壁の奥を探索するもすぐに行き止まりに突き当たってしまい、捜索を中断。「キャラメルのような匂いがする」と話した直後、一之瀬アスナが豹変して先生に襲い掛かる。彼女はKINVID-22の感染者第一号となった。
先生を襲ったショックで傷心のアスナはひとまず医務室で様子を見ることになったが、後に精密検査のためにキヴォトス総合病院へ運ばれることが決まった。
傘
時刻は午前七時半。シャーレのコンピューターにログインして勤怠をつける。連邦生徒会に見繕ってもらった入居した家にも帰れず、部室で夜明かしすることも多いが、何だかんだと自宅のベッドで寝る方が、回復している実感を持てる。実際、今日は栄養ドリンクの類でなく、カップスープでも口に入れておきたい気分だった。
いざ湯気を立てるコーンポタージュを啜ろうとすると、呼び鈴が鳴った。ノックせずに入ってくるどころか、体当たりや爆発物でドアを開ける生徒もいる中、律儀なことだ。こういった行儀の良さの思い当たる節を探りつつ扉を開くと、ぬっとそびえ立つ人影に、身構えそうになってしまった。
「おはようございます、先生。もう起きてらしたんですね」
「ああハスミ、おはよう。今日はちゃんと家から来たよ」
トリニティ総合学園・正義実現委員会の副委員長、羽川ハスミ。カラスの濡れ羽を思わせるつやつやした黒髪、絶妙に位置する泣きボクロの存在感に、お嬢様学校育ちの上品な言葉遣いや所作も手伝い、古風な美人のしっとりした雰囲気を纏っている。浴衣姿がさぞ似合うことだろう。
だが、血を思わせる暗赤色のヘイローに、顔の中央を縦断する長い前髪とこれまた暗赤色の鈍く輝く双眸。179cmという長身のシルエットを更に大きく見せる黒い翼と、携えるスナイパーライフル。ハスミの威圧感は強烈だ。アスナのようにいつもニコニコしているわけでもないから、真顔で正面に立たれると、かなり――怖い。身長は3,4cmほど負けているから、なおさらだ。
「今日は体操着なんだね」
「ええ。晄輪大祭へ向けての朝練で軽く走ってきたのですが、シャーレの近くを通りかかったついでに立ち寄ってみました。今日は私が当番でしたよね」
黒と赤、スカートに深すぎるスリットの入った正義実現委員会の制服姿ではなく、白いラインの入ったオーソドックスな学校指定の紺ジャージだ。インナーに着ているシャツの白さと揺れるポニーテールは、活動的なイメージを想起させ、どこか新鮮だった。
「ふう……秋ともなると、中々冷えますね。外は寒かったです」
「ファスナー閉めてないから、ってのもあると思うけど……」
「これは……その……やっぱり……」
ハスミはジャージのファスナーを開けているわけではなかった。
制服の時は胸元でカーテンが形成されてシルエットがよく分からなかったが、体にフィットするシャツを着ているせいで、前方に大きく迫り出したバストの形が丸わかりだ。左胸の校章は内側から押し上げられて歪み、うっすらとブラジャーの黒まで透けている始末。可哀想なぐらいにシャツが張り詰めていて、はち切れてしまいそうだ。制服のスカートに入ったスリットからショーツの紐(いつも黒だ)が見えてしまっていたぐらいだから、セクシーな露出にハスミはあまり頓着していないのかもしれない。しかし、露出の激しい生徒なんてハスミに始まった話ではない。それこそキヴォトスの至る所にいるのだ。
「前はちゃんと閉じられたのに……う、ん、んっ……!」
ファスナーを引っ張るハスミ。踵を上げ下げして勢いをつけようとするせいで、胸元がゆっさゆっさと大変なことになっている。つい先日アスナと
「……あっ!!」
突如、ハスミが身を固くした。少し体を屈めて、自分を抱き締めるように腕で胴体を隠している。もっとも……大きすぎるソレは隠せていない。
「ひっ……紐が、千切れてしまいました……」
青白い肌が、かっと染まっていく。左腕で下から重量を支え、右腕はブラがずれてしまわないように押さえつけている。白布一枚の奥に想像力を働かせずにはいられない光景だったが、
「し、失礼します! 当番の時間には間に合うよう参りますので!」
そのままハスミは、風のように去ってしまった。
* * * * *
デスクに戻り、程よくぬるくなったスープで喉を温める。未分類のデータフォルダを開いてみると、新着のドキュメントが届いている。アスナから転送されてきた、キヴォトス総合病院からの検査結果だった。
一之瀬アスナの一件から数日後、異変の答えはまだ見つからない。ミレニアムの医療施設のデータに無い物質が検出されたとのことで、血液サンプルの一部はより精密な検査のできるキヴォトス総合病院まで回された。しばらくは経過観察も必要になり、アスナには負担を強いることになってしまった。
追加の精密検査も快く受け入れてくれたアスナは総合病院のロビーでころころ笑っていたが、私の首筋にはまだ赤く噛み跡が残っており、それを隠す絆創膏への動揺を誤魔化しているようにも見えた。体を犯されたのは私の方だったが、傷を負っているのはむしろアスナの方だった。
昼を過ぎて午後になり、〆切の迫った業務にようやく一区切りがつくと、心の隙間に例の壁が浮かんだ。ハスミがやってくる放課後まではまだ時間があるはずだ。見に行ってみよう。
気になるのは、アスナが言っていた「匂い」だ。シャーレの部室内に備え付けられた小型の空気センサーを取り外して携え、隠し扉の奥へ再び立ち入った。
センサーは何の反応も示さない。私の呼気の匂いは感知しているのに。あまりの静けさに耳鳴りがしそうだ。
「……?」
カツカツと通路の奥まで進んでみると、数日前とは様子が違っていた。壁の裂け目の縁と、ボタンらしき突起が、ぼんやりとした緑色の光を放っている。恐る恐る突起を押してみると、指の重さを吸収するように壁へ沈み込み――裂け目が左右に開いた。
箱状の空間……エレベーターのようだ。若干古びているが、テクノロジーのレベルはシャーレのそれとあまり大きくは変わらない。階層を示すボタンは二つしかなく、点灯しているのはその内の片方だけ。広々したキヴォトスの景色を堪能できるシャーレのエレベーターと違い、息の詰まるような閉塞感だ。
何かあったらすぐに逃げよう。沈黙したままのセンサーをこまめに観察しながら、B6のボタンを押した。
エレベーター内部や出口をスマートフォンで撮影して外に出ると、また直線状の通路だ。天井に電灯が備え付けられていて、人の手が入っている。タイルの床は砂のようなものでじゃりじゃりしており、歩みを進めるたびに埃が舞った。マスクが欲しくなる。空気清浄機をここに置いたらセンサーが真っ赤になりそうだ。
「……匂いは、やはりしないな……」
澱んだ空気の中、自分の足音が通路に反響し続けている。丁字路や二股に別れた道を探ってみたが、空になった段ボール箱が時々転がっているぐらいで、あちこちが行き止まり。進める道は多そうだったが、実際は奥への一本道を辿らされていた。
そして、三度目の角を曲がった瞬間。
「!!!」
通路の奥で何かが動いた。
「伏せてください――」
背後から聞こえた声に、脊髄反射で従う。瞬間、頭上で耳をつんざく破裂音がして――遠くで岩の崩れる気配がした。
「ハスミ――」
「お静かに。もう一体いますので」
涼しげな声色で手際よく薬莢を排出してリロードし、ハスミが構えた。スコープもなしに敵を睨みつけ、ぴたりと動かなくなってから数秒。ライフルが再び砲火を放ち……目標は沈黙した。
「先生、ご無事ですか」
「……助かったよ。ありがとう。でも、どうやってここへ?」
「シャーレの部室に先生がいらっしゃらず……壁の一部が開いており、奥へ続いていたので、もしやと思って進んできたのです」
正義実現委員会の、見慣れた漆黒の制服を纏い、ポニーテールも下ろしたハスミは、まだ警戒体制を解かず、壁際に身を隠した。私と同じように曲がり角の向こうへ首を伸ばし、通路の奥で倒れた人型の何かを見つめる。
「先生……一体何でしょうか、ここは」
「それを調べに来たんだ。二、三日前までは、部室から十数メートルしか進めなかったんだけど……。何だか嫌な予感がするんだ。この迷宮に何があるのかまだ分かってない。でも放っておいたらマズい気がして……」
「……お供します、先生。私より前には、決して出ないで下さいね」
「…………」
「……どうされましたか?」
「いや、何でもないよ」
ハスミのヘイローは、いつものように赤々としていた。
* * * * *
強力な助っ人のおかげで、地下の探索は大きな支障もなく進んだ。細心の注意を払って少しずつ前進し、障害があれば狙撃で排除して先へ。道中に現れた人型の何かはオートマタの一種のようだった。だが、残骸に電子機器らしきものは見られず、科学の産物というより呪術めいた何かを感じる。左右非対称なフレームは、岩を繋ぎ合わせたように歪だ。外敵を排除するよう意思統一されているみたいだが、その指令を与えている存在が見えてこない。不気味な寒気を覚えずにはいられなかった。
「先生、ご覧ください。こんな紙が……」
「ん、紙……?」
ゴーレム(と呼称するのがふさわしい気がした)の残骸の向こうに、ハスミが何か見つけたらしい。砂埃を手で払いのけて、一枚の紙が差し出された。小さなメモ用紙だ。
「……何だこれは、読めないな。ハスミはどう?」
「いえ、私にも……授業でもこんな文字は……」
「そうだね。文字のようではあるけど、私も見かけたことがない。スキャナーで読み取って、データベースから検索できるかな」
「もしかしたら、トリニティの図書館に資料があるかもしれません」
「シミコか、あるいはウイが頼りになりそうだね。……もう少しだけ進もうか。残弾は平気かい?」
「はい。まだいけます」
ハスミはそう言っていたが、私の脳裏には「"まだいける"は"もう危ない"」という、とあるゲームにまつわる格言が過ぎっていた。エレベーターを降りた所ではまだ通じていたが、スマートフォンの電波もここまでは届いていないのだ。だが、湿っていく空気の先が気になるのも事実だった。
「ところでハスミ。何かの匂いがしないかい?」
「? ……いえ、特に何も」
「そうか……」
やはり、アスナが特別に敏感だったのかもしれない。そこそこの時間シャーレ地下の迷宮に滞在しているが、ハスミに異変らしき異変は見られない。強いて挙げるとすれば、制服の胸元を時折手でパタパタさせて涼もうとしているぐらいだ。だが、顔が赤らんでいるのも、この蒸し暑さのせいだろう。私もハンカチで顔を拭っていた。
数分の間、ゴーレムに遭遇することもなく歩き続けていると、開けた空間に出た。ドーム球場ぐらいのサイズはあるだろうか。端から端まで走ったらそれだけで競技ができそうだ。ここまでは圧迫感のある廊下が続いていたが、急に天井が広くなっている。人の手で作られたと思しき壁で水平方向は覆われているが、所々で岩が露出している。先程まで破壊してきたオートマタの外装と同じ材質だと思われた。
「ここで行き止まり……でしょうか。通路らしきものが途絶えています」
「そのようだね。あっ、ハスミ、あれを見て」
壁の一部には穴が開いており、そこからもくもくと、煙か、湯気か、とにかく何かが噴出している。正体を確かめようとした、その時。
「……ふぅ、先程から感じていましたが、蒸し暑さの原因はあの蒸気でしょうか……」
暗赤色のヘイローが、変色し始めた。
アスナはこれを感じ取っていたのだ。
全身に焦燥感が突沸した。
ここを離れなければ。今すぐに。
「ハスミ、引き返そう。これ以上は危険だ」
「えっ? あ、は……はい……」
突然調査を打ち切る私に、ハスミは戸惑いを顔に浮かべていた。採れたデータといえば周辺の写真と、センサーが感知した空気の情報と、謎のメモ用紙程度のものでしかなかったが、ハスミをすぐにここから遠ざけておきたかった。
――もしかしたら。
アスナの暴走が生々しく蘇る。敏感過ぎたアスナには説得を試みるチャンスも無かったが、まだ理性を残すハスミなら通じるかもしれない。その可能性に賭けたかった。ともかく今はここを離れないと。一歩ずつ覚悟を固めながら、歩みを進める。
「ハスミ、大丈夫?」
顔の血色はますます良くなり、凛とした目つきが緩み出していた。手を引かなければまずいかもしれない、と思ったが、「大丈夫です」と遠慮されてしまった。力無い足取りの中にあってもライフルはしっかりと握られ、しきりに背後を振り返って警戒している。そうやって私を守ろうと懸命に踏ん張るハスミだったが、既にヘイローはショッキングピンクに染まり、発光を始めていた。
「はっ……はっ……」
何とかならないのか。
私は大人なのに。
小刻みに震える黒い翼を目にして、無力感が込み上げる。浅い呼吸を繰り返すハスミは苦しんでいるように見える。生徒を蝕む異変から、直ちに救ってあげられない。その虚しさから逃げるように、進んできた道を戻り続ける。そうして……シャーレ部室に戻るエレベーターまで辿り着いた。諸説あることは知っているが、レディーファースト。ハスミを先に入らせて、後はボタンを押せば。
しかし。
「……先生っ!」
「うわ……っ!」
私の腕は、ボタンまで届かなかった。
腕ごと背後から抱き締められて、引き合う磁石みたいに体が引っ張られる。抵抗する間もない一瞬の出来事だった。
「あぁ……先生……」
「いっ、いきなりどうしたんだ、ハスミ」
「……こうしたくて、堪らなかったんです……」
言いようのない柔らかクッションが背中に当たっている。いや、クッションに自分の体が押しつけられていると言った方が正しい。振り解く発想なんて浮かばないほどの怪力で、そんなに力を込められたら肺が潰れてしまう。子どもの戯れるぬいぐるみにでもされた気分だ。
「先生……いい匂いです。いつまでも嗅いでいたい……♡」
はすはす。すんすん。首筋にハスミの髪がサラサラかかる。ワイシャツの襟の内側に鼻を突っ込まれている。熱烈すぎるバックハグに呻き声が上がってしまうが、当の本人は鼻息を荒くして私の匂いを貪るのに夢中だ。
「うぐ……よすんだ、ハスミ……」
「い……嫌です……♡ せっかく先生と二人きりなのに、離したくありません……♡」
「なら、せっ、せめて……もう少し優しくして……アバラが折れる……っ」
「あ……申し訳ありません。昂ってしまい、つい……」
拘束が緩んだ。鋏に潰されるような圧力が、ふんわり体を包む柔らかな抱擁に変わる。塞がれかけていた気道が解放されて、酸欠の頭がいくらかクリアになった。
「先生……♡」
好物のスイーツを口に運んだ時のような、満ち足りた囁き声がした。脱出が図れそうにない力ではあったが、腕で私を拘束しつつも、顎を肩に乗せ、慈しむようにハスミの手は私の胸や腹を撫でている。その上から黒い翼がふんわりと体を包んでくる。ハスミは、濃厚な薔薇の匂いがした。
優しいバックハグは心地よかったが、生徒相手には過ぎたスキンシップ。ハスミは力を抜いている。脱出のチャンスだ。いけるかもしれない。このまま、腕を離す方向に持っていけないものか。
「その……ハスミ。背後からってのは、ちょっと怖いかな」
「それも、そうですね。私も、先生のお顔を拝見できた方が……」
「うん、じゃあ――」
ドシン!
「うぐっ……」
体が反転した途端、エレベーター奥の壁に背中がぶつかった。丸腰をアピールするように両手を持ち上げられたと思ったら、壁に押し付けられる。
「そんなに怖がることはありません。私はただ、先生が欲しいだけなのです……♡」
ハスミの両手が、私の顔の横を通り過ぎた。
――では、この手の拘束は?
黒い翼だった。翼の根元、鳥類で言う所の小翼羽が、掌の中心を押さえている。
「……先生」
女生徒に壁ドンされる先生とは随分倒錯的だ。エレベーターの照明を、ハスミの上背と翼が阻んでいる。減衰した逆光の中、泣きぼくろが私の目を射抜く。縫い付けられたように視線を外せないまま、赤い目をした生徒と見詰めあう。上から見下ろされる威圧感には慣れていない。見目麗しい美貌を前にして、足がすくんだ。
「……悪いことをしている自覚はあります。先生と生徒、というだけでなく……先生を慕う友人だっているのに……」
ハスミの瞳が戸惑いに揺れていた。しかしその戸惑いを、妖しい輝きを放つヘイローが呑み込んでいく。精神を汚染された彼女の目が光を失い、どろりどろりと濁っていく。
「はぁ、はぁっ……」
「先生のお顔を見ていると……体が疼く……」
「ううっ……もう我慢できませんっ……!」
思えば、ハスミはそこまで誘惑に強いタイプではなかった。スイーツ好きの欲求を抑えきれず食べ過ぎてしまう光景も何度か目にしていたし、体重計が一種の弱点にもなっているのに食欲を催してしまうぐらいなのだ。
「申し訳ありません、先生……♡」
ハスミの内心がどうなのか、私には量りかねた。しかし、アスナがぶつけてきた剥き出しの欲望と同種のものを感じていたとしても、最深部からここに戻るまで堪えていたのだ。今だって、唇を歪めて無理をしている。だから、どうしようもないのなら――
せめて、受け入れてあげようと思った。
* * * * *
ぴちゃ、ぴちゃ。
ちゅっ、ちゅっ。
エレベーターの閉鎖空間に、口づけの音が浮かんでは篭もる。慎み深いハスミが我武者羅に唇を貪り始めて、何分経っただろうか。薔薇の匂いで充満した箱の中で、濃厚な口づけが続いていた。
「れる……んちゅ♡ ん、ん〜♡ ん♡ んふ……はぁ……♡ はふ♡ んれ……あふ……ふ、ん、ん、んっ♡」
舌を入れるキスなんて、どこで知ったのだろう。豊満な体を擦りつけながらハスミは唾液を送り込み、私の口内で混ぜあったそれを掬い取ると、ぢゅるり。交換した唾液を啜って飲み下す。つい先日の一件でパーソナルスペースの内側に生徒がいる心理的抵抗が薄れていたこともあり、私は体液の交換に早くも快感を覚え始めていた。
「ん、ふ……♡ せんせ……せんせいっ……♡」
翼で私の手を拘束して、ハスミの両手は好き放題だ。冷徹な狙撃手の指は女性のしなやかな優しい手触りで、トリガーを引くそれとは思えない。しっとり接吻を交わす間、優しい肌触りの掌が、私の顎や頬を愛おしげに包む。かと思えば、瞳の奥で加熱されていく情欲そのままに、ギュッと抱き着いて背中をまさぐってくる。
空気の停滞したエレベーターの中は、ボタンホールを潜り抜けるプラスチックの音が聞こえるぐらいに静かだ。私のシャツの襟を開くと、ハスミは目を血走らせ、ますます頬を上気させた。アンダーシャツの裾から手を突っ込まれ、私の素肌を直に撫でると、口内の舌が発奮して暴れ出す。分厚すぎる双丘に阻まれて感じ取れないが、ハスミの鼓動もテンポを上げているのだろうか。
息継ぎすることも忘れて続くねっとりしたディープキスの快感に、うなじから漂ってくる濃厚に凝縮されたメスのフェロモン。脳が揺さぶられ、酸欠の頭がボーッとしてきた。いつしか私の舌も引き摺り出され、互いの境界線で体液を塗り付け合うまぐわいに自ら応えてしまう。倫理の最終防衛線は、二度目の決壊を迎えようとしていた。
"くちゅ、くちゅっ、くちゅっ"
"ねち、ねち"
「……♡ ふ~♡ ふ~♡ んぁ、んむ……っ♡」
くぐもった声を鼻から漏らし、ハスミの
ようやく口が解放されると、アメーバを引き延ばしたような太い銀色の橋が、互いの舌を繋いでいた。自らの重みでたわんで切れてしまう前に、ハスミの舌がそれを巻き取っていく。唇を一文字にして喉を蠕動させる様には、肉欲をたぎらせる艶がある。私を拘束する黒翼が傘になり、溢れ出てくる色香をむんむんと閉じ込めている。まるで、濃縮した媚薬を嗅がされているようで、薔薇の匂いと性的興奮が紐づけされてしまいそうだ。
「……先生、こちらも……あっ♡ すごい、先生はこんなに逞しいのですね……♡」
ハスミの指先が、スラックスの合わせ目をなぞった。私の催した劣情は瞬時に悟られてしまい、白魚のような美しい手が、股を押し上げる陰茎を撫で回す。長さを
力ではどうせ敵わない。
受け入れればハスミは治まる。
諦めと、都合のいい解釈が、私の性欲を唆す。もっとも、どんなに正論を並べ立ててみた所で手遅れだ。私はハスミの舌にもう応えてしまったのだ。だから……外されて床に落ちるベルトも、黙って見届けてしまった。そのままハスミがボクサーブリーフごとスラックスを引き下ろすと、
"ぶるんっ……!"
"ギンッ……!"
「こっ……これが、先生の……♡」
淫らな空気がより一層濃くなった。交換した唾液が、喉の奥へ落ち、食道へ染み込む。男を籠絡する濃厚なメスフェロモンが脳を犯し、生徒を相手に股間の肉竿はもうパンパンだった。私の動揺をつぶさに観察しようと、ハスミの粘っこい視線が、屹立と顔とを往復する。
失礼します、と澄んだ声で言い、器用に翼で私の手を押さえたまま、ハスミが屈み込んだ。汗の匂いが混ざった精臭が立ち上り、薔薇の芳香のノイズになっていく……が、その臭いに引き寄せられるように、ハスミの顔が近づいてきた。
「不思議な香りです。いい匂いとは言えないのに、なんだか、とても……すん、すん……♡ ふす、ふす♡ 嗅いでいると、お腹が熱くなってきます……♡」
吸われる空気がカリ裏を通り過ぎて、粘膜を冷やした。首周りの匂いを嗅がれるだけでも恥辱に顔が燃えそうだったのに、ハスミときたら、筋のスッと通った鼻を茂みに突っ込み、陰毛の間の空気を一心不乱に吸い込んでいる。ピンクに変色したヘイローが、卑猥な輝きを放ち出す。品の良いハスミが、男の股に顔を埋めてうっとりしている。そのはしたない光景を目にして彼女の印象を損ねたくない良心の一方、蠱惑的な赤い上目遣いがあまりにも淫らで、目を離すことができなかった。
「
「でも……とても素敵で、心が惹きつけられてしまいます……♡」
ペニスの根元を、ちろちろと舌がくすぐる。ぷにぷにの柔らかい頬が砲身に押し当てられる。じんわりと温まっており、高級シルクのように滑らかな肌触りが竿を上っては下り、海綿体を膨らませる感触がハスミの顔に全て伝わってしまう。
「はぁ……♡ ん~……♡」
「……ハスミ……どこで、こんなことを」
場の支配権を握っているはずのハスミは、目を閉じてペニスへの頬擦りにお熱だ。鼻をひくひくさせる度に、目つきが弛緩していく。ちろちろと幹の中腹を舐める様は、じゃれつく犬のようでもあり、ミルクを舐める猫のようでもあった。
「ふふ……官能小説も、読んでみるものですね。没収したものを捨てずにいたのは正解でした……♡」
ハスミが言うには、風紀を引き締めるべく不埒なものの監視を強めていたそうで、蒐集癖のあるコハルから何点かそういうものを没収していたらしい。成年向けのエッチなものにハスミが食指を伸ばす――そんな背徳的な欲望が匂わされ、あろうことか私のオスは一回り大きく膨れ上がってしまった。
「男性は、柔らかいものに包まれるのを好むとか……。それでは……こ、ここでは、いかがでしょうか……♡」
挑発するように真紅のスカーフがほどかれて、床に落ちる。セーラー服の襟元が開かれれば、ミチッと詰まった肉が深い深い谷間を形成している。バストトップがパツパツに張り詰め、胸の下にはカーテンがはためき、持ち上げられた布地の隙間から真っ白でぷにっとしたお腹がちらりと見えた。
襟の合わせ目から始まるファスナーが静かに下ろされ、はらりとセーラー服の前面が開く。腰元で何かが外れた途端にスカートもストンと落ちて――視界が一気に白くなった。むわっと湿気が立ち上り、微かな汗の香りが薔薇の匂いに混じる。長く深い乳肉の狭間では、汗が一滴浮かんでいた。黒地に紫で刺繍の入ったブラは圧倒的重量に悲鳴をあげ、肩紐が必死に肩へしがみついている。
「だらしなく見えたら申し訳ありません。ですが、大きさには自信があります。よ、よかったら……♡」
フロントホックに指がかかり――
"どぽっ……♡"
"だぷるんっ……♡"
「うわ……っ」
――でかい……!
束縛から解き放たれた秘宝の大きさに、思わず声が出た。露骨に上半身の肌を晒さないハスミだからこそ、神秘的な肌の滑らかさに目を奪われる。薄いイチゴ色の乳輪は、貯め込まれた乳脂肪の体積に内側から引き伸ばされ、縁が皮膚に溶け込んで曖昧な境界線を形成している。ふっくら盛り上がった土台の先端では、ビー玉大の丸い乳首がぷくっと存在感をアピールしていた。「私はこの世の何よりも柔らかいぞ」と深淵のような谷間から語りかける声がした。
「ふふふ……興味がおありのようですね♡ 触ってもいいですよ♡ さぁ……♡」
磔にされていた両手が解放された。掌の中心に鈍痛と刺すような不快感が残っている。火傷を冷ます水が欲しい。そんな私の手首をハスミが掴み、ハリを保ちつつも自重で胴体にへばりつく乳房に導いていく。
"もちぃっ……♡"
「あん……♡」
汗の気化熱に冷やされた肌はしっとり涼しく、圧迫されて痛んだ掌を癒してくれる。バスケットボールみたいな大きさは、指を目一杯広げても手に収まりきらず、むしろ手首まで取り込まれそうだ。下から支えてみればずっしり重たい。きっとハスミに生んでもらった赤ん坊は、栄養満点のごはんで毎日お腹いっぱいになれることだろう。
「つ……♡ ん……ん♡ じ、自分で触っても、何ともないのに、こんな……あ……♡」
蒸れた下乳の汗を掌で拭い、北半球へ塗り付けるように揉んでいると、ハスミの眉尻が下がっていく。性感に鼻から漏れる声と吐息の熱さには、円熟した艶が感じられる。潤いを帯びた肌のキメ細かい触感は、撫でているだけでこちらが気持ちよくなってしまうほど。掌にかかる重さの充実感と、
その柔らかさの中に、確かな手応えが存在するのも確かだ。掌に触れる硬さ――
「っうあ♡ ひ、ん♡ そこ、は……っ」
指の間に葡萄の粒を挟むと、私の手首を掴む手に力が入った。蒟蒻のような硬い弾力が押し返してくる。水道の蛇口を捻るように回す。肩を震わせてハスミが声をあげる。小さな悲鳴とでもいうべき、艶めかしく湿った声だった。既に硬く張っていた乳嘴の中で、コリコリの手応えが膨らんでいく。
「はっ、う♡ ん˝ぁ♡ こ、れ……♡」
「先生の指、きもちいい、ですっ……♡♡」
「あ……ふ……♡ ん、んっ、ん♡ ん˝、ぉ……♡」
私の指で、ハスミが悶える。瞳を潤ませ、むちむちの太腿を擦り合わせている。ガーターベルトの黒紐が、大きく揺れるお尻のシルエットを強調していた。一見すると主導権を握っているようだが、胸先三寸であっちは私の動きを封じるのも、力づくで強引に犯すこともできてしまう。
「はぁ……はぁ……♡ も、もうおしまいですっ……♡」
両手が振りほどかれ、展開された黒翼が再び私を壁に押し付けた。暴れたり逆らったりするつもりはなかったのだが、どうやらハスミは私を拘束することにも悦びを覚えているようだ。涎を垂らすペニスを晒したまま自由を奪われた私を前に、暗赤色の瞳が妖しい輝きを強めた。膝立ちになって、ハスミが高さを調節する。
「ふふ……マッサージして頂いて、とろとろにほぐれました♡ 先っぽがまだじんじんして、んっ♡ お……♡ んぁ、これ、きもちい……っ♡ おふ……ちくび、かんじる……♡」
自ら乳首を捻り、ハスミがぶるっと胴を震わせた。何度かぎゅっぎゅっと指でそこを捏ねて恍惚としていたが、程なくして我に返り、乳房を手で抱えた。
「こうやって胸を寄せて、みっちりと
もごもごと口内から唾液を手繰り寄せて谷間に垂らし、粘っこい音を立てて塗り広げられていく。
"もちゅ……っ♡"
"ぞぷ……♡"
「あら……埋もれてしまいましたね♡ ですが、どこに挿入っているかは、よく分かりますよ♡」
"ぐいっ……ぐぐぐ……"
ハスミが体重をかけてきた。仮に体重計に乗ったとして私の方が重量は上回るはずだが、あっさりと尻が壁に押し付けられ、性器どころか下腹部全体が乳肉に包み込まれた。幸せな柔らかさにくるまれる一方、寄せられた乳脂肪があらゆる角度から容赦なくペニスを押し潰してくる。
「ふう……このまま、前後に……♡ っ、あ……擦れて、感じてしまいます……っ♡」
"たっぽ♡ たっぽ♡ たっぽ♡"
"ぬち♡ ぐちっ♡ ぬちゅ♡"
「あ……♡ んっ♡ ん……かたくて、きもちいい……♡」
膝立ちのハスミが体を押し付けてくる度に、私の下腹部にぶつかる乳餅がぶにゅっと潰れる。吸い付く肌と擦れ合う快感には、溺れてしまいそうな危機感があった。重さと体積でマウントを取ってくる乳内の圧力は、同時に深い摩擦をもたらす。軟禁されたペニスは往復する度にカリ裏の弱点を擦られ、情けなくビクビク震える。
「……う、あっ……これ、やばい……ッ」
"ぶぽっ♡ ぶぽ♡ ばぷちゅっ♡"
"ぶっぽ♡ ぶっぽ♡ ぶっぽ♡ ぶっぽ♡"
唾液と汗の混じった滑りの良さに、ドクドク染み出す先走りが加勢して、いやらしい水音がハスミの胸元から湧いてきた。自由に動くことも敵わず、豊満なハスミのとびきり柔らかい肉でもぐもぐと咀嚼されている。押さえつけられたままでいるのがじれったい――。気が付けば、私は拘束に抵抗するがごとく腰を揺すり、ハスミの肉とぶつかりあっていた。
「あ、んっ♡
「その……せ、
"ぬちゅ♡ ぬちゅっ♡ ぬちゅ♡ ぬちゅ♡"
"たぱったぱっ♡ たぱ♡ たぱ♡ たぱ♡"
体を前後させて乳肉でオスを扱きながら、ハスミが鼻を鳴らす。コリコリ硬い乳首が下腹部に擦れるのが気持ちいいらしく、釣鐘型の長乳を小刻みに擦りつけては、ハァハァと息を荒げていた。性感に蕩ける顔に見つめられ、腰の奥でマグマがぼこぼこと泡立ち始める。
肉のぶつかり合うピストンがペースを上げ、呼吸が乱れる。私の顔に焦りが浮かんでいたのだろう。ハスミも
そこから達してしまうまで、我慢できたのはほんの僅かに過ぎなかった。
「ア……ハスミ、でる……っ」
「あっ♡ ……ええ、どうぞ……♡」
「……!」
なすすべなく、ダムが決壊する。
"ぶびゅるっ……♡"
"どくっ♡ びくびくっ♡"
"どぽっ……♡ どく……どく……♡"
「……っ……ううっ……!」
脳天に突き抜ける快感。生徒の前で到底あげてはいけない情けない声を堪えられなかった。心臓が強く拍動し、ポンプが押されて白いマグマが迸る。吐き出す劣情の全ては柔肉の狭間に囚われ、自らの放った熱がじんわりと剛直を包んでいく。ほんの少し恥じらいの混じった淫らな笑みを浮かべ、ハスミは私の吐精する顔をじっと観察していた。
「先生の体内には、こんなに熱いものが溜まっていたのですね……♡ 胸の内側に、熱湯を注がれたかのようです……♡」
睾丸から放たれた粘っこいオス汁が、白く濁った泉になってなみなみと谷間を満たしている。ゲル状のそれは、ハスミの汗ばんだ肌に張り付き、母性の象徴に甘えている。
「……これが……精液、なのですね……♡ すごいニオイです……プールの水を煮詰めたようで……」
"ぬぽっ……♡"
尿道の残りを搾るようにペニスを抜き取り、ハスミが谷間を開く。吊り橋が何本も深い峡谷にかかり、激しい摩擦の作った赤いズリ跡が、雪原のような柔肌にくっきりと浮かび上がっていた。
さっきまであそこで、張りつめた劣情をシェイクされていたのだ。生徒のカラダに欲情をぶちまけた罪悪感が今更に込み上げたが、エクスタシーの余韻に紛れて霧散してしまう。
正中線に沿うように胸を汚すコンデンスミルクを、ハスミは指で掬い取り……そのまま口に運んでしまった。指についたケーキのクリームを舐めてしまうような、卑しい仕草。上品なハスミがそんなことに及ぶギャップは、匂い立つ色気をより一層濃厚なものにしていた。指でそうしているだけでは物足りなくなったのか、白濁の発生源へ、ハスミが顔を近づけてくる。
[newpage]
「はぷ……あむ……っ♡」
慎ましやかな唇が開かれ、男を咥えこむ。亀頭を口に含むと、表面にこびり付いた残滓が舐めとられた。
「これが、先生の味……」
こく、と喉を鳴らし、劣情を飲み下すハスミ。
「……り、量が……足りない……♡ もっと欲しいです♡」
傘の裏側まで綺麗に掃除すると、蜂蜜マドラーよろしく、ペニスで己の胸に張り付くザーメンを絡め取り、白いトッピングのされたバナナをまた頬張る。それが何度か繰り返され、お湯に浸かるような温かさに包まれる内に、私はむくむくと熱を取り戻してしまった。
「んむっ……んぐ……♡ はふ♡ ぢゅる♡ じゅぞぞ……♡」
ちゅぱっ、ちゅぱっとしゃぶりつく音が、停まったままのエレベーターに満ちていく。一、二回ほど歯が当たって痛かったが、私の反応をハスミは瞬く間に学習してしまったようだ。ねっとり温かいお口えっちで男を嬲る行為に彼女はあっという間に慣れてしまい、男の弱点を探ってはザラついた舌でそこを責めてくる。裏筋の皺を執拗にほじられ、腰が浮いた。
「あふ、ん……♡ 先生……ほろ苦いですが、先生は美味しいですね……♡」
うっとりと味の感想を述べると、またすぐにハスミは唇で亀頭を扱き始める。おねだりするような吸い付きに、射精したばかりということも忘れて、この温かい空間に全てを受け止めてもらいたくなってくる。
"くぽっ♡ くぽっ♡ くぽ♡ くぽ♡"
"ぢゅぱ♡ ぢゅぱっ♡ ぢゅっぱ♡ ぢゅっぱ♡"
"ぢゅ♡ ぢゅるっ♡ ぢゅるるるるっ♡"
こんこんと湧き出る先走りは、鈴口から直飲みされていく。早く射精して欲しいと催促するように、ハスミは亀頭へアツアツのディープキスを仕掛けてくる。奉仕というよりはこれもまた捕食だったが、熱烈な接吻を受ける自分の性器が羨ましい。頬の粘膜を軽く窄めて吸い付かれ、二度目の射精欲求がムクムクと膨らんでいく。
「はっ……ハスミ、ダメだよ、そろそろ離して……っ。そんなにされたら、ハスミの口に……」
目が合った。
「……ん、ふふ……♡」
それこそが望みだ、とばかりに赤い目が煌めき、亀頭が吸われた。
「ああっ……ダメ、出ちゃうから……っ」
がしっ、とハスミの腕が腰に巻き付いてきた。ああ、やはり、逃がしてくれないようだ。睾丸がせり上がる。精巣の中がぶくぶくと泡立ち、二射目の予感に腰がぶるぶると痙攣した。
"どく……っ♡"
"びゅぶ♡ びゅん♡ ぶぢゅる……♡"
"――じゅわぁ……♡"
「……ん……♡ んっ♡ んふ~……♡」
今まさに絶頂汁を噴き上げる最中の男根がちゅうちゅう吸われる。ストローからバニラシェイクを飲み干すかのような吸引だ。血管を太く浮き上がらせた剛直を根元まで咥え、ぴとっと亀頭に密着した頬の粘膜が、嚥下に引っ張られて蠕動する。ハスミは待ってましたとばかりに目を細め、咽かえることもなく男の劣情をごくごく飲み下していく。自発的な射精は終わっても、飲み残しがないよう丹念に舌で磨かれる快楽に、痙攣がなかなか治まらない。
"ちゅぱ……ちゅぱ……♡"
"ぢゅっ……♡"
「……ぷは……っ♡ たっぷり出して下さいましたね。御馳走様です、ふふっ♡」
尿道の残り汁を残らず啜りとり、皺の一枚一枚まで丁寧に掃除してから、ハスミはようやく言葉を紡いだ。マットな質感の唇には一滴たりとも跡が残っていない。
もうこちらは二度も射精したのに、ハスミを支配するこの瘴気にあてられてしまったのだろうか。ほぼ垂直に反り立った男性器は萎れてしまうこともなく、硬度を維持し続けている。まだやり残したことがあるとでも言いたげだ。
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「こ……今度は、こちらに……私のナカに……♡」
乳房の陰になっていた腹を、ハスミの手が撫でた。くいっくいっと腰を突き出し、発情した目つきがじっとりと異性の生殖器に注がれている。ブラとお揃いの、レースが入った黒のショーツは、前面を色濃く変色させていた。
足首を通して下着を脱ぐ時間も惜しいのか、ハスミはむっちりした太腿を開き、クロッチをがばっとずらしてしまう。そのまま小陰唇を割り開き、濡れそぼった秘肉が露になる。ヒクつく膣穴から厚ぼったい蜜がとろっと垂れ落ち、床に小さな円を作った。ハスミが少し体を動かすだけでも、豊か過ぎる実りは惜しげなく揺れ、抗えない引力に視線が奪われる。
「本当に、こんなに大きなものが入るのでしょうか……あぁ、でも……挿れたいっ……♡ お腹が、欲しがっています……っ♡♡」
正義実現委員会の冷徹な副委員長が、淫らな笑みを浮かべて、ぱくぱく蠢く
"ぬぷ……ずにゅっ……♡"
「あっ♡ ……んあ~~……♡♡」
腰を下ろすハスミに、飲み込まれていく。とろみのある潤滑液がまぶされ、入口を通り過ぎたと思ったら急かすように奥へ奥へと引き込まれる。肉厚な膣壁の歓待を受けたと思ったら、そこからはあっという間で――ペニスの根本まで、しっとりしたぬくもりに包まれた。
「はァ……わっ、私……先生と……♡」
暗赤色だったヘイローは、白さを帯びたピンクの輝きをたたえている。明滅するリズムは、ハスミの高鳴る鼓動を代弁しているかのようだ。重力も手伝って挿入は深く、亀頭の先端には壁が押し付けられていた。「ここまで入っています」とわざわざハスミが手で膣の深さを示すものだから、破廉恥な思考が勝手に子宮口の位置を思い描いてしまう。
「硬くて、逞しいですね、先生……♡ お腹が広がったみたいで、少し苦しいのですが……こっ、これ……すき、ですっ……♡」
体の大きなハスミの膣はそれだけ奥行きがあり、胸や尻と同様に襞の一枚一枚が分厚い。それでいて、セックスに不慣れな狭い穴の締め付けは強烈で、ギチギチとペニスに食い込んでくる。だが、ふぅふぅとハスミが呼吸を整える内に下半身同士はすぐ仲良くなり、程なくして粘膜同士の間には空気も入り込めないほどに密着した。
「はぁっ……♡ はぁっ……♡」
入口はふわっとしているが、少し進めばもうそこから先は、容赦無い責めが襲ってくる。穏やかな態度の下に激情も秘めるハスミの性格そのものの、攻撃的な蜜壺だった。
体重を押し付けるようにして、ハスミが上から腰を振る。大きな律動ではなかった。だが、耳元に口を寄せて紡がれる、囁くような甘い嬌声は脳を犯すようだった。その上、手を壁に押し付けて拘束されたまま、ぶるんぶるんと跳ねまわる美味しそうな果肉に何もできない
「あっ♡ んっ、う♡ ……せ、先生のお尻は……柔らかいのですね……♡ ふふ、ふぅ……ん……♡」
"ぱちゅっ♡ ぱちゅっ♡ ぱちゅっ♡"
"ぐぽっ♡ ぐぽ♡ ぐぽっ♡ ぐぷっ♡"
「先生♡ 先生っ♡」
愛しそうな、うっとりした声色でハスミが艶声を紡ぐ。私を拘束する翼が閉じる傘のように窄まり、シーリングライトの明かりを遮って、視界が暗くなっていく。微かに見える貌では、瞳が妖しく光り、"すき"、"せんせい"、"もっと"と、文にならない言葉が、むせ返るような薔薇の匂いに溶け込んでいく。
ハスミの喘ぎ声は大人しめで、吐息の割合が大きい。口元にかかる息には塩素臭さがまだ残っている。頬や顎へ口づけをし始めたら、そこから唇を奪われるまではすぐだった。
「あっ、む♡ ん♡ フーっ♡ ふー♡ ふー♡」
生っぽい匂いのこびりついた舌が押し入ってくるが、不快感を押しのけることもできず、ハスミに蹂躙される。もはや無駄な抵抗なのに、細切れになった理性の欠片は必死にアラートを鳴らしている。だが、その背徳感もステーキの味を引き立てる香辛料に過ぎず、上の口と下の口に責められる快楽を余計に高めていくだけだった。
またもや、私は生徒の肉体に溺れてしまうのか。敗北感に苛まれておきながら、私はみっともなく腰を振って、ハスミの肉欲に媚を売っていた。媚。媚びに違いなかった。「先生に抱き締めて欲しい」と呟いてハスミが私の手を解放した時、私は言われるがままに腰に腕を巻き付けていたのだから。
「せんせ……♡ せんせい……♡ あっ♡ あっ、あ、あ、っ……♡」
"ばちゅっ♡ ばちゅっ♡ ばちゅっ♡"
"ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡"
腰の辺りまでハスミの翼に隠されて、蒸し暑い暗闇の中に見えるのは足元ぐらいだった。結合部から垂れ落ちたハスミの愛液は水溜まりになり、ぽたりぽたりと落ちた水滴が断続的に波紋を作っている。視覚が半ば封じられているせいで、汗でヌルっと滑る肌の感触に、艶やかな嬌声のいやらしさ、ハスミの体臭に――それらが全て閉じ込められて混ざりあう。生徒とのセックスは、道徳心を嘲笑うかのような心地よさだ。
持ち上がってくる三度目の射精感。擦れあう粘膜の快感にハスミはもう慣れており、膣奥への刺激をねだるように下腹部をぐりぐり押し付けてくる。望み通りにポルチオをノックすると、口の中で舌がひくひくと震えた。オーガズムを迎えて体が硬直し、蜜壺がふわっと緩む。だが貪欲なメス肉は満足せず、すぐさまペニスに絡みついてぎゅうぎゅうと締め付けてくる。
襞の複雑な最奥部にべろべろと亀頭を舐め回されて、限界が急激に近づいてきていた。何度もキスを重ねる子宮口も、鈴口からオスを吸い上げようとしている。
このままでは、と考えた瞬間にはもう手遅れだった。
"……どくんっ"
「……♡ ア……い……いひゅ……♡ んふぁ♡ お゛……ッ♡♡」
"びゅるっ♡ びゅっ♡ びゅん♡ ぼびゅっ♡"
"どぷっ♡ どぷっ♡ どぷっ♡ どぷっ♡"
精巣の残りを全てぶちまける、排尿のような激しい射精だった。鈴口をこじ開けて放たれる太くて厚みのあるザーメンが尿道を内から擦りあげ、濁流のような吐精の快感に、何もかもが塗り潰されていく。何か柔らかいものに自分の手がしがみついていたが、それが何であってもよかった。より深い所に子種を注ぎこもうと、ひとりでに腰が持ち上がる。
「……う゛……っあ……♡♡ せんせい……あったかい……♡♡」
エクスタシーの残響が、まだ頭蓋骨の中を駆け巡っている。ハスミも、私も、お互いの尻肉を掴み、下腹部を押し付け合って、オスとメスの混合液を攪拌させている。なんてことをしたんだ、と非難しようとする理性を、全身を満たす多幸感が押し流していく。
「せんせい♡ きもちよかったです……♡ せんせい……♡」
ハスミの本気汁か私の精液か分からない、白い液体が結合部からぽたぽた垂れていく。透明だった床の水溜まりが濁っていくのを見つめていたハスミは、濡れた唇をまた押し付けてきた。
[newpage]
情事の後になって正気を取り戻したハスミは、明らかに落ち込んでいた。裸体を晒し、性行為に及んでしまったことに対する恥辱のショックはもちろんのこと、自ら私に危害を加えたものと思い込んで瞳を絶望に曇らせていた。ヘイローも元の色に戻ったのだが、暗赤色のパーソナルカラーはいっそう暗く、血のようなおどろおどろしさがひどくグロテスクに見えた。
「……申し訳ありません、先生……正義実現委員会の副委員長ともあろうものが、先生を……」
「私は大丈夫だよ。どこかを怪我したわけじゃないから。それよりも、ハスミの方が心配だ」
以前トリニティの生徒からもらった紅茶を淹れてみたが、湯気が出なくなってもハスミは手をつけてくれない。
「どうして私を叱責なさらないのですか。罵倒されるより、憎まれるより……優しく声をかけて下さる方が、辛いです……処罰を与えて下さった方が……!」
懸命に涙をこらえるハスミだったが、声が震えていた。
「これは、私の責任なんだ。好奇心のままに壁の扉を開こうなんて思わなければ、こんなことにはならなかったんだ。一之瀬アスナに引き続き、ハスミも巻き込んでしまった」
シャーレの部室に戻ってきた後に送信されてきたデータをプリントアウトして、ハスミに差し出した。
「ナノマシンとウイルスの複合体……KINVID-22という仮称がついたよ。それがアスナの血液から検出された。現状、50ナノメートル未満のナノマシンはキヴォトスにおいて未知の技術だけど、それを外殻として内部にウイルス状の構造が認められた。遺伝子解析も進んでいるけれど、データバンクにある既存の生物と一致せず、同定ができていない。アスナの血液中からはウイルス抗体と思しき物質も出てきたから、血清、ワクチンの開発に繋げることはできると思う。……現状、サンプルが少なすぎるし、ナノウイルスの危険度が高くなければ、そうならない可能性もあるけどね」
「せ……先生は、何ともないのですか?」
「うん……私も検査を受けてきたのだけど、目立った異物は検出されなかったんだ。食事の内容に気を付けるよう注意を受けた程度だ」
「つまり……男性には感染しない、と?」
「そう言えるかもしれないけれど、確証があるとは言えないね。総合病院の方に連絡して、ここにキットを持ってきて検査してもらうよう依頼を出したんだ。私も血を採ってもらうから、ハスミも協力してもらっていいかい?」
「も、もちろんです。私にできることがあれば、何だっていたします!」
思いつめた表情が僅かに和らいだ。すっかり冷めてしまったティーカップをようやく手に取って、ハスミは紅茶で喉を潤してくれた。微かに唇の端を上げて笑ってくれたのが、救いだった。
あの壁を閉じたままにさえしておけば、新たな感染者は出さずに済むはずだ。だが、動かなかったはずのエレベーターが動いたことや、地下迷宮で起動していたオートマタに、最奥にあったあの蒸気――放置しておくには不穏過ぎる。
自分一人で調査を続けるか、情報が十分に集まるまで調査を打ち切るか……。
ティーカップで揺れる水面を眺めていても、答えは浮かばなかった。
Case03へ続く