「はぁ……はぁ……私はいったい何をしているんでしょう……」
突発的な衝動のままに誠一郎からの治療を拒み、桜杜神社を飛び出してしまった弥生は今も当てもなく森の中を彷徨っていた。
自分の行いが間違っている事はわかっていても、あんな事をしてしまった手前、いったいどんな顔をして誠一郎の元へ戻れるだろうか。
このままではいずれ腹の子がそう遠くない未来に生まれてしまう事は避けられないだろう。
大切な子をこんな場所で産むわけにはいかないが、だからと言ってどこか当てがあるわけでもなかった。
「せめて、どこか安心できる場所でこの子を産んであげたいのに……」
自分以外の生命の熱と自身の存在を主張するかの様にわずかに躍動する自身の下腹部を優しく撫でながら、弥生が途方に暮れていると、
『なんだ、また来てしまったのか?』
「……おにい、さま……」
弥生自身も目の前の存在が本物の葛城誠一郎ではない事には気づいていたが、思わずそう言わずにはいられなかった。
『なるほど。大方、腹の子を消されそうになって慌てて逃げ出してきたってところか』
「……はい。それで、出会ってしまった私をどうするつもりですか?」
目の前の男は確かに自分の腹の中にいる子の父親に当たる存在だが、妖怪は基本的に生殖行為を最優先に行うとされている。
最初の出会いからしてかなり特殊な存在である彼が、すでに孕ませ終えた自分を襲おうとするとは考えにくいが、それでも腹の子に危害を加えかねない存在となるのであれば、弥生は容赦するつもりはなかった。
『落ち着け弥生。あまり力むな。身体にも腹の子にも障るぞ。少し行った先に人間が作った小さな山小屋がある。話はそこに行ってからだ』
「え? ……あ、あの、いいんですか?」
弥生は良く知っている兄そのままの口調で窘められ、それどころか自分以上に自分達の事を気に掛けている様な声を掛けられ、戸惑いながら訪ねてしまった。
『兄妹が一緒に暮らすのに何の問題もないだろう? 何より、お前には俺の子を産んでもらわねば困るからな』
「っ、あ、ぅ、あぁ……ぐ、ぐすっ、は、はい……あ、ありがとう、ございます……っ」
本物の誠一郎からは絶対に掛けられないであろう言葉に、弥生は涙を滲ませ、泣き崩れながら礼を言った。
もはや弥生には本物も偽物も関係なかった。
ただ目の前の誠一郎に自分の気持ちを受け入れられた事だけで、彼女の心は救われたのだろう。
こうして弥生と誠一郎の同居生活が始まるのだった。
***
『まともな食料が調達できなくてすまないが、少しの間だけ辛抱してくれ』
「いえ、こうして落ち着ける場所があるだけでも十分過ぎます」
『まずは一人目を産んでからだな。お前が動けるようになれば、ここを任せられるようになる。そうすれば、俺は近くの人里でもう少しマシな食料が得られるようになるだろう』
「あ……。私、本当にお兄様との子供を産むんですね」
『嫌か?』
「いえ、今更ですけど、改めて実感が沸いて来てしまって……その、嬉しくて……」
『そうか』
それっきり二人の会話は途切れてしまったが、弥生は完全に目の前の誠一郎に心を許してしまっていた。
その姿に『なりすまし』も、弥生を完全に自分の虜にすることができたと確信するのだった。
数日後、弥生は一人目の子を産んだ。
『良くがんばったな、弥生』
「はぁ……はぁ……。ふふ、はい。私と、お兄様の赤ちゃん」
誠一郎に優しく頭を撫でられながら、弥生は生まれたばかりの赤子を優しく抱きしめている。
人の姿ではあったが、妖気の影響を受けたのかその頭には異形の証とも言える小さな角が生えていた。
だが、弥生にとっては気に留まる様な事ではなかった。念願の誠一郎との間にできた子供である事には変わりないのだから。
出産から数日経ち、体力が回復した弥生に生まれた子の育児と留守を任せ、誠一郎は山中や人里を巡り食料や弥生の生活に必要な諸々の物資の調達を行うという生活が始まる。
当初は不安を感じていた弥生ではあったが、少しずつ充実して行く生活に次第に幸せを感じながら過ごす日々を送る様になっていく。
生まれた半妖の子の成長速度は妖怪よりは遅く人よりは早かった。
最初は乳を飲み、眠る事しかしていなかった赤子がみるみる内に成長いき、すでに一人で立ち歩く程にまで成長していた。
すくすくと成長していく子の姿に弥生は驚きこそしたが、純粋な人との違いに怯えや恐れを感じる事はなかった。
日ごとに成長していく姿に日々想いを馳せながら、弥生が子供を寝かしつけたのを見計らって、誠一郎は彼女の背後に回る。
「っ!? きゃっ、お、お兄様っ!?」
突然、誠一郎に後ろから強く抱きしめられながら、自身の尻に押し当てられた熱く硬い物の感触に弥生は驚きの声を上げた。
『まさか一人で満足したわけじゃないだろう? これからお前にはまだまだ産んでもらうぞ。今更、嫌とは言うまいな?』
「あ、そ、その……は、はい。お、お手柔らかにお願いしします」
『くくっ。久々に俺の魔羅と精をたっぷりと味合わせてやる』
誠一郎は弥生の着物の胸元をはだけ彼女の乳房を露わにする。
大きくパンパンに張りつめた乳房を荒々しく揉み抱くと、膨らんだ先端部から先ほどまで子に与えていた乳が勢いよく噴き出す。
『おっと、せっかくの乳を零すのはもったいないな。どれ、一つ俺も味を見てみるか』
「あっ……や、んっ……ちょ、ちょっと、お、お兄様っ、す、吸っちゃダメですよぅ……っ」
それを見た誠一郎は躊躇なく母乳が溢れ出ている弥生の胸にしゃぶりつく。
子に与えていた時よりも強い力で乳首に吸い付き、母乳を吸われる感覚に快感を覚えてしまいそうになり慌てて誠一郎に制止を呼びかける。
「うぅ~……」
誠一郎が大人しく乳首から口を離すと、弥生は両手で胸を庇い真っ赤な顔で恨めし気に可愛らしい唸り声を上げながら彼を睨んでいた。
『別に俺が少し飲んだくらいでなくなるわけでもないだろう?』
「そ、そういう事ではなくて、お、おっぱいはこの子のためのものなんですから、お兄様はダメですっ」
弥生なりに子への授乳中に変な快感に目覚めてしまわないかという心配があったのだろう。
実際に誠一郎が何度も喉を動かし自分の母乳を嚥下している様子に妙な興奮を覚えてしまっていたのかもしれない。
『わかったわかった。それじゃあこっちを使わせてもらうぞ。俺に乳を吸われて、十分に濡れてるだろうしな』
「うぅ……うぅ~……」
『唸るな唸るな。ほら、入れるぞ』
弥生の中に、もう少し恋人らしい愛の語らいをしながら行為へと至りたいという願望があったのだろう。
自分のわがままを聞いて欲しいとでも言いたげな不満気な表情を浮かべた弥生に苦笑を浮かべながらも、誠一郎の魔羅はすでに弥生の膣口へと宛がわれていた。
彼女自身の意志はどうあれ、体の方は男を受け入れる準備が整い求めているのだから、それに応えてやる方が自分にとっても都合が良い。
もはやこの雌は自らの意志で苗床になる事を選んでいるのだ。ならば存分にその役目を果たしてもらうとしよう。
そんな『なりすまし』の本心に気づく事なく、膣内に侵入してきた陰茎を弥生は積極的に受け入れ、交わり合う事で得られる快感に身を震わせる。
「んぁっ……あ、あぁ……お、おにいさまのが、どんどん……な、中に…………あぁぁぁああんっ」
『くっ、子を産んだばかりだと言うのに、こんなに締めつけてきて、よっぽど俺に抱かれたかったみたいだな』
「はいっ……欲しかった……欲しかったんですっ……あの時の、お兄様のが、忘れられなくてっ……それなのに、自分でするだけじゃ、全然物足りなくて……」
まるで今までの鬱憤を晴らすかの様に、がっしりと誠一郎にしがみつきながら激しく腰を振り続ける。
代替行為で必死に自身の性欲を誤魔化していた反動もあり、ようやく本物で満たすことができる機会を得た事で、理性のタガが外れかけてしまっているのだろう。
そんな弥生の好きな様にさせて、誠一郎は自分に跨りよがり乱れる様を愉しんでいた。
「はぁああん、お、おにいさまっ、おにいさまっ、おにいさまぁぁあぁぁああああっ!!」
『この調子なら二人目もすぐにできそうだな……んぐっ』
もはや自分の精を搾り取るという目的を忘れ、一人で果ててしまった弥生に向けて軽口を叩くと、絶頂直後で息も絶え絶えだった彼女に唇を塞がれる。
そのまま口腔内に滑り込んできた柔らかく生暖かな少女の舌が、誠一郎の舌に絡みつく。
「んぐ、じゅる、じゅぷっ……ちゅぷ、ぴちゃっ……ちゅるっ……んっ、はぁ……はぁ……え、えへへ……」
『…………よっぽど溜まっていたようだな』
大きな水音を立ち続ける程に激しく熱烈な口付けをした後に、ようやく少しは落ち着いたのか、互いの唇が離れた後に弥生は照れ笑いを浮かべた。
今は誠一郎の姿をしている『なりすまし』も、彼女の激しい求愛に少しばかり困惑していた。
篭絡させた雌に自ら腰を振らせ自分を求める様に仕向ける事はあるが、目の前の雌は自分を誠一郎の『偽物』と認識しているはずなのに、まるでそれを忘れているかの様な振る舞いに、何故か。という些細な疑問を抱いていた。
その答えは単純だった。
「だって、本物のお兄様は私の事を妹としてしか見てくれませんでしから……」
『くくっ。やはりお前にとって俺は偽物のままか』
「あ……。ご、ごめんなさい。そういうつもりでは……」
『別に俺は構わんさ。せいぜい偽物の俺に良い様に利用されて、たくさん子を孕め』
「……はい」
妖怪からすれば本心以外の何物でもない言葉が、弥生にとってはまるで自分を気遣い、さらに甘い幻想へと自分を誘う言葉に聞こえた事だろう。
いつの間にか涙で濡れた目元を拭うと、自分だけが先に果ててしまった事に気づき、膣を締めあげ、腰を振り行為を再開する。
なんとか誠一郎を射精に導こうと膣全てを擦り付ける様にして彼の肉棒を扱き続けていた弥生が、不意にペースを落とし不安げに彼に話しかけ始める。
「あの、お兄様? 私、上手くできてますか?」
『あぁ、なかなかいい具合だぞ』
「その割に全然射精してくれませんよね。子供を作れってお兄様が言ったのに、そのお兄様が精を出してくれないと私だって作れないんですよ?」
『俺をイかせるには、まだまだ経験不足ってことだな』
無遠慮にばっさりと言い切られた言葉に、さすがに弥生も、むっとしたのか頬を膨らませながら言い返す。
「なっ!? け、経験不足って、当たり前じゃないですかっ。お兄様としかこんな事してないんですからっ」
『そうだな。俺がしっかり教えてやらないとな』
「……そ、そうですよ。せ、責任とってもらわないと困りますっ」
『責任? 最初の子はもう作らせて、これから二人目を作るところだろ?』
弥生がいったい何を求めているのだろうかと誠一郎は首を傾げるが、その涼し気な表情が余計彼女を不機嫌にさせていた。
「うぅ……だから、わ、私にも、もっと教えてください…………私だって、お兄様の事を気持ち良くさせてあげたいんですから……」
『そういうことか』
「初めての時だって、私ばっかり、その、気持ち良くさせられちゃって……結局、一回も私がお兄様を最後までしてあげられませんでしたし』
『なら、少し耐えてろよ』
いつ果てようが結果は同じだというのに、なぜそういう事にいちいち拘る雌が多いのだろうか。
内心で弥生を嘲笑いつつ、望み通り精を受け止めさせてやろうと、腰を大きく突き出す。
「えっ!? んっ、ぁっ、あ、ちょ、んぁ……っ」
『くっ、いいぞ。そのまま、強く締め付けてろ』
淫蜜で満ち熱く蕩ける膣内が、中を狭めきゅうきゅうと膣襞が蠢きながら肉棒に絡みつく。
最奥の膣壁を射精寸前の大きく膨らんだ先端部で執拗に突きまくる。
「やぁ、ま、まって、激しすぎて、だ、ダメ、またイかせられちゃう……っ」
『しっかり受け取れ――っ」
強制的に射精欲を高められた陰茎が一瞬更に大きく肥大化したかと思うと、激しく収縮を繰り返し大量の精を一気に膣内へと送り込んだ。
『はぁ……はぁ……。ちゃんと我慢できたか。偉いぞ』
「う、ぁ、あぅぅ……お、おにいさまぁ……っ」
『どうした? せっかく中に出してやったというのに、物足りなそうな顔だな』
「んんぁぁぁああん……お、お願いします……っ、も、もう少し続けて……い、イきたいんです……」
『イきたくないと言ったり、イきたいと言ったりわがままだな。まぁいい。仕込みも済んで気分も良い。好きなだけ付き合ってやるさ……っ』
「――あんっ。んぅ、あ、あぁぁん、お、おにいさまの……おちんちん、き、きたぁ……いっぱい……いっぱい突いてくださいぃーーーーっ」
深々と突き上げられた衝撃と最愛の男のたくましい身体に抱かれた弥生は発情した様に、何度も激しく貪り合う様に誠一郎と愛し合い続ける日々を過ごす。
一人、また一人と妊娠と出産を繰り返していき、その間隔が徐々に短くなっていく。
弥生の身体が『なりすまし』の妖気に馴染んでいく事で、妖怪を孕みやすい体質へと変化しているためだった。
しかし、彼女が五人目の子を産んだのを境に、再び大きな変化に見舞われる。
これまで男女二人ずつと、最後に三番目の男子を産んで以来、弥生は誠一郎の子を孕まなくなってしまったのだ。
それをきっかけに誠一郎が弥生を抱く頻度も減ってしまう。
『おそらく俺達の妖気が近くなりすぎたからだろうな』
自分達のどちらかに問題が生じたわけでもないのに、急に誠一郎の子を宿すことができなくなった不安を彼に訴えかけると、彼の方には心当たりがあったのだろう。
だからこそ、誠一郎は弥生に強く求められない限りは応じる機会がなくなってしまっていたのだが、一時期は毎日の様に激しく愛し合っていた頃と比べると、弥生にとってはあまりにも誠一郎の態度が冷めてしまっている様に感じられてしまっていた。
事実、誠一郎はすでに標的を弥生から別に移し始めていた。
――そろそろ頃合いだな。
誠一郎の内心で呟かれた言葉とその視線の先には二人の雌がいた。
今の弥生は限りなく妖怪に近い存在と化してしまっている。当然だろう、妖怪と何度も何度も身体を重ね合わせその妖気を受け入れ続けているのだから。
そんな彼女が、純粋な霊力を持ち紛れもなくまだ人間に分類されている頃に産み落とした半妖の二人の娘。
例え半妖であろうと妖怪にとっては数少ない貴重な雌であることには変わりない。
まして妖怪化してしまった弥生と違って、この二匹は自分の仔を孕ませる事ができるのだから。
とはいえ、さすがに弥生の目の前で二人を犯すわけにはまだいかない。
人間側の倫理観を『なりすまし』が持っているわけではないが、迂闊な事をして最悪、弥生と殺し合いになる様な事だけは避けたいからだ。
そのため弥生が幻想する『葛城誠一郎』という立場を捨てるわけにもいかず、彼女が不在のタイミングを見計らい『なりすまし』は、水面下で長女と次女の調教を始めるのだった。
「おとう、さま……?」
「んぅ……や、やぁ……くすぐったいよぉ……っ」
『あまり暴れないでじっとしてろ。さすがにまだ孕ませるには早いが、早い内から慣らしておかないと発情したガキ共に奪われかねないからな』
少女時代の弥生と瓜二つといった容姿の二人の娘が、一糸纏わぬ裸身にされ誠一郎のされるがままになっていた。
凹凸の少ない平坦な身体を撫で回され、膨らみ始めたばかりの小ぶりな乳房と薄桜色の突起を摘まみ転がされる。
辛うじて指が一本入る程に小さな膣穴に深々と指を咥え込まされ、狭く幼い無垢な膣内と襞に異物を受け入れる挿入感と中を弄られる快感を教え込んでいく。
自分で、あるいは互いに弄り、弄らせ合い、性感帯への刺激をくすぐったさ、もどかしさから、正しく快楽と認識できるように調教を繰り返す。
そうして他の子よりも一足早く性に目覚めさせた二人の肢体を十分に解し、幼い女陰から蜜を垂らせる様になったのを頃合いに、誠一郎は二人の純潔を貫いた。
「ひぐっ!? い、いたいっ!! いたいよぅっ!!」
『我慢しろ、お姉ちゃんだろ。妹に先にお手本を見せてやってるのに、泣いてどうする』
「ひっ……わ、私もお姉ちゃんと同じことするの? こ、怖いよぅ……」
『大丈夫だ。最初が痛いだけで、後ですぐに良くなってくる。今までだって俺が教えた通りだったろ』
不安そうに二人の性交を見せられている次女を宥めながら、誠一郎は自分の魔羅が半分も入ってない様な状態で苦悶の表情を浮かべる長女と唇を重ね合わる。
そのまま舌を彼女の口腔内に挿入し蹂躙しながら、小さな陰核を軽く摘まみ転がす。
痛みから意識を逸らさせようとする誠一郎の思惑通り、長女は夢中で彼の舌にしゃぶりつき、訴える様に必死に甘え始める。
その頃には大分痛みも落ち着いたのだろう。動かなければ痛がる事もなかったため、元よりまだ孕める状態ではないと、開通だけで終わらせる。
幼い膣が受け入れるには不釣り合いだった誠一郎の魔羅が完全に引き抜かれると、よほど疲弊してしまっていたのか、長女はそのままぐったりと横たわったままでいた。
『次はお前の番だぞ』
姉の破瓜の血を垂らしながら迫ってくる赤く染まった誠一郎の魔羅に恐怖を感じながらも、彼女が逃れられる事はなかった。
長女と同じ結末を辿った末に、やがて二人は雄とまぐわう快楽に目覚め、誠一郎の子を孕まされるのだった。
***
『いったいどういうつもりなんですかっ!! お兄様は何を考えるんですっ!!』
二人の娘が誠一郎の子を孕んだ事で、弥生はようやく彼の行いに気づく。
今までの生活の中で一度も感じる事のなかった激しい怒りをぶつけながら、誠一郎を糾弾するのは彼女からしたら当然の行いだろう。
『親が自分の子を犯すな。ってことか? 言っておくが、そいつは人間側の都合だ。それをこっちに持ち込むな』
『なっ!? 本気で言ってるんですかっ!?』
弥生は信じられないと言った表情で怒りと驚愕の声を上げるが、誠一郎は特に動揺した様子もなく淡々と自身の理を語る。
『忘れてるようだが、女はこちら側からすれば貴重な存在なんだぞ。孕める頃まで成長すれば、すぐに周囲の妖怪が我先にと襲ってくるんだ。大切な娘がそんな奴らに好き勝手にされてもいいというのか?』
『そ、それは……』
誠一郎から告げられる言葉に、弥生は思わず言葉が詰まってしまう。
彼女自身も一人目を産む時に誠一郎がどれだけ尽力してくれたかを身をもって知っていた。
『本当に子を思っていると言いたいんだったら、こいつらに自分の身体で女の抱き方でも教えてやるんだな』
『そんなこと、できるわけ……』
『言っておくが、こいつらもいずれ発情し女を必死に求めるようになる。その時に女の扱い方を何も知らなきゃ不利になるのはこいつらなんだぞ』
弥生は完全に黙してしまうことしかできなかった。
人としての立場であれば、彼の言動を認めるわけにはいかないが、自分はすでに人ではないのだから。
そんな両親のやり取りを心配そうに眺めている三人と、どこか楽し気な表情を浮かべる二人に完全に分かれていた。
時折目にしていた誠一郎と弥生の性交を身をもって体験している二人は、その快楽を知り、散々自分だけで楽しんでいた母親から二人で奪える事を知っていたからだ。
そして、誠一郎の姿をした『なりすまし』は、弥生に残酷な決別の言葉を告げる。
『さて、それじゃあ俺は娘を連れてしばらく留守にするから、こいつらはお前に任せるぞ』
『え!? お、お兄様、何を言って……』
『どうしても人の心が自分の子を犯すのは許さないというなら、別にそれでいい。そこまでは俺も口を出す気はないからな』
『ま、待ってくださいっ、お兄様っ!!』
今にもどこかに行ってしまいそうな誠一郎を必死に呼び止める弥生に対して『なりすまし』は飄々として穏やかな葛城誠一郎の表情をしながら嘲笑う。
『何を言っているんだ、弥生? 俺は葛城誠一郎の姿をしているだけの、ただの妖怪だろ?』
『――っ!?』
『まぁ、気が向いたらたまには戻って来てやるかもしれないが、せいぜい大切な息子を搾り殺さないようにな』
吐き捨てる様に告げられた言葉を最後に誠一郎は自身の子を孕ませた二人の娘を連れてその場から消えてしまった。
『そんな、私は今まで何のために……』
愕然と泣き崩れる母親の姿に心配そうに気遣う様に寄り添ってきた息子たちを弥生は強く抱きしめながら泣き続けた。
この時の弥生は、去り際に吐かれた誠一郎の言葉が彼女の結末を暗示していた事をまだ知らない。
***
『じゅるっ、ちゅぷ、ちゅぅぅ、ねぇ、もっと出せるでしょ?』
『う、あ、あ……か、かあ、さま……っ』
『お兄様はもっともっといっぱい出せたのよ?』
女の妖怪としての男の精を求める本能は、弥生からあっさりと彼女の人の親としての心を捨てさせた。
性欲が高まるだけならば、まだ耐える事ができたが、息子の精通の匂いを嗅ぎ取ってしまった瞬間、一気に瓦解する。
未だに恋い焦がれる男の面影を感じさせる姿と、目覚めたばかりの若い雄の匂い。
気づいたときには弥生は目の前の雄を襲ってしまっていた。
勃起すらしていない幼く小さな肉棒を咥えると、口腔内で舌で舐め回し、吸い付き、初めて放たれる精を一滴残らず飲み干す。
直後弥生は、自身の行いの反動とショックで一時的に正気に戻るが、彼女の行為によって雄の本能に目覚めた子供たちに求められてしまうのは必然だった。
母親に犯されながら、子供達も自らの湧き上がり強くなる性衝動と母親に求められ導かれるままに彼女を犯す。
そんな爛れた関係となってしまいながらも、弥生が実の子との間に新たな仔を宿す事がなかったのは、彼女にとって幸か不幸か……。
『あぁぁあんっ、いいっ、いいわぁっ、も、もっと、もっと、突いて、私の中にいっぱい出して、お兄様ぁっ!!』
長男の上に跨り、腰を振り続ける弥生はもはや彼を見ていなかった。
例え孕む事ができなくとも、流れてくる熱い精液を子宮で感じられる時だけが、彼女の餓えた心を唯一満たす事ができる瞬間だった。
『あ……う、あぁ……』
初めの内は自身も乗り気で腰を振り、弥生とのまぐわいを楽しんでいた長男も、度重なる行為を強制され、すでに息も絶え絶えとなってしまっていた。
三度、四度と精を搾り取られ、枯れ果てる寸前の身体は逃げる事も叶わない。ただ呻き声を上げ、弥生に助けを求める事しかできなかった。
しかし、幻想の誠一郎の姿を見ている弥生は、自らの手で死にかけている息子の存在に気づく事なく、延々と腰を振り、膣を締め上げ、精を絞り出す行為に没頭している。
やがて自分が組み伏している存在の生を根こそぎ奪い尽くした所で、ようやく弥生の意識は現実へと帰還を果たす。
『あぁ……いけない。せっかくお兄様に忠告して頂いていたのに……。次からは気を付けないと』
衰弱死した長男の身体が霧散して行くように薄れ、その全てが弥生の中へと取り込まれて行く。
虚ろな瞳で自分達を見つめる弥生の姿に、次は自分達の番だと恐れ慄きながらも、決して逃れられない事を残された二人の息子は悟った。
それからしばらくして、妄執と幻想に囚われ、行方知れずの兄の精を求め彷徨う一匹の強大な力を持つ妖怪が、山小屋から解き放たれてしまうのだった。