SECOND DAY 6:00~9:00
その男にとって堕天特区は、無慈悲な暴力の地だった。
本土からの指名手配。持ち出したカネは闇医者で顔を変えたらなくなった。
堕天特区の中でも、日の当たる外壁区や住宅区は犯罪組織がひしめいている。
半端物の居場所はない。
無所属のハンターどもは、日常的に荒事に手を染めている。本土で育った男からすれば、紛争地の傭兵も同然の連中。しかも妖怪や吸血鬼や悪魔や神といった本物のバケモノが、そこかしこで顔役になっている。
男は、弱者を踏みつけ奪うために犯罪者になったのだ。
本土なら容易だったが……ここでは違う。
来た日に、思い知らされた。股を開いてきたサキュバスを路地で犯しながら、本土でいつもしたように拳を振り上げた。だが、さんざん女の顔を原型がなくなるまで殴ってきた拳は、淫魔の細腕で簡単に受け止められ、ねじ伏せられ。そのまま意識がなくなるまで騎乗位で搾られた。目を覚ましたら身ぐるみは剥がされ、誰にかもわからぬ相手に尻まで掘られていたのだ。
以来、サキュバスに限らず、暴力には慎重になった。会社員や学生だって、普通にハンドガンやナイフを持ち歩いているのだ。男が矮小なプライドを維持するには、さらなる弱者のいる宵闇区に逃げ込むしかなかった。
男自身が弱者なのだという事実から、目を背けながら……。
その後も支配され、踏みつけられ、より弱い連中に暴力を振るって己を慰める日々。
だが、今は違う。
男は支配する側になったのだ。
きっかけは、本土の腐れ縁からの連絡。
ケツに火がついたから“亡命”させてくれと頼んできたのだ。
逃げ出すだけのカネはあるが、ツテはないらしい。
本土から大橋や船で来るのは難しいと言う。
随分と追い詰められているのだろう。
そんな連絡を、誰が覗いてるともしれない端末越しで寄越したのだ。
ろくでもない場所で、ろくでもない仕事をして、どうにか食いつないできた男だが。
幸いにも腐れ縁の“亡命”はうまくいった。
密輸船の船員に知り合いがいたのだ。借金に追い詰められていた船員は、代金を“亡命者”が支払うという不穏な話にも乗り。“亡命者”は追加の密輸品として無事、堕天特区へ来た。
男はわずかな口利きで礼金を受け取り。
適当なホラで“亡命者”を保護する名目で手元に置いた。
同程度のクズでも、手下ができれば安心する。
そして……組織にも属せないクズだけに、増長した。
同じような行き場のない本土のクズどもを“亡命”させるブローカーもどきの事業を始めたのだ。
同業の犯罪組織から怒りを買う所業とは、気づかぬままに。
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かすかに差し込む朝日の中、エンドロールは近隣の廃ビルの壁に貼り付いていた。
眼下に、標的の拠点を観察する。
元はどこかの仮設オフィスだったのだろう廃墟。
二階建て、内部はおそらく1フロア数部屋。さほど大きくもない建物だ。
とはいえ治安悪化した頃に建てられたものに違いない。
出入口は一つしかない上に狭い。
よほど頑丈なのか、傷だらけの壁面は内部まで破壊されておらず、瓦礫もほぼ落ちていない。
一階には人が入れるような窓がない。二階の窓も強化防弾仕様なのだろう。破壊と略奪を経てもなお、窓枠にはまったままだ。
「なんか取り巻き連中もいるんだっけ。やっぱ中に入った方がいいわよね」
見張りもいないのだ。
たいした戦力がないとも、わかっている。
標的がさしたる警戒をしていないことも。
とはいえ……標的の“事業”はそれなりの敵を作っているはずだ。
外で狙えば、他のハンターの目にも触れる。
不特定多数の同業者と顔を合わせれば、面倒だ。
エンドロールは腕利きの暗殺者だが、正面切っての戦闘力は高くない。
賞金首の争奪戦など、ごめんこうむりたいのが本音。
チラリと一応、周囲を確認する。
朝のこの時間、宵闇区で動き回る者はほとんどいない。
エンドロールの存在に気付いた者もいない。
「窓はさすがに厳しいし。しっかり、追い詰めるとしましょ……っと」
貼り付いていたビルの壁を蹴って跳躍し、3フロア分の高度差を経て……標的拠点の屋上へと、音もなく着地した。
砂塵の溜まった屋上は、長らく誰も来ていない証。
屋上に続く金属扉も、開かれた形跡はない。
「…………さすがに施錠はされてるか」
この扉が開けば、楽な仕事だったが。
そうもいかないらしい。
扉を破壊できなくもないが、中の連中が逃げ出す隙を与えてしまう。
「しょうがないわね。少し待ちましょ」
マフラーを軽くフードのようにかぶり。
他の廃墟から見えない、出入口の影へと……エンドロールは身を潜めた。
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一階奥の防音室では、一人の女が二人の男に使われていた。
「おいおい、奥さん。しっかりしゃぶってくれよ。あんたの仕事だろ?」
「っぐ……ううううっ……」
「人妻のクセに、いつまでたってもヘタクソだよなぁ。ダンナに何教えられてたんだ? ま、締め付けは悪くねぇ……出すぞっ!」
「い、いやぁ!」
「もうさんざん出されてるだろうが! 勝手に口離してんじゃねぇぞ!」
「ふぐぅぅぅぅ!」
さんざん己を犯し、勃起すらしなくなったものをしゃぶらされ。
その最中ですら別の男に犯される。
女がそんな状況に陥ったのは、彼女自身のせいでもある。
だが、数日前から帰って来ない夫が……そしてその“幼馴染”こそ直接の理由だった。
「おーおー、一晩中ヤってたのかよ。すげえ臭いだな」
「あっ、兄貴どうも」
「兄貴も使いやすかい?」
元凶の男があくび混じりに部屋へ来た。
女が敵意を込めた視線を送ろうとしても……名前すら知らぬ男の萎えた肉棒を根元まで咥えさせられ、顔に陰毛を擦りつけられる。
犯していた男が引き抜くと、さんざん出された精液がぼたぼたと溢れるのがわかった。
「いや俺はいらねぇ。お前らで好きに使えよ。そのうち、外で稼がせるから殴るんじゃねぇぞ」
「わかってやすよ。噛んできたら傷がつかねぇ程度に痛めつけますんで」
男らが笑いながら、乱暴に女の乳首や陰核をまさぐり、軽くつねってきた。
態度次第できつく、思い知らせるということだ。
「しっかしアイツも薄情だよなぁ。稼ぎに行く代わりに嫁を置いてくとはよ」
聞こえよがしに言われる。
確かに、ここへ逃げ込む羽目になったのは彼女が交通事故を起こしたせいだ。しかし、事故の元は、夫が仕事を解雇されて彼女が一人働くようになったせいでもある。
何より、抱え込んだ負債から逃げるべくこの男に連絡をとったのは夫だ。
「戻ってきやせんねぇ、どっかでうまいことやったのか」
「この堕天特区のこった、バケモンに殺されてんじゃねぇか?」
言いながら、咥えさせられていた男のモノが屹立し始める。
その反応に……夫が彼らに始末されたのだと、理解させられた。
「まー、ガキからの縁だ。奥さんはしっかり仕込んで稼げるようにしてやるよ」
「よしよし、しっかり勃った。また俺がハメてやるぜ」
ただの性処理穴として、犯され。
「じゃあ、俺のをきれいにしてもらおうか。奥さんもいい加減に楽しめよ」
「いや……いやぁ……」
夫の無気力だの借金だのより……もっとひどい暗澹たる未来しかない。
「いやだいやだって言う間は止めてやれねぇなぁ。飯が食いたくなったら、『中に出してくれてありがとうございます』ってしっかり言えよ?」
「おう、口の加減だけは俺が卒業試験にみてやるよ。グロマンになる前に、しっかり上達しろよ?」
男らがどっと笑った。
昨夜から食事すらなく……ただ穢れた肉棒を口に咥えさせられてきた。
相手はこの二人だけではない。
昨夜だけでも他に四人。彼らは犯し疲れてさっさと寝ている。
この男らは順番をゆずって、朝から精液を溜めこみ女を犯し続けているのだ。
半ば意識を失いながら、女はただの穴として男たちに使われ続けた。
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本土の知り合いに手当たり次第に連絡をとった中だった。
真面目で順風な人生を歩み、美人と結婚したと聞いていた知り合いの思わぬ凋落に、男は歓喜した。
そして、親切な“幼馴染”として心配するそぶりで連絡し、堕天特区への夜逃げを決意させたのだ。
既に何度か“亡命”に成功していた男には、資金があった。
逃亡資金を出してやると言えば、簡単に飛びついてきたのだ。
あとは簡単だった。
汚れ仕事もできない男に用はない。
逃亡後もカネがない連中は、男の手元でくすぶり、女にも不足していた。無料で自由にできる女が手に入るなら、なんでもやるクズばかり。
夫を手下どもに始末させて、残った妻を無理矢理犯した。
反応しなくなるまで犯してから、手下どもに下げ渡したのだ。
どうしようもないクズの己と違い、まともに生きていた人間を踏みにじる。それが男にとって最大の歓喜だった。己の矮小さを忘れ、真面目に生きる連中こそ頭の悪いバカだと見下せた。堅苦しい組織につながれて、上の言いなりになる連中よりも……己はうまくやっているのだと思えた。
鼻歌交じりに、物資置き場に向かう。
ナイフに弾丸、いくらかにはなりそうなガラクタ。
とりあえず有用に思えるものを放り込んだ部屋。
しかし。
「チッ、メシが切れてやがる。買い出しも忘れてヤってたのかよ」
缶詰や菓子類、酒はおろか無料で手に入る
多めに手に入れておいた飲料水だけ。
せっかくの上機嫌に水を差された気分。
「おいっ! 先に寝た奴ら起きやがれ! メシ買ってこい!」
増長したまま、二階に上がって寝ている連中に怒鳴りつけ。
成金気分で1レジットを投げつけ、買い出しに行かせた。
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「あー、久々に女抱いたなぁ」
「今日からはタダでやり放題だぜ。ずっと兄貴が抱く女の声でヌいてたからなぁ」
「けどよ、サキュバスならタダなんだろ?」
「兄貴はこの界隈に慣れるまで手ェ出すなって言ってたがなぁ」
扉を開き、限られた角度で入る朝日で仄暗い外を眺める。
扉は原始的なオートロックを追加で付けていたが。
雑談しながら出てきた二人は、手早く閉めたりはしない。
本土から“亡命”して宵闇区の拠点にほとんど籠っていた連中だ。
食糧配給所やちょっとした商店こそ使っているが……この堕天特区の危険性を本当の意味では理解していない。
たとえば、頭上から暗殺者が襲撃してくる危険を。
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(昨夜の男みたいに肉体改造してるかと思ったけど、ただのチンピラね)
落下の勢いで一人の首から胸部まで貫き。
貫いたまま
二つの死体が倒れるより早く、扉の中へと侵入。
刃に絡まった死体を引き寄せ、扉を閉めた。
この奥に響いても、出て行った連中が閉めたようにしか聞こえないだろう。
エンドロールは、音を立てないようそっと死体を転がす。
素早く持ち物を調べ、ハンドガンとナイフを奪い、サイフを抜く。
同時に視線を巡らせ、建物内部を観察する。
(やっぱり、犯罪組織の事務所と同じ構造なのね)
狭い廊下から、直接は二階に行けないようになっている。
壁は厚く、扉は狭い通路の奥。
脱出の妨害となるよう、出入口を塞ぐように死体をもたれさせた。
狭い出入口に詰まった人体は、バリケード同然。
ほぼ無音でそこまでしてから、ようやく刃を引き抜く。
絶命して一拍以上の過ぎた死体から飛び出す血液は少ない。
(さて、標的を含めて7~8人だっけ? これで残り5~6人ね)
エンドロールは無音で、奥へと進んだ。
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「うぐぅぅぅ……」
もう何度目になるだろう。
珍しく口と膣内の両方に精液を注がれたが……何の感慨もない。
言葉も出ず呻くだけ。
そんな中で、ごとっ、ごとっ、と鈍い音がした。
と。
女を犯していた二人が、仰向けに倒れる。
「う……ぇ……」
生暖かい液体が降りかかる。
「あー、ごめんごめん。派手にかかっちゃって。二人同時に始末しないといけなかったから」
突然の、知らない女の声。
犯していた男の、呆けたような生首が傍に二つ転がっていた。
大量の血が溢れ出し、倒れる間際に女の体にも返り血を浴びせている。
「え……?」
一晩中かけた輪姦で疲労しきっていたせいだろう。
ぼんやりとした反応しかできない。
「あ、けっこうきつい状態? そのまま休んでる?」
「あ、はい。ありがとうございます」
状況すら理解できないまま、そんな返答をしていた。
標的の背景紹介回。
基本的に名前の出ないキャラは、今エピソード限りのモブです。
次回、エンドロール編は完結!