今作は不定期投稿かつ他作品を優先しているので何卒…。
虹夏の身体は雪原のように白く、目を引きつけて離さない美しさがある。
誰が言ったか、大天使ニジカエルというのもなるほど全くもって無理はない。どころかそれに勝る形容を思いつくことができない。
天使という幻想の存在は、いつだって芸術とともにあった。
多くの天使は、人の心を奪う美しさで描かれている。
「んっ、はぁう」
その雪原に二つ盛り上がった丘を下るように指を滑らせていく。小さくも外側に膨らんだ曲線をまっすぐ下ると、薄いながらも確かに肉感を含んだお腹に辿り着いた。
虹夏の体つきは悲しいことにたわわだとか、大人の色香だとかそういう表現には程遠い。スレンダーや幼さをまだその身に残していると言った方がいいだろう。
ただ腰にはゆるりとしたくびれが出来ていて、間違いなく虹夏が成長途中の女性であることを教えてくれている。
「やあ、そこおへそ……」
少し浮いたあばらを下って、縦長の綺麗なへそへとたどり着く。
嫌がるような言葉を出しつつも、虹夏は抵抗する素振りを全く見せない。少しばかり腰を揺らしたが、それはむしろ誘惑と呼べるものだろう。
情欲に潤んだ瞳で、熱い吐息とともに吐かれたその言葉にどれほどの意味があろうか。
俺は構わずに、その白地のお腹に指先が軽く触れるようにして撫でた。
シャチが捕えたアザラシで遊ぶように、子どもが手に入れたレアなカードを丹念に眺めるように。
目の前の無防備な体を丁寧に弄ぶ。
「ふひ、いっ! やっ、あはあ! ちょっと、く、くすぐったいってば」
「虹夏ってくすぐりに弱かったか?」
「弱くはないけど、触り方がなんかくすぐったいっていうか」
「へえ」
「へえって、言いながら、ひ、ひあはは! 続けないでよ!」
「いやあ、触り方次第でお腹でも笑えるんだなあ」
「そりゃ、そうでしょ」
虹夏はもはや泣き笑いと言った様子で、目の端に涙が余計に滲んでいる。口角も緩んで一気に空気が弛緩した。
蕩けていた表情が一気に明るくなる。
大人の情事もどきから、じゃれ合いへと。
一区切りついたと、そう思っているのかもしれない。
そんなわけがないだろう。
お楽しみはまだあるというのに。
「綺麗なお腹だな」
「ありがとう。まあ、気を遣ってるからね」
「少しふにふにしてて触っても楽しいときた」
「あー! つまむな、つまむなー! 気を遣えー!」
「今更だな。ところで、なんだが」
一呼吸間を置く。虹夏は小さく首を傾げ、シーツに髪の擦れる音がした。
「この下には何がある?」
ぽん、とへその下あたりを叩いた。へその下から指を横に二本並べた直下だったか、それが虹夏に意識させたい場所だ。
つまり、子宮。
「えっと……お腹?」
虹夏は俺が何を言いたいのかよくわからないという様子で、胡乱気に答えた。
「いいや違う。保健体育はてんで駄目だな。零点だ」
「ほけ!? ……保健体育も成績は一番上だもん」
一瞬鳥のように素っ頓狂な声を上げた虹夏の子宮の上、柔らかなそこに人差し指と中指を当ててぐにぐにと軽く押し込む。
「んんっ!」
敏感に反応して顔を歪め、腰を揺らす。しかし指を振り払うほどの強い抵抗ではなく、マッサージをそのまま続ける。
虹夏の表情をどう表せばいいだろうか。明確な快感を感じているわけでもない。しかし嫌悪に顔を歪めているわけでもない。
体は刺激にしっかりと反応していて、それを心が理解できていないとでも言うのだろうか。
指を押し込むたびに吐息の熱量は増し、お腹がねだるように波打つ。
「この下にあるのは子宮だよ。わかるか?」
「それくらい、知ってるけど……んっ」
知ってはいる、しかし今それがどう関係するのかわからず戸惑っているようだ。
子宮がただ子どもを育むだけの臓器だという理解なら、むべなるかな。
やはり虹夏はそこまで耳年増ではないらしい。
だからわからない。開発されていないゆえに微弱なその感覚が、快楽の一つであることを。
「いいや、わかってないな。子宮でも快楽は感じられるんだ」
「え、嘘だ!?」
「ボルチオ快感だとかいうらしい。他よりも一段と気持ちいいそうだ」
「な、な、な、へ、変態」
「変態で結構。これを知った虹夏も今から変態になるんだぞ」
「や、嫌、嫌だ、そんなの知りたくない」
「でも知っておくと性行為の満足度が格段に上がるんだとか。するとセックスレスが減って、離婚や浮気が減る」
最後の話は割とありそうな出まかせだ。真偽は知らないが、絶頂後で頭が回っていないだろう虹夏をのせるには十分だろう。
そう思っていたのだが、虹夏は疑わし気に俺を見つめている。流石に馬鹿にしすぎだろうか。
「じー」
「声に出すやつがあるか」
「ひゃあっ!」
じーっと俺を見つめるという意志をそれほどに伝えたかったのか、虹夏が擬音を口に出す。
ツッコミと同時に指に力を加えると、虹夏の腰が小さく浮き上がった。
「うー、離婚や浮気が減るってほんと?」
「ほんとほんと」
「うわーすっごく嘘くさい」
「少なくとも俺はそういうのしなくなる」
「……ならいいか」
何が
微かに強張っていた体から力を抜いてなすがままになった虹夏の耳元に口を寄せる。
「この下にあるのは子宮、女の子の一番大事なところだ」
「やぁっ、耳元、だめっ……」
真っ赤に染まった首を捩じって逃れようとしても、逃れられるはずもない。
「弱点なんだよ。一番弱い所でもあるんだ」
「そうだよ、だから丁寧に……」
「いいのか? 虹夏の一番大事なところ、俺に握られるって。俺に支配されるってことだ」
「奏に、支配……」
虹夏が催眠術にでもかかったようにゆっくりと繰り返す。
俺に向き直ったその瞳は、陶酔したかのように熱を孕んでいる。
熱の中に微かに揺らめいて見えるのは、被虐的な欲望だ。
繰り返された言葉に、無意識に期待を寄せてしまっているのだろう。
だから確信した。虹夏はこういう時、受け身で、マゾヒストの気質を持っているのだと。
ならばもっと、もっとと俺の中の欲望が首をもたげる。
もっと被虐に悦ぶ彼女の顔が見たい。
「ああ。虹夏の大切なところを俺の好きなように開発して、弄んで、気持ちよくさせるんだ。虹夏がどれだけ嫌と言おうと」
「奏の好きなように……」
わななく虹夏の唇は、果たしてどのような思いを持ったものか。
ただ零れる吐息がどろりと熱い。
「よく意識を集中するんだ。今俺が揉んでいるのは、虹夏の一番弱いところ。女の子の場所なんだ」
「あ、あ、あっ……」
ぐにぐにと指を動かしながら囁けば、虹夏はそれに合わせて喘ぐようになる。
一切の抵抗はなく、完全に未知の、それでいて微弱な快楽に意識を寄せているようだ。
本来子宮で快楽を感じるのは相当な開発が必要らしい。
少しでも手がかりを掴めたらいいな、という程度の気持ちでやってみたがまさかすぐ感じられるとは。
「一番弱い所を優しく揉まれて、気持ちよくなれるんだ」
「あっ、んうんっ、きもち、よく……」
するすると、虹夏の太ももがシーツを滑る音がする。
俺の動きに合わせて下半身に力を籠める様子が愛おしい。
部屋に漂う匂いは既に牝臭く、なのに徐々にその濃さを増していく。
「なんか、こわいっ……」
「大丈夫、大丈夫だから。俺に任せて」
「かなでぇ……」
やがて擦過音の中に、にじゅりと湿った音が混ざり始めた。
一体どれほどの快楽を感じれば、そこまでのことになるのだろうか。
男の俺にはわからないことだが、虹夏が悦んでくれているのならそれでいいだろう。
ただ虹夏の艶姿に、俺の欲望はいきり立つばかりだ。
けれど。
力なく開かれ、熱い息とともにあっ、あっと喘ぎ声を漏らすその唇に口づけたい衝動をぐっとこらえる。
超えてはならない一線というものはある。
代わりに虹夏の子宮を丹念にこねる。
いっそ執着的と言えるほどに丁寧にこね続ける。
「あっ、あっ! やあっ! なんか、変なのくるっ」
「大丈夫、大丈夫だよ」
不随意に虹夏の太ももとお腹が震え始めた。
彼女の意志に依らないそれは、大きな快感の証だ。
少し加える力を大きくすれば、より大きく虹夏の腰が跳ねた。
「んんっ! あっ、あっ、やっ、ふいぃ! ああっ、んぅ! かなで、かなでぇ」
「大丈夫だから……イケ」
とどめとばかりに、ぐっと指を押し込んだ。
「あっ……んいいいいい! なにこれええええええ!」
嬌声と共に虹夏の腰がピンと跳ねあがり、ぷしゅり、と愛液が勢いよく吹き出した。
それからお腹と足の不規則な痙攣に合わせて、こぽ、こぽ、と彼女の快感の証明が零れだす。
指を離した後も震えは続いていて、余韻ですら深く追い打ちとなっているようだ。
まん丸に見開かれた虹夏の瞳から涙が零れ落ちている。
力一杯に突き出された舌は、そんなみっともない様子を虹夏が気にする余裕もないことの表れだろう。
やがてすとんとしなやかなブリッジを描いていた腰がシーツに落ちる。
「あ、ああ……あああ……」
完全に余韻に浮かされて我を忘れた様子の虹夏。
掠れたうめき声が漏れている。
シーツを見れば、まるで粗相でもしたかのように水浸しという有様だった。
これが虹夏が感じた快感の量だと考えると、男の尊厳のような部分がくすぐられる気持ちだ。
さてこれからは俺を気持ちよくしてもらおう、と思ったところで虹夏が赤ん坊のように丸まった。
「もうむりぃ……」
すぅ、と聞こえてきたのは寝息。
健やかな寝息だった。
虹夏は、寝た。
「おお……」
虹夏が寝たことで熱が冷め、冷静さを取り戻す。
虹夏の愛液に塗れたベッド。
そのベッドでほぼ全裸のまま眠る虹夏。
そして今からぶっぱなしてやるぜとぎんぎんにいきり立った息子。
「まじか……」
この後始末を星歌さんにばれないように成し遂げなければいけないのか。
俺は天井を仰いだ。
やりすぎは、よくない。
それがよくわかった。