SECOND DAY 3:00~
ファンタズマゴリアは、エンドロールを連れてあの敵の拠点に向かう。
「……で、あの“逆さ城”が標的のアジトなの?」
「そうよぉ。大きな鳥が飛び立つところも見たし、間違いないわぁ」
宵闇区では“天井”(コロニーの傾いた外壁)に築かれた建物全般を“逆さ城”と総称する。地上や迷宮区とつながって活用されるものも多いが……誰からも忘れられ放棄されたものも少なくない。
今回のように、周囲に建物がなく半端に高い位置にあればなおさらだ。
建物まで目測でおよそ20メートル強。飛行能力がなければ、出入りはまず不可能。
「ま、相応のヘルプ料がもらえるなら、いいけど……仕事中に変なコトしてきたら、平手じゃすまないわよ」
「わかってるわぁ。斥候役と奇襲役がほしくて、来てもらったんだものぉ」
「……隠密行動中にそういうコト、本当に絶対にやめてね」
「しないってばぁ」
しつこい念押しである。
日頃の行いを考えれば当然なのだが。
「はぁ……言っとくけど、もうここからは隠密行動よ」
溜息まじりにエンドロールは後ろに下がり……。
「――ッ!」
一気に短距離を駆け、わずかな呼吸音のみで高く跳躍する。
元から体術に長けた彼女が
跳躍が頂点に至る寸前、さらに腕を上空へ上げ……5メートル近い距離を稼ぎ、
「…………引っ掛けた」
着地したエンドロールが、ピンと張ったワイヤーに何度か体重をかけてみる。
ワイヤーリールだけでは、20メートル前後しか保証されない。
ライナの(多分に使用者の安全を無視した)強力な改造と、エンドロール自身の体術が合わさればこそ、これだけの高度へワイヤーを届かせたのだ。
「じゃあ、アンタも抱えていくけど。本ッ当に、変なコトしないでよ」
「はぁい♥」
小声でさらに言い聞かせつつ、エンドロールが腰に腕を回してくる。
ファンタズマゴリアもさすがに色気を抑え、彼女にしがみつくようにする。
リールが稼働し、ワイヤーがサイバーアーム内へ巻き上げられていくと……二人の体が宙に浮かんだ。
深夜、海上や海の向こう、そして宵闇区のそこかしこにある明かりが見える。
「ロマンチックねぇ♥ うまく仕留めたらぁ、ここにデートに来なぁい? 誰もいないなら、秘密の遊び場所にできるでしょぉ?」
「耳元で変なコト言うのも禁止よ」
小声でそんな会話をしつつも、ワイヤーは巻き取られ。
二人は地上を離れた敵地へと……壊れた窓から忍び込んだ。
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俗に“逆さ城”などと呼ばれる施設群だが、内部まで天地逆に造られたものは少ない。
これも多分に漏れず。
鍾乳石のように傾いたコロニー外壁からぶら下がりつつも、中は普通だ。
窓が強化されていない様子から、最初期の建物とわかる。
元は開発研究施設の類だろうが、老朽化も激しい。
奥ほど密閉されていたのか、損傷もない。
施錠された扉を無理矢理壊したのだろう。
開かれたままの大きな扉の奥は――何らかの実験用施設だろうか。
広い空間が広がっていた。
「~~~♪」
そんな場所にかすかな歌が響く。
甘くも切ない子守歌だ。
「~~~~~♪」
歌う女の肌は青白く、乳房は豊満だが表情は虚ろ。
その下半身は、赤黒い血のような色の怪鳥だった。
そんな怪鳥の羽毛の下、子供が眠っている。
女は愛おしげに鳥の体をすりつけ、また女の手を伸ばして撫でる。
子守歌と羽毛と手に包まれて、子供はすべすべとした塊になっていく。
卵だ。
「~~~♪」
時間をかけてついに完全な卵となった子を、あやすように抱え。
子守歌を途切れさせずに、壁の棚へと向かう。
その壁面にはいくつもの卵が並んでいた。
その数は、数十を超えるだろう。
「みんな、いい子。いい子。いい子……」
ひとつひとつ、どこか虚ろな囁きと共に撫でて回る。
女は
中国における子供をさらう怪鳥であり、また日本では難産で死んだ女の化身ともされた存在。
今のような怪鳥の姿から、母性的な女の姿にも変身できる。
夕暮れ時に子供に近づいてては己の唾液や母乳、血などで印をつけ……その印を目当てにさらうべく飛来する。
さらわれた子は卵に変えられ、姑獲鳥の手元に置かれる。
かつて得られたなかった子を想い、永遠に満たされぬ母性を満たそうとするのだ。
そんな一方的な母性によって呪縛された“卵”は、決して孵ることがない。
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姑獲鳥の体は、巨鳥の頭部の代わりに女の腰から上が生えている。
子供らを軽々とさらってくるだけに、その体は大きい。
翼をひろげた最大翼長は10メートル近くになるだろう。
相当にタフな怪物であること間違いないが……一方で、この建物の中では満足に飛び立てない。
周りに大切な“我が子”が安置されているなら、なおさらだ。
だから。
「――――」
エンドロールは鳥部分の急所を狙って飛び降り、刃を突き立てた。
破られていた扉から侵入し、密かに壁を登って天井近くで隙をうかがっていたのだ。
さらに
「ヒッ!?」
一拍遅れ、ようやく反応した姑獲鳥から大量の羽根が舞った。
相当な深手を負ってしまった以上、巨大な鳥の体で屋内の立ち回りは難しい。
女の姿となり、反撃か逃走を図ったのだ。
だが、侵入者は一人ではなかった。
「つかまえたぁ♥」
ファンタズマゴリアが、女の姿をとった姑獲鳥を抱き留めていた。
「な、何を――んおっ!?」
「んん♥ じゅるるるるぅ♥ んんんぅ♥」
呆気にとられた口の中へ、サキュバスの長い舌が入り込む。
食道まで入り込み喉まで蹂躙しながら、媚薬効果のある唾液をたっぷりと流し込んでくる。
サキュバスのそれは単なる化学物質ではない。魔術効果も含んだ、ある種の“呪い”だ。
「ふぐ――んあああぁ♥」
「かんりゃ、らめよぉ♥」
遅れて気づき、口を犯す舌を噛もうとするが……密着したサキュバスの手が、姑獲鳥の体中を卑猥にまさぐり脱力させる。
怪鳥形態では上半身裸体だった姑獲鳥は、羽毛の変化した赤黒い薄布一枚をまとうのみ。
中へ這い込む手を防げるものではない。
指は既に中へと這い込み、激しく蠢いて愛撫している。
「んぐ、んぉ♥ ほぉ♥」
「あはぁ♥ んじゅる♥ しっふぁり、ひもひよふ、なっへねぇ♥」
既に姑獲鳥の抗う声には甘いものが混じり。
喉を犯されながら、淫魔の舌を自ら吸いしゃぶり始めている。
「……同情するわ」
その様子を眺めながら、エンドロールは溜息をついていた。
姑獲鳥はサキュバスの本気の
もう追撃の必要もあるまいと、刃を
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大量の淫欲と精気を浴び、己の力として吸収したサキュバスは理不尽極まりない存在だ。
姑獲鳥もまた多数の子を得て、そのアイデンティティたる“母性”を膨れ上がらせ強大化していたが……今、その身を捕らえたサキュバスはそれ以上だった。
「んはぁ♥ ねぇ、他人の子をさらうなんてやめたらぁ♥」
「はぁ♥ はぁ……はな、してくださいっ♥」
ようやく舌が引き抜かれ、間近で見つめ合う姿勢で問われる。
だが、多くの子を持つ身となった姑獲鳥の心はまだ折れない。
一瞬で手が猛禽のそれに変わり、鋭い鉤爪で淫魔を攻撃せんとし――
「だぁめ♥ さらった子を返すまでやめないわぁ♥」
「んひぃぃぃ♥ にゃっ♥ なぁっ?」
ぬちゃりと、淫猥な音を立てて姑獲鳥の中へと……いつの間にか生やしていた肉棒が入り込む。
立位で突然に犯されたと理解できず、混乱の中で鉤爪が元の手に戻ってしまう。
「ほらぁ……さらってくるより、こっちの方が気持ちいいでしょぉ♥」
「なに、してるんですかぁっ♥ そこぉっ♥ あかちゃん、でてくる……あなぁっ♥」
出産に関わる伝承で形づくられた姑獲鳥は、明確な経産婦でありながら性知識に欠ける。
「ちがうでしょぉ♥ その前にぃ♥ おちんちんを入れる穴ぁ♥」
「ひぃぃぃぃ♥ やめてっ♥ かきまぜないでっ♥ おかしくなっちゃいますっ♥♥」
乱暴にかき混ぜてやれば、熟れた体が痙攣して簡単に絶頂してしまう。
快楽と淫欲が、姑獲鳥の本質を乱し、存在を書き換えていく。
「おかしくなっていいのよぉ♥ さらった子は返してぇ♥ ちゃんと自分で孕みなさいよぉ♥」
「あああああ♥ あかちゃんっ♥ あかちゃんほしいですっ♥♥」
やはりそれが本質であり、鍵。
その言葉を使われると簡単に、意志を歪められてしまう。
「じゃあちゃんと自分で腰使ってぇ♥ おちんちんから、あかちゃんの元を搾らないとねぇ♥」
「はぁぁ♥ あかちゃんっ♥ あかちゃんほしいっ♥」
自らしがみつく姑獲鳥に目を細め。
敢えて彼女が上になるよう、床へ座り込んでそのまま仰向けになる。
騎乗位……いや、逆正常位の体勢。
姑獲鳥に己が腰を振っていることを自覚させるのだ。
そして、さらに――
「はっ♥ あんっ♥ ……エンドロールちゃぁん♥」
「何よ。私の仕事は終わったでしょ」
「コレで、この子のこっち……お願ぁい♥」
エンドロールに、隠し持ってきていた品を投げ渡し。
己の上で腰を振る姑獲鳥の尻肉を掴み開いてアナルを見せつける。
「アンタ、コレ……ああもう、何か非常用の品でも持ってるかと思ってたのに! ホント、バカ!」
ついさっき、さんざん使った
「後で私のコトも好きなだけお仕置きしていいからぁ♥」
「はぁぁ……そんなの、アンタが悦ぶだけでしょうがッ!」
言いつつ、悶々と眺めているよりはと装着するエンドロール。
「はっ♥ はっ♥ あかちゃんっ♥ あかちゃんくださいっ♥」
そんなやり取りにも気づかず、夢中で腰を使い続ける姑獲鳥の背後に回り……。
「アンタも、あっさり折れるなら最初からこんなことすなっ!!」
「んひぃぃぃぃ♥♥ おしりっ♥ おしりにぃっ♥」
培養液から取り出したそれは、元より粘液にまみれており……乱暴な挿入でもあっさりと中へ飲み込まれていく。
「お尻も刺激しながらした方が、着床しやすいのよぉ♥」
「あぁぁ♥♥♥ そうなんですねぇ♥ ありがとう、ございますっ♥♥」
「このバカ鳥ッ!」
ファンタズマゴリアの適当な詭弁にもあっさり騙される姑獲鳥に、エンドロールが激高して激しく腰をぶつける。
その動きはそのまま、膣穴を犯すものも激しく打ち付けることとなり。
妊娠を望み、快楽に溺れる中で……姑獲鳥は存在自体を変質しつつあった。
「あはぁ♥ わかるぅ? あなたの、中で子宮口が私の先に吸い付いてるわよぉ♥」
「あぁぁぁ♥ はやくぅ♥ はやく、あかちゃんくださいっ♥」
本来の姑獲鳥に胎盤はなく、通常の子宮口もない。
姑獲鳥は“出産で死んだ女の化身”なのだから。
だが、今はすでに“姑獲鳥ではない何か”になりつつあった。
「いいわぁ♥ もう他人の子をさらったりしないなら……あかちゃん、あげるぅ♥」
「はいぃ♥ しませんっ♥ しませんから、くださいぃ♥♥♥」
「……ひどすぎ」
存在自体を捻じ曲げる行為に、エンドロールがぼそっと呟いたが。
「あはっ♥ いい子ぉ♥ じゃあ、ご褒美ねぇ♥♥♥」
「んひっ♥ ちょ、アンタ、そこぉおおおおおおおお♥♥♥」
直後、サキュバスの指がエンドロールの股間を攻め、強制絶頂させる。
「ああああああああああああああああああ♥♥♥♥ いっぱい♥♥♥ いっぱい出てぇ♥♥♥」
両穴に精液を注ぎ込まれながらの、激しすぎる絶頂に姑獲鳥の体が変質していく。
死人の如き肌は、精気と色香を宿らせ。
虚ろな顔は、妖艶な美貌と変わり。
赤黒い衣は、純白の薄布となった。
そして半透明の羽衣をまとっている。
もはやそれは、姑獲鳥ではない。
インド神話における神々の遊女アプサラス。日本では天女とも呼ばれる妖精だ。
性に奔放で、天性の誘惑者となった彼女はもはやサキュバスと大差ない。
「はぁ……これで、子供たちも卵から戻ったわねぇ♥」
「確かに戻ってるけど……」
周囲を見れば、並べられていた卵はすべて眠る子供たちになっている。
物理的に姑獲鳥を討伐しても戻ったのだろうが。
そして。
「あぁ、どうか、どうかもっとください♥ 私に子種を注ぎ込んでくださいまし♥♥」
「あはっ♥ さっきまでと違ってすっごい名器ねぇ♥」
「ちょっと、あの子たち目を覚ます前に運び出させないと――って、脚はなしなさいよっ!」
ファンタズマゴリアが、アプサラスもろともエンドロールの腰を脚で挟んだ。
「まあまあ、解決したんだし、もう一回戦くらいいいでしょぉ♥」
「私は何回でも嬉しいですっ♥」
「このバカ淫魔っ!」
結局、子供らが目を覚ましても行為は続いたのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
外壁区下層。
ビジネスホテルの一室。
「なにこれ」
映像を見終えたテンパランスが呟いた。
部屋に設置しておいた小型カメラで、姑獲鳥との戦いを(エンドロールには無許可で)撮影していたのだ。
「今回の犯人を倒した記録よぉ♥」
「いや、倒してないじゃない。コレ何? 犯人が姑獲鳥だってのは事前に聞いてたけど、なんで天女になるの?」
「アプサラスよぉ」
「なんでもいいわよ」
「姑獲鳥って“子供を産めなかった母親の無念”じゃなぁい。自分で母親になって、自分だけの子を産もうって考えだしたら……もう姑獲鳥じゃないわよねぇ」
「……サキュバスも禁欲したら変わるの?」
「変わるんじゃないかしらぁ」
「はぁ……まあいいわ。実質ポルノフィルムだけど。編集加工したら証拠価値も下がるし、このまま提出するわよ」
「よろしくねぇ」
「子供はしっかり全員奪還したのを確認したけど……明らかに最後で、あなたたちの痴態を見せてるものね。このあたりで難癖つけられそう」
「こういう解決するってわかってたでしょぉ?」
「犯人が別の妖精に変質するのは予想外だったわ」
テンパランスが肩をすくめて見せる。
「そのアプサラスは今どうしてるの?」
「私の店で、宵闇区の子たちと乱交してるわぁ♥ うらやましいわよねぇ♥」
「……はいはい、さっさと報酬をもらってきてあげるわよ。条件は守ったんだし100クレジットは保証しておくわ」
一流のフィクサーなら、手早く代払いで報酬を払うだろう。
だが、テンパランスは腕こそ十分だが、まだまだ駆け出し。そこまでの資本力はない。
今も隣にとった部屋に、取り戻した子供らがいる。
彼らを親元に戻すのも、テンパランスの仕事だ。
「あらぁ、私はすぐ店に戻っちゃっていいのぉ?」
「何かあるの?」
「言ったでしょぉ? 報酬はクレジットといっしょに……今度は24時間、二人きりでってぇ♥ サキュバスだって妖精なんだから、約束は守るのよぉ?」
淫らな肢体が、テンパランスに身を絡みつく。
「……例のアプラサラスを一日放置するつもり?」
「私があなたよりぃ……お店やアプサラスちゃんの方が大事だって思ったぁ?」
「大事なのは気持ちいいことでしょ。私が、淫魔や輪姦より気持ちいいって言うの?」
「あはっ♥ 真面目に答えてくれるから好きよぉ♥」
「茶化さないでよ」
「真面目なテンパランスちゃんを、しっかり気持ちよくして壊すのは……最初からいやらしい子たちとは違う気持ちよさなのよぉ♥」
長い舌で、テンパランスの首すじから耳へと舐め上げた。
「っ♥ わかったわ……なるべく早く戻るけど。部屋はひとまずここで待ってて。前みたいに追加で人呼んだりしないで。二人きりって話なんだから。スライムとかローパーもダメよ」
「はぁい♥」
しつこく念を押して部屋を出るテンパランスを見送った。
「あはっ♥ じゃあここで、ってことだよねぇ♥」
ここも一応はダブルルームだ。
最低限のユニットバスもついている。
冷静に場所を移すような余裕を与えたくない。
「ん……♥ 帰ってきたら、我慢できなくなるように……しておいてあげないとぉ♥」
ベッドの上に座り、脚を開く。
そうして今回の仕事で得た様々な快楽を思い出しつつ……部屋を淫魔のフェロモンで満たすべく、己の秘所を弄り始めるファンタズマゴリアだった。
ファンタズマゴリア編、完結!
姑獲鳥/アプサラスさんはゲストキャラなので立ち絵ありません。
次の話はまた完結まで書き溜めたら掲載しますが、今のところ出だしでつまづいてるのでかなりかかると思います。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今回も変則的な運用。
TRPGとしての『Ventangle』に特に関心がなければ以下の記事はスルーください。
●妖精の変質
そのアイデンティティを破ってしまったり、矛盾を抱えてしまった妖精は、よりふさわしい種類の妖精に変化……することもあるという流れ。
実際にはそうそうあることじゃないでしょけど。
危険な敵で、賞金首だから倒さなきゃいけないけど情もわいてしまった……という時に便利。
基本は妖精相手でしかできませんが、固有名詞持ちの神を特に名前のない妖精に変えちゃう手は使えなくもないと思います。