※この作品はR-18です。

神楽敗北記   作:gajun

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妖気を扱う者達の戦い

『――ッ!!』

 

 山地乳は耳聡く女の悲鳴を聞き取ると落ち着きなく身体をソワソワと震わせた。

 数日前に犯し、そのまま住処に連れ込むつもりだったが、一瞬の隙を付かれそのまま逃がしてしまった雌の声だったからだ。

 かなり遠くにいるようだが、聞こえてくる悲鳴はどんどんとこちらに近づいてきている。

 おおかた自分の子分のどれかが捕まえたはいいが、他の奴らと奪い合いにでもなり、慌てて自分の元へ連れてこようとしているのだろう。

 ここまで連れてくることができれば、一番美味い部分は当然俺の物だが、使ってない部分くらいは褒美に使わせてやってもいい。

 きっとソイツもそのつもりだろう――ならばっ!!

 

 山地乳は、愛莉の到着を待ちきれずに自らも悲鳴の元へ向かって走り出す。

 

 それから少しして、山地乳が想像していた状況とは異なる形で愛莉は因縁の相手と再会を果たした。

 

 

『ほれ、見たことか。あんなに悲鳴を上げておれば、接近に気づかれて不意など付けぬであろうに』

「……説明もなくいきなりあんなマネされて悲鳴を上げるな。なんて無茶言わないでよ……。アンタが木の枝を踏み外したり、枝が折れたらって気が気じゃなかったんだから」

 

地上十数メートルの高所を車の様な速さで、かつ枝から枝へと飛び移りながら。うっかり踏み外したり目測を誤って墜落でもされたら、本人は平気かもしれないが、こちらはケガではすまないのだ。

 

『カッカッカッ。愛莉を抱えておる時に限って、そんなヘマをするわけがなかろうて』

「……まぁ、そうみたいだね」

 

 おそらく何かしらの術を行使していたのだろう。

 地面に降り立つ際は、落下の衝撃を感じることなく、まるで羽のようにふわりと降り立っていたのだから。

 

『しかし、一度くらいは落ちそうになるフリでもすれば良かったかもしれんのぅ。実に惜しい事をした……』

 

 まったく悪びれた様子もなく、そうしていれば良かったとでも言わんばかりに天狗は嘯き、真面目になり過ぎた自分の行いを悔いていた。

 

「……今度もしふざけてやったら、本気で怒るよ?」

『おぉっ。それは帰りもまた儂に抱かせてくれるということかっ』

「ちょっ!? 変な言い方しないでっ」

『カッカッカッ。まぁ帰りの手段については追々考えるとして……そろそろコヤツの相手もしてやらんとのぅ』

「――っ!!」

 

 天狗の言葉に愛莉は敵が目の前にいることを思い出し、慌てて視線を前に向ける。

 その姿を見てしまった愛莉は否応なくこの化け物に自分が穢された時の事を思い出してしまい、顔を顰め表情を曇らせた。

 今すぐにでも記憶から消して無かったことにしたい、敗北と汚辱に塗れた出来事。

 もし山地乳の激しい殺意と怒りが込められている視線が愛莉に向けられていたら、彼女は早々に戦意を喪失してしまっていたかもしれない。

 だが、実際には山地乳の意識が自分ではなく完全に隣の存在に向けられている事に愛莉が気づくと、恐怖心が幾分か薄れ、代わりに沸いた疑問を口にする。

 

 

「なんかもの凄い怒ってるみたいだけど、もしかして、なんかこいつに恨まれるような事でもしたの?」

『いんや? 彼奴と会うのは初めてじゃの。……ふむ。大方儂と愛莉が番であると知って妬いておるのじゃろう。カッカッカッ』

「だから――」

 

――天狗の軽口に愛莉が反射的に言い返すよりも早く、彼女以上に激しく怒り狂い咆哮をあげる存在がいた。

 

『――ゥグゥオォオオオオォォォオオォォォォォーーーーッ!!』

 

 唸るように低い雄たけびに鬱蒼とした森がざわめく。

 山地乳が全身から妖気を放出したことで、さらに周囲の妖気の濃度が上がり、薄暗い霧の様に立ち込めていく。

 数日前に初めて遭遇し自分を討ち負かした時ですら、全然本気ではなかったのだろう。

 

「……お願いだから邪魔だけはしないでよ」

 

 額から冷や汗を流し、恐怖に顔をわずかに引き攣らせながらも愛莉は絞り出すように天狗に呟く。

 もう自分には後がない。負けて連れ去られるにせよ、逃げ帰れてもどちらにしても碌な目には合わないのだから。

 

『なら、せめてこれを受け取ってもらおうかの』

「え……?」

 

 横合いから無造作に放たれた天狗の妖気を愛莉は身構える隙もなくまともに受けてしまう。

 

 

「はぁ~……。だからそういうのは心臓に悪いからやめてって言ってるのに……」

 

 すでに自分よりも遥か前方に飛び出し戦い始めた天狗の背中に向けて呆れた様に愛莉は呟く。

 仮にこの言葉が天狗の耳に届かなかったにせよ、届いたにせよ、相変わらず小憎らしくしたり顔を浮かべているかもしれないと彼女は感じていた。

 

 天狗が愛莉に向けて放った妖気の正体は攻撃と防御の二つの術だった。それを受けた彼女の武器と装束が力強い輝きを放つ。

 とはいえ、いくらある程度信用しているからと言っても、いきなり妖怪に妖気を放たれて驚くなというのが無理な話だ。まして自分は退魔巫女なのだから。

 

「……それで、ワタシの相手はコイツらってことか」

 

 一瞬とはいえ怯んでしまった自分を先置いて天狗と山地乳が戦闘を始めてしまい完全に出遅れてしまったと感じていた愛莉だったが、山地乳の唸り声によって呼び出されていた子分とも言うべき妖怪が周囲に集まりつつあるのを察した。

 多勢に無勢。いざとなれば『帰還の符』で撤退することもできるが……。

 

「ま。それはマジでヤバくなった時までガマンしよう。うん」

 

 奇しくも枕返しが見せた夢と似た状況に置かれていた事に気づくと、愛莉は自分に言い聞かせるようにゆっくりと頷いた。

 創り出された偽りの関係とはいえ信頼していた相手に見捨てられた事に激昂した自分が、そんな相手と同じ事をしたくはない。

 まして天狗は妖気を自分に分け与えておきながら、そのまま一番の強敵であるボスに飛び込んで行ってしまっているのだ。

 

「……てか、これ、本当に大丈夫よね? あとで呪われてたりしないわよね?」

 

 愛用の薙刀と身に纏っている装束からも青白い退魔の力を持つ霊力ではなく、どこか禍々しさを感じる赤黒い妖気を放っている。

 愛莉はいつもと感覚が違う自分の武器に違和感に戸惑いながらも襲来してくる妖怪の迎撃に努めるのだった。

 

 

***

 

 

 退魔巫女としても妖気を放つ武器を振るう事に躊躇いはあったが、そんな愛莉の心情に彼女の身体を狙っている妖怪たちが理解も共感もするわけもない。

 

「――せいっ!! ……え?」

 

 自分に飛び掛かってきたボスよりも一回り小さな個体の山地乳に反射的に薙刀を振るう。

 いつも感じている愛刀の重さ、振り払った時に感じる手応えよりもあまりにも軽すぎる感覚。

 一瞬、踏み込みや重心を誤ったかと思ったが、彼女の視線の先にいる山地乳は上半身と下半身に別ればっさりと両断されている。

 おそらく彼女の一撃に反応し腕や爪で斬撃を防ごうとしたのだろうが、その防御をものともせずに妖気を宿した刃がその体を通過した結果だった。

 

「……うわぁ……ホント変な感じ……」

 

 霊力ではなく妖気で妖怪を討伐した結果、その身体は浄化されることなく、斬り払われたそのままの死骸を残していた。

 

「これって、だいぶグレーってか、退魔巫女としてはアウト……かも? ま、でも、四の五の言ってらんないか」

 

 ボスの配下の中でも上位の存在だったのであろう妖怪が一撃で斃された事で一瞬動揺が走ったが、それでもまだ彼女を諦めるつもりはないのだろう。

 普段の自分の力では絶体絶命の窮地だったはずだが、今はこの状況をどうにかするだけの力が貸し与えられてしまっている。

 退魔巫女の自分が妖気に頼るのは背信行為以外の何物でもないかもしれないが、使える物を使わなかった結果、妖怪なんかに犯されるのなんて二度とごめんだ。

 それに犯されたのがバレたら、もれなく気持ち悪いおまけもついてくる。

 

「……どうせ堕ちるんだったら、せめてワタシの意志でどこまでも堕ちてやるんだからっ!!」

 

 

 

 戦いは思いの外あっけなかった。……というよりも天狗の実力だけが桁外れだったのだろう。

 自分達のボスの劣勢と、ギリギリまであわよくば漁夫の利をと愛莉を狙っていた妖怪たちも彼女が自分たちの手に負えない存在だと悟ると散り散りに逃げ去ってしまっていた。

 結果的に一足早く自分の戦いが終わった愛莉は周囲の警戒をしつつ天狗と山地乳の戦いの結末を見守っていた。

 本来であればこれは自分の戦いなのだからと、すぐにでも天狗の加勢に行くべきなのだろうが、おそらく彼が最初から自分を妖怪同士の争いに巻き込ませるつもりがなかったのだろうと目の前で繰り広げられている戦闘を見て愛莉は感じていた。

 

「悔しいけど、これは無理かもね。うん、並大抵の人間が巻き込まれたらひとたまりもないか……」

 

 山地乳が放つ妖気の強さはもちろん、そもそも以前自分が挑んだ時と戦い方が違っていた。

 できる限り傷つけないように掴みかかったり、押し倒し、あるいは引き倒そうとするような攻撃に加えて少しずつジワジワと生気を奪い抵抗できないように無力化させてきていたが、今の山地乳はそんな生易しい攻撃は一切していない。

 鬼を彷彿させるような剛腕を振り回しながら、研ぎ澄まされた刃物の様に鋭い爪が大地や大木を引き裂いていた。

 もし躱し損ねたり、捌けなければ致命傷どころかそのまま即死してもおかしくない。そんな一撃が何発も何発も繰り出されている。

 だが、それも当然だろう。雌と違って捕らえて犯す必要がないのだから。

 

「うぅ……さっさとワタシに使ってる術を解いて自分の身を守りなさいよ……っ」

 

 確かに天狗は山地乳の攻撃を上手く捌き続けているようだが、ぱっと見たところ単純な妖気の強さで言えば、現在の二人はほぼ互角の様に感じられていた。

 それなら自分に分け与えてくれた分を回収してしまえば一気に有利に傾くのに、目の前の戦いに集中しすぎて、こちらの戦いが一足早く終えた事に気づいていないのか。

 愛莉が何もできないどころか彼の足かせになってしまっている事にもどかしさを感じていると、山地乳が捨て身の奥の手を繰り出す。

 山地乳が息を大きく吸い込むと一瞬細長い口が大きく膨らむ――直後、天狗めがけて夥しい量の体液を吐きかけた。

 

「――危ないっ!!」

 

 予想外の奇襲に思わず愛莉も叫ばずにはいられなかった。

 強烈な酸性の体液を吐き出した山地乳も自身の口が焼け爛れている。

 そんなものをまともに浴びせかけられてしまった天狗の身を愛莉が案じていたが、彼女の安心させるように天狗は高らかに笑う。

 

『カッカッカッ。ようやく自分から吐き出しおったか、これで余計な手間が省けたぞ』

 

 おそらく体液の大部分を防いだであろうヤツデの葉はボロボロに溶かされてしまっていたが、それだけだった。

 対して自身にとっても猛毒に等しい液体を生成し一気に放出した山地乳は体内もすでにボロボロになってしまっていたのだろう。

 最後の力を振り絞り逃げ出そうと高く跳躍するも、それも失敗に終わる。

 空中であっさりと捕捉し一撃を入れた天狗がぐったりとした山地乳と共に地面に降り立つ。

 そして、多少の手傷を負ってはいるが、変わらず余裕の表情浮かべながら愛莉の元へと歩いてきた天狗は、その手で引き摺る様に持ってきたモノを無造作に彼女の前に放り投げる。

 

『ほれ。人間界の平穏を乱した元凶を見事討ち取るとよいぞ』

 

 それがボス個体の山地乳の成れの果てだった。

 戦うための爪も、逃げるための翼や四肢も念入りにへし折られていた。当然奥の手だった体液も吐き出しきってしまっている。

 生気を吸い取るその口にわずかに流し込まれている天狗の妖気によって、まだ意識を失うことも死ぬこともできずに生かされていた。

 辛うじて消滅しない程度の妖気しか残されていないその無残な姿に愛莉も思わず息を飲んだ。

 

「……いい。アンタが倒しちゃって」

『なんじゃ? せっかくわざわざ生け捕ったんじゃが、止めを刺さんのか?』

 

 天狗のその言葉に愛莉も自身の中の迷いと葛藤がふっ切れたのだろう。明確な意思を込めて首を横に振るいながら答えた。

 

「ホントはコイツをめった刺しにしてやりたいけどさ……。アンタにここまでお膳立てしてもらわないと、きっとワタシは戦う事すらできなかったしね」

『身の丈に合わぬ功績は不要と。さすがは儂が惚れ込んだ女子。誇り高き退魔巫女じゃのぅ』

「はぁ~……そんなんじゃないし……。他人の手柄を奪うような事したくないし、それに今更瀕死のコイツに仕返ししたところでワタシが余計惨めになるだけだし……アンタの力を借りてだけど憂さ晴らしなら、もう十分しちゃったよ」

『ふむ。貢ぎ物は失敗か。ならもう此奴は不要じゃな』

 

 もはや『愛莉の因縁の相手』という価値を失った山地乳を生かしておく理由もなくなったと、天狗は地面で痙攣している山地乳のへし折れた翼を無造作に掴み上げると、そのまま雑に放り投げた。

 投げ捨てられたその身体は近くの大木に直撃すると、ズドンという大きな音が森中に響き渡らせた。

 直後、周囲を覆っていた山地乳の妖気も完全に霧散していくと、薄暗かった森の中に差し込む木漏れ日が辺りを明るく照らし始めていた。

 

「妖怪の力、か」

『なんじゃ? 妖怪が羨ましくなったか?』

「なりたいわけじゃないけどね……もしあの時この力があったら……って、考えちゃうよ……あ~あ……悔しいなぁ」

 

 愛莉は目元にわずかに浮かべた涙を袖で拭いながら、内心で泣くのはこれで最後だと自分に言い聞かせる。

 愛刀や身体に纏うように覆われていた妖気が完全に離れていくのを感じると、愛莉は天狗に向かって頭を下げる。

 

「その……ありがとう、ございました。おかげで無事任務を――」

『いや、まだじゃろ。ほれっ、さっさと結界を修復せんと、また霊脈を奪われてしまうぞ』

「あ、そっか。……うん。これで、よしっ」

 

 天狗に指摘され愛莉は慌てて祠の御神像に自身の霊力を通すと、妖気で穢されていた霊脈が一気に神聖な霊力で浄化されていった。

 

「ふぅ……疲れた~。ほんと散々な初任務だったよ」

『カッカッカッ。してどうじゃ、さすがに儂に惚れたじゃろ?』

「ごめん。それはない」

『手厳しいのぅ。お主のためにこんなに働いたというのに』

「うん。それは感謝してる。本当に」

 

 そう言いながら愛莉は傷ついた天狗の腕に手を添える。

 おそらく直撃こそはしなかったが、捌ききれなかった攻撃だっていくつもあったのだろう。

 あれだけ凶暴な山地乳の鋭い爪を受けたのだ。天狗は平然としているが、未だに止まることなく流血しているあたり、決して軽いダメージではないはずだ。

 

「この傷だって本当はワタシが食らうはずだった。ううん、ワタシだったらこの程度じゃ済まなかったんだよね。回復は得意じゃないけど、せめて――」

『フオォオオオォォォーーーッ!? め、めぐりっ!! 愛莉の霊力がワシのッ!! 儂の中に流れ込んでくるぞぉぉぉおおおーーーっ!!』

「……………………………………」

『おおおぉぉぉぉーーーー……お? なんじゃ? その、もの凄く嫌そうな眼は?』

「……お願いだから感謝くらい普通にさせてよ」

『カッカッカッ。じゃから、儂に感謝を示したいのであれば身体を差し出せと言うておるじゃろうが』

「人と妖怪は永遠に分かり合えそうにないね」

 

 とりあえず止血はできたと愛莉が治癒術を終えて手を離すが、まだして欲しいと強請る天狗に冷ややかな視線を向けながら煩わし気に手で払った。

 

「それじゃ戻って報告か……はぁ~」

『あまり気が乗らないようじゃのぅ?』

 

 さすがに村の近くまで迫っていた妖気が完全に晴れたのだから、あの神主も察しているだろう。

 いっそ何も言わずにそのままさっさと花杜神社に帰還したいが、そういうわけにもいかない。

 

「まぁね。正直もう二度と会いたくない手合いだけど、依頼完了の証明をもらったり、一応アナタの事を報告しないといけないからね」

『ふむ? 別に儂の事なぞ話すこともなかろう。いらぬ不安を仰ぐだけじゃぞ?』

「そうかも知んないけどさ、でもワタシの実力じゃ絶対解決できなかったし、ちゃんと解決できるだけの協力があったってことを話さないと、そもそも解決したかを疑われるかもしれないし」

 

 天狗自身もあまり自分の存在を人間――特に退魔機関に知られたくはないという思いもあったが、何よりも愛莉の立場と身を案じての言葉だった。

 だが、そんな天狗の懸念に気づける程、愛莉はまだ退魔機関という組織を知らなかった。

 

「……お願い。絶対に悪いようにはしない。ううん、ワタシがさせないから、一緒に付いてきて」

 

 どこか縋るように不安そうな表情で愛莉が手を差し出す。

 すでに彼女の中で天狗の事を報告するということは決定事項となってしまっているのだろう。

 

『仕方ないのぅ。妻にそこまで言われてしまっては付いていくよりあるまいて』

「だから隙あらば婚姻関係を結ぼうとしないでっ。言っとくけど、報告終わったらすぐに別れてもらうからね」

『なんとっ!? あれだけ運命を共にし互いの妖気と霊気を交し合ったというのにっ。儂は捨てられてしまうのかっ!?』

「だから言い方……っ。本気で寒気がするんだけど……一応言っておくけど、そのまま花杜神社まで付いて来たら、さすがにワタシもアンタの討伐に加わらなくちゃいけなくなるからね」

『……カッカッカッ。さすがにそこまではせんよ。儂は愛莉が欲しいだけであって、人と争うつもりはないからのぅ』

 

 いったいどこまで本気なのだろうかと。愛莉は呆れた様にため息をつきながら天狗を見やるが、相変わらず彼の本心は読めなかった。

 

(ま。妖怪の……特にコイツの考えなんてわかるわけもないか)

 

 結局考えるだけ無駄だろう。と早々に思考を中断し愛莉はすっかり妖気が晴れ、穏やかな陽気を取り戻した森を後にするのだった。

 

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