの制服、場合によれば飲みかけたドリンクや携行食までがそのまま放置されてる部屋まであった。
ともすれば、たった今までそこに人が居たのでは無いのかと思わされるような光景。
流石に、熱い湯気がコーヒーカップから立ち上っている、とまではいかなかったが。
そうした室内に時折足を踏み入れ、自室と同じように備え付けられた端末の内部を閲覧するヴィータであったが、やはりそのいずれにもこの状況に繋がるような情報は残されていなかった。
まるで、5日前に自身が寝入った瞬間に全ての人員が消えてしまったかのように、ぷつりと全てのタイムログがその時から途絶えている。
両手で数えられぬほどの端末をチェックし終え、再び通路に戻るしかなかった彼女は、忌々しげにポツリと呟いた。
右も左もわからぬような深い霧に囲まれているようなこの状況下で、自分は果たして如何なる行動を取るのが正解なのか。
己が些か直情気味な性根を持つことは、彼女とて重々承知している。
何時もであれば、考えるよりも前にすぐさま行動に移るはずだと分かっているのに、ただ意味も無く通路を歩き続けている今の自分がどうにも不思議で、そしてそれに対してそれ以上の所感が湧いてくることも無い。
きっとそれは、この火照りが思考の邪魔をしているせいなのだ。
そんな朧気な想像でその事を正当化しつつも、かと言ってこの状況で自身を慰める事も肉体的には兎も角心情的には難しく、ヴィータはただ時の止まってしまったような艦内をあてども無く歩き続けていた。
「なん、だ……?」
そのあてども無い放浪にようやく変化が訪れたのは、下層の居住区から更に上の階層へと移動する昇降機の扉が開け放たれた時の事だ。
完全に無味無臭に調整されているはずの艦内の空気に混ざり込む、微かな匂いを少女の鼻は嗅ぎとった。
それは、何処かで嗅いだ覚えのある、粘りつくような甘い匂いである。
何処からとも無く漂ってくるその馥郁たる香りを辿るようにして、ヴィータは相変わらず重たいままの歩をゆっくりと進めていく。
上へ、上へと登っていく程に強まっていく芳香。
そしてその香気に呼応するかのように、下腹部に居座り続けている疼きがどんどんと増していくのが感じられた。
「は……、ん、はぁ…、ん……」
もしかすると、この香りこそが己の身体を変調させている原因なのではないだろうか。
その可能性に気が付き、手近な布で呼吸器を覆うものの、それは彼女の抵抗を嘲笑うかのように繊維の隙間から侵入し、鼻腔へ、そして脳へと到達する。
身体の内外を問わず、あらゆる部位へ絡みき、纏わりついてくるかのようなその媚香気に、さらに激しくなりゆく少女の吐息。
それでも、彼女の思考に足を止めるという選択肢が浮かぶ事は無く、やがて極めて濃厚になっていく甘ったるい匂いが、現実に実体を帯び始めているかのように、空気にすら色が付き始めていく。
初めはほんのりと薄く、次第に色濃く。
あやしくくゆる桃色の霧が、まるで導かれるように歩みを止めない少女の眼前に立ちはだかる。
呼吸をする度に、身体の中の細胞一つ一つが空気と同じ色に染められていくような感覚。
「―――ぁ……あ……、ここ、か……?」
その空気が湧きだす源泉となっているだろう場所へと繋がっているだろう扉の前に、ようやく彼女は辿り着いた。
それは、艦の指揮系統の中枢であると言える第一艦橋。
内に芽生えた僅かな躊躇が、まるで外部から握りつぶされるように瞬く間に消え去り、ヴィータはそっとその扉に手を触れた。
カシャリカシャリと小気味良い音を立てて、複雑に組み合わさった数枚の合板が順に側面へと吸い込まれるようにして消えていき、その隙間からはより一層色の濃い空気が廊下へと流れだしていく。
同時に明らかになっていくのは、艦橋内の様子。
それは、彼女の想像を遥かに越えた、あまりにも異常な光景。
身体が、思考が、呼吸が、一斉に硬直する。
『あぁあぁああ―――ッ! ひ、や、ぃひぃいいいい―――っ!!!』
『だめぇっ! また、イクッ♡ イッちゃうッ♡! は、ぁ、あぁああぁぁあッ♡♡!!』
『はひ♡ あはぁッ! しゅご、しゅごいのぉッ♡♡! もっとぉ! もっとしてぇええええッ♡♡♡!!』
耳朶に飛び込み、直接に脳を犯すかのように響き渡るのは、幾重にも幾重にも重なりあった嬌声。
視界を染め上げるのは、濃い桃色に染まった空気と、その色に負けず劣らず淫猥に、淫靡に絡まりあう肌と肉のテラテラとした輝き。
既にその場所は、彼女の見知ったブリッジとは全く異なる空間へと変わり果てていた。
大きな半球状のドームにも似た形である艦橋は、その側面にずらりとクルーたちの席が配置されており、それらをまとめる艦長は、その中央に一段高く設えられた指揮所にて各員に指示を飛ばす。
その指揮所であったはずの場所は、今では巨大な肉の大樹へと変貌し、ブリッジの床面全てを蠢く触手の根で覆っていた。
どくりどくりと怪しい脈動を続けるそれらは、大小様々な触手が幾つも幾重にも寄り集まって一本の太い幹を形成しているようにも見える。
その集まった触手達の只中に見え隠れしているのは、彼女も見知った顔の数々。
すなわち、この艦に乗船していた女性職員達の姿だった。
天井ギリギリにまで高く高くそびえ立つ触手の塔の中に取り込まれている彼女達は、皆一糸まとわぬ姿であり、その桃色の外気に露出した肌の上を余すこと無く這い出した触手達に覆われている。
それらが無軌道に動きまわる度に、数十を下らぬ女性達は狂ったように声を上げて喘ぎ、身体を震わせているのだ。
そして、そんな彼女等の周囲で、肉樹を中心として円を描くように立ち並んでいるのは、男性局員達である。
彼等の瞳には意志の光という物が欠片も存在しておらず、目の前で行われている凄惨な光景にも何一つ感じていないかの様に、口を半開きにしてぼうっと立っているだった。
「な……んだ、これ」
立ち竦み、呟くことしか出来ない。
それほどまでに、ヴィータにとってこの状況は予想を外れた、理解出来ないものであった。
大きく、見開かれた瞳。
しかしそれは決して、驚愕の一色に染められている訳では無いのが容易に見て取れる。
本来の少女であれば、一目散に女性達に駆け寄ってその中から助け出そうとしていたことだろう。
しかし彼女は、その姿を目の当たりにしてから、一瞬足りとも目を離すことが出来なくなってしまっていた。
己の目の前で、ただひたすらに身体を揺らし、髪を振り乱しながら歓喜の悦声を叫び続ける女性達の艶かしい姿から。
まるでその肉の塔の脈動に呼応しているかのように、彼女の身体の奥にある何かがどくりどくりと、今までよりも熱く打ち始めていく。
ただでさえ火照っていた身体の内側に、加速度的に溜め込まれていく熱はもう、限界をとうに超えているかのようだった。
呼吸が更に荒くなり、無意識の内に内ももが擦り合わされる。
女性達の吐息と迎合するかのように、早く、熱く、湿り気を帯びて。
着替えた筈の衣服の下、淡い色の肌から吹き出す汗。
薄布一枚をぷっくりと押し上げるのはその両の胸の先端であり、もはや用をなさなくなっている下着を更に濡らしていくのは、その足の付け根の蕾から滴り落ちる愛蜜である。
立ち竦む。
視線は縫い止められたかのように動かない。
その視界の端を掠める、動かずに居たままの一人の男性局員の姿が、まるで人の形を保てなくなったかのように膨れ上がり、破裂し、巨大な肉の塊へと変貌していった。
グロテスクなその肉塊はやがて、床に這いまわる触手の中に吸い込まれるかの様に同化していき、新たな大樹の幹の一本となっていく。
その一連の動きすらも、現在のヴィータには何ら意味のある事象として認識されていない。
「うふふ、ヴィータちゃん、やっと起きたんだ。もう、寝坊助さんなんだから」
局員の異形への変化も目に入らず、女性達の痴態を凝視し続ける彼女。
そんな少女に向けて、場に響き渡る悦叫を貫き、明確な意思を含む言葉が投げ掛けられた。
目の前の光景に見入っていたヴィータは、はっとしたように顔を上げ、その声の主を探し求めて視線を彷徨わせた。
やがて、一点を見据えたその瞳が、はっと見開かれる。
そびえ立つ肉大樹の最上部。
その縁に座り込んだ少女が、虚空にぷらぷらと可愛らしく足を投げ出して、立ち竦む彼女の姿を見下ろしていたのだ。
醜悪な肉の塊の上に腰を下ろすことをなんとも思っていないような、いや、むしろ喜ばし気な雰囲気をも漂わせて。
その顔にはこれ以上ない程に咲き誇り、しかしそれでいて見るものの背筋を粟立たせるような淫蕩さを感じさせる笑みを湛え、彼女はころころと可愛らしい声で笑っていた。
ようやく目の前に現れた獲物の身体を味わうのが待ちきれぬと言わんばかりに、その唇をねっとりと舌で舐め上げながら。
前半だけとりあえず修正が終わったので。
1話完結とか書いてましたけど普通に前後編でしたね申し訳ありません。
確か書いてた時にエイリアンか何かを見てたのでああいう艦内パニックものっぽくしたかったんだと思います。
まったくそれっぽくありませんが。
次回はヴィータちゃんが本格的に可愛がられます。
百合調教悪堕ちものがもっと増えるといいですね。
それでは、よろしくお願いします。