どこまで天狗が計算していたのかはわからなかったが、宿舎がある建物の被害がほぼなかったのが幸いだった。
野宿や天狗の住処に連れ込まれて夜を過ごす事態が避けられた事を愛莉は心の底から安堵する。
神社に蓄えらえていた食料に勝手に手を付けることに愛莉は躊躇していたが、
『もうここは儂を崇めるための場所であろう。ならば、自由に使ってしまって構うまい』
「……それもそうね。うん、ありがたく頂きます」
そんな新たな土地神の言葉に彼女は頷いた。
食事を、そして湯浴みを済ませた愛莉は早々に床に就く。
男と同じ部屋で眠るということに身の危険を感じずにはいられないが、さすがに寝室を別々にして欲しいなんて要望が彼に通るわけもなかった。
『のぅ、愛莉よ』
「……なに? 色々あり過ぎてすごい眠いんだけど?」
『さすがに生殺しが過ぎると思わぬか?』
天狗のその言葉に愛莉は早々に身体を要求されていることを察し、同時に落胆する。
せめてもう少し気持ちの整理がつくまでは、放っておいてくれる事を無意識に天狗に期待してしまっていたのだろう。
「結局、アンタも同じじゃない……。ワタシに拒否権なんてないんだし…………したかったら、好きにすればいいじゃないのよ……」
『そんなに不安そうに身を固くし震わせておっては強がりもバレてしまうぞ?』
クツクツと笑いながら、身を寄せて来た天狗の気配を背中に感じ、愛莉は反射的に身体を縮めさらに身を固くする。
『儂としても、自ら身体を差し出してくれるのを少しくらいは待ってやろうとは思ってたんだがのぅ……』
どこか歯切れ悪く言い訳めいた事を言っているが、どうせヤる事をヤるつもりなら他の妖怪や、あの男と同じだと愛莉は心を殺す準備を始めていく。
『やはりあの儀式が良くなかったみたいでの。お主のあの淫靡な姿に思った以上に熱く滾ってしもうたわ』
「……だからなに? そもそもワタシにあんな恰好させたのはアンタでしょ」
冷たく突き放すように言い返すが、天狗は惚けたような笑いを上げるだけだった――それが少しずつ彼女の心に怒りを沸き上がらせ始めていく。
「――っ! やるなら、さっさとしなさいよっ!! ワタシが今までに何回襲われて無理矢理されたと思ってんのよっ!! いまさら、アンタ一人……一人くらい増えたって…………っ」
『そうじゃの、そうじゃの。辛かったのぅ、よしよし』
半ば八つ当たりめいた感じで当たり散らしてしまったにも関わらず、天狗はそれを軽く受け流し子供をあやす様に愛莉を宥めていく。
「……ぅ、っく……こ、子供じゃないんだから、あ、頭撫でないでよ……」
彼女にはその心の余裕の差が、まるでそのまま大人と子供の差の様に感じられ、気恥ずかしくなっていた。
『別に子供扱いなどしとらんぞ? こんなに立派な乳がついとるんじゃっ、ムホホ。ずっしりとよく実っておるのぅ』
「んあぁっ……ぁ、ん。……っ、きゅ、急に胸触らないでよっ」
慰めようとしてくれるのかと思いきや一転、品定めをするかのように胸を撫で回しながら揉み抱くという一貫性のない天狗の行動に愛莉は心を乱され続ける。
『おぉ、すまんの。まさかここまで乳が敏感だったとは思わなんだ。うぅむ……これは、やはり素晴らしい逸材かもしれんの』
「くっ……」
どうせ自分で厭らしい妙な妄想でもしているのだろうと愛莉は涙目になりながら、キッと天狗を睨みつける。
今の自分にはせいぜいこんな事くらいしかできないが、心だけは絶対に屈してなるものかと頑なに心を閉ざす。
『のぅ、愛莉よ。別に今すぐ儂の子を孕めと言っておるわけではないのだぞ? できる限り儂も妻の意志を尊重したいと思っておるしの』
「そもそも私に最初から拒否権なんてないって何度言わせるの? シたくないって私が望んでも受け入れる気なんてないくせに」
『うむ。そこは愛莉にも儂の意志を尊重してもらわなくてはの。そこで一つ提案なのじゃが……』
「…………………………」
どうせまた碌でもないことを言い出すのだろうと、愛莉は無意識に身構え続きの言葉を待つ。
『方法はお主に任せるから、儂の魔羅の熱き滾りを鎮めてくれぬか?』
「…………………………」
『む? なんじゃ、もしや女陰で受け止める以外の方法を知らぬのか? ……なんとっ!?』
「いや、知ってるから。勝手に興奮しないでもらえる?」
『おぉ、そうかそうか。ならば如何なる方法でも構わぬ。よろしく頼むぞ』
布団の中でいそいそと天狗は下穿きを脱ぎ出す。衣服の戒めから解放された途端、その先端部が彼女の身体にわずかに触れた。
「きゃっ!? なっ、ちょ……なにいきなり脱いでんのよっ!?」
想像以上に大きく熱いモノが足に触れた感触に愛莉は全身が総毛立ち悲鳴交じりの声を上げる。
『カッカッカッ。男を知っておると豪語しておる割に相変わらず初々しい初心な反応よのぅ。どうじゃ、これが儂の自慢の魔羅ぞ』
そう言いながら徐に愛莉の手を掴むと、グイグイと押し付け始める。
「きゃあああぁぁぁぁっ!? や、やめてっ、そんな汚い物、触らせるなあぁぁぁぁっ!?」
『むおおっ。これこれ、愛莉よ。そんなに強く握ると貧相な雄のモノなど簡単にへし折れてしまうぞ?』
半狂乱に掴まれた手を振り解こうと力を込めると自然と手に握りこまされたモノを握る力も強くなってしまい。
彼女の手は体験したの事のない大きさと硬さを誇る棒状の物体が熱くドクドクと力強く脈打つ感触を余すことなく自身に伝えてしまっていた。
「うぅ……もういやぁ……」
『少々荒療治となってしもうたが、まぁ仕方あるまい』
硬く屹立した天狗の魔羅の感触に何度も何度も悲鳴を上げ続けたが彼女の手が開放されることはなく、やがてその悲鳴が収まるころには遂に愛莉がその感触に慣れてしまっていた。
「うぅ……なんで事あるごとに……そうやってワタシをいたぶって、辱めて楽しいの……?」
『うーむ。決して辱めることを楽しんでおるわけではないつもりじゃが……実に難しい質問じゃの』
「はぁっ!?」
『愛莉は気が強いというわけではないが、できるだけ動揺したり傷ついた本心を見せないようにと飄々としておることが多いからのぅ。そんな女子の戸惑いや羞恥に乱れた顔というのは……うむ、実に興奮し股座が滾る』
「……………………変態」
まったく悪びれずにそんな事を言い切った天狗に絶句した後に、愛莉はそう一言だけ返した。
『ほれ。早く魔羅を鎮めてくれんか? 今にも儂のこの強靭な自制心や理性をもってしても抑えきれぬ本能のままにお主を貫いてしまうやもしれぬのだぞ?』
「くっ……やればいいんでしょっ!」
天狗に急かされると、愛莉は仕方なく魔羅を持つ手を上下に動かし扱き始める。
無理やり握り込まされたわけではないが、否応なくすっかり手に馴染まされてしまったそれを、自分の意志で……。
知りたくもなかった方法はトラウマとなって記憶に残っている。
無意識にその時と同様に、目を強く閉じ、顔を顰めながら手だけは、無理やりではなく今度は自分の意志で強く握り、上下に乱暴に動かす。
『おぉっ、おおおぉぉぉっ!!』
「――っ! くっ……」
天狗が歓喜の声を上げ始めるのと同時に、愛莉の胸にあの時の屈辱感と悔しさが込み上げてくる。
悔しいけど、あの汚らわしい液体をぶちまけさせれば、この地獄から解放される。
他の妖怪ならいざ知らず、少なくとも彼だけはその約束を反故にすることはないと信じている。
それが唯一の救いだった。
『おおおおっ、なんと素晴らしき手の温もりかっ』
「……はぁ…………っ」
自分の胸中にあった屈辱的な記憶とはあまりにもギャップがありすぎる場違いな天狗の歓喜と情けなさを感じる声に愛莉は思わず脱力しかける。
『まだじゃっ、まだ果てるわけにはいかんぞぉっ!!』
「…………………………はぁ~」
本当に自分はいったい何をしているんだろう?
いつの間にか悲壮感はすっかり消えてしまったが、どこまでも空虚な虚しさが彼女の胸の中で生まれつつあった。
「……そんなに気持ちいいなら我慢しないで、さっさとイきなさいよね」
『ダメじゃっ。儂はまだお主の手淫を味わいつくしておらぬっ。まだまだ果てるわけにはいかんのじゃあっ!!』
「あぁっ! もうっ、さっさとイけ。バカっ!!」
『お、おおっ、おおおお~~~~っ!!』
さらに強く握り締め、激しく上下に扱き続ける。
そして、愛莉は何度も何度も手を動かし、その時の予兆を感じようと意識を手に集中する。
硬くビクビク脈打つ熱い魔羅の感触を感じながら、その先端からマグマの様に熱い精を迸らせるの気配を待ち続けていた。
しかし……彼女が手を動かしながら、待ち続けていてもその時は訪れなかった。
「……ねぇ、さすがに手が疲れて来たんだけど……いつまで我慢し続けるつもりなの?」
『む? あのまま拙い手淫で果ててやるのも悪くはないんじゃが、それはそれで簡単に果てる男と思われるのも癪な気がしてのぅ』
「もしかしてまたワタシを揶揄って楽しんでた?」
『完全に演技というわけではないがの。愛する妻が儂の滾りを必死に鎮めようとしてくれておったのじゃから、そのまま流されてしまっても良かったんじゃが……端的に言うと愛莉の技術が絶妙に拙かったと言ったところじゃの』
「はぁっ!? なによそれっ!?」
『魔羅の捌き方を手解きするのは簡単じゃが……それをしてしまうと今の拙い時期の手淫を楽しむ期間が一気に減ってしまうからのぅ』
「何度も拙いって言わないでよっ」
絶頂に導かれるにはどこか物足りなく、かといって下手に技術を教えてしまうと、その無知故の個性を潰してしまい兼ねない。
そんな天狗からの評価に、所詮男なんて、とどこか見下した感情を抱きかけていたところで、感じ始めた自信を砕かれ愛莉は憤慨した。
「あ~あ……なんかムカつくなぁ」
『むぅ、儂の言い方が悪かったから、そうむくれないでくれんか愛莉』
「だいたい碌な思い出がないんだから、そもそも下手なのは当たり前じゃないっ」
『う、うむ……』
想像以上の失言だったことに気づき、天狗はただ申し訳なさそうに黙り込んでしまう。
「……もうまどろっこしいのは、やめにする。仰向けになって」
天狗が彼女の言葉に従い体勢を変えると、愛莉はその身体の上に覆いかぶさるように跨る。
彼女の顔がわずかに引き攣らせながらも、覚悟を決めたような表情をしていたことに天狗は気づく。
『愛莉よ、儂の勘違いかも知れぬが……あまり早まるでないぞ? 儂からすれば大サービスをしてもらえるのかも知れぬが、無理は禁物じゃぞ?』
「ふ、ふん。どうせ遅かれ早かれアンタに捧げなきゃいけないんでしょ」
愛莉は天狗の魔羅を掴み直すと、大きく膨らんだ亀頭を自らの膣口にぐっと宛がう。
そのまま少しずつ力を込めて押し込み続け、ゆっくりと膣内へと飲み込み始めていく。
『お、おぉっ。な、ナカへ、愛莉のナカへ導かれてゆくぅぅぅ……っ』
「あ、ぐっ、う、うぅ……お、大きすぎ……っ」
愛莉が腰を下ろしていく度に、徐々にだが不釣り合いな大きさの魔羅が狭い入り口を押し広げ中へ中へと通過していく。
「う……く……はぁ……はぁ……こ、これ以上は……む、むりか……っ」
『おおっ、うねっておるっ。儂の魔羅を飲み込もうと、愛莉の女陰がうねっておるぞおぉぉぉぉーーーーっ!!』
実際には半分も入れることはできなかったが、そんなことは関係なく天狗はただただご満悦な様子だった。
そんな彼の姿に愛莉は複雑な気持ちになりながらも、ついに毒気を抜かれてしまっていた。
(本当にコイツは違うんだね)
自分を無理やり、或いは弱みに付け込んで性の捌け口にしてきた相手とは違い本当に自分に好意を抱いて接してくれている。
さすがにまだ恋愛対象としてみるのは難しいが、それでも少しくらいなら心を開いてみてもいいかもしれない。
「ん、く……あ。言い忘れたけど……ぃ、イくのは勝手だけど……な、中に出すのはダメ、だからね……っ」
『なんとっ!? ここまで身体を許しておいて、まだ儂に我慢しろと言うのかっ!?』
「へ、へ~……わ、ワタシはまだ妊娠したくないって言ってるのに、我慢できなくなって、中に出すつもりだったんだ……」
『むむ……っ』
「もしかして、やっぱりこれも演技だったりするのかな? ぁ、んっ……好きな相手のおまんこでも、ワタシは、まだまだ……つ、『拙い』もんね……っ」
彼に散々揶揄われた愛莉は挑発的な笑みを浮かべながら、意趣返しを試みる。
中に出されたら、怒ってそれを口実にしばらく本番を禁止させてやってもいいし、抜いてから出すならともかく、今度も凌ぎ切られたら我慢できる程、自分に魅力がないのかと詰め寄ってみても面白い反応が見られるかもしれない。
そんな彼女の考えを見透かしているかの様に、その挑戦を受け天狗はくつくつと笑う。
『ほぅ。妻でありながら儂の愛を疑うか、愛莉よ。よかろう、儂はピクリとも動かぬ。愛莉が儂を果てさせるのだ』
「んくっ、ほら、やっぱり全然余裕そうじゃない……こんなに、ワタシが、う、動いてる、のに……さ」
『ククっ。確かに不慣れなお主の腰技に屈するは儂の男の沽券に関わるからの。とはいえ、それでお主に恥をかかせるわけにもいかぬ』
「じゃ、じゃあ……どうする、つもりなの……っ」
愛莉は腰をくねらせ、あわよくばすまし顔の天狗を果てさせてやろうと膣壁に魔羅を擦り付けながら、意味深な発言をする彼の意図を探る。
『数を十かぞえよ』
「……は?」
『腰を振りながら十かぞえてみよ。これより愛莉が腰を振り、それが十に達するのと同時に儂は果てて見せよう』
「え? い、いち、に、さん――」
『違うっ。しっかり丁寧に腰を振るのに合わせて数えよっ!』
天狗のあまりの迫力に愛莉は思わず頷いてしまう。
そして、言われた通りに数をかぞえ始める。
「1……に、2……3……んっ」
『乱れたな。やり直しじゃ、また一から数えよ』
「……くっ。1……2……3……」
『うむ、よい調子じゃ、そのまましっかり十まで数えるのだぞ』
「……4……5……6……」
不意に愛莉はこの行為に顔から火が出そうな程に無性に恥ずかしさを感じたが、その感情を必死に押し殺す。
ここで心を乱してしまえば、またやり直しになるからだ。
「……7……8……9……」
気づくと天狗の口車に乗せられてとんでもない羞恥プレイをさせられてしまった事に気づいたが、それももう終わる。
「じゅ……んあっ、あ、熱っ……ぁ、あ、ん……」
愛莉が10を数え切るのと同時に、膣内に収まっていた魔羅から、熱いものが一気に撃ち出された。
熱い白濁のマグマは、入りきらなかった膣内のさらに奥地を目指し勢いよく流れ込み、最奥の壁へと到達し一気に弾けた。
第一射が膣奥へと到達すると間髪無く打ち込まれる第二射、第三射も同じく膣内の最奥の壁へと打ち込まれ、行き場をなくした白濁液はさらに奥の子宮口へと逃れるように流れ込んでいく。
「あ、熱いのが、お、奥まで……ん、ぁ……っ」
『カッカッカッ。どうじゃ、これが儂の実力よ』
「――っ!? って、なに勝ち誇った顔してんのよっ!? ワタシ、中に出すなって言ったよねっ!?」
そこまで深くまで入っていないから仮にもし射精されても、と油断しきっていた愛莉は天狗の射精を甘く見ていた。
爆発寸前まで大きく膨らんだ魔羅から撃ち出された熱いモノが、どんどん上へと昇ってくるのを感じていたが、まさかそのまま勢いが衰えることなく子宮にまで達するとは思ってもいなかった。
『何を言っておる。儂も言ったではないか、儂はピクリとも動かぬ。愛莉が十かぞえるのと同時に果ててみせようとな。であれば、儂の果てるのに合わせてどう対処すべきかを考えるのは愛莉の方であろう?』
「んなっ!?」
中に出すなという約束を無視し、思いきり精液を膣内にぶちまけたというのに天狗は全く悪びれずに言い切って見せた。
『ふ……愛莉よ。そう案ずるな。妖怪と人との仔などそうそう孕める物ではあるまいての』
「何言ってんのよっ。好き勝手に攫っては孕ませられてるから困ってるんじゃないのっ!」
『それは同時に妖気も与えた時の話ぞ。儂は子種は遠慮なく放たせてもらったが、妖気は使ってはおらぬ』
「………………それ、信じられるの?」
『信じるか信じないかは愛莉次第じゃろうて。どうしても心配であれば、もう夜も更けておるし明日にでも、またあの泉で身を清めれば良かろう』
十中八九孕まされたと思っていたところで、まさかそれを妖怪自身に否定された事に驚きつつも天狗の言葉の真偽を愛莉は自分の中でゆっくり吟味する。
「はぁ……わかったわよ。今更アンタがしょうもない嘘言うとは思えないしね」
『儂はすぐにでも作って欲しいんだがの。愛莉がまだ作りたくないというのであれば、この辺りが夫婦としての妥協点であろう』
「……でも、アンタに迂闊に本番を許すと危険だってのは十分わかったから、当分はさせるつもりはないからね」
『なんとっ!?』
突然のお預け宣言に天狗はがっくりと項垂れた。
『……仕方ない。今後もコツコツとパパ活をがんばるしかないのか』
天狗がそんな言葉をぽつりと口にした瞬間、冷たい視線が彼を射抜いた。
「……最っ低。いくらなんでも言って良いことと悪いことの区別がつかないなんて、やっぱり妖怪だね」
『むおっ!? 愛莉よ、急に何をそんなに怒っておるのじゃ!?』
「なに? 言うに事欠いてその言葉……ワタシを貶してるの?」
確かに身体を要求され、その対価を得た関係と言えなくもないが、自分の決意と覚悟をそんな言葉に置き換えられるとは思いもしなかった。
突然の言葉にカッとなってしまったが、明らかな失言に気づいたのか、自分の怒りを感じ取ったのか、申し訳なさそうにしている天狗の表情に気づき、幾分か表情を緩める。
『む……。すまぬ、愛莉よ。もしやパパ活とは儂が考えておる意味とは違っておるのか?』
「はぁ……どういうつもりで言ったのよ? ……ちょっと落ち着いて考えてみたら、なんとなく想像ついたけどさ」
『パパとは、つまり父親であろう? あまり子作りに乗り気でない妻をその気にさせるための夫側の行いの総称ではないのか?』
『全然違うから」
概ね予想した通りの誤用に呆れ切った表情でばっさりと言い放ったが、すでに愛莉の怒りが治まっている事を察した天狗は安堵する。
その後、天狗はまた新たな一つのルールを設ける。
『愛莉よ。儂らの間で自慰行為を禁ずる。せっかく溜まった欲情を勝手に発散されてはいつまでも儂に抱かれてくれぬかもしれんからの』
「そう言ってワタシに毎日アンタの処理をさせるってんなら、お断りだからね」
『おぉっ!? それは妙案であるなっ』
「え……? もしかして本当に気づいてなかったの……?」
まるでその手があったかと言わんばかりに驚いた表情で手を叩く天狗の姿に愛莉は余計なことを言ってしまったかと後悔する。
『カカッ。さすがに冗談じゃ。とはいえ、別に儂も一方的に要求するつもりはない。お主に求められたときにいつでも応じられる様にしておかねばならぬからの』
「ま、そりゃそうよね。って、もしかして今回のは本当に限界寸前だったってことなの?」
『カッカッカッ』
答えずにただ笑うだけの天狗の様子に愛莉はなんとなく察すると、ため息を吐いた。
「もし嘘だったら怒るけど、本当に限界がきたって言うなら……ま、少しくらいは手伝うよ。襲われたくないし」
『それは重畳。ムホホ、我慢する楽しみが増えるというものじゃ』
「だからって身の危険を感じることは言わないで欲しいんだけど……」
『時に愛莉よ。お主の自慰は日に何度、あるいは何日に何回ほど行っておるのじゃ? ぜひ参考までに教えて欲しいのじゃが』
「――っ!? 誰が言うかっ、この変態っ!!」
***
その後、天狗に再び舞を要求され、愛莉は本殿で彼の前に立つ。
『おおおぉぉぉっ!? なんと……なんと眼福っ』
「ちょっ!? そんなにジロジロみないでよっ!? 今更ワタシの裸なんて見慣れてるくせにっ」
愛莉は最初に天狗に要求された格好の舞衣のみを身に纏い、後に妥協として着用を許されていた下着は身に着けていなかった。
鼻の下を伸ばしマジマジとじっくり上から下へと舐めるように見つめてくる熱い視線に思わず身を縮め両腕で胸元と下腹部を隠す。
『何を言うかっ。こんなに素晴らしき物を二房もぶら下げおって見慣れるわけがなかろう。なんじゃ、そんなに儂を誘惑しおって、求めておるのか? そうなのじゃなっ!?』
「……ま、うん。半分正解。もう半分は舞が終わってから、言うね」
頬を赤らめながら頷くと愛莉は、隠していた腕をどけゆっくりと舞を始める。
基本は穏やかな川の流れの様に緩やかな動きから、不意に緩急が動きが加わると、それにつられる様に大きな双丘がぷるんと揺れる。
天狗の食い入るような熱い視線を感じながらも、愛莉は自分流のうろ覚えで出鱈目の、目の前の天狗のためだけに捧げた舞を踊り続ける。
そして舞が終わる頃には、羞恥心で熱くなった全身からは玉の様な汗を滴らせ、双丘の鮮やかな桜色の頂点は主張するように大きく膨らんでいた。
秘裂から流れる汗とは違う液体が太ももを伝い、ポタポタと糸を引きながら落ちた雫は、床にいくつも染みを作っていた。
『うむ。うむ。実に良い舞であったぞっ。これでまた暫くは結界は安泰じゃろう』
「はぁ……。ずっと鼻の下伸ばしてエッチな所しか見てなかったくせに、調子いいんだから」
舞を終え、二人にとってはここからが本番と天狗が愛莉を手招きし、彼女もそれに従い彼の元へと身を寄せる。
大きく武骨な手が、彼女の大きな乳房へと伸ばされるが、不意にそれを愛莉の手が制止させる。
『……なんじゃ、またお預けか?』
「うん。ちょっとだけ。……ちょっとだけワタシの話、聞いて欲しいから」
『せめて触りながらでは……ダメか』
「ダメ。今触られたら、話どころじゃなくなっちゃうし……すぐ済むから。お願い」
仕方ないと天狗は手を引っ込めたが、視線は名残惜しそうに自分の顔と乳房を往復するのを見て、愛莉はおかしそうにそれを笑う。
『せめて、これくらいは良いであろう?』
「うん」
すると今度は天狗の手が胸ではなく肩を抱き、そのまま彼の方へ抱き寄せられると愛莉は嬉しそうに頷いた。
「……話って言うのは、前にも軽く話したことだけど。ワタシがアナタに契約を持ち掛けた時の事」
『ふむ。人間に一切の危害を加えることを禁じる。か』
「えぇ。その時アナタはワタシに聞いたよね。もし自分を祓おうとする者、自分に挑む者が現れたら……」
『大人しく首を差し出すか、尻尾を巻いて逃げればよいのか。か』
「あの時ワタシは誰もアナタに刃を向けさせない。って言ったけれど、多分……ううん。きっと無理だと思う」
『……先日現れた退魔巫女か』
「うん。アイツはワタシを探してここまで来たから、絶対に刃を収めることはしないはず」
同郷の花杜神社所属の新人退魔巫女、花村みくる。
彼女がここまで来た理由は一つしか考えられない。
任務先で完全に消息が途絶えてしまった自分の任務の引継ぎと可能であれば身柄の捜索と救出。といったところだろう。
村もその周辺の森も平穏で結界の強度も問題ないのだから、おそらく任務は完遂と判断されるだろう。
あとは自分の捜索を彼女がどれだけ粘り続けるか、だが……。
「あのバカ。もう何日も何日も森に入り過ぎてて、さすがに危なすぎる」
確かに結界は貼り直されているが、絶対に安全というわけではない。
妖怪が現れないわけではないのだ。なにより少し前まで我が物顔で歩いてた縄張りをいきなり奪われて気が立っている奴がいてもおかしくはない。
『それだけ愛莉を必死に探しておるのだろう……そろそろ答えは決まったのか?』
「うん。っていうか、最初から決まってる」
『してその答えは? 聞いても良いかの?』
「アイツが……ううん。アイツだけじゃない。今後アンタに刃を向ける奴がいたら、その刃を最初に受けるのはワタシ。それだけは何があっても絶対に譲らない」
強く確固たる意志が込められた言葉に天狗は感嘆の声をあげた。
『実に勇ましい選択よの』
「だから絶対に争うことはしないで」
『……お主が死ぬ時までは、か?』
「……………………はぁ……なんで、そうやってすぐワタシの考えを見抜いちゃうかなぁ……」
『浅はかな小娘が儂を謀れると思う出ないぞ、まったく。お主を失ったら儂は何を求めて生きればよいのじゃ』
「だからってワタシには他の人の命なんて重すぎるし……」
『愛莉の方から持ち掛けた契約なのじゃから、ちゃんと責任をもつんじゃ……ほれ、今から未熟なところをたっぷり鍛えてやるから、のっ』
天狗が愛莉の双丘を鷲掴みにすると、彼女の身体が大きく跳ねる。同時に秘処から大量の愛液が一気に溢れ出る。
「きゃっ!? ちょ、ま、まだ、話終わってな……んっ、あ、あぁっぁぁぁ、ん……は、ぁん……っ、ま、まだ……っ」
『ダメじゃ、もう終わりじゃ。何がちょっとじゃ、散々くだらん話に付き合わせおって』
「ひ、ひどい……く、くだらなく、なんてぇぇええんっ!? あっ、ああぁぁぁんっ……はあああぁぁんっ」
天狗が剛直で愛莉の女陰を一気に貫くと、彼女の意識は一瞬で快楽に流されてしまいそうになる。
「あっ、あっ、あっ、んあああぁぁぁ……は、ぁ……んっ……」
『カッカッカッ。すっかり儂の形を覚えおって。そのまま快楽を貪っておれ』
根元まで咥え込めるまでに馴染んだ膣を、天狗の魔羅が何度も往復する。
剝き出しの陰核を指先で摘ままれ、弾かれては鋭く甘い刺激が全身を走り抜ける。
今だけは敏感すぎて疎ましい胸を、ここぞとばかりに激しく弄られたいという衝動に駆られ、自分でも触れ始めてしまっていた。
『儂らは夫婦であろう。一人で背負い込む必要などない。二人で考えれば良き考えも見つかるであろうて、の』
「うん……」
『うむうむ。良い返事じゃ、ではそろそろ褒美をくれてやるとするかのう?』
すっかり安心しきって緩み切った表情の愛莉に、ニヤニヤとわざとらしく笑い彼女の反応を伺う。
「うん、いいよ。……いっぱいちょうだい」
『なんとっ!? よ、良いのかっ? 本当に良いのかっ!?』
「ふふっ。なに驚いてんのよ。自分からくれるって言ったくせに」
『もしや、これが噂に聞くデレ期という奴か? そうなのじゃなっ!?』
「……ほんと、どこからそんな変な知識ばっかり仕入れてくんのよ」
いつの間にか天狗の腕に抱かれていた愛莉は上目遣いでどこか冷ややかに見下すような視線という器用な表情で天狗を見ていた。
『おおっ!? 初めて見る愛莉の表情っ!? なんと素晴らしき、なんと素晴らしきことかあああぁぁぁっぁぁぁぁーーーーっ!!』
「なっ!? なんでこんな時にぶちまけてんのよっ!? もっと出すのにふさわしいタイミングがあったでしょーっ!?」
あまりにも想定とかけ離れた状況で子宮に大量の精を注がれる感触と快感に身体と頭のタイミングが盛大にずれてしまいながら、愛莉は天狗の絶頂にそのまま引っ張られる様に自身も果てさせられてしまうのだった。
『カッカッカッ。やはり愛莉とのまぐあいは実に心躍るのうっ。今回ばかりは負けを認めざるを得ぬか。完全に出し抜かれてしもうたわ』
「うぅ……なんであんな顔の時にイくのよっ。ほんとに変態じゃないっ」
『何を言うておる。愛莉の可憐さとクールさの両面が実によく出ておる素晴らしき顔であったではないかっ』
「だから、せ……ぇ……し、シてる時に、そんなもの求めないでって言ってんのよっ」
『……ならばもう一度試すか? 今度は愛莉の望むままに精を注いでやるぞ?』
不敵な笑いを浮かべながら再戦の申し出に愛莉は言葉を詰まらせた。
答えは決まっているが、相変わらずその天狗の見透かしているような態度が少し気に障る。
「別にワタシに合わせなくていい。アナタのタイミングで自由にやって。その方がワタシも、上達できると思う……から」
『ふむ。よかろう』
二人は小さく頷きあうと、ゆっくりと互いに相手を求めあい始める。
それは、まるで戦いを始めるかのような妙な緊張感と熱く異性を求める身体の疼きを鎮め合う情欲が交じり合った空間を作り出し始めていた。
開戦直後、天狗の奇策が炸裂する。
「なんで中に入れた瞬間、いきなり出してんのよっ!?」
『言ったであろう。儂は愛莉相手ならばいつでも自由に果ててみせようとなっ』
そのまま天狗の魔羅は射精直後に関わらず、すぐに第二射を放つべく大きく膨らみ躍動を始め、再び大量の精を彼女の膣内に放出する。
『カッカッカッ。どうした愛莉よ。お主も早く果てねば、先に儂の子種が枯れてしまうぞ?』
「なっ!? ちょ、いくらなんでも早すぎでしょっ。勝手に一人でイきまくんないでよーーーっ!?」
いつか本当に彼の子を孕んでしまうだろう。
……だがその前に、それまでにせめてもう一度くらいは絶対に自分の実力でイかせてやる。愛莉はそう強く決意するのだった。