その日の夕暮れ時に森から帰還を果たした弥生を神主は出迎える。
彼は弥生が森の中へと入っていくのを見送ってから、ずっと神棚の前で彼女の無事と霊障の解決を祈り続けていた。
いざ森を覆っていた妖気が祓われた事に気づくや否やすぐに森の入口へと向かい彼女の帰還を待ち続けていたのだった。
遠目から弥生の姿を確認した時は、多少ふらつきながらも自身の足でしっかり歩いている様子から五体満足で帰って来てくれたことに安堵していたが、少しずつ彼女の姿がはっきりと見える様になってくるのに比例して神主の表情が険しい物へと変わっていく。
土埃や泥に塗れ、所々破れたり解れてしまっている衣服や、乱れた髪や白くきれいな肌にも多少なりとも擦過傷の様な物もできてしまっていた。
そして、なによりも――
「ただいま帰還致しました。森の妖気の浄化は完了しましたが、少々不覚を取ってしまいました……」
弥生の体内から発せられている妖気の気配に何があったのかを察し、悲痛な表情を浮かべてしまっている神主に向かって、弥生は凛とした声で淡々と告げた。
「た、退魔巫女様……も、申し訳ありませぬ。まさか、まさかこんな事になるなんて……なんとお詫びしたらよいか……っ」
「お顔を上げてください、神主様。あなたのせいではありませんし、私自身も覚悟していた事ですから……」
自分が依頼をしてしまったせいで目の前の若い女性が妖怪の毒牙に掛かってしまったという罪悪感のあまり、神主は彼女に向ってひたすらに頭を下げ続ける事しかできなかった。
弥生に促されて顔を上げるも、まるで自分を気遣う様に儚げに微笑む彼女の顔をまっすぐ見る事ができずにいた。
「な、ならばすぐにでも穢れの浄化の用意を致します」
「え? あ、あの」
自身が抱く弥生への罪悪感と贖罪の想いのあまり、すぐにでも少女の汚点とも言うべき妖気を祓ってしまいたかったのだろうが、やや性急とも言えるその提案には弥生も戸惑いを感じてしまっていた。
「退魔巫女様、どうぞご安心ください。この村の若い男は皆、真面目な者ばかりですゆえ、決して退魔巫女様に手荒な真似をする様な事は致しませぬ」
「あ、いえ、そうではなくてですね、あの……っ」
神主が自分に対して抱いている罪悪感も、治療の必要性もわかるが、だからといって一方的に見ず知らずの男に身を委ねる段取りをどんどんと進められてしまいそうな状況には躊躇せずにはいられなかった。
何より弥生を身籠らせてしまった妖怪が問題だった。
妖怪からすれば『葛城誠一郎』の姿を模して弥生をその術中に陥れたに過ぎない。しかし、弥生自身はそれを理解して尚、自らの意志で受け入れてしまっていたのだ。
退魔巫女としての立場でならば神主の提案を受け入れ、すぐに治療するべきだと言う事は頭ではわかってはいても、それでも彼女の女としての感情がその提案を受け入れられる様になるにはまだ早かったようだ。
――結果、弥生は……。
「すみません。お気持ちは大変ありがたいのですが、まだ幾ばくか猶予はありますので、所属している桜杜神社に戻ってから治療する事にします」
脳裏に誠一郎の姿を浮かべながら、無意識に紡がれた言葉によって神主の提案を断ってしまった。
自分自身でも発して言葉にドキリとしてしまっていたことだろう。
「……は。これは余計な気遣いをしてしまいましたな。いらぬ心労を掛けてしまい申し訳ない」
「いえ、せっかくご配慮して頂いておりましたのに、お断りしてしまい申し訳ありません」
もしかしたら神主も内心で自分の言葉を訝しんでいるかもしれないと思いつつも、弥生は自身の言葉を覆すことができなかった。
神主の方も、彼女の口ぶりから所属先に特別な異性がいるのだろうと察し、これ以上はいらぬ世話になると判断しこの話を終えるのだった。
その後社務所に戻り、身を清め疲れを癒すために一晩だけ泊まらせて欲しいという弥生からの申し出を神主はもちろんだと言わんばかりに快く引き受けるのだった。
その日の夜。
「はぁ……はぁ……っ、ん、あっ……こ、こんな事、してはいけないのに……っ」
弥生は自身の身体の火照りと疼きを感じ始めると、湧き上がる劣情を抑えきれず自身を慰め始めてしまっていた。
原因は分かりきっている。自身の至る所に注がれてしまった大量の妖気が全身を燃え上がらせてしまいそうな程に高温を放っているのだ。
妖気が活性化し成長している気配を察し、慌てて弥生はすぐに自身の霊力を高めて進行を抑え込む。
しかし、自身の妖怪化と胎内に宿る仔の成長の進行は留める事はできたものの、一度教え込まれてしまった快感に抗う術を彼女は持ち合わせてはいなかった。
「い、いやぁ……こんな、はしたない事、ダメなのに……んぁぁ、んっ……ダメなのに……っ」
触れてもいないのにじっとりと濡れてしまっている自身の下腹部が何を求めているのかなど明白だった。
始めは気持ちを落ち着かせるために当てていた手が、すでに荒々しく自分の胸も揉みしだいている。
「はぁ……はぁ……はぁ……お、お兄様っ、も、もっと……もっと……私をっ」
優しく確かめる様に大きく成長した膨らみを撫でながら、頭の中の誠一郎がその成長に優しい声色で驚く。
寝間着はすでに完全に着崩れてしまい、汗ばんでいる彼女の身体は露になっていた。
荒々しく熱っぽい息を吐きながら、弥生は必死に『誠一郎に身体を許した逢瀬の時』を思い出し、頭の中で再現する様に必死に指を動かし続ける。
強く乳首を摘まみながら、もう一方の手で自分の膣穴に指を一気に突き入れる。
熱く潤んだ膣襞が擦られながら指を強く締め付ける。
「んぁっ……ち、違う……き、気持ちいい……気持ちいいけど、お兄様のは、もっと……っ」
大きさも硬さも感触も全て覚えているのに再現しきれない誠一郎の陰茎を求める様に、少しでもその快感を再び味わえるようにと、何度も何度も膣を収縮させ強く締め付け、突き入れた指はぐちゅぐちゅと水音を立てながら膣内をかき混ぜる。
「ん、あ……んむ……っ、くぅ……っ」
寂しくなった口元を近くにあった布を宛がい、キスをせがむ様に吸い付く。
「くふっ……あ、あぁ、はぁ……はぁ……はぁ……お、お兄様、おにいさまっ、おにいさまっ」
絶頂が近づくと、より強い刺激と快楽を求める様に胸を弄っていた手も秘処の刺激へと加わる。
溢れ出る自らの愛液に塗れながら前後に抜き差しされる指は、誠一郎によって見つけられ教え込まれた、自身のもっとも快楽を感じた膣壁を刺激し続ける。
膨らみ表皮から露出した最も敏感な陰核を強く挟むのと同時に、
「――っ ん、あぁぁぁぁああぁあぁあぁぁっぁぁぁぁぁーーーーっ!!」
絞り出し損ねた誠一郎の精液を受け止める妄想に包まれながら、弥生は果てるのだった。
***
翌日。
弥生は気まずさと申し訳なさを感じながら、神主に見送られて帰路へと向けて出発した。
あえて気づかないふりをしてくれているのか、本当に知らないのかは、神主の表情からは読み取れなかったが、半々よりは分が悪いだろう。
とはいえ仮に気づいていたとしても、彼の立場からも村の救世主であり、凄腕の退魔巫女の弥生に対して、治療を強く勧めることもできないのは仕方のない事だった。
――しかし、彼女の身内は決して甘くはなかった。
「どうして治療を受けてから帰還しなかったっ!」
帰宅早々に弥生から報告を受けるよりも早くに彼女の体内から感じる妖気に気づいた誠一郎が彼女を問い詰めるの必然だろう。
始めは彼女の身に起きたあってはならない悲劇に哀し気な顔をしていたが、彼女が故意に治療を避けた事を知ると、途端に険しい表情となる。
「で、ですから、無事依頼を果たしたので、帰還してから治療すれば良いかと……」
「その間に何かあったらどうするつもりだったんだっ!! そのまま妖怪の仔を産み落としてしまうつもりかっ!!」
「……っ」
普段誠一郎が弥生に対してここまで怒りの感情を露わにして強く叱責する事はなかったが、無理もないだろう。
妖怪に精を植え付けられたら一刻も早く治療するのは退魔士として当然の知識であるのに、まさか彼女がそれを怠るとは夢にも思わなかったのだ。
彼にとって弥生は、かけがえのない何よりも大切な存在なのは言うまでもない。
その彼女が穢されたと言う事だけでも彼に耐えがたい苦痛を齎しているのに、挙句、彼女自身が自らの身体を軽んじる様な対応をとってしまったのだから、憤慨せずにはいられなかった。
そんな誠一郎の気持ちを理解したからこそ、弥生も声を出すことができず黙って俯いてしまっていた。
「それくらいにしておけ、誠一郎。弥生も帰って来たのじゃから、それでいいじゃろ」
「ですが、桜様――」
あまりに一方的に責められ過ぎてしまっている弥生を不憫に思ったのか、桜姫が仲裁に入ろうとするが、まだ怒りが納まり切らない誠一郎が食い下がる。
「男のお主にはわからんかも知れんが考えてもみるのじゃ。お主は弥生に見ず知らずの男に身体を許する事を強要するのを良しとするのか?」
「ぐっ、ですが、状況が状況ならばそれも仕方ないでしょうっ」
一瞬その光景が過ってしまったのか苦々しい表情で苦し紛れに放たれた誠一郎の言葉に弥生の身体がビクリと震えたが、その様子に気づいたのは桜姫だけだった。
「ふぅ。まぁよい。まずは弥生の治療の方が先決じゃ。誠一郎、先に行って準備しておいてやれ」
「…………くっ」
さすがに言い過ぎてしまったと感じたのか、誠一郎は弥生の方にチラリと目を向けるも、とっさに掛ける言葉が浮かばず、結局そのまま立ち去ってしまった。
「まったく、少しばかりは女心をわかってやっても良かろうにのぅ」
どこか気まずげな表情をしながら、無言で退出する誠一郎に桜姫は困ったような笑みを浮かべて見送る。
「して、蒸し返す様で悪いが、いったいどんな奴にやられたのじゃ? 弥生」
「え?」
すぐに真面目な顔で自分と向き合いながら、不意に問いかけられた声に弥生は呆然としてしまう。
「いくらなんでも弥生が私情で治療を遅らせる様な判断をするとは思っとらんよ。本来なら誠一郎の奴もな。……まったくあやつときたら、お主の事になると途端に冷静さを無くしおるからのぅ」
「うぅ……ぐすっ……すみません……っ」
桜姫からの思いもよらぬ温かな言葉に涙ぐむ弥生。
よいよい。と桜姫に優しく頭を撫でられると、弥生は涙を流しながら心地良さそうに微笑みを浮かべた。
涙も落ち着き、落ち込んだ心も平静さを取り戻したところで、弥生は改めて姿勢を正すと桜姫からの問いに答える。
「すみません。桜様のご期待に添えるものではなく、治療を先延ばしにしてしまったのは……私の私情です」
「なんとっ。碌な男がおらぬ村じゃったか!?」
「――っ、い、いえ。そうではなくて、ですね……」
桜姫のあまりにも予想外な返しに、弥生は思わず吹き出しそうになるのを必死に堪える。
冗談交じりの言葉ではあったが、弥生の口から『治療する側』の問題ではないという答えが出た事で、桜姫は内心で複雑な心境になっていた。
弥生が帰還せずに連れ去られたのであれば、考えるまでもなく一大事であり、すぐに捜索活動が始まる。
その場合はたいてい背後に知性を有した強力な妖怪が関わっていることが多いからだ。
連れ去る知能がなくただヤり捨てるだけならば、自力なり救助なりされて人里へ戻る事さえできればすぐに治療ができる。
少なくとも弥生は連れ去られてはいないのだから、今回の依頼を受けた際に拠点にしていた村に戻りさえすれば治療できる環境にあった……というのに、それをしなかった。
「……妖怪はお兄様の姿をしていました」
「なるほどのぅ」
桜姫が凡そ予想した通りだった。
年頃の少女の未熟な精神を揺さぶってくるという非常に厄介な搦め手で文字通り心を絡め取られてしまったのだろう。
「……厳しい事を言ってしまうが、そやつは誠一郎のまやかしに過ぎんぞ?」
「はい。それはわかっています」
頭では理解しても、心のどこかで認め切れずにいた。
その偽りの誠一郎相手に自らの意志で純潔を捧げ、愛し合い求めてしまった自分を。
「すまんの、弥生。聞くだけ聞いておいて、儂では気の利いた言葉を掛けてやることはできなそうじゃ」
「いえ、桜様にお話を伺って頂けただけでも、少し気が晴れました」
「あとは誠一郎の奴に任せるとするかの。しっかり治療してもらい、ゆっくり話し合うと良いじゃろうな」
「……はい」
***
「お待たせしました、お兄様」
「あ、あぁ。その、まぁとりあえず入れ」
弥生が治療用の部屋に入る頃には、誠一郎の怒りも納まり先程の自分が彼女に掛けてしまっていた言葉を省みていたのだろう。
互いに気まずそうな空気の中、隣合わせで腰を下ろし、少しの間無言の時間が続いていると、
「……お前の気持ちを考えずに言い過ぎて悪かったな」
「いえ、悪いのは私の方でしたから……」
まだどこかぎこちなさが解消されてはいないが、治療が先決だと誠一郎は準備を進めて行く。
「それで妖気を受けた場所はどこだ?」
「すみません、多分全身かも知れません……」
「なっ!? そんな状態で治療もせずに帰って来たっていうのかっ!?」
「……ごめんなさい」
弥生のあまりにも無謀すぎる行為に、誠一郎は再び怒りが込み上げてくるのを感じた。
「まぁいい。まずは妖気に犯された場所をしっかり確認するから服を脱げ」
「あ、は、はい……」
誠一郎に威圧的な態度で命じられ、戸惑いながら恐る恐ると衣服を脱いでいくが、その様子が余計に彼の苛立ちに拍車を掛けてしまう。
「早く脱げっ。手遅れになってからじゃ遅いんだぞっ!」
「ひっ……ご、ごめんなさいっ」
小さく悲鳴を上げた弥生は、男の前で肌を晒すという羞恥心を感じる事すら今は許されないのだと悟り慌てて衣服を脱ぎ捨て、彼の前に全てを曝け出す。
「一つずつ調べて行くから、足を開いたまま座ってろ」
「……っ、はい……っ」
弥生を怯えさせてしまった事に申し訳なさを感じたが、それどころではないと誠一郎は必死に自身に言い聞かせ、触診検査を始めていく。
「しっかり口を開くんだ」
「あ、ん……んぅ……っ」
真剣な表情でマジマジと自分を見つめてくる誠一郎の姿に、弥生は胸の高鳴りを感じる。
口腔内に入り込み、舌や粘膜に触れて、自分の唾液に濡れていく、大きく温かい指の感触。
弥生は場違いの感情だと必死に押し殺そうとするが、まだ誠一郎の目が届いていない場所で、確実に女の反応と兆候は起きていた。
「……ちっ。仕込まれてやがるな」
誠一郎が舌打ちをする。
彼としては大切な妹を穢された悔しさのあまり出た行為だったのだが、弥生にはまるで別の意味から出た行為に思えていることだろう。
ただでさえ自分の不甲斐なさに苛立たせてしまっているのに、そんな彼があまりにも場違いな状態になってしまっている自分の恥部を見てしまったら、本気で嫌われ幻滅されてしまうのでは……。
弥生がそんな想いを抱くのとほぼ同時に、誠一郎の視線は彼女の下腹部へと向けられ、
「…………ま、まぁ濡れてる方が調べやすいからな。触るぞ」
愛液を零しながら、膣口をヒクつかせ男を待ち受けている秘処を、誠一郎は気まずそうな表情を浮かべながら無言で見つめ続け、思い出した様にフォローの言葉を掛けたが、弥生はその言葉に返事をすることができなかった。
「……あ、ん……くぅ……んぁ……っ」
誠一郎に完全に幻滅されたと心は沈んでいるにも関わらず、それでも想い人からの愛撫に身体は反応してしまう自分が情けなく、物悲しさを感じていた。
「――っ、も、もう少し終わるから、我慢するんだ」
「……ぁ、は、はあぁぁぁんっ…………っ!? は、はい……っ」
彼に真面目に治療を受けている事を伝えるためにと律儀に返事をしようとしたが、口を開いた瞬間、彼の指に求めていた部分を突かれ盛大に喘ぎ声を上げてしまった。
「頼むから少しじっとしていてくれ。……辛いのは分かるが、俺だって辛いんだ」
「う、く…………っ」
「くっ……ここもかっ」
弥生の膣奥を探っていた誠一郎の指先が、彼女の子宮に産み付けられたであろう妖気の塊を発見し、さらに表情を硬くする。
彼女の膣内を散々弄り回し、べったりと愛液が付着した指を引き抜くと、その指先が菊門へと向けられる。
「最後はここだが……」
望みは薄そうだなと無神経な事を口走りそうになった口をとっさに噤む。
誠一郎なりに弥生への思いやるためにあえて必死に心を押し殺して淡々と行為を行っていたのだが、それが彼女にとっては無関心に徹されている様に感じられてしまい物悲しさを感じさせてしまう物となってしまっていた。
わかってはいたが結局自分の片思いでしかない事を思い知らされていた弥生は、不意に走った鋭い痛みに襲われた。
「ひぐっ、ぎ、が……い、痛いっ、痛いですっ、お兄様っ!?」
「力を抜くんだ。力むと余計痛いぞ」
「む、無理ですっ、お、お願いしますっ、い、一回抜いて、抜いてくださいっ!」
「今更抜く方が余計痛みが続くぞ。……見つからないな、もっと奥の方か」
声を掛けられることもなく、いきなり菊門に指を突き入れられた弥生は、彼に必死に痛みを訴えるが、まるで聞く耳を持たずに強引に触診を続けて行く。
そして、さらに指を直腸の奥深くへと突き入れると、
「あ、がっ、ぐ、ひ、い……いや、ぁぁ、んぁあああああぁっぁあっぁあああーーーーっ!?」
腸内を弄り回される痛みと未知の刺激に、弥生は腰を大きく突き出しながら膣から大量の愛液をまるで潮を吹く様に撒き散らし絶頂してしまった。
一瞬完全に意識を飛ばし身体を大きく反らしビクビクと痙攣させていたが、すぐに我に返る。
「う、うぅ……ひくっ……う、あぁ、ああ……ぐすっ……」
「あ。あぁ……、その、すまん、弥生。やりすぎた」
「ぐすっ……ひどいです、お兄様……」
真っ赤な顔を両手で隠しながら泣きじゃくる弥生相手に、誠一郎はただ謝ることしかできなかった。
できる限り早く治療を済ませようと行為を焦った結果、妹にとんでもない醜態を晒させてしまい居たたまれない気持ちになるも、だからといって止めるわけにはいかない。
「尻の方からは妖気は見つからなかったから、おそらく大丈夫だろう」
「……う、うぅ。は、はい……」
互いに相手の顔を見ることができないまま『なかった事』の様に淡々と触診結果を告げる誠一郎の言葉に、弥生も頷く事しかできなかった。
「口と膣からは妖気が確認された以上、それぞれに治療は必要だ。ということはわかるな?」
「はい……」
「おそらく進行状況的に子宮に宿ってしまった妖気の方が早く孵化してしまう可能性が高い。悪いが先にこっちから治療していくぞ」
「――っ。お、お願いします、お兄様っ」
弥生が頷き治療を受ける覚悟が決まったのだろうと判断した誠一郎は、自身も彼女を抱く覚悟を決める。
下履きを下ろし解放された彼の陰茎は、硬く屹立し反り返っていた。
極力意識しない様にと徹していたとしても、目の前の女性の一糸纏わぬ肢体に雄の本能を抑えきれることはできないのは当然だろう。
「あ、う、お、お兄様の……っ」
「お、おい。年頃の女があまりマジマジと見るな」
「あぅ、ご、ごめんなさい、お兄様……」
「これは治療なんだから、あまり深く考えるな。……なるべく早く終わらせるから、少しだけ辛抱してくれ」
血の繋がりがないとは言え妹として接してきた女性であり、更に今は亡きその両親にも多大な恩義を感じている誠一郎が、弥生を抱くという行為に強い抵抗を感じるのは仕方のない事だろう。
彼女からの淡い恋心の様な物を向けられている事も薄々感じてはいるが、それはたまたま彼女が自分以外の異性と接する機会がほとんどなかっただけに過ぎないくらいにしか考えていなかった。
いずれ育ての両親への恩返しと自分達の目標である、葛城家の再興のためにも彼女の中のまだ未確定の淡い感情を自分への恋愛感情にしてしまうわけにはいかなかった。
「力を抜いて楽にしてろ」
誠一郎の陰茎が弥生の膣口へと向けられる。
直前の触診で散々弄り回され、淫液の潮を噴いてしまった膣はすでに男を待ちわびている状態になっていた。
「……お兄様にとっては治療、なんですよね」
「っ。当たり前だろう」
決して望んだ答えが目の前の兄の口から出る事がないとわかりきっていても、それでもと一縷の望みを夢見て弥生は尋ねてみたが、誠一郎の答えが彼女の予想を裏切ってくれるものとはならなかった。
「……この、治療が終わったら、お兄様は私を二度と愛してはくれないんですよね……」
「……弥生?」
「私はお兄様の事を本当に一人の男性として愛しているんです。でも、お兄様にとっては……迷惑、なんですよね……?」
今にも泣き崩れてしまいそうな程に弱々しく儚い表情を浮かながら告げられた告白に誠一郎は答えを返すことができなかった。
「弥生。悪いが俺には、今のお前の気持ちに答えるられるだけの言葉を持ち合わせてはいない。……治療が終わったら、一度真剣に話し合おう」
自身の感情と彼女や両親の他にも世話になった人々に対しての様々な想いや葛藤の末の保留だった。
自分自身でもどこかはぐらかしてしまっていた彼女に対しての気持ちと真剣に向き合う時が来たのだろう。
そう感じた誠一郎なりの誠意ある返事ではあったのだが、それは弥生にとっても別の覚悟を決めさせてしまう答えとなってしまっていた。
「……ダメ、なんです。『治療されてからじゃ』……私のお腹にいるのは、お兄様との仔なんです……っ」
「何を言って――」
「ごめんなさい……っ」
「――ぐっ!?」
誠一郎からしたらあまりにも突拍子もない言葉に、呆然としてしまうと、その隙に弥生が彼を突き飛ばしそのまま部屋から飛び出してしまった。
「なっ、待てっ、どこに行くつもりだっ。弥生っ、弥生ーっ!!」
崩れた姿勢のまま掛けられた誠一郎の制止の声を聞かずに走り去って行く弥生。
慌てて体勢を立て直して、すぐに彼女の後を追いかけるが、その姿を完全に見失ってしまうのだった。