※この作品はR-18です。

シャーレの先生が生徒に襲われる話   作:夜の機動戦士

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 壁の奥を発見して二週間。KINVID-22防御マスクの開発をエンジニア部に要請し、試作品が完成した。性能試験とより精緻な地下探索のために豊見コトリが執務室を訪れる。最深部から無事に執務室へ帰還するも、整備不良から濃縮したウイルスを浴び、コトリは三人目の感染者となる。知的好奇心が暴走し、三度先生は生徒に襲われてしまうこととなった。例の地下空間が地下鉄駅の近くであることが示唆される中、「セミナーへの不審な領収書」を問い詰めるために、早瀬ユウカが翌日シャーレを訪れると連絡を入れてきた。


Case 04:早瀬ユウカ

Raid & Retreat

 

 豊見コトリがKINVID-22に感染し、バイオサイエンスラボ送りになった翌日。少しばかりの休憩をと思って居住区のカフェからサンドイッチを幾らか持ち帰ってくると、執務室のドアノブに下げていた立ち入り禁止の札が裏向きになっていた。うっかり逆向きにしていただろうか、と思い、ドアを開く。そこには、セミナー会計の2年生、早瀬ユウカが、仏頂面で仁王立ちしていた。

 

 ――ああ、来るって言ってたもんね……。

 

「せーんーせーいー!」

 

「セミナーにこんな請求書が来たんですけどっ」

 

 私の目の前に、一枚の紙がはためいた。エンジニア部の部長のサインが、直筆でなされている。

 

「……シャーレ名義で私がエンジニア部に発注したんだ。ちょっと作ってもらいたいものがあってね」

「あ、先生が発注したんですか……なんだ……」

 

 一瞬すんなりと納得しかけたユウカが、目の色を変えた。

 

「じゃない! 何ですかこの額は。今までエンジニア部から上がってきた申告と文字通り桁が違うんですけど! それにこの内訳。逆浸透膜用の活性炭フィルター、カーボンナノチューブ、半導体ポリマーにフィルム型マイクロセンサーって、一体何をしようとしてるんですか? 承認をするかどうかは別として、ミレニアム会計の私には知る権利がありますよね?」

 

 ユウカの言葉がサブマシンガンの銃弾よろしく飛んでくる。体操着のまま着替えもせず、慌ててシャーレに駆け込んできたのだろう。ふんすふんすと鼻息荒く、「秘密☆」などと誤魔化そうものならこの場で正座させられてしまいそうだ。秘匿を貫いて、費用の申請が却下されてしまおうものなら、それこそコトだ。

 

「……分かった。オープンにはしてない情報なんだけど、ユウカには教えよう。ただし、個人情報があちこちに含まれてるから、そこにはフィルターをかけさせてもらうよ。ちょっと待っててね」

 

 報告書の中にある三人――アスナ、ハスミ、コトリ――の名前をA、B、Cに置換し、あまりに直接的な表現になっている部分も同様にぼかしてから、プリントアウト。ざっと全体を眺め、見せても問題なさそうな所で、ユウカを手招きした。

 

「……シャーレの壁ってそこ(・・)ですよね? あの裏側にそんな空間が……えっ、先生、当番の生徒に襲われたんですか!? しかも、ミレニアム生が二人も……誰だろう……?」

「うん。見ての通り、怪我を負わされたりはしてないけど。やっぱり生徒に力では全く敵わないのがよくわかったよ。それはさておき、ウイルス構造を含んだナノマシンが原因だと判明したから、治療、防御策の構築と、感染源の破壊、もしくは遮断を行えないものかと思案している所なんだ」

「なるほど……それなら納得ですけど、費用が承認できるかどうかはまた別問題で……そもそもこれってシャーレで起こった出来事だし、ミレニアムじゃなくて、連邦生徒会行きの案件じゃないですか?」

 

 ぬるくなったインスタントコーヒーを静かに飲みながら、ユウカが溜息をついた。

 

「あれ、何ですか、この落書き?」

 

 キーボードの脇に置いておいたメモに、視線が落とされる。

 

「地下で拾ったメモなんだ。スキャンしてみたんだけど、現在キヴォトスで使われている文字とは別物みたいで、シャーレからアクセスできるデータベースを参照しても何と書いてあるかが判別できなかった。トリニティで調べてもらってるけど、学校で扱われてる古代文字とも別物みたいで、まだ……」

 

 何度も、何度も、ユウカの目はメモに書かれた内容を往復していた。並ぶ記号から何らかの規則性を導き出そうとしているかのようだった。だが、冷徹な算術使いも未知の言語には力及ばず。ユウカは下唇をぎゅっと噛んでいた。

 

「……ここに向かってくる途中、路上で銃撃戦があったんです。普段なら揉め事が起こるような雰囲気じゃない、穏やかな道だったんですけど……KINVID-22(これ)と関係があるのかも」

「…………」

 

 凶暴性の発露も、症状の一側面だ。これは本格的に、感染源をどうにかしないといけない……。

 

「先生。何か、私に手伝えることはありませんか?」

「うーん……防御の構築ができていない以上、生徒を地下に入れるわけにはいかないし、迂闊に情報が拡散するのも避けなきゃ……」

「書類やデータの整理ぐらいならできるでしょう? 何しろ、この荒れよう……」

 

 後頭部をかかずにはいられなかった。この二週間弱というもの、生活拠点をシャーレ執務室のままにしていたせいで、この有様だ。整理されていないデスクに、溜まったレジ袋。流しに入ったままのマグカップまでしっかり見られてしまった。

 

「こんなに散らかすなんて……ほら、片付けますよ、先生!」

 

 ドアの脇に打ち捨てられていたゴミ袋を鷲掴みにして、ユウカが散らかったレジ袋やら包装紙やらを中にねじ込んでいく。屈んだり体を起こしたりする度に、ハーフアップにした髪のポニーテールが、さらさらと揺れている。

 

「……あっ! こんな所に領収書が紛れてるじゃないですか! ダメですよ、きちんとこういうのは一ヶ所にファイリングしておかないと」

「あ、無い無いと思ったらそんな所にあったんだ」

「もう……!」

 

 

 ――ホント、私がいないとダメなんだから……。

 

 

 機嫌悪そうに眉を吊り上げていたが、小さく呟いたユウカの口元は緩んでいた。

 

 

 

 一時間ほどで整理整頓と書類作業は終わり、ついでに家計簿の面倒までユウカに見てもらってしまった。ここ数日の荒廃ぶりはすっかり平和だ。これで気分よく仕事が――と思ったら、椅子に座った途端、睡魔がまとわりつきだした。とろんと気持ちよくなりかけていた所へ、ユウカが声をかけてきた。

 

「先生、ちょっとパソコンお借りしてもよろしいですか? 済ませておきたい作業があって」

「ん、いいよ。いったんログオフするから……はい、これで大丈夫」

「ヴェリタスみたいなことはしませんからご安心下さい。それじゃ、ちょっと失礼して……わっ、この椅子、クッションがふかふか……背もたれが長い~♪」

 

 長時間座っていても負担にならないオフィスチェアの感触に、ユウカはぴこぴこと体を揺すっている。キヴォトスの学生たちは、おおよそ年齢不相応なことをしている子ばかりだ。常々そう感じるが、椅子に深く座ってはしゃいでいる所は、ユウカも年頃の微笑ましい女子学生だ。

 

 程なくして、ユウカが自分の生徒IDでローカルネットワークにログインし、何やらブラウザを開き出した。無事に用を済ませられそうなのを確認して、応接スペースのソファーに腰を下ろす。軽快にキーボードを叩く音は淀みなく規則的で、同じリズムで延々となり続けているそれを聞いていると、一度振り払った眠気が、再び押し寄せる。

 

「ふむ……うーん、ん……」

 

 ぶつぶつと早口に何かを呟きながらも、ユウカの手つきに迷いはない。どれぐらい時間がかかるか分からないが、少しばかりうたたねでもさせてもらおう。

 

 日差しも気持ちいいし、

 

 ぽかぽかして……

 

"ガシャン"

 

「!?」

 

 閉じられていた例の扉が突然開いた。いや、破けたという方がふさわしい。赤いセンサーアイが壁の向こうから姿を現した。

 

 ゴーレムだ!

 奥には小型のドローンもいる!

 

「ユウカ!」

「先生、ダメっ!」

 

 咄嗟にホルスターからハンドガンを取り出して、トリガーを引いた。「カン」と金属を弾く音がしたが、センサーアイには微かな傷がついただけ。ゴーレムの腕が持ち上がり、拳の先端についた銃口が、私の方を睨みつける。

 

「机の下に入ってください、先生!!」

 

 ユウカが絶叫した。両手にロジック&リーズンを構えた瞬間、耳をつんざくような発砲音が連続する。床に落ちる薬莢の音が執務室に反響した。

 

「先生は、やらせないっ!!」

 

 リロードの瞬間、ほんの僅かの静寂が訪れるが、静寂はすぐ、けたたましい銃声に埋め尽くされる。デスクのすぐ近くで鳴り響いていた轟音が、徐々に遠ざかっていく。ユウカが敵を押し返しているのだ。体を押し込めた狭い空間へ、焼けるように熱い薬莢が転がり込んできた。

 

 数分後、銃声が止んだ。耳鳴りが頭蓋骨の中にこだましている。恢復する聴覚が、ユウカの足音を拾っていた。

 

「……敵を殲滅しました。先生、出てきて大丈夫ですよ」

 

 ユウカが覗き込んできた。執務室には硝煙の臭いと埃臭さが満ちていて、大きく息を吸い込んだらむせてしまいそうだった。

 

「あ……ありがとう、ユウカ。助かったよ」

 

 立ち上がって背を伸ばすと、下からユウカが睨みつけてきた。

 

「もう、先生、どうして発砲したんですか! 敵意を見せたら、先生が狙われちゃうのに。私達と違って、先生は、その……撃たれたら致命傷なんですから!」

 

 怒鳴り声混じりに、ユウカが捲し立てる。この剣幕も当然だ。私には彼女達のようなタフネスはない。シッテムの箱を携帯している時はアロナが守ってくれることも、生徒達は知らないのだから。

 

「不安にさせてごめんね、ユウカ……つい」

「でも……よかったです。先生を守れて」

 

 シールドを展開していたようだが、それでも全ては受け流せていなかったのだろう。ユウカの脚に幾つか擦り傷ができていた。これがヘイローを持つ者の耐久力。私から見れば驚異的だ。銃弾が大したダメージにもならないなんて。

 

「……それにしても、これ。SMGで岩の塊が粉々になるなんて、凄い威力だね」

 

 バラバラの石ころやガラス片と化したゴーレムの残骸が、壁の穴の奥へ続いている。「火事場の馬鹿力」だとユウカは説明した。

 

「私達の銃って、火力が跳ねあがる瞬間があるんです。集中力が高まってる時、必死になってる時、追い込まれた時、その時々によって色々で、個人差もあります。そういう時って、こう、『意思が銃弾に乗る』っていうか、そんな感覚があるんです。ミレニアムの科学でもまだ解明されてない謎の一つで、モヤモヤするんですけど、感覚的には分かってる感じで……」

 

 ゲームにおける、クリティカルヒットとか、会心の一撃とか、バフとか、そういった概念だろうか。同じ規格の銃弾を使っているはずなのに桁違いの破壊をもたらす生徒もいるし、本当にそういった神秘の力があるのかもしれない。頑丈さや怪我の治る早さを考えれば、そう不思議なこともでもない。

 

「ともかく……助かったよ。ありがとう、ユウカ」

 

 素直に礼を述べると、苦笑交じりではあったが、ユウカは目元を緩めてくれた。

 

「……ここまで敵が侵入してくるなんて。パソコンは……なんとか無事みたいだね。データはクラウドに避難させて、執務室は封鎖しよう。隔壁を下ろすから、ユウカも荷物をまとめてね」

 

 銃撃戦の影響で、デスクの上はメチャクチャだ。壁にも穴が開いている。修繕工事は後日業者に頼むとして、壁の向こうへの侵攻作戦を練らなければならない。シッテムの箱と充電器も、忘れずに持ちだした。

 

 

 * * * * * 

 

 

 ひとまず、居住区のとある個室に避難してきた。Wi-fiも繋がっているし、プリンタも設置されている。ラップトップからアクセスすればここでも一応仕事はできる。こんな状況でも仕事をしなければならない、とも言い換えられる。事態を改めて整理しなおすと、エナジードリンクでも誤魔化しきれない疲労がのしかかってきた。

 

「……先生、顔色がすぐれませんよ?」

「あぁ、うん。大丈――」

「大丈夫じゃないでしょう。ホントに、先生はすぐ無理するんですから。少し横になって、軽く仮眠でも取ってください」

「でも……」

「先生がダウンしちゃうのが、一番危険なんです。お願いだから、少しでも休んでください。体調が回復してからの方が、効率よく動けますし」

 

 ユウカは、鞄から何かの教材を取り出し、机に広げた。

 

「先生がお休みの間、ここにいます。何かあったら、すぐに起こしますから」

 

 ベッドに横になるよう促され、言われるがままに寝かされる。休むべきか、いやここで私が休むわけには――全身から力が抜けていく。シャーレの活動が始まった初期からいるユウカだ。傍にいるのが彼女なら、という安心感も手伝って、意識が睡魔に摘みとられ、遠のいていく。

 

 何か――

 

 何か忘れている気がする――

 

 ふわふわ浮かぶユウカのヘイローになけなしの意識を注いだのと、それがぷつりと途切れてしまうのは、ほぼ同時だった。

 

 

 * * * * *

 

 

 …………

 

 ……

 

 何だか、体が重い。全身が動かないというよりは、体の上に何か重たいものが乗っているような感覚だ。圧迫感が苦しく感じられて、目を開けた。

 

「あ……先生……」

 

 しっとり潤いを帯びた声色が上から聞こえた。シーリングライトを遮る影は、ユウカだった。

 

「192分間お休みでした。お疲れだったんですね」

「あぁ、ユウカ……」

 

 ――ユウカ!?

 

 仰向けに眠る私の上に、ユウカが跨っていた。薄暗い視界の中でくっきりと目立つものがあった。あの光(・・・)だ。真円のヘイローの縁が、侵食されてピンク色に妖しく輝いていた。

 

 ――しまった……!

 

 KINVID-22の発生源からやってきたゴーレムなのだ。銃撃戦を繰り広げたら、舞い上がった埃には当然ナノウイルスが含まれていてもおかしくない。ユウカが受けた銃弾にも、ウイルスが付着していた可能性が高い。いや、銃弾そのものが感染源、もとい、感染兵器である可能性も――

 

「ユウカ、大丈夫なの?」

 

 大丈夫ではなさそうなことを分かっていて、尋ねる。理性的な会話は成り立つだろうか。

 

「だ……大丈夫、です……けど」

 

 ユウカの言葉は、なんだかたどたどしかった。ライトの陰になっていて、表情が読み取れない。

 

「……ベッドから、離れられないんです」

「どういう、こと……?」

 

 ヘイローの光が呼吸している。ユウカの息が荒くなっていく。桃色の環が、光度を増して、色濃く光りだした。シャツの襟元がギュッと握られて、首が僅かに引っ張られる。

 

「……ん……ぅん……」

 

 ユウカが倒れ込んできた。鼻を鳴らして、右の太腿が何かに挟まれた感覚があった。ユウカの脚だ。

 

「さっきから……何度か、こうして……ん、ん……」

 

 光の角度が変わって、ハッキリ見えた。

 ユウカが股を擦りつけている。私の太腿に。

 

「はぁ……はぁ……♡」

 

 上擦った吐息。156cmのスリムな体格ながら、ユウカの健康的な脚はむっちりしている。制服姿の時でも丈の短いスカートから生足が見えていて、確かに私は、彼女の大胆な脚に目を奪われたこともあった。

 

 アスナも、ハスミも、コトリも、そうだった。彼女達の肉感的な部分は、私を惹き付ける。先生でありながら、私は生徒に劣情を抱いている。感染した生徒に襲われた私が、100%の道徳心で彼女らを跳ねのけられなかったのは……ナノウイルスに、その心理を読まれていたとでもいうのだろうか。

 

「先生……ご、ごめんなさい、こんなこと……でも、でも……っ♡」

 

 回し飲みの間接キスすら破廉恥と断ずるユウカが、私と体を密着させて、ブルマ越しに秘部を押し付けて、腰を揺すっている。スラックス越しにも、熱と湿っぽさを感じる。

 

 ――濡らしているのだろうか。

 

 そんなことが頭に浮かび、否応なく私の欲求が炙られてしまう。こうなった時の流れは――もう四度目ともなれば、予測が立ってしまう。これは治療行為だ。相手をしてあげれば、感染した生徒の症状は緩和される。自分にそう言い聞かせるが、禁断の一線を越える、大人としてあるまじき行為への言い訳にも他ならない。

 

「せ……先生……」

 

 ユウカは私と視線を合わせると、わなわなと震え出した。赤らんでいた頬が、一層色濃くなっていく。

 

「先生っ!」

 

 "ちゅ……!"

 

 折り重なってきたユウカに、唇を奪われた。頭を強引に掴まれていて、首を捻ることもできない。舌が捩じ込まれてきて、口腔内を蹂躙してくる。

 

 "ぬち……くちゅ、くちゅっ……"

 

「ん……♡ んふ♡ んっ、んぅ……♡」

 

 ブラックコーヒーの苦味が、舌の表面に塗り広げられていく。その中に微かな甘さが混じっているのは、ユウカの唾液だろうか。息苦しさを感じても、ユウカは中々私を解放してくれない。手足の拘束こそされていないが、寝起きの気怠さも手伝って、私は拘束されているも同然だった。

 

 やがて、ユウカの呼吸の限界が訪れたのか、密着したままの唇がようやく離れた。ねっとりとした唾液が、舌と舌とを繋いでいる。私の上に乗ったままの彼女は、荒い呼吸を繰り返し、肩を上下させている。瞳孔がどろっと開き、目の焦点が定まっていない。

 

「先生……」

「……ユウカ?」

「……ごめんなさい。せ、先生と、そんな関係(・・・・・)でもないのに、強引に、破廉恥(こん)なことしたらっ……」

 

 大きな目が、涙の膜に覆われている。今にも泣き出しそうだ。ユウカは抗っている。ナノウイルスの精神汚染を跳ねのけようと抵抗している。

 

 少なくとも私が眠る前は、まだヘイローに兆候は表れていなかった。192分。ユウカはそう言っていた。私が眠っている間に発症したとするならば、最長でおよそ三時間も、ユウカは心を明け渡すまいと戦っていたことになる。空気中に漂うウイルスを直接吸い込み続けたアスナやハスミとは違う。マスクのフィルターで濃縮されたウイルスを吸い込んでしまったコトリとも違う。軽症の感染だからこそ、ここまで耐えていられるのだろうか。

 

「こんなこと、したらっ、先生に嫌われちゃう……っ!」

 

 大粒の涙が、ユウカの頬を伝った。

 

「……ユウカを嫌いになんてならないよ」

 

 そろそろ限界だろう。心を侵食する相手との綱引きに、ユウカはもう負けている。このまま無理をさせれば、それこそ精神が潰れてしまうかもしれない。

 

 ――私にできることは……。

 

「ユウカ。話せる? 自分の状態を、私に教えてくれる?」

「……は、はい……」

「無理に離れなくていいよ。少しでも落ち着けるようにしてくれれば」

「…………」

 

 ユウカは、私の脚を太腿で挟んだまま、抱き着いてきた。ほんのりミントのような香りの混じった髪の匂いと、汗を隠すためのシトラスの制汗剤の匂いがする。私の首筋に鼻を埋めて、すーすーと呼吸すると、幾分か落ち着きを取り戻したようだ。ユウカはゆっくりと話しだした。

 

 "めちゃくちゃにしたい"

 "全身が疼きに疼いている"

 "体に触れたくてたまらない"

 

 そんな衝動が脳の奥底から響いてきて、そのことで頭がいっぱいになっている。理性と道徳で押しとどめようとしても、それはまるで、洪水を板切れ一枚で防ごうと試みるようなもので、どんどん押し流されていた、と。「ユウカのせいじゃない」と、責任を転嫁できるよう伝えてやったが、自身でもそれは分かっているようだった。

 

「ユウカ。今も耐えてるの?」

 

 はい、とか細い声が聞こえた。蚊の鳴くような声だった。ユウカの理性はもうそこまで追い詰められていた。以前の三人よりもずっと薄い接触だったのに、ナノウイルスの侵食は強力だ。有無を言わさず襲ってきた生徒達よりも、真綿で首を絞められるように理性を削り取られる方が苦しいかもしれない。私は、彼女の髪を撫でてやりながら、考えた。

 

「辛い?」

「……辛い、です。でも……我慢しないと、先生が……」

「私なら大丈夫だよ。それよりも、ユウカの辛さを和らげてあげないと」

 

 ユウカはしゃくりあげているのに、股を擦りつけるのを止められない。

 

「だからね、ユウカ」

 

 瞳孔の揺れる青い目を、まっすぐ見つめた。

 

「我慢をやめよう」

「…………っっ!」

 

 痛いぐらいに私をきつく抱き締めて、ユウカが唇を重ねてきた。

 

 

 ”ちゅ……♡ ちゅぷ♡ くちゅ♡ くちゅ♡”

 

「んぅ♡ ん~♡ ぁふ♡ んちゅ♡ れる♡ んりゅ……♡」

 

 ユウカの熱烈なディープキスは、中々終わらなかった。何度も何度も、しつこく、角度を変えて舌を差し入れてくる。唾液が混じり合い、飲まれたり、飲まされたり。ユウカは私を離してくれない。それどころか、より一層体を密着させて、腰をぐいぐい押し付けてくる。胸板で潰れる乳房は、普段の彼女からは思いもよらない体積があって、思いのほか肉付きが良いことを思い知らされる。

 

「はふ……♡ んう♡ んぅ……ひぇんひぇ……♡」

 

 私はユウカにされるがままだった。私の口内を余すことなく舐め回しながら、喉の奥まで侵食しようと懸命に舌を伸ばしてくる。貪欲な舌に応えてあげると、ユウカは大喜びでむしゃぶりついてきた。舌を絡め合っていると、脳が芯から蕩けていきそうだ。

 

 両手こそ自由だが、ぬいぐるみか抱き枕のようにがっちり抱きかかえられたまま、動けない。ユウカもやはり、ヘイローを持つものの膂力を兼ね備えている。力での勝負になったら、絶対に敵わない。

 

 ――苦しくなってきた……。

 

 呼吸ができない。酸素が足りない。生存本能が警告を発して、鼻息が荒くなる。酸欠で頭の中に白いもやがかかりだした頃、ユウカはようやく私の唇を離してくれた。銀色の橋が伸びて、ぷつんと切れる。吐息まで飲み下すようなディープキスを長々続けた後でも、ユウカは私の唇を欲しがって、何度も顔を近づけてきた。

 

「先生……もしかして先生は、私の前にも、三人と……」

「……うん、そうだよ。今とは違って、抵抗もできない状況だったけど」

「……ダメですよ、そんなの……」

 

 私のシャツのボタンを、ユウカは荒っぽく外していく。頬を上気させ、眼差しをとろんとさせていても、力任せにシャツを引き裂かないだけ、彼女はまだ堕ちきらず、理性を残しているのかもしれない。

 

「先生は、私の……私の先生(・・・・)なんですから……」

 

 開いたシャツの隙間に鼻先を突っ込んできて、ユウカが私の匂いを吸い込んでいる。肋骨の隙間や胸板の至る所に、ユウカが吸い付いてマーキングを試みていた。刺すような痛みが一瞬走る。

 

「先生……先生……♡ 私の先生……♡」

 

 私を呼ぶ度に、ユウカの腕に力が籠る。骨が軋むようで、苦しい。所有欲のままに私の体へ痕(タトゥー)を刻もうとしている。その一方で、瑞々しく確かな厚みのある太腿で私の右脚を握り、へこへこ腰を振って、股を擦りつけてくる。

 

 ――可愛い。

 

 小言の多い世話焼きなユウカが、私に甘えているみたいだった。襲われているに等しい状況なのに、愛おしさすら込み上げてくる。

 

 ユウカが望むなら、いくらでも好きにしていいよ、と言ってあげたかった。それと同時に、理知的な彼女が、私の体のあちこちを唾液塗れにする下品な行為も厭わないことに、静かな憤りを覚えていた。ユウカにここまでさせるナノウイルスへの憤りだ。男性である私には何の影響も出ていないことが、なおさら悔しく感じられる。

 

 ――早く楽にしてあげたい。

 

 臍の周りに鳥の啄むようなキスを降らせるユウカ。頭を撫でると、彼女は首を捻り、掌に頬を擦り付けてきた。猫がするような仕草だった。ぷにぷにした頬の感触が手に心地よい。小言の多いユウカだけど、本当はこんな風に甘えたい願望を持っているのかもしれない。秘匿しておきたいであろう心の内を覗き見てしまうようで――申し訳なかった。

 

「……はー……はー……」

 

 ユウカがベルトに手をかける。息が荒い。私の下半身に何がついているか、彼女は知っているのだろうか。コトリが言っていたように、ミレニアム生はみんな知りたがり(・・・・・)なのだろうか。

 

 しゅるっ、と私のベルトを抜き取り、ユウカはスラックスのジッパーを引き下ろした。下着越しに性器へ触れてくる手つきには躊躇があって、そのぎこちなさに妙な興奮を覚えてしまう。

 

「これ、先生の……男の人の……本物だ……」

 

 少女の指先が、オスの性器をなぞっている。知識はあっても実体験は無さそうなユウカの動揺に、安堵している自分に気が付いて、自嘲した。ユウカには無垢であって欲しいと、勝手な願望を持っているのだ、私は。

 

 ユウカは、私のペニスをそっと握りこむと、恐る恐る上下に扱き始めた。じわじわと快感が湧き上がってきて、芯の入りかけていた男根はムクムクと膨れ上がっていく。

 

「あ、大きくなってきた……熱い……♡」

 

 "しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ"

 

 柔らかい掌に、しっとり吸い付く素肌は滑らかだ。おっかなびっくりで不慣れな力加減のもどかしさが、背徳的な快感を引き立てる。指が巻き付いて、"きゅっ"と締め付けられると、その勢いで竿がビクンと跳ねてしまう。その様を見て、ユウカが深く息を吐いた。

 

「はぁ……♡ はぁ……♡ すごい、"ぎゅっ♡ ぎゅっ♡"って動いて、どんどん硬くなってくる……♡」

 

 漂う精臭に、ユウカは鼻をヒクつかせている。オスの臭いにうっとりして、私の目を覗き込んでくる。ピンクに染まったヘイローが明滅して、真面目なユウカが発情を見せるギャップを強調している。こす、こす、と恥丘を押し付けながら、ユウカの荒い息に、甘い声が混ざりだした。

 

 私も、昂りつつあった。ユウカは可愛い。顔立ちは整っているし、卑下しない程度に自分のルックスに自信を持っていて、気を引く表情だって作ろうとする。身体つきだって細身だが、太腿のムチムチした肉感は目を引くものがある。体のラインが出る体操着姿だからこそ、普段は見られないお尻の丸みが目立っている。

 

「こ、ここ……ここで、もっと……」

 

 手コキで屹立した陰茎に、ユウカが跨ろうとした。こことはどこだ、と思っていると、ユウカが倒れ込んできて、顔が近づく。

 

 "ぎゅむっ……♡"

 

 ぷりんとしたお尻の向こうで、弾力豊かなものにペニスが挟まれた。瑞々しくも滑らかな太腿が、ミチッと私を潰している。ユウカがそのまま腰を揺するものだから、包み込まれた竿がぐにゅっぐにゅっとモモ肉

に擦り上げられる。初めて体感する刺激に、思わず私も腰を突き上げてしまった。

 

「……♡ あっ、これ……気持ちいいヤツ……♡」

 

 微かな湿りを帯びた布地とのスマタに、むっちりした太腿ズリ。強烈なコンビネーションだ。

 

「あ♡ んっ♡ こすれ、て……あっ、あ……♡」

 

 ――や、やばい……!

 

 下半身が融けてしまいそうだ。まるでナカに入れているかのような柔らかさと温かさが、私のモノを包み込んでいる。ユウカが両脚を閉じているものだから、圧迫感も強い。

 

「……あぁ、かたぁい……♡♡」

 

 あのユウカが、生真面目なユウカが、目をとろんとさせて、恍惚の笑みを浮かべている。甘く卑猥な声を出して、淫らに腰を振っている。理性がガリガリ削られる眺めだ。ブルマの生地越しにも、性器の火照りが竿に伝わってくる。

 

 "むにゅっ♡ ぬりゅ♡ みちぃ……♡ ぱちゅ、ぱちゅ♡"

 

「はぁ……♡ あ、あっ♡ あぅ……♡ きもちい、きもちいぃっ……♡♡」

 

 私の出した先走りと、擦れ合う体温でユウカが分泌した汗が混じり合い、互いの股がくちゅくちゅ鳴っている。その水っぽい摩擦音は、私にセックスを連想させるのには十分だ。思考がぶつかり合う。

 

 交われば、それが対症療法になる。

 交われば、先生と生徒の壁が壊れる。

 交わらなければ、大人の矜持は保たれる。

 交わらなければ、ユウカの苦しみが続く。

 

 楽にしてあげるならば、答えは一つのはずだ。取返しのつかない行いにはなるが、このままユウカの感染が深刻化するよりはマシな選択だ。そうやって、私は言い訳を重ねる。

 

 それに――興味が湧いていた。ユウカが醸し出す色気は想像以上で、その気になれば男を容易く魅了できるだけのポテンシャルを備えている。私の意識が、太腿ズリのもたらす快楽に、塗りつぶされていく。

 

「っ、ん♡ ん、あっ、あ、あ、あ♡」

 

 ユウカは夢中になっている。むちっ、むちっと音が聞こえてきそうなぐらい、モモ肉を寄せて、詰め込んで、ペニスを押し潰しながら上下に扱き上げる。亀頭のくびれ目に柔肉が引っかかり、敏感な所を責め立ててくる。パイズリの、ふかふかの布団に包まれるような幸福感とも違う。筋肉の力みや弾力が直に伝わる不可思議な刺激だ。

 

 "ぬち♡ ぬちゅ♡ くちゅっ♡ くちゅ♡"

 

 余裕がなくなってきた。尿意にも似た焦燥感が上がってくる。視覚、聴覚、触覚で同時に犯されていてば、すぐに果ててしまう。ユウカも無意識にそれを悟っているのか、力を込めて締め付けを強め、腰の動きが早くなっていく。私を急かすように、ユウカの呼吸もテンポを上げていく。

 

 このまま射精したら汚してしまう。

 このまま射精して汚してしまいたい。

 

 なけなしの理性を、欲望が呑み込もうとしている。

 

「ゆ……ユウカ、もう、止め――」

 

 "ぶちゅっ……♡"

 

「ン♡ んふぅぅ……♡ んぢゅ、れるっ♡ はむ、はふぅ……♡」

 

 私の制止は、ユウカに食べられてしまった。

 我武者羅に口内を蹂躙されて、限界が訪れる。

 

「ン˝っ……♡ ンフ♡ ん˝う゛う゛ぅぅぅ~~~♡♡」

 

 私を嬲っていた舌が、口内で痙攣した。

 ギチッと肉壁が締まり、搾り出される。

 

 "ぶぴゅっ♡ どぷ、どぷ♡ どぷっ……♡ じわ……♡"

 

 押し潰されたままの射精は勢いがなく、失禁したかのように熱いものが広がっていく。空気の入り込む隙間もなく包み込まれたままの射精に、私は思わず手を伸ばし、ユウカのお尻を鷲掴みにしてしまった。どく、どく、と脈打つ竿に応じるみたいに、ユウカは全身を震えさせていた。

 

 "どく……♡ どくん♡ びく、びく……♡"

 

 達しながらもキスを止めないユウカのせいで、絶頂が長引く。長すぎて、快感が苦痛になりつつあるぐらいだった。もう精液の排泄が終わっているのに、まだペニスが胴を震わせている。

 

「……ぷは、はぁ……♡ ん、ちゅ♡ ちゅっ……♡」

 

 舌を自分の口内に引っ込めても、何度も唇がひっついてくる。ネバつく糸をぺろりと舌なめずりして、ユウカは満足気だ。

 

「ふふ……先生、出しちゃったんですね♡ 太腿が温かいです……♡」

 

 半開きの目が艶めかしい。吐精した肉茎に、残滓を塗り付けて擦っている。イッたばかりの所へ甘い刺激を加えられて、腰が反射的に逃げようとしてしまうが、そうはさせまいと体重がかかってくる。ユウカは私の上で腰を揺すりながら、首筋や胸元にまた吸い付いてきた。もう、今日どれだけ口付けを浴びたか数えきれない。彼女の荒い息遣いと、肌に触れるサラサラの柔らかい髪がこそばゆい。

 

「……何だか、体が火照って、熱い……」

 

「ぬ、脱いじゃおうかしら……♡」

 

 体を起こしたユウカが、紺のTシャツの裾に手をかけた。交差した腕がガバッと捲られて、ネイビーのブラが白い肌の上に姿を現した。むわっと空気に蒸散するほのかな汗の匂いを嗅いだ途端、得も言われぬ昂りが込み上げた。

 

「どうしよう、わ、私……先生の前で、ハダカになっちゃう……♡」

 

 狼狽しつつも、ユウカの手は止まらない。ギラついた淫らな興奮が、ユウカの青い瞳を濁らせていた。眩しいぐらいに、ヘイローはけばけばしくピンクに輝いている。フロントホックにかけた指は露出のスリルに震えていたが、躊躇はなかった。

 

 "ぷちっ"と微かな音がして、ふっくらした双丘がまろびでる。支えを失って重力に引かれ、自身の重みでたぷんと空を泳ぐ様が、はっきり見えた。露骨に大きいわけではないが、服の上から予想されるよりも豊かだ。着痩せするタイプなのだろうか。

 

「あ、あぁ……先生が見てる……♡」

 

 白い肌に呼応する、桜色の小ぶりな乳輪。その中心からは、豆粒のような乳首がぽちっと膨れている。ツンと上向きの乳房が、ユウカのセミヌードの美しさを引き立てている。

 

「し、下も……♡」

 

 ユウカが膝立ちになった。臍の下を隠していたブルマが、ショーツごと引き下ろされていく。陰毛は薄めで、裂け目の頂点が茂みごしにうっすら見える。ショーツのクロッチはもうびしょびしょで、蒸れた陰毛の下の秘裂と、何本も糸で繋がっていた。太腿から下りていく僅かな布地が、私の吐き出した劣情の残滓も吸い取っていく。そうして、とうとう――ユウカはアンクルソックスを残して全裸になってしまった。

 

「ううっ♡ 脱いじゃった♡ 先生が見てるのに、ハダカになっちゃった……♡ 恥ずかしいのに……♡ せ、先生っ♡ 見てくださいっ♡ 私の破廉恥な所、見て……♡」

 

 膝立ちのまま腰を突き出して、ユウカが割れ目を開いた。サーモンの切り身を思わせる粘膜が、生々しい粘液に覆われている。

 

「こ……擦りつけて、ぉっ、オナニー、してたから、もうっ、凄いんですっ♡」

 

 自ら淫らな言葉を口にして、ユウカの声が上擦っていく。指で開いたり閉じたりする度に、くちゅくちゅ音がする。このまま目の前でオナニーショーを始めてしまいそうだ、と思っていたら、クリトリスをくにくに弄り出した。

 

「はぁ♡ はぁ……♡ う˝っ、ア……♡ き、きもちいい♡ みられてると、もうイキそぉ……♡」

 

 ハァハァと息を荒くしているのは、もはや私も同じだった。目の前で展開される痴態に、肉欲を揺さぶられないはずがない。息をするように収縮する膣口から、ぽたりぽたりと愛液が垂れ落ちてくる。お腹を空かせている。早く頬張りたい。下の口からそう語りかけられて、男の本能に火が点いてしまう。

 

 ――ごくっ……!

 

 生唾を飲み込んだ音を聞き取ったのか、ユウカがニヤリと笑った。

 

「い……いいですよね? 先生も……ぉ、おちんちんを大きくされてるんですし、いいですよねっ? 入れたい……入れてみたい……♡ 先生としたい♡ ううぅぅっ♡ ガマンできない♡ したい♡ したい♡ したいですっ……♡」

 

 真っ暗な部屋でも灯りになりそうなぐらい、ユウカのヘイローは爛々と輝いていた。飢えた獣が餌を吊り下げられているも同然の状況だ。理性がドロドロになるまでユウカは侵食されている。両手を正面から握られて、ベッドに押し付けられた。持ち上げられない力の差だ。

 

 認めざるを得なかった。私も、期待している。フェロモンをむんむんに振りまく生徒に、劣情を催している。そうでなければ、射精を経たペニスをガチガチに硬くして、鈴口に先走りの玉など作るわけがない。これは治療行為なんだから、と内心でまた都合のいい理由を作った。

 

「先生……あ、あぁっ、熱い……♡」

 

 馬乗りになって、ユウカが割れ目の内側の粘膜をペニスに擦りつけてくる。彼女の粘膜も、ジンジンと熱を持って熱くなっている。しばらく下の唇で竿を挟んで扱き、膣穴と鈴口でねちねちとキスしていたが、やがて、体が沈んできた。槍の先端が温かいものに包まれていく。

 

 "にゅぷぷ……ずぷ……♡"

 

「っっ~~~~♡♡」

 

 亀頭の先端が膣口をこじ開ける。性器と性器の距離がゼロ以下になっていく。ユウカが背筋を仰け反らせた。見るからに不慣れな挿入だが、擦れ合う粘膜に大きな快感を覚えているらしい。

 

 ユウカは打ち震えながら、徐々に腰を沈めていく。亀頭が完全に飲み込まれてしまうと、後はもう、重力に従うだけ。体外に露出した竿が、ずぶりずぶりと女の胎に呑まれていく。

 

 "ぬぷ……ぐちゅんっ♡"

 

「あ……♡ あふ、ぅ……♡」

 

 互いの下腹部が密着した。蜜壺の細かい襞やザラついた肉壁が、ペニス全体に絡みついてくる。蕩けるような温かさだ。異物を捉えようと、四方八方から膣肉が襲ってくる。動いてもいないのにヒクヒク蠢き、亀頭がぴったりと包み込まれていた。

 

「せ、んせい、が……入ってる、ぅ……♡」

 

 私の手を握るユウカは、ぷるぷる震えながら力んでいた。

 

「も……もっと、もっと、ぉ♡」

 

 腰を回して膣を馴染ませていたが、しばらくするとユウカが動き出した。

 

 "ぬぷ……♡ ぬぷ……♡"

 

 "ぱちゅ……♡ くちゅっ……♡"

 

「うふぅぅ♡ こ……こすれて、あ……あぁっ……♡」

 

「は……♡ んっ♡ んっ♡ んん♡ ン、ぉ……♡」

 

 "たんっ♡ たんっ♡ たんっ♡ たんっ♡"

 

 始めは緩慢に、性器の感触を味わいながら。上下運動のリズムを掴むと、少しずつテンポが上がっていく。結合部からは淫らな水音が響いている。ユウカは騎乗位で私の手の自由を奪い、私を見下ろしながら、整った顔を快感に歪めている。微小な粒が生えてザラザラした天井を擦りながら、狭い膣奥に当たると、手を強く握られた。

 

 "ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡"

 

 リズミカルなストロークで、ユウカの体が鞠のように弾む。ぶるんっと揺れる乳房が、自らの胸に当たって、瑞々しい音を立てている。柔らかそうな乳房が目の前で踊っている、触れられないのがもどかしく感じられる。

 

「んっ♡ う˝ぅっ♡ ふかいの、きもちい……♡ あ、あっ、あたるぅ……♡」

 

 持ちあがるユウカの体に釣られて、私も下から突き上げていた。自ら動いて快感を貪る動きを一度してしまえば、意識の歯止めも関係なしに、本能の疼きがぶわっと広がっていく。

 

「はうっ……♡ ん、ぐぅ~……♡」

 

 沈み込んでくるユウカを突き上げて迎えうつと、ユウカは可愛らしい喘ぎ声に混じって、肺の底から出てくるような呻き声をあげた。

 

 "どちゅっ……♡"

 

 "ぐりゅ……っ♡"

 

「ほ……あぎュぅ……♡ あうっぐうぅっううっ♡♡」

 

 体重が乗り、行き止まりに亀頭が押し付けられた。ユウカは歯を食いしばって悶えた。痛いのかと思ったが、そうではないらしい。膣壁が捻じれて狭くなり、ギチギチと締め上げてくる。緊張が極限まで高まった数秒、だらんとユウカの体から力が抜ける。膣奥深くの刺激が強すぎて、達してしまったようだ。

 

「はー……♡ はー……♡」

 

 逆光になっていたが、絶頂の余韻に浸るユウカの瞳は、じんわりと滲んで潤んでいた。体重をかける度に敏感な所に当たり、子宮口で亀頭とキスしては、ぴくっと腰を引いてしまう。そのくせ、高い位置で踏ん張ることもせずに腰を沈めてくる。ユウカの動きに合わせて、狭い膣内全体が、ペニスにちゅうちゅう吸い付いてくる。

 

「ま……まだ、まだっ……♡」

 

 "ずぷっ♡ ずちゅ♡ ぼぢゅっ♡ ばぢゅ♡ ばぢゅ♡"

 

 重力と反動に任せた律動が再開された。さっきよりも、長く、深く、激しい結合だ。たっぷり分泌された濃密な愛液で、ユウカの狭い膣はトロトロになっている。締まりはさっきよりも強くなっていて、カリ首が引っかかり、膣壁の段差にゾリゾリと刺激される。甘美な快感が溜まっていき、射精しているかと勘違いするほどの勢いで、我慢汁が溢れていく。

 

「ん˝、あ˝……♡ っぐ、ふぐゥ♡♡ あ……ア˝♡ ア˝♡ う、くぅ~~~♡♡」

 

 結合部で、泥を掻き混ぜるような音がする。ユウカが尻を持ち上げた瞬間、白く泡立った本気汁がぼたっと垂れ落ちてきた。ペニスを引っ掻き棒にしてガリガリ膣壁を削っては、その度にあられもない嬌声をあげてよがっている。

 

「イ……イく……また、い˝、ぐゥ……♡♡」

 

 子宮口を亀頭に押し付けながら、ユウカが絶頂を宣言した。切なげに眉根を寄せて、唇を噛みしめている。甲高い鳴き声と共に、目蓋の縁からぽろりと一筋の涙を溢す様が、たまらなく可愛くて――私も限界を超えてしまった。

 

「あ……ユウカ、出る、出るッ……う……!」

 

 熱泥が尿道を焼きながら、排出される。駆け抜けた奔流は、一滴残らずユウカのお腹に注ぎ込まれていく。

 

 "びゅぶ……どぶっ♡ どくっ、どく、どく、っ♡"

 

 "とぷ……ぴゅく……♡ じわ、じわ……♡"

 

「あ˝……あ˝、ぉ♡ で……でてる……♡ あつい、あつ、う……♡」

 

 体を起こしていることができず、ユウカが倒れ込んできた。全身を大きく痙攣させて、背中を大きく上下させて、息を紡いでいる。昂りの激しさが、テンポの速い鼓動を通して伝わってくる。

 

「……ふぅ……ふぅ……」

 

 射精は長く続いた。吐くものを吐き終えたが、絶頂の余波でひくひく震える膣襞同様に、ペニスもびくびくとのたうっている。ユウカは中々手を離してくれなくて、それどころか、私の胸板をよじ登って唇を奪いに来た。

 

「……ふー♡ んぢゅ♡ ぢゅるる♡ くちゅ♡ んふゥ……♡」

 

 整わない呼吸を私の肺から奪い取るように、貪られる。汗ばんだ体からはより一層濃厚なメスの匂いが立ち上り、脳の深い所を犯してくる。ユウカは、キスしながら、再び腰を動かし始めた。

 

「……ぷは、待って、ユウカ、っ」

「だ……ダメです、先生っ♡ もっと……んふぅ……♡ もっとぉ……♡」

 

 遠くで水音がした。萎えかけていたペニスに、強制的に火が入る。私の吐き出したドロドロと、厚ぼったい本気汁が混ざり合って、ユウカの膣内はもうグチャグチャだ。ひたすらに滑りがよくて、激しい摩擦もその全てが快感に変えられてしまう。

 

「っ……ふふっ……また元気になりましたね、先生♡」

 

 唇を離し、上体を起こしたユウカが、舌なめずりした。首筋まで赤く上気して、鎖骨を汗の滴が垂れ落ちていく。視線を上げていくと、ふと私は気が付いた。

 

 ――ヘイローが元に戻っている!?

 

 今までの対症療法が功を奏した証だった。禍々しいピンクは浄化され、元の青緑の光が、黒い環の中で淡く輝いている。

 

「ゆ、ユウカ……っ」

「ハァ♡ ハァ♡ 先生、先生ッ♡♡」

「正気に戻ったんじゃ、ないの……っ」

「も……戻って、ます、けどぉ……♡ 止まれないですよ、こんな、夢のような、時間、っ♡」

 

 "ぱちゅ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅ♡"

 

 "ぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっ♡"

 

「は、っぐ♡ あお、お˝♡ はぁ、はぁ、先生っ♡ 先生は、私の……♡ 私の、ですよっ……♡」

 

 譫言のように私を呼びながら、ユウカは激しいストロークを仕掛けてきた。充血した襞で竿を勢いよく扱き、数回に一回は思い切り腰を沈めて、腹の深くで私を咥えこむ。子宮口に亀頭でディープキスをすると、そのまま飲み込まれてしまいそうだ。

 

 膣奥で亀頭が捕らえられ、濡れそぼった肉に舐め回され、尿道の残り汁を吸い上げられる。終わったはずの射精がすぐに呼び戻されて、先走りなのか精液なのか分からないものが、"どぽ、どぽ"と溢れていく。尿道を液体に擦られる感覚は、たちまち次の焦燥感を呼び起こした。

 

 ――あ、ヤバい……。

 

 ユウカに貪られて、意識が混濁していく。膣の深くに突き刺さる度、視界が明滅する。このままでは、ユウカに全てを搾り取られてしまう。だが、どうすればいいのか。そんなことをぐるぐると考えているうちに、ユウカが一際大きな声で叫んだ。

 

「お˝……♡ お~~~♡ だめっ♡ くる、きぢゃう……♡♡ きゃう゛うぅう゛ぅぅっ♡♡♡」

「あ……だめ、出……ッ――」

 

 "ぶぴゅッ♡ びゅぶぶぶッ♡♡ びゅるッ……びゅぶぶッ……♡♡♡"

 

 ユウカが仰け反って達すると同時に、根元からギチギチと搾られて、マヨネーズのごとく射精した。早鐘を打つ鼓動にシンクロして、熱いものが弾けていく。こんなに短いスパンなのに、信じられないほど深いオーガズムに神経が焼かれて、気が遠くなりそうだった。

 

 "どく……どく……どく……どく♡"

 

「うっ……あ、づぅ♡ おなか、やけ、ちゃう……♡」

 

 白い喉を見せていたユウカが、ゆっくりと私を見下ろす。唇がだらしなく半開きになって、前髪も乱れている。瞳は焦点が曖昧になっていて、頬には涙の跡がくっきり残っている。その淫靡さには、思わず息を呑んだ。

 

「……せん、せい……♡」

 

 腰をくねくね回して、膣に溢れる混合液を味わっていたが、ユウカは力なく倒れ込んできた。体重がかかった拍子に尻が持ち上がり、結合が解けてる。どろどろしたものが竿を伝ってきた。

 

 私の手の甲には、ユウカの指の痕が、くっきりと残っていた。

 

 

 * * * * *

 

 

 あれからもう一回戦求められ、仮眠で回復した体力はすっからかんだ。火照りが冷めて、後始末も終えて、数十分。私とユウカは、まだ裸だった。

 

「……先生?」

 

 ユウカがぽつりと言った。さっきからずっと私に抱き着いたままで、額を胸板に預けている。

 

「その……大丈夫、ですか? あの、つ、疲れてたのに……」

「私は大丈夫だよ」

 

 引っ掻かれた背中を、ユウカがそっと撫でてきた。腹筋の辺りにもキスマークの痣が見えているから、きっと体の至る所が同じような状況になっていることだろう。

 

「ユウカはどう? 落ち着いた?」

「……はい……」

 

 動揺しているのが、鼓動から伝わってくる。KINVID-22に感染したことへの恐れか、それとも、先生と生徒の一線を越えてしまったことへの後ろめたさか。あるいはその両方か。

 

「私……この後、どうなるんですか?」

「……一旦、バイオサイエンスラボで検査してもらうよ。ただ、発見当初から研究が進んできたから、早くに復帰できると思う」

 

 ユウカは溜息をついた。セミナー会長の調月リオが姿をくらませている今、以前以上に振り回されているのだ。無理もないだろう。

 

「あと、もう一つ。一応、体温は毎朝計ってて……多分、大丈夫な日だと思うんですけど……い、いっぱい出されちゃったから……」

「それなんだけどね、ユウカ」

 

 ユウカがシャーレにやってくる直前に入ってきた、最新の、そして最悪とも言える情報を話した。

 

「……妊娠できなくなる?」

「うん。精密検査をした結果、体内に排出された生殖細胞が、短時間の内に全て死滅していたことが分かったんだ。ナノウイルスの攻撃作用によるものだと、実験によって明らかにされたそうだ」

「それって、もしかして……」

 

 聡いユウカのことだ。すぐに気が付いた。そのような症状を持つウイルスがパンデミックを起こそうものなら、どのような結末に至るのか。愛し合う夫婦は永遠に子宝に恵まれなくなる。繁殖を封じられた種が辿るのは、緩やかで確実な絶滅。キヴォトスに滅びの未来が約束されてしまうことにだってなりかねない。現に、感染は少しずつ拡大しているのだ。

 

「血清製剤から症状を抑えることには成功しているから、感染初期であれば対処はそれほど難しくないみたい。でも、症状が進むと、その変化が不可逆的なものになってしまう可能性も否定できない」

「せ、先生……どうしよう……」

「ユウカは大丈夫。一応の対症療法も――」

「対症療法って……その……せ、セックス……ですか?」

「うん……」

 

 青ざめて、ホッとして、顔を赤くして。ユウカの表情がコロコロ変わって忙しかった。

 

「抗体が体内に作られるから、二度目の感染は無いはずだけど、不妊の可能性についてはきちんと対処しておかないとね。ラボまで送っていってもらうから、ちゃんと検査をしてもらうんだよ」

 

 ユウカは素直に頷いた。それでも、心細さを覚えてしまうのか、背中に腕を回して、擦り寄ってくる。

 

「それからね、ユウカ。もうすぐ『防御策』が完成する。近い内に、執務室の奥へ突入しての封鎖作戦を実行に移すよ。まだ立案中ではあるけれど、突入班に加わってもらいたい」

「もちろんです。それは……抗体のできた三人と(・・・・・・・・・)、ということですね?」

「そうだね。データ解析と中継アンテナの設置が必要だから、ヴェリタスとエンジニア部、特異現象捜査部にも手伝ってもらおうと思って」

「ヴェリタスも、か……。諸手を挙げて、とはいきませんが、やむを得ません。ミレニアムのバックアップ勢揃いって所ですね」

「科学的アプローチを取ろうとすると、どうしてもそうなるね。ユウカもよろしく頼むよ」

 

 先の展望が見えて、ユウカの表情が少し明るくなった。ラボ行きのヘリがあと十五分でスタンバイになることを伝えると、名残惜しそうに、ぬくもりが離れていく。体の至る所がベトベトだから、シャワーを浴びてから出るそうだ。体操服は汚れてしまったが、汗をかいた時に備えて下着ごと着替えはカバンに詰めてきていた、とユウカは言った。

 

「先生、えっと……いいですか?」

 

 シーツで裸体を隠しながら、ユウカがもじもじしている。

 

「じ……事故みたいなものですけど、えっと、一応、そういう行為をしちゃったわけで……だから、う~……ん!」

 

 目をぎゅっと閉じて、ユウカが顔を突き出してきた。

 

「キスして欲しいの?」

「こ、言葉にしないでください! せっかくぼかしたのに。……それで、だ……ダメですか?」

「……いいよ」

 

 誘う唇に心を揺さぶられていたのは、確かだった。

 

「ん……♡」

 

 唇をそっと重ねるだけの、甘い一瞬。顔を離すと、ユウカは耳を真っ赤にして、シャワールームへ向かって行った。

 

 さて、私もひとまず、この数時間の空白を埋めるべく――と着衣を整えていると、スマートフォンに着信が入った。作戦成功のカギを握る防御壁の作り手、白石ウタハからだった。

 

『先生、夜分にごめんね。今話せるかい?』

「ウタハ。お疲れ様。大丈夫だよ」

『朗報だ。マスクが揃ったよ。事前に聞いていた通りの人数分と余剰を合わせて、十五枚』

「もう揃ったんだ、さすがだね」

『コトリからも報告を受けてる。放っておいたらマズい事態だからね。急いだよ』

 

 受話器の向こうのウタハは誇らしげだった。

 

「……よし。作戦実行の目途が立ったね。当日は地下鉄を一部運休にしてもらわなきゃならないし……詳細を詰めたら連絡を入れるよ。モモトークでグループを作るから」

『了解だ。ところで、費用をセミナーに上げたんだけど、本当に大丈夫だったのかな』

「ああ……うん。それはこっちで何とかするから大丈夫」

 

 そのセミナーの会計との話に決着がついていないとは、まだ言えなかったが――反撃の狼煙を予感して、私は武者震いを起こしそうになっていた。

 

 

 Case 05へ続く

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