SECOND DAY 9:00~
犯されていた女に、エンドロールは首をかしげた。
場違いな存在だ。
この辺りで暮らす女なら、輪姦や殺人で放心したりしない。
すぐ反応しなければ、どうなるかわからないからだ。
女は淡々と質問に答える。
冷静ではない。
ただ放心しているのだ。
「ふぅん。この2人の他に5人ね。他にはいない?」
「いない、はずです……」
「それじゃ、入り口でも始末したから残りは上に3人だけね」
「はい……」
「ねぇ、アンタも本土から来たの?」
「うぅ…………」
その言葉でようやく正気を取り戻したように見えたが。
次の瞬間には、女は声をあげて泣いていた。
「騙されたのか何だか知らないけど。そのへんの服なり銃なり、持っていきなさいよ。私は残りを始末しないとだから」
エンドロールとしては、他人の面倒な事情に興味はない。勝手に逃げればいいし、その後は好きにすればいいのだ。
泣く女を放置して、この防音室を出ようとして。
ふと思いついた。
「ちょっと泣き止んでくれる? アンタ、上の連中を始末するの手伝ってくれない? 分け前はあげるわよ」
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エンドロールが音もなく登った階段の上にも、見張りはいない。
(なるほど本土から来た連中、ね……不用心この上ないわ)
あるのは扉と……扉のあった形跡。
それなりに頑丈そうな扉の方はまあ、いい。
おそらく標的はそこにいる。
だが、もう一方の扉もない広間では男が二人、いびきを立てて眠っていた。
枕元には連中の武器だろうハンドガンとナイフ。
寝相の悪い連中は枕もずれて、薄い財布が見えている。
ここにいない連中の財布も残っていた。盗まれると考えないのだろうか。
(……浮浪児以下、略奪団が来たら即皆殺しね)
ため息混じりに、眠っている連中の喉を掻き切った。
戦いでも殺人でもない、ただの作業だ。
(……はー、サイフは4人でギリギリ5クレジット。武器はわりといいの使ってるのにシケてるわね。玄関の連中は2人で3クレジットだから、とりあえず8クレジットかぁ)
そのまま階段上まで戻る。
財布をろくに隠していなかったおかげで、一分もかかっていない。
下でナイフを手に震えていた女を、手招きして呼ぶ。
忍び足のつもりだろうが……彼女の靴は階段を登るごとに足音を立てる。
だが、それでいい。
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今、男の手元に残ったクレジットはわずかだった。
数年間、ここで暮らして得た教訓は“奪われるものを持つな”だ。
だから手に入れた額も最低限を残して、次に進むため“投資”した。
この堕天特区における力の一つを手にしたのだ。
今なら抵抗するこの町の女どもとて、簡単にレイプできる。
とはいえ、より多くの手下や拠点を手に入れるまで、貯蓄はできない。
「だが、悪くねぇ。手元に残っただけでも、今までの月収より上だぜ」
にやにやと笑みを浮かべる。
20クレジットだが、底辺娼婦なら毎日抱いても釣りが出る。
と、ノックの音がした。
「おう、買ってきたか! 早かったじゃねぇか!」
男自身よりも、カネのために扉は施錠している。
上機嫌でクレジットをひろげたまま、男は扉に向かう。
手下にカネを見せつけるのも、男の楽しみだった。
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「あん? なんだァ、あいつらどうした」
扉を開くと、あの“未亡人”が立っていた。
少なからぬ返り血を浴び、その手にはナイフがある。
「あああああああああああああ!!」
女が叫びながらナイフを男に突き立てようとする、が。
「おいおい奥さん、まさか……あいつらを殺したのか?」
あっさりと女の手を払い、ナイフを落とさせた。
後ろに尻もちをついた女を追い詰めるように、男が前に出る。
男の体が、ドアの外に出た。
「不甲斐ねぇ。とはいえ、奥さんがそんな気概を持ってるとは思わなかったぜ。これなら性処理役だけじゃねぇ、護衛としても――」
その時、エンドロールが舞い降りた。
扉の手前、室内からは死角になる天井に張り付いていたのだ。
肉を抉りながら、
「ぐがっ、てめぇ……っ!」
常人なら即死間違いなしの一撃だが……男は倒れない。
電撃に頭髪を逆立てながら、男の肉体が膨れ上がる。
筋肉が異様に盛り上がり、体毛が伸び、口が裂ける。
顔が犬のように突き出して凶悪な牙が生え、手には鋭い鉤爪。
それこそが男の“投資”の成果。
複数の肉体強化ナノウェアによる
その変身を目の前にした女が悲鳴をあげる。
「ハッ、ハッ、よくもやって、くれたなぁ」
傷口が収縮し、出血も止まっていた。
相当の痛手ではあるはずだが、まだ余裕があるらしい。
「チキンらしくクレジットはため込んでて欲しかったわね」
ワーウルフの施術は安くない。
溜めこんだクレジットの大半をつぎ込んだのだろう。
それだけに、効果は大きい。チンピラにすらなれないクズが、並みのハンター以上の戦闘力を手に入れるのだ。
「クソが! 手下どもを皆殺しにしやがったのか!」
人狼化した男の嗅覚が、向かいの部屋で寝ていた連中の血を嗅ぎつける。
そして階下からも。
怒りのままに、爪を振るわれた。
「っぐ!」
どうにかブレードを盾にして防ぐが、衝撃は殺せない。
全身の強化筋肉に加え、人狼は人体のリミッターを外している。
そのパワーは、エンドロールの
「おうおう、今の顔で思い出したぜぇ。前の職場で、さんざん世話してやった女じゃねぇか」
「バカ言ってんじゃないわよ!」
エンドロールにとって、この男は知らない相手ではない。
だからこそ、男に賞金がつけばすぐに足取りを追えたのだ。
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エンドロールがあの、ろくでもない娼館に潜入していた頃。
最悪の客はいくらでもいたが。
店側で最悪のスタッフが、この男だった。
「ハッ、ハッ、ろくでもねぇ仕事だがよぉ、これだけは役得だぜぇ」
「っぐ、やめ、やめなさいよぉ♥」
「ああん、こんだけ悦んで吸い付いてるクセに何言ってやがる! 今だってまたイッてんだろがっ!」
「ひぎゅっ♥ いやっ、いやぁ! なんで、こんなヤツのでぇっ!」
部屋の清掃係だった男は、犯し尽くされて転がるエンドロールをさらに犯した。
当番になるごとに、必ずだ。
他の娼婦にも同じことをしていたに違いない。
媚薬漬けにされたエンドロールは、今以上にわずかな刺激で感じてしまう体だった。
どんな客のものでも歓迎するようになった雌穴は、こんなクズの身勝手な言葉にも逆らえず。いいように犯されるしかない。
「俺よりろくでもねぇ客なんざいくらでもいるだろうが! おらっ、部屋をキレイにしてやるんだ、しっかりマンコで奉仕しろっ!」
「あっ♥ ひっ♥ いっ、いやぁああああ♥♥♥」
回数が多いだけに、おそらくどの客よりも……この男に犯され、精液を注がれた。
それに、ただ犯すだけではない。
本来は男が部屋を清掃する間に、エンドロールが身を清めなければならない。
だが、犯し尽くされた身に、そんな余力ない日も多々。
そんな時は……部屋を雑に清掃した男によって、エンドロール自身の清掃という名目の淫辱を受けた。
「おーおー、いつ見てもうまそうな体だぜ」
「やめて……やめてぇ♥」
乳房を揉みしだき、秘所をいじりまわされる。
過敏化しきった体は、愛撫されるだけでまた快楽漬けになり絶頂に追いやられる。
「よーく、口をゆすげよ。よしよし、ザーメン味がしなくなったか確かめてやる」
「んぐ……んんんんっ♥」
抵抗する力もないエンドロールの口の中を舐めまわして。
恋人のようなキスを何度もさせられた。
跡が残らない程度に体中をしゃぶり回され、時間に余裕があればまた犯される。
本来あるべき休憩を奪われ、睡眠時間以外をひたすら犯される羽目になったのは男のせいだった。
清掃係は複数いたが、犯してくるのは男だけだ。
娼館側は触れたり弄る程度ならともかく、娼婦の凌辱まで許してはいない。
だが、ろくな監視体制を作っていない悪徳娼館で、男の非道が止められることはなかった。
男としても、壊れきった女や意識のない女を犯すのはつまらないのだろう。
「いつもながら、たいしたモンじゃねぇか。他はぶっ壊れてる女ばっかなのによ」
「ぐ、ぅ♥ だったら、やめて……よぉ♥」
「バカ、だからお前を相手してやってんだ。まだまだ余裕あるんだろ? オラッ!」
「ひぎっ♥」
暗殺者として鍛錬を積んでいたせいで、エンドロールは反応できてしまう。
だから、何度も何度も満足するまで犯された。
標的だった娼館経営者は、最後に仕留めた時に初めて顔を見ただけ。
脱出時に、この男を始末できずどれほど無念だったことか。
だから。
今度は確実に始末する。
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「ぎゃははは! 俺のチンポが忘れられねぇってか? 娼館が潰れちまってからも、探してたんだぜぇ!」
「お互い様ね! アンタみたいなクズを殺し損ねて、心底残念だったわよ!」
狭い二階通路では不利と見て、部屋の中に入り込んだエンドロールだが。
予想よりも部屋は狭い。
力任せに振り回されるだけの拳が、鉤爪が、エンドロールを追い詰める。
「アイツらは殺されちまったが、お前が手に入るなら惜しくねぇ! オラッ、前みたいに股ァ開けよ! 命だけは助けてやるぜぇ!」
「誰が!」
奇襲による一撃必殺が彼女のやり方だ。
だが、装甲やタフネスでしのがれれば、後はない。
人狼に圧倒され始める。
逃走して仕切り直すのが常道だが……この建物では逃走ルートも限られる。
何より、回復や逃走の時間を与えたくない。
歯噛みする間にも、エンドロールの体に傷が刻まれる。
「おいおい、お前をズタズタにしたくねぇんだよ。おとなしくしろって」
「勝手に勝ったつもりになってんじゃないわよ……」
勝ったつもりの男に対して、その声から覇気が消えるが……その目は光を失っていない。
「しょうがねぇなぁ、前の俺じゃねぇって、しっかり思い知らせてやるよ」
元から女を殴りながら犯すクズだ。
嗜虐的に舌なめずりしながら、さらに腕を振り上げる。
「っ……」
エンドロールがブレードを捨て、一瞬で人狼の懐に入りしがみついた。
観念したかと、人狼の顔がゆるむ。
そして、銃声。
「おっ? ようやく――がふっ、なっ……」
さらに銃声が続く。
「死ねッ! よくもっ! 死ねッ! 死ねッ!」
犯されていた女の、錯乱した叫びと共に銃弾が放たれる。
手は震え、発射ごとに銃口はぶれている。
いくつかはすぐ目の前の、大きな人狼の背中すら外した。
だが、確実にいくつかは命中し、その肉体を損壊させる。
「がっ、やめ、やめろっ!」
人狼の痛覚はほぼ遮断されているが……大量の出血、体内の損壊はわかる。
戦闘慣れしていない男は、咄嗟に背後を振り向いた。
女は銃弾を撃ちきってなお、トリガーを引き続けている。
そして。
「加害者にはわからないでしょうけどね。いいように犯された恨みってのは――深いのよ」
「あっ、が――」
男の首に冷たい何かがねじ込まれた。
エンドロールが隠し持っていた小型ナイフを、男の首へと全力で突き立てたのだ。
生命力自体を強化された人狼は、それだけでは死なない。
しかし、刃を少しでもねじるか、あるいは引き抜かれれば……。
「ま、待て、やめろ! 稼ぐ当てはあるんだ! 二人とも俺と組もうぜ!」
命乞いをするしかない。
エンドロールは刃を握ったままだ。
彼女を無理矢理に振りほどこうとすれば、刃が男の命を奪うだろう。
「お断りよ」
エンドロールは冷たく言い放つと。
刃を容赦なくねじり、引き抜いた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
応急手当の後。
エンドロールは犯されていた女を連れ、始末について記録映像を撮り、手近な闇市場に向かった。
換金に訪れた組織支部では応接間に通され……思わぬ人物と会う。
「昨日、賞金をかけたばかりなのに早いわねぇ」
眼鏡をかけたチャイナドレスの女だ。
人形じみた美貌、白磁を思わせる体は
それなりに広い堕天特区、宵闇区の支部に彼女が現れること自体が珍事。
「そっちこそ、たかだか100クレジットの賞金首に支配人自らなんて、珍しいじゃない」
「面倒になりそうだもの」
「へぇ。他の組織も賞金をかけてたりしたの?」
「そんなところ。ウチに持ってきてくれて感謝してるのよ。始末した場所の確認に今、使いを出してるの」
「ああ、二重取りを狙う奴がいるのね。同行人がいなけりゃ、首を切り落として持ってきたんだけど」
「……で、そのカタギっぽい人は?」
蘭華が、標的の拠点から連れてきた女を示す。
「一応今回の協力者なの。アンタが来たならちょうどいいわ、この人、雇ったげてくれない?」
「カタギで戦えるわけでもないんでしょ? しかも日本から逃げてきた類じゃないの?」
眉を寄せ、ため息をついて見せた。
裏社会の仕事へ、安易に表の人間を組み込んでもろくなことにならないのだ。
「あ、あの……行くところがなくて……」
女としても行くところがない以上、目の前の蜘蛛の糸にすがりつくしかない。
「……協力者って言ってたわね。いくらか払うの?」
暗に保護料金を要求しているのだ。
「えっ、あー、それはまあ……30でどう?」
「日本に送り返すだけなら、それでいいわよ」
「こ、困ります! 夫もたぶん殺されてるし……借金が……」
女が必死に懇願した。
「うぐぐぐ、わかったわよ! 50! 50クレジット! それ以上はさすがに無理!」
「ま、いいわ。ウエイトレスくらいはできるでしょうし。表に顔出させるのはトラブルの元だから、宵闇区付きになってもらうけど」
「ありがとうございます!」
そうして話がついた頃、蘭華の部下がノックと共に訪れる。
標的の死体確認が行われたのだ。
「確認OK――じゃあ、ハイ。褒賞の100クレジット……から50クレジット」
「はぁ……昨夜はライナにさんざんヤられたし、少しはメンテナンス料金引いてくれる……でしょ」
各種メンテナンス、武器の維持、利子支払いなどを計算し、深々とため息をつく。
思ったほどとはいかずとも、いくらかは借金を減らせる、はずだ。
「また貴方向きの仕事があったら声かけるから、腐らないでよ」
「はぁ……お願いするわ」
そうしてエンドロールは本来の半額の報酬を受け取り、ライナの元へ帰るのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
預けられた女を、闇市場のスタッフに教育するよう言いつけ。
劉蘭華は軽く一息をつく。
「相変わらず、ハンターに向いてない子ねぇ」
小さく笑みを浮かべ、傍らの部下に目を向ける。
「いくらになりそう?」
「日本国指名手配犯6名。いずれも損傷軽微で本人確認も容易。また持ち出された本人証明書、各種画像等データを採取。日本警視庁および各ヤクザとの取引合計約5000クレジット、まず滞りなく」
堕天特区の基準なら賞金もあやしい軽犯罪者どもだが、外でもそうとは限らない。
エンドロールがそのつもりで確保し、交渉すれば最低でも一割程度は稼げただろうに。
「データ類は見積もりできる?」
「彼らの被害者に関するものかと、我々が脅迫に使うよりはヤクザに売却するとして、およそ数百クレジット」
「所詮はチンピラね。もう少しカネになるデータ持ってきなさいよ。残りは死んでるの?」
「彼女の報告では昨夜に一人始末されております。ハンターショップに首が持ち込まれ、換金されたとの情報が」
「誰かラッキーな子がいたのね。さっき預かった女は?」
「多重債務のみかと。日本国の債権者に差し出せば500クレジット程度は引き出せるでしょう」
「やめときましょ、エンドロールちゃんに恩を売っとく方がいいわ」
実に都合のいい暗殺者なのだから。
「夫の方は、連中の手で殺害されているようです」
「見つかればそっちだけ差し出せたのにね……女の給料はナシでいいわ。衣食住を適当に世話して、男をあてがっときなさい」
「承知」
「あと、今回のブローカー気取りは念入りに見せしめで情報流しておきなさい。もらった始末報告も実名込みでオンラインに流すのよ。日本の亡命事業に他が手出ししないようにね」
「既に行っております」
「念入りにしておきなさい――と、そろそろ次のスケジュールね」
「お疲れ様です」
支配人として、堕天特区中を飛び回らねばならぬ身だ。
劉蘭華は、席を立ち。
次の仕事場へと向かった。
これにてエンドロール編完結!
ちょうど1セッション分の内容となります。
まあ実際にはソロのエロ描写は薄いし、敵事情もさらっと済ませますが。
劉蘭華は公式NPCですが、公開立ち絵がないので基本ルルブをお手持ちの方はP171,P179で確認ください。