※この作品はR-18です。

華麗なる暗殺一家   作:翔田美琴

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7話 それぞれの欲望

 ゾディアック家の風呂場にて早速一度目のセックスを交わした二人。

 ようやく身体を焼くような快楽が収まり、それでも彼と銀髪の淑女は絡まる蛇のように口づけに夢中になってお互いに貪り合っている。

 

「エリオット様……はぁ……はぁ……」

「君のせいだからね……私をこんなに本気にさせたのは……ンっ……ンっ」

 

 舌を絡ませて深いキスに溺れるエリオットと彼の体の疼きを晴らす為に呼ばれた淑女との夜は風呂から上がっても続いていた。

 キングサイズのベッドに横たわる二人は彼が覆い被さる形でリズミカルに体が動いている。  

 様々な場所にキスの雨を振らせるエリオット。

 イリーナは商売である事も忘れて彼との行為に溺れる。……溺れるしかなかった……。

 絶えず襲い掛かる快楽は、彼女が商売でしてきた行為の中ではダントツに気持ちいい──。

 相手がこのナイスミドルであったのは幸運だった。相手が誰であれ身体を重ねる女性の快感を大事にする気概は、心底、このセックスという行為が好きな証拠でもある。

 そこには打算もあるが、でもそれを通して裏切ろうとは思わない。好きなものを好きと言って、何が罪になると言うのだと、そんな心意気がある。

 だから、行きずりの相手でも骨の髄まで楽しむ。

 イリーナはその姿にかつての父の姿と重ねていた。父もそういう所が顕著に出る。

 この目の前の男性と父親、見ず知らずの男性達が直に顔を合わせたら一体、父はどのような表情をするのだろうか──?

 

 その頃、ノスフェラート一家の方は娘のマリーナ・ノスフェラートが父親であるライアン・ノスフェラートにわがままを言っている光景があった。

 

「嫌よ! パパの正論は聞きたくないわ! 私はバートン家の彼に振り向いて欲しいの! だから明日は高級ブランドのドレスを買い漁るんだから!」

「バートン家の御曹司に熱を上げるのはやめなさい! 奴らはお前には荷が重い。当主の男はそれこそ心を操る名人だし、息子には色々と頭の切れる姉妹達がいる! お前がのこのこパーティーに行った所で無視をされるに決まっている!」

「それが嫌なのよ! パパはそれでもノスフェラートファミリーの頭目なの!? そんな及び腰で世界一の金持ちになれるって言うの!?」

「皆、パパの事を馬鹿にしているわ! イギリスで10本の指に入るって自慢しても、バートン財団の一家には遠く及ばない癖に笑わせてくれるってね!」

「奴等も裏の世界とは持ちつ持たれつ関係を維持している……だけど、我が家と違うのはその信頼が世間一般に浸透しているからだよ。我々、マフィアとは住む世界が違い過ぎる。……待っていなさい……マリーナ。お前に相応しい男性をパパが紹介してやろう」

「──どうせ、しがないマフィアの男に違いないわ。期待したって無駄ね」

 

 バタン!

 大きな音を立てて、マリーナは自室に帰った。

 やれやれ、あのバートン家の御曹司と同じ学院だったのはマリーナにとっては嬉しいが、同時に不幸でもある。

 御曹司の後ろにはあのバートン財団の力がある。それも中枢も中枢。支配者と表現してもいい男が理事として今でも活動している。

 そんな奴が敵に回ったら、ノスフェラートファミリーと言え、無傷では済まない。最悪の場合、奴らの武力によって殲滅の憂き目にあう。それくらい、バートンの御曹司は危険な存在なんだ……何故、それが判らない──。

 それに今は誰かは判らないが立て続けにノスフェラートファミリーの人間達が次から次へ殺されている。

 この間はジョーが殺された。

 死因は毒殺ではなく、首の骨を折られた撲殺だった。しかもその時は丁度部下と飲んでいたから喧嘩などのいざこざでの撲殺ではなく、狙ったように首の骨を折られた。

 つまりは暗殺者の仕業だ……!

 こんな化け物みたいな暗殺者に狙われたらトップ3の連中ならまだしも、後の連中は何が起きたかも把握できないままに殺されてしまう……!

 せっかくここまで勢力を拡大できたのに……潰されてたまるか……!

 ライアン・ノスフェラートは徐ろに電話をかけると命令口調で部下に言った。

 

「シュトリゴンに連絡しろ。我々ノスフェラートファミリーを殺し回る奴らを燻り出してやる……!」

「り、了解しました」

「くそ……っ、まさか吸血鬼(シュトリゴン)を出動させる羽目になるとはな……」

 

 

 朝陽が昇り、深い微睡みから醒めると傍らでほぼ全裸でしなだれるように腕を絡みつかせる銀髪の淑女が安らかな寝息を立てている。

 昨夜はとても濃厚な一夜だった。

 また、機会があったら、共寝をしてみるか……。

 その淑女も朝陽の眩しさに目を覚ました。

 お互いに照れ笑いをしている。

 そして、エリオットは一夜を共にした礼金を払い、銀髪の淑女は朝焼けの中、迎えの車に乗り去って行った──。

 その送迎車の中で運転手は聞いた。

 

「いかがでしたか? 最近話題のセレブの夜は?」

「お父様に通じる何かがあったね。パーティーに招待するのも面白いかも知れないよ」

 

 銀髪の淑女は事もなげに言い放ち、送迎車の中で目を閉じて、口元を笑みにしていた。

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